2009年11月 8日 (日)

笑っちゃう 『がん難民119番』

NPO法人 がんコントロール協会代表の森山晃嗣氏の『がん難民119番』がおもしろい。どのようにおもしろいかというと、笑っちゃうほどおもしろい。Wshot00043

開いて先ず違和感を持った。活字が大きいのだ。通常のこの手の本の1.5倍はある。普通の活字サイズにすれば半分のページに収まりそうだが、それではありがたみがないと思ったのか、価格を低くするのがいやで無理矢理ページ数を稼ごうとしたかだろう。

著者のプロフィールには「栄養素療法によって病気を克服した実体験をきっかけに、正常分子栄養学を学ぶ」とある。「生命の鎖理論に基づいた講演活動や健康相談を開始、とも。

栄養素療法?、正常分子栄養学? 生命の鎖理論? 始めて聞く言葉だが、私が馬鹿なせいだろうか。ネットで検索すると確かにたくさんヒットするから、巷では知られている療法かもしれない。生命の鎖理論とは、ロジャー・ウイリアムス博士が提唱する「栄養素は単独では働かず、チームで働く」ということらしい。当たり前じゃないか。○○理論というほどのことかい。

第一章から隠す気もないバイブル本の様相だ。東京神田の「キャンサーケアクリニック神田」の宣伝である。院長は菅野光男医師。米国自然療法医学の医師で、西洋医学の医師で、さらに牧師でもあるという。フィリピンの医科大学を出て日本の医師国家試験に合格している。牧師にもいろいろいるということだ。

62歳で膀胱がんの男性のがん治療体験レポートが続く。

  • 温熱器具で身体を温めながら、菅野院長のカウンセリング
  • コップ一杯の植物由来ミネラル液を飲む栄養カプセルとラウリン酸も摂取
  • 高濃度ビタミンC25gの点滴を開始(飛行機のファーストクラスのようなソファーだとわざわざ説明してある。)
  • またも食物由来ミネラル液と食物栄養物質をブレンドした液体ドリンクを飲む
  • 昼食は完全無農薬の玄米と、無用薬の野菜、ヒポクラテススープ、ニンジンドリンクなど
  • フロリダ産の無農薬有機栽培のニンジンエキス粉末とカナダの無農薬有機栽培の大麦若葉のエキス粉末を電子水でブレンドしたドリンクを摂取。
  • 電子チャージ風呂に入浴
    クラスターの細やかな電子水のお風呂にじっくりとつかる。
  • 遠赤外線温熱療法
    熱を6.27ミクロンという遠赤外線の振動に変換し、身体の水分子に反応を与える器具で、頭からつま先まで温めていく。
  • 夕食用に「健康回復弁当」をいただいて帰宅

ここまで似非科学用語を羅列するとは立派です。つかっている温熱器具は「グレミオ627」という特許も取った製品らしい。(特許 No.2968479)

グレミオ627

 グレミオ627は、パネル表面温度85℃±10℃と温度設定は一定です。
グレミオ627は、温熱波動(遠赤外線振動)に変えるため、ソフトに身体の深部まで到達します。温度を変えてしまうと、水分子を振動させる6.27ミクロン波動波長が変化をしてしまいますので温度は一定に保ちます。
 6.27ミクロンは、水分子の変角振動に反応しますので、直接腸内の水分子を振動させて、腸の温度を高めていきます。
この温熱波動を特に熱いと感じる時は手拭または、タオルを緩衝材として使用し、体感者に気持ちよく感じてもらいましょう。
 グレミオ627は、熱を振動に変換し、身体の水分子に反応させるため、器具は必ず2個使用します。波動は受け止める相手がいないと通り抜けてしまい、効果が半減しますので、波動製品は必ず2個用意します。

電子水をつかった電子チャージ風呂(普通の風呂だが)というものや電子チャージ機なるものの写真も掲載されている。オステオパシー(整体)やIPT(インスリン強化療法)、ゲルソン療法、コーヒー浣腸などがてんこ盛りだ。

さて、このクリニックの自費診療費の内訳

  • 【78gビタミンC 3本+強力ミノファーゲン 2本】  83,000
  • 【IPT療法+50gビタミンC 2本】×3回      235,950
  • 遠赤外線温熱療法・電子チャージ風呂 5回     45,750
  • オステオパシー                       1回                 7,000
  • 食養生                                                      18,000
  • コーヒー浣腸                                                7,245
  • 腫瘍マーカー検査      6項目 2回                   21,000
  • カウンセリング                                             10,000
  •                                   合計  444,495 → 315,000

合計 444,495円が、コース特別料金なら 315,000円と非常にお得になっています。(合計が合わないのは私の入力ミスではない。本に書かれたままである

(あれ? このクリニックのホームページには、400,495円→315,000となっている。)

普通の風呂に5回入浴して45,750円ですか。あの食事で18000円?ぼったくりや詐欺罪にはならないんでしょうかね。

「波動」や「水分子のクラスター」なんていう言葉、「水は記憶する」でよく聞いたものです。がん治療にも進出ですか。しかし、こんな単純で子供だましのような治療でも、引っかかるがん患者がいるからやっていけるんでしょうね。

温熱器具の特許とやらを検索してみた。

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開平9-313865
(43)【公開日】平成9年(1997)12月9日
(54)【発明の名称】電磁波による消臭及びカビ防止方法及びその装置
(51)【国際特許分類第6版】

(57)【要約】
【課題】 本発明の課題は、消臭剤等を使用しない消臭及びカビ防止方法及びその装置を案出することである。
【解決手段】 本発明は、空気中の水分子に電磁波、特に遠赤外線(波長λ=5μm ~15μm )を照射して、変角振動モードの水分子を活性化し、活性化された水分子を空気中の臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化することを特徴とする電磁波による消臭及びカビ防止方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1 】 空気中の水分子に電磁波、特に遠赤外線(波長λ=5μm ~15μm )を照射して、変角振動モードの水分子を共振させることにより活性化し、活性化された水分子を空気中の臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化することを特徴とする消臭及びカビ防止方法。
【請求項2】 遠赤外線をトルマリン層に照射することによりトルマリン層の静電気を強化することにより空気中の水分子を電気分解しその結果生じた水素イオン(H+ )又は水酸基イオン(OH- )を直接臭分子と結合させ、又は水分子と再結合して成るヒドロキシルイオン(H3 O2 - )を臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化する請求項1記載の消臭及びカビ防止方法。
【請求項3】 照射される遠赤外線の波長λが、λ≒6.3μm である、請求項1又は2記載の消臭及びカビ防止方法。
【請求項4】 空気中の水分子に電磁波、特に遠赤外線(波長λ=5μm ~15μm )を照射して、変角振動モードの水分子を共振させることにより活性化し、活性化された水分子を空気中の臭分子と結合させることにより空気中の臭分子を無臭化する消臭及びカビ防止方法を実施するための装置において、ハウジング(1)は複数の開口(6)を有する窓枠(4)を備え、窓枠(4)に遠赤外線放射体(11)を備え、ハウジング(1)の内方に台枠(8)上にサーミスタヒータ(7)を備えたことを特徴とする前記消臭及びカビ防止装置。
【請求項5】 窓枠(4)が遠赤外線照射により静電気発生力を強化されるトルマリン層(5)を備えている、請求項4記載の消臭及びカビ防止装置。

消臭とカビ防止の発明だよ。確かに波長6.3ミクロン(温熱器具は6.27となっている)は出てくるが。がんはカビなんですか? 身体の中のカビでも取ってくれるということかも知れん。

このクリニックのアドレスはNPO法人がんコントロール協会と同じでした。(協会の中のフォルダにある) このNPO法人が開催したがんコンベンションの講師陣はこんな人たち。

安保 徹
小川 眞誠 
帯津 良一
寺山 心一翁
船瀬 俊介 
済陽 高穂

そうです。あの安保教授、船瀬俊介、済陽高穂(最近「がん再発を防ぐ完全食」という著作を出しています。) この陣容も見ればインチキNPOだとすぐに分かりますね。帯津良一医師については、私は以前は一定の評価をしていたのですが、最近はホメオパシーにも顔を出すなど、いささか懐疑的な目で見ています。というよりも胡散臭いといった方が正確かも。

この本の存在価値(があるとすればだが)は、あまりにもばかげた内容に、腹を抱えて笑えることで、それによってもしかすると免疫力が高くなるかもしれないということです。

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2009年11月 6日 (金)

千葉徳州会病院 がんペプチドワクチンの経過

6月9日のこのブログでも紹介したが、中村祐輔教授の開発したがんペプチドワクチンを使った千葉徳州会病院の膵臓がんの臨床試験について、その後の経緯がmsn産経ニュースに載っています。(11月6日付)

 「すごい効果が出るとは思ってなかったが、何らかの手応えは感じている」。千葉徳洲会病院(千葉県船橋市)の浅原新吾副院長(消化器内科)は、ペプチドワクチン療法の印象をこう話す。

 同病院は3月から、日本のゲノム(全遺伝情報)解析研究を率いてきた東京大学医科学研究所(東京都港区)の中村祐輔教授(同研究所ヒトゲノム解析センター長)が開発したペプチドを使い、既存の治療法が尽きた膵(すい)がん患者を対象に臨床試験を行っている。

 膵がんは診断から1年以内で亡くなる人も多く、治療法が尽きた患者の余命は一般的に数カ月とされる。同病院が臨床試験を行っている患者の中には腫瘍(しゅよう)が縮小したり、マーカーが下がったりした患者もいたという。

 浅原副院長は約10年にわたり、癌(がん)研有明病院(江東区)で消化器がんの治療に携わってきた経験を持つ。肝がんなどの患者ではごくまれにがんが自然消失するケースがあったが、膵がんではそうしたケースはみたことがなく、臨床試験の経過を驚きながら見守っているところだという。

まだ途中経緯で、びっくりするような結果は出ていません。腫瘍が縮小したりマーカーがさがったりという程度ですね。抗がん剤と違ってQOLは非常によいはずです。

中村教授の新刊著作『がんペプチドワクチン療法』をやっと入手しました。出版社が中山書店ですから、医者をターゲットとした本でしょう。内容も結構専門的です。まだぱらぱらとしか見ていないので、これからです。

がんペプチドワクチンも現状では決して「魔法の弾丸」ではないですね。過大な期待は禁物ですが、膵臓がんでもう治療法がないといわれた患者にとっては、早く一般的に使えるようになってほしいと願っています。

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2009年11月 4日 (水)

信頼できるウェブを装ったアガリクスの宣伝

株式会社日本医療情報出版が編集している「週間がん もっといい日」というサイトがある。
「図書室」には推薦図書の一覧があり、例の安保徹氏の著作などが載せられているから、この一事だけで私は「信頼できないサイト」という烙印を押している。ここの記事を取り上げれば、中には参考になるようなものもあるが、本日更新された内容にこんなものがあった。
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TOPページのタイトルのすぐ下に「がん患者さんはどんなサプリを飲んでいるの?? 厚労省データ紹介 ↑ココをクリック」とのリンクが張られていた。

クリックすると「がんとサプリメント」との表題で、「厚生労働省がん研究助成金による研究班のデータ」なるものが出てくる。がん患者で何らかの代替医療を利用しているのが、55.4%で、その中でアガリクスを利用しているのが60.6%だという調査結果を述べたものである。これだけなら情報提供ということで、参考にすればよいだけのこと。

しかし、一番下に「おすすめサイト」として

アガリクスについてのご相談は・・・「電話で相談できるケーエーナチュラルフーズ」へ
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アガリクスの効果・情報ブログ「アガリクス健康日記」←アガリクスについて詳しくはコチラをクリック

未病医学・気血水について 「NPO法人気血水研究会」へ

いつまでも若く、美しくありたい 「サンプライズ株式会社」

などがずらずらと並んでいる。

要するにここは業者の宣伝サイトということ。すこしはまともな情報だって載せていないと読者が付かないだろうから、全部が間違った情報ではないだろうが、ほんとうの目的は「藁をつかみたいがん患者」を誘導して、アガリクスを買わせようということだろう。

まぁ、アガリクスを使うのならブラジル産でないと必要な成分が十分ではないということは分かるが、アガリクスにがんを治す効果などないことは明か。動物実験や試験管でいくら効果があるとのデータがあったにしても、ヒトの体、ヒトのがんははそんなに単純ではない。

更に不思議なのは、同じTOPページにこんなコラムがある。

「新作です。免疫療法のマンガ」
                        

バイブル本商法で一世を風靡したアガリクスに代わり、今は活性化リンパ球療法のような免疫細胞療法の宣伝が盛んです。
患者さんやご家族からの「がん免疫療法は効きますか」という質問が、学習交流会では必ずといっていいほど出ます。それに対しては「新聞や本に広告を出して宣伝しているものはインチキです」とお答えしています。
 けれど免疫療法の仲間に入るものの中にはちゃんとした医療もありますし、がん治療の進歩につながりそうな研究もあります。どの療法のことなのか、免疫療 法とひとことで言われただけでは、効くのかインチキなのか本当は言えません。
免疫療法の世界のこの複雑なありように乗じて、一部の企業や病院がたくみに金もうけをしているのが現状だと思います。
 新作マンガの『研究段階の治療は受けるなら臨床試験で』と『がん免疫療法はまだ臨床研究の段階です』は、免疫療法に関心のある患者さんが金もうけの餌食 にならないようにと作ったマンガです。早わかり教材として医療者のみなさまにも役立ちそうな気がします。免疫細胞たちのオリジナルキャラクターがかわいい ですよ!

まともなことを書いているではないか! ここではアガリクスをバイブル本商法でがん患者を餌食にしているものだと書かれている。免疫療法に関してもまっとうなことをいっている。だとすれば先のリンクとこの内容とはどのように整合するのだろうか。バイブル本のアガリクスはだめだが、ブラジル産のものはよいということか。出版元の編集方針がいかにもいい加減だといわざるを得ない。

「信頼のおける出版社の、信頼のおけるサイト」のように装って、こうした悪質な宣伝をする業者も多いので、騙されないように。「安保徹」の名前の載っているサイトは無視すれば、判断は簡単で間違いがない。

アガリクスに関してはこちらのブログを。
このブログのこちらなどにも書きましたが。

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2009年11月 2日 (月)

血液検査の推移 がんとの闘いに金をかけない

いつもの病院でアヘンチンキと消化剤。血液検査の結果をもらった。
白血球数:5280
リンパ球比率:53.6%
HbA1c :5.3

『リンパ球比率がちょっと多いね』といわれたが、正常範囲の50%を少し超えている程度。むしろリンパ球を増やすように努力してきたのだから、私としては目標達成という気持ち。HbA1cもまったく正常で、反って『低血糖に気をつけた方がよいですよ』といわれるくらい。膵臓が半分以上なくてもインシュリンも十分分泌しているし、膵臓の機能もほぼ満足だ。血液検査の他の結果もまったく悪いところがなくて、”健康そのもの”の体だ。

2年前の手術のころからの血液検査の結果をグラフにしてPhotoみた。手術前の白血球数は4000前後。最初のデータは2005年のものであり、これが私の通常の値である。一般的にいえば、平均より少ないのが正常値ということになる。

膵臓切除の手術をしたとたんに急増して7000を超えるときもあった。手術後の炎症反応に体が対応した結果ではないかと思われる。そして術後補助化学療法でジェムザールを始めたとたんに白血球数が減り始めている。リンパ球の実数はさらに減少割合が大きい。抗がん剤が、分裂が活発なリンパ球をも攻撃している様子がよく分かる。

抗がん剤の投与が終わると徐々に白血球数もリンパ球実数も増加しつつあったが、さらにこのころマルチビタミンを服用しだした。主に抗酸化作用と腫瘍抑制作用のあるビタミンを多く含んだマルチビタミン剤である。これも結果的には効果があったように思う。そしてメラトニンを就寝前に服用しだした。一点おかしなデータがあるが、全体的には徐々に右肩上がりに増加している。

このようにして今の私の体にはこれまでの人生では最大のリンパ球攻撃部隊を傭することになった。小さな目には見えないほどのがん細胞を退治してくれているだろうと期待している。癌との闘いの帰趨を決めるのは、最後は『自己の免疫力』だ。それに体力。体力のない患者が長生きできるはずがない。気力に精神力も必要だ。要するに闘いは総力戦である。一つのサプリメントや魔法の特効薬ががんを治癒することなどあり得ない。この点に関してはがんペプチドワクチン療法などの免疫療法も同じだろう。戦争を遂行するとき、その国の経済力が戦略を決定づけるように、がんとの闘いにおいては免疫力・体力・気力・精神力などの総合力が闘いを決定づける。仮に一発の核弾頭を持っていたとしても長期戦においては経済力を初めとする総合力が帰趨を決める。北朝鮮を見よ。

30分以上の散歩を週5回以上、十分な睡眠を取る、ストレスを溜めない、玄米菜食(時には肉も食らうが)、たくさんの野菜と果物(昼食は果物だけというときも多い)などなど、どれもが効果があったに違いない。どれが効いたとはいうことができない。メラトニンの効果も不明だ。

今日の朝日新聞の夕刊に、夜勤の人にはがんの発生が有意に多いという記事があった。寝るべき時間に明るい環境にいると、メラトニンの分泌が減って来ることが知られている。それによって抗酸化作用は抗腫瘍作用が少なくなるためにがんが増加する。これは乳がんの患者の分析で統計的に明らかになっているが、他のがんでも同じことだろう。副作用のない安価なメラトニンだ。服用を続けることに問題はないと思う。

膵臓がんを再発・転移させない。そのためにできることは何でもやる。という気でやってきたが、金をかけないということも大事なこと。高価なサプリメントなら効果があるに違いないというがん患者の無邪気な誤解に、私は挑戦してきた。高ければ効くというものでもなかろう。ビタミンとメラトニンでは高価な薬を探す方が難しい。散歩には金はかからない。湯たんぽで暖めてはいるが、湯たんぽではしれたもの。ドイツ製だという少し高価な湯たんぽを買ったのではあるが、それでも3000円くらいだった。サプリメントよりは本代の方に金を使っている。

拾った命だから、のんびりいく。拾った命を、楽しんでいる。

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2009年11月 1日 (日)

物理学者・戸塚洋二 がんを見つめる

31日(土)15時から1時間のNHKヒューマンドキュメンタリーで、このブログでも先に書かせていただいた戸塚洋二さんのことが取り上げられた。戸塚さんのブログの内容に沿っての番組だったが、佐々木閑氏が対談のテープを残していて、肉声を聞くこともできた。

迫り来る死への恐怖に、佐々木閑氏との対談では『科学者として、死んだときどのようになるのか、その観察結果を報告できないのが残念だ』との趣旨に発言をされていた。がんのCT写真をデジカメで撮影してその大きさを測定し、時系列のグラフにして、抗がん剤の効果を判定しようとしていたのは、「実験屋の悲しい性です」という。しかし、ちょっと疑問なのは、CTは輪切りにして断面を撮影するわけで、輪切りにする位置が毎回微妙に違えば、腫瘍の大きさ(断面)も正確には撮影できないのではないかという疑問だ。そのあたりはどのように解決したのだろうか。

死ぬときは全ての人が大往生なのです。「壮絶な死」などいうものはない。自然現象であり、美しくもないし醜くもない。死ぬ瞬間は脳には大量のドーパミンが放出されるらしいので、外見は苦しそうにしていても本人はほとんど苦しむことはないという。
死ぬ瞬間は、トンネルの向こうに光が見える、すばらしい花園があり、とても幸せな気分になる。臨死体験をした人はそのように言う。

人はいずれ「無」に帰る。もとの宇宙を構成していた原子にばらばらになっていく。そのときにはこの「自分」は存在しないのであるから、存在しない自分は、自分が「無」になったことを知ることはできない。古代ギリシャの哲学者エピクロスは、

死は、もろもろの悪いもののうちで最も恐ろしものとされているが、じつはわれわれにとって何ものでもない。なぜかといえば、われわれが存在する限り、死は現に存在せず、死が現に存在するときには、もはやわれわれは存在しないからである。

と言っている。なるほどと思うが、いやそれでも死を恐れるのはどうしてか。それは生きている間に「死」を想像することができて、しかも死んだあとに自分が死んだということを認識できない。つまり、睡眠から目覚めたあとでは、自分がこの間寝ていたということを認識することができるが、自分が死んだということを自分では認識できない、ここに死の恐怖があるのではないか。これは、睡眠からはいずれ目覚めるが、死から目覚めることはないということと同じ意味になる。エピクロスのいうことは、逆に死を恐怖する理由になっているのではないか。 いずれもう少し考えてみよう。

戸塚さんは、ニュートリノに質量があることを発見して、世界を驚かした。ニュートリノに質量があるかないかは、この宇宙の未来を左右する。この宇宙は「無」から誕生し(ビッグバン)、それ以来膨張を続けているのであるが、宇宙の全質量がある値以上であればいつの日か収縮に転じる。これはアインシュタインの相対性理論から出てくる結論である。そしてニュートリノに質量があれば、宇宙の全質量はいずれ収縮する可能性がある。ということは、収縮してまた「無」に帰るということになる。われわれは「無」から「無」にいたる時間の間の、本の一瞬にたまたま生を受けているに過ぎない。戸塚洋二さんが成し遂げようとしたことは、このようなことなのだ。

だからどうした、と言ってしまえば身も蓋もないが、がん患者であろうがなかろうが、人は体力の続く限りやりたいことをやるのが、避けられない死、無に帰る死を穏やかに迎える秘訣なのかもしれない。

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2009年10月31日 (土)

城山三郎 『そうか、もう君はいないのか』

このところ6週間連続でチェロのレッスンが続く。年末年始の分をまとめてやっておこうということなので、それなりに気合いが入って通っている。いつものように蕎路坊で野菜天ざると酒。一時間ほど酔いを覚ましてレッスンに入る。左腕の五十肩もだいぶよくなってきたのは、チェロのレッスンが効いているのかもしれない。課題曲の「私のお気に入り」も今回でおしまい。初めのころに比べてずいぶんと上達したと自分でも感じる。テンポに乗っている。低音部とのハーモニーもきれいに調和している。先生もべた褒めだから気分がいい。

城山三郎の『そうか、君はもういないのか』を読む。城山さんのWshot00037没後に発見された愛妻への遺稿であり自伝のような本で、妻の容子さんが癌でなくなるまで の思い出でもある。ほのぼのしたいい夫婦だ。容子さんが高校生で城山さんが学生の時、突然の休館日となった図書館の前で、途方に暮れている二人が偶然にであう風景。『天から降りてきた妖精』のような赤いワンピースの容子さんに一目惚れした城山さん。親から反対され一度は分かれるが、数年後のまた偶然の出会い。こうなるともう結婚へとまっしぐらしか道はないよね。

新婚旅行の宿で、初夜の行為の結果としてベッドのシーツを汚してしまい、一生そのホテルには近づけなかったなど、笑ってしまう。容子さんが新婚旅行の報告を電話して、「とってもよかった」を連発したそうで、後日義兄から「あのときはすっかり当てられてしまった」と言われる。そんな天真爛漫というか、うぶな容子さん。

城山さんのこんな詩もある。

深夜
おまえの寝息を聞いていると
宇宙創造以来の歴史が
ふとんを着て
そこに居る気がする

生きていることの
奇怪さ
美しさ
あわれさ

おまえの寝息がやむと
大地に穴があいたように
寒くなる

さて
おまえの乳房をつかんで眠れば
地球ははじまり
地球はおわり

そんな容子さんが肝臓癌になる。診察を終えて帰ってきた容子さんは、鼻歌交じりにポピュラーな歌に自分の歌詞を乗せて歌いながら部屋に入ってくる。
「ガン、ガン、ガンちゃん ガンたららら・・・・・・・・」
癌があきれるような明るい歌声であった。城山さんの腕に飛び込んできた容子さんをただ抱きしめるだけの二人。

ニューヨーク居る息子さんが見舞いに来て、帰ろうとしたとき、突然病室のWshot00038 ベッドから滑り降りて立ち上がり、直立して挙手の礼をする。息子さんも驚きながらも挙手の礼を返す。悲しいけれども、笑いたくなる最後の別れ、と書かれている城山さんはそのシーンを思い出すたびに、容子さんの最後にふさわしいフィナーレだったと思う。

別の一冊『どうせ、あちらへは手ぶらで行く』は城山さんが亡くなったあと発見された9冊の手帳の内容を整理したもの。

個人情報保護法に反対の立場の城山さんが、何度かテレビに出ていたことを思い出す。最愛の奥さんを亡くし、ご自身も体調を崩している状態で、生き残った特攻隊員の使命感からあのような行動を取られていたことを知る。

癌を告知され、余命を告げられて時、「残された時間を有意義に過ごす」などと、書いてある本をよく見かけるが、有意義な時間の過ごし方なんていうものは、われわれ凡人にはどう過ごしていいのか、はたと迷ってしまう。偏凡な日常を平凡に生きることでいいのじゃないだろうか。これまでよりは少しは物事をよく見て、ほんの少しよく考えて、食事や家族との時間を、これが大事な時間なんだとちょっと意識的に感じ取って過ごす。そんなことしかできそうにないし、それでいいのだと思う。やりたいことを精一杯にやる。死に対峙する妙案は、案外そんなところにあるはずだ。

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2009年10月29日 (木)

若林暢チャリティーコンサート

大田文化の森で開催された『若林暢チャリティーコンサート』に行ってきた。アフガニスタンで女性のための『希望の学校』を運営しているNGO等への募金活動のため、大田区在住の若林さんが賛同してのコンサート。

ちょうど昨日の新聞でもカブールの国連宿泊施設への襲撃によって12人が死亡したと伝えられていた。戦火によって夫を失った女性たちが、物乞いや子供の労働に頼って生活をしている。そんな彼女たちに教育の機会を与えようと、日本在住のアフガニスタン人、スルタニさんらが活動している。

コンサートはベルリンフィルの弦楽メンバーにピアニストのアルバート・ロトさんを加えて、曲目はシューベルトのピアノ五重奏曲変ホ長調作品44、ブラームスのピアノ四重奏曲ト短調作品25。チェリストのクリストフ・イーゲルブリンクさんが楽譜を忘れて登壇し、開演が30分ほど遅くなるというハプニングもあった。

ベルリンフィルのチェリストの演奏を間近で観察できる機会は滅多にないと、最前列に席を取って、もっぱらチェロの指使いやボーイングを注視していたが、ppで演奏するときには右手の中指を弓から離して弾いていた。ときどき左手の位置を確認してから弾き始めていることが印象に残った。プロでもやはり左手の位置は確認しながらでないと心配なのかもしれない。私などはしょっちゅう確認しているが、いくらか安心した。

「平和」を言葉でしか知らないアフガニスタンの人たちに比べて、平和が日常となっている日本で、たかが「がん」のために悩んだり闘ったりしているのが申し訳ないような、戦火の国民から見ると夢物語のような医療費をかけて治療をしているにもかかわらず、満足できないがん難民が多数いることが、おかしなことのように思われてくる。わずかに数十円の抗生物質がないためにバタバタと亡くなっていくアフリカの子供たち。ユネスコの新聞広告を見るたびに怒りがこみ上げてくるが、5分も経つとそんなことはすっかり忘れている自分にも唖然とする。

免疫療法だ、新しい抗がん剤だと、つぎつぎに話題が出てくるが、いったいいくらの治療費がかかるのか。最終的には健康保険が適用になるにしても、その負担は国民全員で負うことになる。一人のがんの治療費に何億円もかけることがまっとうなことだとはとても思えない。ほどほどの治療にして、あとはQOLを維持できる方法を考えた方が、まともな人間の考え方のような気がする。

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2009年10月26日 (月)

「クローズアップ現代」みました。

「クローズアップ現代」の『実現するか "夢"のがんワクチン』を見ました。パンキャンジャパンが出てくるのかと思っていたら、アメリカのパンキャン本部、それにジョンズ・ホプキンズ大学。NHKの取材力に驚きます。予後の悪い癌の筆頭としての膵臓がんに焦点を当て、がんワクチンの将来性、日本での研究が抱えている困難に言及していました。がん患者も政治の問題として、また自分の命が政治に左右されているのだという点をもっとかみしめる必要がありますね。鳥越さんの「やんばダムの4000億円をがん研究費に回せ」も根本的な原因をついていました。短い時間での制約があるとはいえ、30分の番組としては濃い内容でした。

和歌山県立医科大学で、手術不能のすい臓がんと診断され、余命7ヶ月と言われた硲さんの場合、がんワクチンの投与によってQOLを維持して仕事にも従事しながら、2年以上も生きることができました。

しかし、手術不能のがん患者まで完全治癒するような「夢のワクチン」ではないということです。日本すい臓がん学会のステージⅣa、Ⅳbの生存率曲線によれば3年生存している例もあるわけで、がんワクチンを投与された硲さんの例が、これに比較して長期生存例とは言えないのではないでしょうか。

がん患者がもっと声を上げなければ、というのは正論です。ですが、すい臓がん患者には時間がない。あれよあれよという間にどんどん亡くなっていくんです。政治的な運動を思いつく余裕もないのです。ですから、アメリカのパンキャンも膵臓がん患者の遺族が運動を担っているのでしょう。乳がんや子宮頸がん、ある程度時間のあるがんとすい臓がんとは状況も違います。すい臓がんの患者団体すら存在し得ない状況です。

話題を変えて、**********************

安保徹氏がまたまたおかしなことを言っているようです。「NATRONの日記」に書かれているのですが、「現代医療は、がん患者を助けられるのか?」の記事で、

ガンの末期になると、痛みが強くなります。WHOが痛みを取り除く方法などと言って、麻薬(モルヒネ)の使用を推奨しています。私は、それにも反対です。

だと。世界標準のモルヒネを否定するのですね。末期がん患者の苦しみを知っていっているのでしょうか。と思っていたら、

患者さんに「その痛みを死ね気で一週間我慢していてごらん。そうしたら、ガンは見事に消えるよ」と言うんです。

とか、好き勝手なことをいっています。痛みを我慢すればがんが消える? どこかで「転移はがんが治る兆候」とも言っていましたね。ここまで来れば馬鹿を通り越してあきれてしまいます。NATRONさんの「安保氏自身ががんになってみればよいのに」と共感します。

しかし、最近こう思うようになりました。安保氏が存在していることで、役に立つこともある。なぜなら、彼と対談したり、同じ講演に出席していたり、あるいは安保氏を講師として招いているような団体、書籍など、これらは一切信用するに値しないのだということが、内容を見なくても判断できるじゃないか。難しいことを考えなくてもよい。安保氏をどのように評価しているかで相手を判断できる。これは非常に便利なリトマス試験紙であり試薬です。

「安保徹関係者リスト」があれば便利でしょうね。

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2009年10月24日 (土)

中村祐輔教授の新著

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中村教授の新著『がんペプチドワクチン療』が出版されている。10月6日が発 売だが、購入を躊躇しているうちに(価格が・・・)アマゾンでは在庫切れ・入荷待ちになっているようだ。

やはりそれだけワクチン療法ががん患者の期待を集めているということだろう。この本の帯は「どのようにはたらき、どのくらい効くのか? 臨床医とがん患者の疑問に答える」となっているので、ある程度専門的な内容だと思われる。値段からしてそんな感じだ。

毎日新聞の昨日の夕刊(23日付)でも中村教授へのインタビュー記事があった。中村教授がヒトゲノム研究を自分の仕事と決めたいきさつなどが語られている。

大阪大学医学部を卒業後、外科医として大阪府内の病院に勤め、がん患者たちと向き合うことになった。「若い女性でしたが、私の白衣の袖をつかんで、泣いて訴える患者さんもいました。誰もが病気の回復を願っていますが、やはり全員を助けられるわけではなかったんです」。無力感が中村医師を襲った。 こうしたがん患者との出会いがきっかけで、アメリカで5年間、人間の遺伝子暗号と言われるヒトゲノムの研究に没頭した。<中略>
食道がんや、膵臓(すいぞう)がんなどに対して、これまでに行われた臨床研究の結果は、被験者の4割でがんの進行が止まり、2割でがんが小さくなったとの こと。これは、既存の抗がん剤と同程度かそれ以上の効果であり、副作用も抗がん剤より圧倒的に軽い。現在は、より早期のがん患者でも臨床研究を続けてい る。

月曜日の「クローズアップ現代」のがんワクチンの放送予定もある。ワクWshot00036 チン療法への期待が高まっている。

これもがんワクチンに関する情報だが、FDAが「企業向けガイダンス-がん治療用ワクチンのための臨床学的考察」(ドラフト版ガイダンス)を出している。和訳はこちら

がん値ようようワクチンは、従来とは異なる臨床試験方法を採用すべきだという内容。しかし養子免疫療法(NK細胞療法など)とは一線を画す必要もあるとの提言である。

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2009年10月23日 (金)

がん難民コーディネーターとホメオパシー:似非治療に騙されない

『ガンに打ち勝つ患者学』という本をWshot200054以前に紹介したことがある。肺がんになり余命1ヶ月と告げられたグレッグ・アンダーソン氏が、末期癌にもかかわらず10年以上も生存している全米の15000人の人たちに会い、その中からガンに打ち勝つための共通点を書いた本。この本を翻訳したのが藤野邦夫氏だった。

藤野氏はこの本の翻訳を機会に、自らを「がん難民コーディネーター」と 称して、無償のボランティアとしてがん患者と医者との橋渡し役として活躍することになった。彼の活動は2009年1月22日の「報道ステーション」でも『見放された患者と共に闘う "がん難民コーディネーター"』のタイトルで放映された。

この藤野氏は、『がん難民コーディネーター』と、最近に『ガンを恐れず- ガン難民にならない患者学』の2冊の本を出版している。これらの著作の内容は、基本的 には『ガンに打ち勝つ患者学』のWshot200053延長線上にあるものだと言えよう。がんと闘うための基本戦略として、①伝統的な西洋医学を中心にした治療を受ける ②進行したがんに対しては西洋医学では限界があるので、統合医療も求める ③大切なのは自己免疫力を高めることであり、ライフスタイルによる「非特異的免疫療法」を維持する、と紹介している。「非特異的免疫療法」は彼の造語であり、NK細胞活性化免疫療法などの従来に免疫療法に対して、ライフスタイル改善により自己免疫力を高める療法を「非特異的免疫療法」と呼んでいる。

非特異的免疫療法として

  1. 定期的な運動をする
  2. 十分な水分を摂る
  3. 毎日ぬるめの風呂に20分から30分、のんびりとつかる
  4. からだを冷やさないようにする
  5. イメージ療法をする
  6. 医師の予想や検査データに一喜一憂しない
  7. どんな時間帯でも寝るようにするWshot200052_2
  8. 食事を大切にする
  9. 強い抗がん効果がある加熱した野菜を摂る
  10. フルーツ・シード類・ナッツ類を摂る

を述べている。これらの彼の独創といったものではなく、いろいろな人がこれまで書いてきたことを彼なりにまとめたというだけのものである。藤野氏もそう書いている。当然だが、私が手術後に実行してきたがん攻略戦略とも多くの点で合致しているし、書かれていることの一つ一つは概ね合点がいく内容だ。(中には首をひねるようなものもあるが)

しかし、見逃せない点がある。それはホメオパシー療法を勧めている点だ。2点の著作にはホメオパシー療法をはっきりと勧めて書かれているわけではない。『がん難民コーディネーター』に帯津良一氏との対談で、帯津良一氏がホメオパシーで自分の患者を治療したということが述べられているだけである。

ホメオパシー療法は、すでにランセット論文などでもプラシーボ効果程度の効果しかないことがはっきりと示されて、決着済みの問題である。ようするに似非治療の最たるものがホメオパシー療法である。(こちらに詳細に紹介されている)2点の書籍の内容とは何の脈絡もなく、報道ステーションではホメオパシーが奇跡の治療法のようにナレーションされていた。単なる砂糖粒にすぎないレメディーを高価な治療費を取っているのは詐欺に等しいといわざるを得ない。

また、『ガンを恐れず-ガン難民にならない患者学』では、最後の「あとがき」に突然「協和のアガリクス茸仙生露」や第一酵母という会社の「コーボンマーベル」等の健康補助食品を、免疫力を上げる食品として積極的に勧めている。「これらは僕とは利害関係はありません」とは書いてあるだが、これが効果があるという根拠も、治ったという症例も一切説明抜きで、本の内容ともちぐはぐに書いてあるから驚いてしまう。

協和のアガリクス・・・は、「この製品は2003年に、NCI(アメリカ国立癌研究所)で、日本の健康食品素材として始めてガン予防剤開発研究に採択され、前臨床試験の結果、肺がん、大腸がん、乳がんに対する予防効果が認められています。」と書いてあるが、そのような事実がないことがいくつかのブログでも紹介されている。20億円の研究費が付いたということだが、

アガリクス茸については、ある大企業が、ある大学教授と組んで、米国の国立がん研究所(NCI)から20億円も研究予算を取った、ということが、センセーショナルに健康産業関係のニュースで流れたことがあります。

 米国は、あくまで自らの国益にかなうことに対して、予算を出すのが建前ですから、米国事情にくわしい私は、ややおかしいな、と思いました。

 そこで、ワシントンDCを訪問した折に、以前より親しくしている米国国立がん研究所でがん相補・代替医療研究調査局の局長をたずねて、事実かどうか、真偽を、直接、あちらのVIPにたずねてみました。

 「20億円もの予算が出たのなら、まっさきに、そういう情報は私のところに来るはずだけど、聞いたことないな。また、米国では、アガリクス茸については、あまり関心をもたれていないのが実情だ。臨床試験に関してなら、必ずこちらに情報が入る。どうも、このプログラムは、予防に関してのものらしいが、それなら、アガリクス茸のがんについての効果についての研究にならないし。20億円もの予算が予防の研究で獲得できるとは思えないな。」

 局長は、はっきり、こういったのでした。それなら、あの日本の健康食品業界のフィーバーは、一体、なんなの?といった感じです。

私が少し調べただけでもこのような記事が出てくる。まして藤野氏は翻訳家であり、英文の検索などお手の物のはず、NCIの該当する論文なり、研究結果なりを載せて説明するべきであろう。

ハーネマンがホメオパシー療法など自身の主張をまとめた著作『オルガノン』が出版したのが1810年である。この時代の西洋医学は、病気を治す医学にはほど遠い状態であり、瀉血が唯一の治療法といってもよい状態であった。消毒という概念すらないのである。消毒の概念は、ハンガリー人の医師であるゼンメルワイスが1847年に始めて提唱している。一方我が日本では、すでに戦国時代のころには焼酎で傷口を洗うという知恵を持っていたのだ。経験知識としてアルコール消毒をしていたのである。当時の日本の方がよほど進んでいたのだ。こんな時代のヨーロッパのホメオパシーを、21世紀の日本でありがたく高い金を出している患者が哀れでもあり、滑稽でもある。

ホメオパシーにはこんな逸話がある。ナイチンゲールの書いWshot200051 た『看護覚え書―看護であること・看護でないこと』にあるホメオパシーの薬についてだ。当時の一般大衆の医療知識について、

男性たちはよく、これら健康に関する法則を女性に教えることは賢明ではない、なぜなら彼女たちは自分勝手に薬を使うようになるからであり、そうでなくても現に見かける素人療法には目にあまるものがあるではないか―これは事実である―と主張する。ある有名な医師の話によると、医師の処方としては経験上考えられもしないほどの多量の甘汞が、急病時に、また常備薬として、母親や女家庭教師あるいは看護婦などの手で、子供たちに与えられているということである。また別の医師によれば、そのような女性が身につけている薬の知識といえば甘汞と緩下剤だけである、という。

つまり、素人判断で大量の薬を大人子供の区別もなく与えたり、ロンドンから取り寄せた薬の効用や副作用もろくに知らないのに、善意のつもりで貧しい人々に施したりする”立派なご婦人”がたくさんいたという。
(現在だって、●●が私のガンに効いたから、あなたも飲んでみたら、と勧める御仁はいますね。これを「善意の謀略」といいます。ナイチンゲールの時代並みの知識しか持ち合わせない方がたくさんいるということですが)

で、ナイチンゲールは皮肉っぽく次のように書いている。

ホメオパチー療法は素人女性の素人療法に根本的な改善をもたらした。というのは、その用薬法はまことに良く出来ており、かつその投薬には比較的害が少ないからである。その「丸薬」は、どうしても善行を施して満足したい人たちが必要とする一粒の愚行なのであろう。というわけで、どうしても他人に薬を与えたいという女性には、ホメオパチーの薬を与えさせるとよい。さしたる害とはならないであろう。

毒にも薬にもならないものだから、素人に与えても安心だというわけである。帯津良一先生や藤野邦夫氏よりもナイチンゲールの方がよほど科学的な考え方をしているということだ。

もちろん、藤野氏も活動を善意で始めたことには違いないと思う。ある強烈な経験=自分の癌が治ったという経験が、善意から、多くの人にもこのことを知らせたい、と考えることはよくあることに違いない。がんの患者学研究所の川竹氏もそうした一人だろう。しかし、善意も、組織を作って運営をしていくうちに変わってくる。善意だけでは組織と運動は維持できない。そしていつの間にか、最初の目的とはなんだか違うようになってくることもよくある話しだ。

「がん患者のあきらめない診察室」の「臨床医のひとり言」では、藤野氏に公開討論を申し込んだり、批判の文章がアップされている。こちらも一読の価値有り。

今朝の食卓にレンコンが出てきた。「テレビで新型インフルエンザに蓮根が効くといっていたわ」と妻が言う。別にそうだから出したわけではなく、我が家では朝によく出されるというだけのことだが、蓮根が八百屋で品切れ状態だったそうだ。ホメオパシーが新型インフルエンザに効くというニュースか番組かもあるらしい。私は知らないが。

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