2017年1月20日 (金)

膵臓がんのオリゴメタ説

前回の続きです。膵臓がんにもオリゴメタ説は考えられるのでしょうか。考えられるとすれば、転移・再発した膵臓がんでも治癒の可能性があります。

オリゴメタ説(少数転移説)正確には(オリゴメタスタシス(oligometastasis)、少数転移するタイプの腫瘍をオリゴ転移型と言います。

ちょうど1年前のブログの記事で膵臓がんのオリゴ転移型について紹介しています。

記事では、関連した二つのサイトを紹介しています。

膵がんは予後が悪いがんの筆頭だ。しかし中には遠隔転移しにくいがんがいる可能性が強まった。こうしたタイプの膵がんには「その生物学的な特性に応じた独自の治療法が必要」という声があがり始めた。「非手術適応症例には化学療法」だけでよいのか。

と述べる、国立がん研究センター研究所難治がんユニットの谷内田真一氏も岡田医師と同じ問題意識を持っています。

************以後、日経メディカルからの要約**************

谷内田氏が米国留学の経験から学んだのは、一つには膵臓がんで亡くなった患者を死亡直後に解剖すると、15%には転移が認められないという。

2つ目は、膵臓がんの終末像は「局所破壊型」と「全身転移型」の2つに分類できるというものだ。全体の約30%を構成する局所破壊型の多くは遠隔転移の総数が10個以下。一方で残り70%を占める「全身転移型」では、その多くで遠隔転移の総 数が100個以上と桁違いに多い(図1)。

図1●膵臓がんの2つの終末像
C.A.lacobuzio-Donahue,S.Yachida et al.,J Clin Oncol 2009から引用。

3つ目は、たとえ手術ができたとしても75%は再発してしまうという。つまり手術が有効な症例は極めて少ないことを示唆している。

「膵がんは必ずしも1種類の単純ながんではなく、少なくとも2つのタイプに分けることができる。その特性に応じた治療法を考案すべきときに来ている」と谷内田氏は結論づけている。

オリゴメタ説の仮説の傍証となるような報告が日本から出された。東京都健康長寿医療センターの病理診断科のグループがストックしてあった8339の生物検サンプルを解析したところ178の膵がんを発見した。そのうちの8%の膵がんが無症候のうちに進展していることが明らかになった。

第53回日本癌治療学会学術集会のシンポジウム「膵がん治療の個別化による予後向上」では、山口大学医学部放射線治療学教授の澁谷景子氏が「膵がんの非手術適応の患者でも経過をみていて転移が出てこない方がおられ、そのような患者には化学療法ではなく放射線化学療法を選択すべきだと思うが、その選別が難しい」と講演している。

全身転移型と局所破壊型(オリゴ転移型)を分けるのは、膵癌特有の遺伝子変異である。膵癌の遺伝子変異はKRAS、P16/CDKN2A、TP53、SMAD4のわずか4つに集中していることが分かっている。そして、TP53とSMAD4、あるいはTP53に変異があると転移する傾向が強く、予後も悪い。対照的にTP53とSMAD4双方に変異がない場合は転移する傾向も弱く、また予後も比較的良好だ。

**********引用、ここまで**********

後者の場合はオリゴ転移型である可能性が高く、抗がん剤による延命治療ではなく重粒子線を含めた放射線治療、化学放射線治療、動注塞栓療法などあらゆる手法を使った個別化医療を進めることで治癒が期待できる。

これを実際に患者に適用しているのが、前回の記事で紹介した岡田直美医師なのですね。そして前回の記事にコメントをいただいた林さんも、たぶんオリゴ転移型の膵臓がんだったのでしょう。

「膵臓がんです。転移しているから手術はできません。抗がん剤治療で延命し、耐性ができ使える抗がん剤がなくなれば、あとは緩和です」と、標準治療のエビデンスだけに乗っかると、助かる可能性のある命を捨てることになりますね。

「迅速解剖プログラム」がある

2017年1月19日 (木)

今日の一冊(66)『このまま死んでる場合じゃない!』

なんともすごい女医さんがいるものだ!

エビデンス至上主義では、再発・転移したがんは治せない。抗がん剤でがんを治せないのは、治せるように使っていないだけだ。エビデンス至上主義の考え方ゆえに、標準治療こそが、エビデンスに基づいた最善の治療と思っている医師も大勢います。

と堂々と言うのだが、この女医さん、岡田直美医師は、重粒子線治療を行っている放射線医学総合研究所(放医研)病院の医長です。国の機関である病院の医師がここまで言って大丈夫か?と心配になるくらいです。

しかし、多くの再発・転移したがん患者を、標準治療で使われる抗がん剤や重粒子線を含む放射線治療、ラジオ波焼却、動注塞栓治療などさまざまな治療法を駆使して”治して”いる。

このまま死んでる場合じゃない! がん生存率0%から「治ったわけ」「治せるわけ」

がんが再発したり、転移していると、多くのお医者さんがあきらめてしまいます。これが現代医学の常識です。でも本当は、現在の医学なら十分治すことができるのです。

がんの治療には、がんができた臓器とその進行度ごとに治療が決められている「標準治療」というものがあります。今は、この標準治療でがん治療をすることが常識で、それ以上のことをやろうとすると、とたんに異端児扱いされてしまいます。

岡田医師の治療で、子宮頸がんの多発転移が治った善本考香さんの治療歴がすさまじい。

①子宮頸がんと診断され手術、②傍大動脈リンパ節に再発。抗がん剤と放射線治療で、傍大動脈のがんはなくなったけど、今度は、③両側の縦隔と肺門と左鎖骨上窩に再々発。東京に出て、岡田先生と出会う。調べてみたら、肺転移も見つかる。そこで、全身抗がん剤治療をおこない、肺のがんが消えました。次に、動注塞栓で左鎖骨上窩のがんが消えて、両側の縦隔・肺門リンパ節の手術。そして、その後の精密検査の結果、④左の縦隔、左鎖骨上窩に再びがんが現れ、肝臓、腸骨リンパ節に新たながんが見つかる。

再々々々発?

手術後に残った4ヵ所のがんは、肝臓、腸骨リンパ節、左鎖骨上窩リンパ節、左縦隔リンパ節。⑤肝臓と腸骨リンパ節は動注塞栓で消え、⑥左鎖骨上窩と左縦隔のリンパ節は重粒子線で退治できた。がんとの闘いは7ヵ月で、がんの残存はゼロ。最終の治療となった重粒子線治療から約3年経っていますが、残存ゼロのままです。

どうしてこのような治療にチャレンジできるのか? そのカラクリは「オリゴメタ(少数転移)説」にあると言う。正確には「オリゴメタスタシス(oligometastasis)」。

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2017年1月17日 (火)

チェロ弓の毛替え

昨夜は今年初めてのチェロのレッスン。しばらくサボったなぁ。
一時間ほどで「モルダウ」「ラクリモサ」を弾いたが、弓がすべって音の出だしが悪く、引っかからない。そういえば2年ほど毛替えをしていない。

今日は西新宿まで毛替えに行ってきた。著名な演奏家も贔屓にしているという「香野弦楽器」さん。ここが一番安くて技術も良さそう。馬の毛もピンからキリまであるが、高品質のものだけを使っているという。税込みで6500円は安い。ヤマハで頼むと1万円だ。世界的に活躍しているチェロ奏者、ジャン・ワンさんやヨーヨー・マさんの毛替えもしているそうな。

たくさんの弓が飾ってあって、一番安いので400万円(´Д`)。「これ、ヤマハでは600万円で販売しているものですよ」とまたビックリ。私のは16万円の、それでも奮発した品ですが、比較するのもばかばかしいね。安い弓だろうが、毛替えの値段が安くなるのではないです。

初台のマンションの一室の小さな工房ですが、悪いところをすべて直していただき、バランスをチェックして「ゴムを付けた方が弾きやすいね」と無料で付けていただいた。さて、どんな音になるか楽しみです。

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マチネの終わりにいま話題の平野啓一郎の大人の恋愛小説『マチネの終わりに』には、バッハの無伴奏チェロ組曲が効果的に使われている(らしい。まだ読んでいないが)チェロの曲をギターに編曲したという設定。

天才ギタリストの蒔野聡史と通信社記者の小峰洋子の二人を軸にした恋愛小説。
40代の苦悩、スランプ、PTSD、戦争、生と死、父と子、師弟、嫉妬等、様々なテーマが複雑に絡み合い物語が進んでいく。
2016年4月に毎日新聞社より単行本が発行され、発売から僅か3ヶ月で第6刷が決定という異例の事態となった。
クラシックギタリストが主人公であり、世界的ギタリストの福田進一が構想の段階から平野に助言していた。
今作のCDは、小説に登場するギター曲を福田進一と平野啓一郎が選曲しており、福田進一のギターによって物語が更に立体化する。

J.S.バッハ / 無伴奏チェロ組曲 (全曲) ベストセラーですってね。無伴奏チェロ組曲は、定番カザルスのもの、ヨーヨー・マ、リン・ハレル、マイスキーなどCDを5枚ほど所有しているが、ギター編曲のものはないなぁ。

ギタリスト山下和仁のCDがよさそう。

2017年1月16日 (月)

EBM神話の罠(2)

Medical Tribune誌に、東海大学循環器内科学教授 後藤信哉氏の『EBM神話の終焉とPrecision medicineの裏側』という記事がある。正月中に読みたいと思っていたが、医療関係者しかアクセスできない。長尾和宏先生がブログでPDFをアップしてくださった。

EBM神話の終焉

まことに素晴らしい文章。
それを掲載したお薬の宣伝紙も、ある意味凄い。
意味が分かって載せたのか、それとも分からずに載せたのか。
それでも「「EBMを信じるぞ、これが一番」というメデイアの方や一般の方は、拙書「薬のやめどき」で分かり易く解説したので、是非とも立ち読みしてほしい。

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長尾先生も皮肉たっぷりですね。

タイムリーで素晴らしい考察記事です。 記事をダウンロード 

  • RCTとは、人体も疾病も複雑過ぎて理解できないので、外部からの介入結果で判断しようという方法論である
  • しかし、 EBM の対象は忠者集団を構成する平均的患者であり、個別患者ではない
  •  薬剤AB を比較するRCTにおいて 4951で薬剤 B の有効性、安性が統計学的に証明されれば、薬剤 B が次の標準治療となる平均的症例に対する
    標準治療を無限回の
    RCTで改善するという概念がEBM

「100人の内51人に効果があれば標準治療になるが、49人ではダメ」は私もよく例えとして書いていますので、励まされる思いです。

  • 英文で発表されたRCTを重視するEBM思想、医療の正解は全て論文の中にあるという誤解を招いた
  • たとえRCTで優劣を付けられても、その結果を「自の前の患者」に応用できるか否かが不明となった平均的患者に標準治療を行うべきという考え方自体も揺らぎつつある個々の患者は均質でなく、高齢化で個人差は拡大するからだ

 ビッグデータやディープ・ラーニングによる人工知能の進歩で、人間の医師よりも高速で正しい判断ができる時代がもうすぐ目の前に来ようとしている。今は囲碁や将棋の世界でだが、医療の世界にもIBMのワトソンが登場している。

そのとき、マニュアル化されたファストフードの店員と同じことしかできない医師は、IT企業の下僕となっているかもしれない。

個別化医療への転換を前にして、RCTの基板の上に構築されたEBMやガイドラインは、どのように変容するのだろうか。

EBMprecision medicineが解き明かせない部分を重視すること。医師の手が触れることの治療効果や、患者の表情を見ることの診断的意義はデジタル化できないそうした仕事を大事にして、“病気や患者の分からなさ”と悪戦苦闘することが、マニュアル化の対極にあるのだ

EBM原理主義の腫瘍内科医や、メガファーマの広告宣伝部となり果てた患者団体に読ませたい文章ですね。

EBM神話の罠(1)

ハマリョウさんのブログで紹介されている「免疫の力でがんを治す患者の会」発足記念 市民セミナーのパネリストには、金沢赤十字病院 副院長の西村元一先生が登壇しています。

西村先生は、このブログ「今日の一冊(59)『余命半年、僕はこうして乗り越えた!』」でも紹介したように、がんの外科医であり、肝転移を伴う根治が難しい進行胃がんのがん患者です。

死を覚悟しながらも「金沢マギー」の設立に尽力するなど、素晴らしい活動をしている方です。ところが、先生の「余命半年」というタイトルや、免疫療法をも受けていることが気に入らない患者団体があるようです。こちら

タイトルを見て引き寄せられる人は少なくないだろう。私もその一人である。しかし、下記の記事を読むと、余命半年ではない。治療をしないと余命半年とある。
治療をしなければ余命半年・・・の、治療をしなければという文言を、記事のタイトルにきちんと、付け加えなければフェアーじゃない。

この西村医師が、これからなさろうとされることは素晴らしい。しかし、次のフレーズを読み愕然とした。

西村医師は免疫療法も受けている。エビデンスがない免疫療法には賛否両論があるが、さまざまな情報から「毒にはならない」と確認し始めた。

免疫療法?まいったなぁ~。申し訳ないけど、本当にがん治療医ですか?と疑いたくなる。

しかし、ここに書かれてある免疫療法とやらは、如何わしい詐欺まがいの例の治療だ。こういった副院長ともあろう方が、公然と、発信しちゃ~いけないんじゃないかな。
これじゃ~まるで、詐欺の片棒かつぎ!

相当厳しい非難ですね。ま、いろんな考え方があるから、こういう記事を書くのも自由ですが、現在がんといわれて治療しない患者はほとんどいません。ということは、「治療しなければ余命半年」というエビデンスなどあるはずがない。

ステージⅣの胃がんの生存期間中央値は1年程度であり、「何もしなければ半年」というのは、この数字からの医者の推測に過ぎない。本のタイトルは通常は編集者が考えるのだろうから「フェアじゃない」と難癖付けるのも大人げないなぁ。

免疫療法も、金沢大学の先進医療センターで治験がすすんでいてその情報をもとに選択したのであるから、「サギまがい」と一概には言えないだろう。

ちなみに西村先生は、全国のがん封じ寺も回っているし、近くの神社に朔日参りも欠かさないそうです。これらも批判するのでしょうかね。「医者ががん封じ寺を回るなんてけしからん。影響が大きすぎる」って。私は人間臭くていいなぁと感じるのですが。

「エビデンスのない治療を受けることはまかりならん」とは、なんと傲慢な方かと感じる次第です。「エビデンスがない=効果がない」とは限らないのですがね。EBM神話にどっぷりと浸かった方の耳には念仏でしかないか。

EBM神話=EBM原理主義と言ってもいいけど、確かに歴史的には大きな役割を果たしたことはまちがいありません。しかし、現在はその弊害も見過ごせないほどになっている。

EBMは世界的製薬企業のグローバル戦略の手段となり、莫大な利益を上げるための手段となり果てている。EBM原理主義を振りかざされたら、RCT(ランダム化比較試験)には莫大な費用がかかるために、効果が確かめられた古い薬や安価な薬、希少がんなどの薬に対するエビデンスは出てこない。利益にならない試験はやるはずがない。良心的な製薬企業があったとしてもRCTの費用が賄えない。

«家族なら"完治"を願うべきか?

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