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2008年1月

2008年1月31日 (木)

大塚製薬に治療用ペプチドワクチン開発・製造・販売権を供与

オンコセラピー・サイエンス社が、大塚製薬と膵臓がんを対象とした治療用ペプチドワクチンの独占的な開発・製造・販売権を供与することで合意し、本日、契約を締結したと発表しました。

これにより、大塚製薬は「今回の契約の締結により大塚製薬は、7種のがん関連遺伝子に由来する治療用ペプチドワクチンに関して、全世界における膵臓がんを対象とした独占的な開発・製造・販売権をOTS社より取得しました。」とのこと。両社の株価が急上昇しているようです。

近く臨床試験が始まるようですが、膵臓癌の患者としては、このワクチンがいつ保険適用になるのか、効果はどの程度あるのかが気になるところですが、詳細な情報を入手することができません。


オンコセラピー・サイエンス、大塚製薬に治療用ペプチドワクチン開発・製造・販売権を供与

大塚製薬株式会社とのペプチドワクチン開発・製造・販売権供与に関する契約締結のお知らせ

当社と大塚製薬株式会社(以下、大塚製薬、本社東京都千代田区、代表取締役社長樋口達夫)は、新たに、膵臓癌を対象とした治療用ペプチドワクチンの独占的な開発・製造・販売権を大塚製薬に供与することで合意し、本日、契約を締結いたしました。

(合意の内容) 1.当社は、7種の癌関連遺伝子に由来する治療用ペプチドワクチンに関して、全世界における膵臓癌を対象とした独占的な開発・製造・販売権を大塚製薬に供与する。なお、1種の癌関連遺伝子に由来する治療用ペプチドワクチンについては、対象国として日本は除く。 2.当社と大塚製薬は、共同で開発を行い、両社が合意した場合には、当社が製造の全部又は一部を担うこともありうる。 3.当社は、本契約締結に伴うアップフロント・フィーをはじめ、開発協力金、マイルストーン及び上市後のロイヤリティーを大塚製薬から受け取る。

当社は、東京大学医科学研究所との共同研究による各種腫瘍における遺伝子発現に関する情報をもとに、癌の発生・進行に重要な役割を持つ癌関連遺伝子 の同定および機能解析を実施しております。それらの情報をもとに創薬に適するタンパクを選択し、それに対する特異的免疫能を高める癌ペプチドワクチンの研 究を実施し多数のペプチドワクチンを同定しております。大塚製薬は、今回の契約に基づき、癌関連遺伝子由来の治療用ペプチドワクチンについて、膵臓癌を対 象にした開発・製造・販売を行います。

なお、本件における通期業績予想への影響につきましては、本日発表致しました「業績予想の修正に関するお知らせ」にて開示しております。

以 上

2008年1月27日 (日)

がん治療「免疫細胞療法」 神大病院、実用化へ研究

神戸大学医学部付属病院が、「免疫細胞療法」の臨床研究を近く始めると報道されました。2年間かけてどの癌に効果的かを臨床研究するそうです。すい臓癌も対象になっています。


【記事全文です】

神戸大学医学部付属病院(神戸市中央区)が、がん患者の血液から採取したリンパ球などの免疫細胞を培養して体内に戻し、がん細胞を攻撃する「免疫細 胞療法」の臨床研究を近く始めることが、二十七日までに分かった。同療法は副作用は少ないが、保険適用外の上、どのがんに効くかなどデータが乏しいのが実 情。同病院はまず、試験管で患者のがん細胞を使って効果を検証し、二年後をめどに実用化を目指す。

主な研究対象となるのは、胃▽大腸▽膵臓(すいぞう)▽胆のう・胆管▽肺▽中皮腫▽卵巣▽腎臓▽皮膚(悪性メラノーマ)-の九部位で、がん性の胸膜炎か腹膜炎がある進行がん。

今回使うのは細胞傷害性Tリンパ球(CTL)。患者の血液からリンパ球と樹状細胞を採取し、増殖しないよう処置をしたがん細胞を樹状細胞に融合。さ らにリンパ球と混合培養すると、その中のTリンパ球が活性化し、特定のがん抗原を認識できる攻撃力が高いCTLになる。このCTLを取り出し、試験管でが ん細胞と闘わせ、がん細胞が死滅するかなどの効果を検証する。

また、樹状細胞は患者本人だけでなく、血液型が一致する二親等以内の人からも採取して効果を比較。同大のマウス実験では、子の樹状細胞の方がCTLが活性化されたといい、人間でも同様の結果が予想される。

研究は患者や家族から血液五〇ccを二回取り、患者の胸水や腹水からがん細胞を採取する。一週間に患者一人のペースで行い、二年間で百人分のデータを集める。

がんの部位を限定したり、効果を十分に検証したりせず治療を実施する医療機関はあるが、同病院はがんの対象部位を広げて治療前に検証し、有効性が高い部位や腫(しゅ)瘍(よう)の性質などが分かり次第、それらに絞って患者への治療に進む。

研究には十診療科が参加。研究責任者の食道胃腸外科の神垣隆講師は「研究を成功させ、患者にとって適切かどうか見極めた上で、免疫細胞療法を提供できるようにしたい」と話している。(神戸新聞より)

2008年1月23日 (水)

命の授業、「余命1年半」の渡辺さん死去

今日は東京には珍しく朝から雪。

昨日は癌研でジェムザールの投与。 点滴の投与中から既に吐き気・寒気がしてきた。帰宅してそのまま布団にもぐり、夕食まで寝たら少しは楽になった。


「いのちの授業」最期まで、末期がんの渡部成俊さん死去

末期がんで余命宣告を受けながら、各地の小中学校で子どもたちに命の大切さを訴える「いのちの授業」を続けてきた東京・江戸川区の婦人服プレス加工業、渡部成俊(しげとし)さん(62)が13日、亡くなり、17日午前、地元斎場で告別式が行われた。

渡部さんは2005年6月、膵臓(すいぞう)がんが肺に転移し、医師から「余命1年半」と告げられた。自殺も頭をよぎったというが、各地の学校で子どもたちに「命の重さ」を伝える授業が行われていることを新聞記事で知り、思いとどまった。

地元の区教育委員会に申し出て小中学校を回り始め、自らの病気を語った。訪れた学校は79校、子どもたちから届いた感想文は2万通を超えた。

昨年7月には、回想録「そんな軽い命なら私にください」(大和書房)を出版。「次は、子どもたちからの感想文集を出版したい」と夢見ていたが、昨年末から病状が悪化し、墨田区内の病院に入院していた。

告別式には、渡部さんの授業を受けた小中学生から「勇気と力をありがとう」などの追悼文が届けられ、参列者の涙を誘っていた。 (2008年1月17日14時55分  読売新聞)

2008年1月17日 (木)

北欧はここまでやる。

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保守系経済紙がここまでやる!

週刊東洋経済の1/12号、先週の特集記事「北欧はここまでやる。格差なき成長は可能だ!」が面白い。⇒目次はここ

医療、年金、介護問題など、日本は今、社会保障にかかわる様々な難問に直面している。その背景にあるのは、社会の活力低 下。つまり少子高齢化と格差社会の出現だ。OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本は平均より半分以下の収入しかない国民の割合(貧困率)が、先進 諸国の中でアメリカに次ぐワースト2位だ。「一億総中流」の時代はとうの昔に終わってしまった。

これなどは13日のブログで紹 介した「クロードアップ現在 2008年 新マネー潮流」でも言われていたことだが、日本の「中流」は崩壊しつつある。規制緩和と格差社会を強引に推し進 めている日本は新自由主義こそこれからの望ましい体制だということで、自公政府も民主党も同じ考えだが、本当に格差社会でなければ成長はできないのか?と いう問題に、北欧に現地取材陣を派遣して魅力的な特集記事としている。

日本だけではない。市場経済を重視して規制緩和を求める「新自由主義」が世界に成長と繁栄をもたらす一方、貧富の格差は世 界的な課題になりつつある。1990年代終わりから「第3の道」を標模し、新自由主義と福祉政策を融合させようとした英国は、確かに福祉政策で一定の成果 を上げた。

だが、その水準は決して高くない。世界中が福祉政策とどう向き合うか、模索を続けているのだ。 経済成長を望むなら、〝平等″は犠牲にしなければならないのか。 95年から2006年までの1人当たりGDP伸び率と、平等性を図る指数であるジニ計数との相関を調べると、興味深い事実が浮かび上がる。GDPの高い伸 びを示しているのは、むしろ所得の平等性が高い国々(ジニ指数の低い国)が多いのだ。少なくとも、ここからは成長と平等がトレードオフの関係にあるとはい えない。やはり、健全な中間層の存在こそが、経済社会を成立させる前提ではないのか。 バブル崩壊からまもない93年、日本の1人当たりGDPは世界トップに君臨していた。しかし06年は15位へ沈んだ。その13年の間に、日本は1人当たり GDPを1.7%ほど減らしている(ドル換算ベース)。

逆にその間、豊かになった国がいくつかある。 まず、経済開放が進んだ国々。この中には中国やインド、東欧諸国などが含まれる。

そして特筆すべきは、OECD加盟国(新規加盟を除く24ヶ国ベース)の 中にも、過去13年に所得を「倍増」させた国があることだ。アイルランド3.66倍、ノルウェー2.64倍など11ヶ国。高度経済成長時代、日本が実現し た所得倍増よりはペースが遅いものの、成熟社会の中でも所得倍増を果たす国が少なくない。 そのような国は、英国を含めて福福祉政策に積極的な国が多い。なかでも目立つのが、北欧諸国の躍進ぶりだ。ノルウェーのほかにも、フィンランド2.31 倍、デンマークー1.87倍、スウェーデン1.83倍。いずれも一人当たりGDPを大きく伸ばしている。

そして40ページの特集記事はもはや新自由主義に未来はないと警鐘を鳴らしている。

北欧諸国は、高福祉・高負担の国として知られる。福祉政策は充実しているが、他方で国民の税負担も高い。たとえば、ス ウェーデン。同国の国民負担率(税金と社会保障費のGDPに占める割合)は70%を超える(日本は07年度見込み39.7%)。消費税率は25%と先進国 で最高だ。  それでもなぜ経済成長が可能なのか。

北欧諸国は輸出比率が高く、世界的な好景気、特にEU域内の好調に支えられた面は大きい。しかし元スウェーデン大使 の藤井威・みずほコーポレート銀行顧問は、福祉国家の持つ産業構造に注目する。  

国内の総生産は総支出(需要)とバランスする。高齢化が進む成熟社会では、福祉産業に対する需要は大きい。一方でスウェーデンの社会保障支出の総額は 8556億クローナ(1クローナ=17円。約14.5兆円)、GDP比で32%に及ぶ。就業者の割合を見ても、福祉産業を含めた「対地域・社会・個人サー ビス」は38.3%(04年、日本は22.1%)。つまり、産業構造が国内の需要と一致しやすい構造になっているのだ。

北欧の4カ国のことはもっとマスコミも紹介したほうがよい。

年金をとるか消費税か、あるいは痛みを伴う改革しかないような二者択一の、アメリカ一辺 倒しか見えないような論調は、少しは考え直したほうがよい。

豊かな中流層がいてこそ「発展」が保証できるのだと、この記事は正しく見抜いている。

朝日新聞 やアエラではなく、保守系経済紙がこんな特集を組むほどに「格差社会」に対する庶民の不満は大きいし、解決方法を見いだせないでいるのだ。その他のマスコ ミも追随してほしいものだ。

「北欧はここまでやる。格差なき成長は可能だ!」のPDF

2008年1月16日 (水)

ニュース 膵がん手術後の経過観察

「膵がん手術後の経過観察」という記事が1月9日の産経新聞「がん電話相談」に載っていたそうです。

私の担当医である癌研有明病院の猪狩功遺(たかあき)先生(消化器内科副部長)が回答していました。

「膵がんは、2~3年以内に再発することが多いのですが、それまでの期間を遅らせるのが抗がん剤です。」と回答されていますが、私の今投与している ジェムザールも「再発を遅らせる」効果しかないということでしょうね。医学的には5年間再発しなければ「治癒」ということでしょうが、患者の気持ちとして は別の病気で死ぬことが「完治」という受け止めをしてしまいます。


Q 45歳の女性です。2年前、体の調子が悪いのでCT検査を受けたところ、膵臓(すいぞう)と肝臓にカゲがあり、膵がんと診断されました。肝臓に 転移があったため、術前化学療法としてジェムザールとオキサリプラチンで6カ月間治療し、肝臓の転移が消えたので、膵体尾部と脾臓(ひぞう)を摘出しまし た。手術後もジェムザールとオキサリプラチンの化学療法を6カ月行いました。現在血液検査とMRIで経過をみています。今後はどのような検査や治療を受け たらよいのでしょうか。

 A 手術後の経過観察は、肝臓やリンパ節への転移には、通常CT検査でフォローアップします。あなたは造影剤(ヨード)のアレルギーがあるそうですから、CT検査は受けられないので、4カ月ごとに血液検査とMRIを行っているとのことです。

 今後は、肝臓はMRIや腹部超音波検査で、肺は造影剤を使わないCTで、全身は必要に応じてPET検査を受けてください。再発した場合は、手術は できませんので抗がん剤の治療になります。膵がんは、2~3年以内に再発することが多いのですが、それまでの期間を遅らせるのが抗がん剤です。一度使用し て効果のない薬は使えませんので、TS-1を使うことになります。TS-1は副作用の比較的少ない経口の薬です。膵がんには、今のところジェムザールと TS-1しか認可されていません。

 Q 血糖値が上がっているのですが、これからの生活で気を付けなければいけないことは。

 A 手術後に糖尿病が出現することはよくあります。経口薬かインスリンでコントロールできますが、適度な運動も必要です。手術後2~3年は間隔を空けずに検査をしっかり受けてください。

2008年1月15日 (火)

ブリューゲルの絵

5068f 妻と娘の買物に付きあって車で送ったついでに、そごう美術館で開催中の「プラハ国立美術館展=ルーベンスとブリューゲルの時代」を見た。

ブリューゲルの細密画ともいえる作品に興味を持つようになったのは、中野孝次の「ブリューゲルへの旅」(文春文庫)を何年か前に読んでからだと思 う。「どの絵もいくら見ていてもあきなかった。ふしぎにしんとと静謐な世界に誘うものがそこにはあって、静かな声で、ここがお前の帰っていくべき場所だと 語りかけてくるようであった。・・・」と中野孝次が共鳴した「雪中の狩人」はなかったが、ブリューゲル一族の同じ題材での作品があった。

入場券にも印刷されていた「雪中の東方三賢王の礼拝」があった。東方三賢王とは、新訳聖書に出てくるベツレヘムで、イエスの生誕を祝い3人の賢王が お祈りをする話である。この主題の宗教画は腐るほどあるが、ブリューゲルはこの三賢王の礼拝をなぜかベツレヘムでなく、彼の郷土フランドル地方に場面を設 定して描いている。彼の絵は素朴で単純で、ただ北国の粉雪の舞い落ちる冬の日の憂愁を帯びた日常を白い雪と茶褐色で描いているだけである。薪を束ねたり氷 を割ったり、雪道を前かがみで急ぎ足で雪道を急いでいる村人たちに日常生活が画面のほとんどを占めている。画面からはみ出してこぼれんばかりに一軒の藁屋 があり、そこに生まれたばかりのイエスを抱いたマリアがいる。そばに三賢王のうち二人が跪いている。あの人類史上の重大な出来事が、フランドル(英語なら フランダース)の寒村で誰にも気づかずに起こっているのだ。金ぴか衣装も光輪も何一つなく、ただ無関心な村人の日常生活の中の出来事として描かれている。

ブリューゲルにとっては、人間の愚かしさ、貪欲、愚かさ、狡猾さもひっくるめた「日常」こそが描こうとした対象だったのだと思う。彼はそこにこそ人生の価値を見出していたのだろう。

83o83x838b82cc9383 「バベルの塔」は素晴らしいまでの中世都市の俯瞰図の真ん中にデンと異様な物体がある。画家が現場監督でもあったかのように、さまざまな建設道具ま でが精密に描かれているが、建設途中のバベルの塔は、何故か崩壊の運命を予感させる。人間の技術や科学、そうした物に何の価値があるのか? この愚かしい 生を愚直に生きることが最大の生ではないのか。成長と発展を目的に築いてきた近代が、人類に本当の幸福をもたらすはずがないではないかと、ブリューゲルが 言っているように思えるが、どうだろうか。

マネーが徘徊する新自由主義経済も、実はバベルの塔なのかもしれない。

2008年1月13日 (日)

「クロードアップ現在」2008年 新マネー潮流

NHKの「クロードアップ現在 2008年 新マネー潮流」を見た。7日に放送されたが見逃したので、12日のBS2での再放送である。こういう良 質な番組があるから、NHKの受信料を払い続けようという気になる。原油が100ドルになり、株が下がり、物価が上がり、ワーキングプアが増える、こうし た経済の根本的原因をずばりと突いた「生きた経済学の教科書」ともいえる番組である。番組の内容を私流に整理すると次のようになろうか。

  • アメリカの借金経済(例:住宅を担保にしてローンを組み、それで消費を拡大してきた)によって世界中に基軸通貨としてのドルを垂れ流してきた。
  • これによって、これまでの世界経済をけん引してきた。
  • ローンなどの債権を「証券化」することによってリスクを分散してきた。高度な「金融工学」を駆使して複雑な証券が世界中にばらまかれている。
  • サブプライムローン問題の本質は、誰にもリスクの総額が分からないという点にある。この証券化された再建には「市場がない」。つまりは損失の評価も証券会社・銀行任せである。
  • 「証券化」されているのはサブプライムローンだけではない。あらゆる債権が証券化されて世界市場で取引されている。
  • 新自由主義経済の破綻を象徴した出来事だ。

そして、1990年には世界のGDPの約1.7倍の規模だった世界のマネー(金融資産)が、2006年には約3.2倍の約150兆ドルに 積み上がった。世界の貿易に必要なドルはせいぜい10兆ドル程度だろう。その15倍のドルが市場に流通し、その多くは実体経済の必要からではなく、資産を 増やす目的でうごめいているのだ。だから、株で儲けが出ないとみるや原油や穀物に流れる。原油や穀物が必要なわけではない。将来の値上がりを見込んで何% かの利益を得ようとするわけである。

番組に出演した二人のパネリスト、水野和夫氏(三菱UFJ証券チーフエコノミスト)と榊原英資氏(早稲田大学教授、元大蔵省財務官)がともに述べていたのは、新自由主義経済の破綻だ ということだ。「市場にすべてを任せておけばうまくいく」「規制緩和万能」と言ってきた結果が現在の世界経済の失速である。サブプライムローンの損失を抱 えたメリルリンチ・シティ・モルガンらの「ハゲタカ・ファンド」に数千ドル単位の資金を注入して救ったのは、皮肉にもオイルマネーや中国マネーなどの政府 系ファンドであった。この資金がなければこれらのファンドは倒産していたはずである。二人とも「「マネーに対する規制が必要だ」と強調していたのは当然で ある。このままでは世界は行き詰る。一番の被害者は金融資産を持たない庶民であり、発展途上国である。原油・穀物の値上がりなど、負の遺産は力の弱い者に 集中される。

新自由主義経済の破綻が誰の目にも明らかになってきたのが今年の年初からの特徴であり、その兆候が一層明らかになる年となるに違いない。


しかしである。こうした見通しはずいぶん前に経済学者からではなく、ファンタジー作家のミヒャエル・エンデによって警鐘が鳴らされてきたことだ。 「モモ」や「果てしない物語」の作者であるミヒャエル・エンデは経済やお金の問題についても鋭い考察をしてきた作家である。「モモ」に登場する「灰色の男 たち」や「果てしない物語」の「虚無」は、ファンタジーを通してエンデの思想をつたえているのだ。

「モモ」の翻訳者である子安美知子氏が、「モモを読む」のなかで次のようなエンデの話を紹介している。

「キリストが生まれた事を喜んだ父ヤコブが1マルクを貯金した。年5%の複利で預けたとしたら、西暦2000年にはいくらになるか?何と、太陽4個 分もの金塊が手に入るというのです。一方、2000年間1日8時間働いて得られるのは金の延べ棒一本分になります。」エンデはこうして「金利」の欺瞞性を 暴露し「複利で増え続ける」ことの荒唐無稽さを突いているのです。

エンデの話はたった1マルクのことでしたが、「クロードアップ現在」の番組で紹介されたのは、150兆ドルの資金が、年率5%の利益を求めて世界を 徘徊しているということです。こんな荒唐無稽な「うまい話」が永遠に続くはずがないのは子供にもわかる道理ではないでしょうか。

エンデは言います。「この大きな差額の勘定書は、いったいだれが払っているのか」と。資本主義経済システムが続きうる条件には、「植民地が必要だっ たこと」を、彼は真っ先に挙げます。搾取するには搾取される対象、利殖を生むには払う対象がいるというのが、エンデの持論です。植民地がなくなった現在、 負の勘定書きを押し付けられる(=搾取される)のは、自国内の貧困層であり、発展途上国の国民であり、自然であり、地下資源であり、穀物や原油です。さら には将来の水不足を見通して水資源・地下水の買い占めすら進んでいるといいます。

年利5%で資産が増え続けるためには搾取される貧困層が必要なのです。これが我が国でワーキングプアが増え、年収300万円(今では150万円ともいわれている)層が増えてきた根本原因です。

20世紀の帝国主義は軍事力を背景にして他国を従わせてきました。アメリカは9.11以降もその考えを一層露骨にしてきましたが、そのアメリカの中 枢部をオイルマネー・中国マネーなどの政治的意図をもった政府系ファンドによって「爆撃」されたということです。21世紀の世界が大きく変わりつつありま す。

2008年1月10日 (木)

ちんどん

500d9 本年最初の抗がん剤治療。年初だから病院が結構込んでいるかと思ったが、予想に反して意外と空いていた。

一日中吐き気がして気分が悪い。寝てばかり。初期のころは抗がん剤を投与してもその足で職場に行ったのだが、最近はとてもその気になれない。


今日の新聞に高校時代の友人の近況が載っていた。「ちんどん」である。「チンドン屋」 は請負広告業であるが、その歴史は古い。ルーツは江戸中期の「餅売」と言われており、大道芸の一種である。「ちんどん」はそれを趣味として行っているグ ループで、今では全国にあり、アマチュア大会も開催されているそうである。彼らの活動を紹介した新聞記事を見て懐かしくないrり電話した。しかし電話の向 こうからは、「公共事業が減って、3割も減収だ。社員の給与の下げざるをえないよ」と悲痛な声。彼は土建業の社長である。「小泉と竹中に殺される」とも。

今年は4年ごとのオリンピックの年に合わせての同窓会の年だ。彼らにも会えることを楽しみにしている。

2008年1月 4日 (金)

年末年始は読書三昧

幼年期の終わり (光文社古典新訳文庫)

20歳頃かあるいはもう少し経って24歳頃か、カントの「純粋理性批判」を読もうとしたことがある。結論からいえば、さっぱり頭に残らなかった。というよりは頭に入ってこなかったというほうが正確かもしれない。自分はこうした哲学的知性を理解できるような脳みそを持ち合わせていないのだと、その時悟ったものだ。

しかしこれはいささか早計な悟りだった。というのは、私の脳みその出来が悪いかったのではなくて、カントの訳が悪かったのかもしれないと思えるから だ。哲学者が哲学書を翻訳すると、厳密さにこだわるあまり、難しい言い回しになるのは容易に想像できる。というのは、年末に池内紀訳の「カント・永遠平和のために」(綜合社)を読んで、その分かりやすい翻訳に引き込まれたからだ。

永遠平和のために

その翻訳を読んで、210年前の老哲学者カントの、やむにやまれずに書いた平和論が、今日の世界にも通用することに驚きを感じる。

「いかなる国も、よその国の体制や政治に、武力でもって干渉してはならない」

イラクに軍隊を派遣したブッショは、カントを読んでいないに違いない。『クリントンは下半身に問題があったが、ブッシュは上半身に問題がある』と揶揄されているブッシュのことだ、読むはずもないか?。

「戦争状態とは、武力によって正義を主張するという悲しむべき非常手段にすぎない。」

金正日もカントを読んでいないに違いない。

「行動派を自称する政治家は、過ちを犯して国民を絶望の淵に追いやっても、責任は転嫁する。」

小泉純一郎も安倍晋三もカントを読んでいないに違いない。

「戦争それ自体は、取り立てて特殊な動因を必要としない。名誉心に鼓舞されて戦争は起きる。」

『亡国のイージス』のファンであるという石破茂・現防衛大臣は、高価なおもちゃをあてがわれて「名誉心」を起こしかねない。もちろんカントなんか読んではいないだろう。用心・用心

カントの「永遠平和のために」の理念が今は「国連」となり、日本においては「憲法第9条」として結実している。クラークは人類の未来を哲学し、カントは人類の平和を哲学した。

2008年、世界が大きく変貌しようとしている。ネパールが王政を廃止して日本は世界唯一の君主制国家になった。日本の一人当たりGDPはOECD30か国中世界18位に転落した。

加藤哲郎氏がWebで紹介しているが、『アメリカの投資顧問会社ゴールドマン・サックス社の長期見通し「Dreaming with BRICs: The Path to 2050(BRICsについての大胆な予測:2050年への道程)」と 題する調査レポートによれば、「ブラジル、ロシア、インド、中国、この四カ国GDPが今後40年間でG6(日米英独仏伊)のGDPを凌駕する」「2050 年のGDPは、1位中国44兆4530億ドル、2位米国35兆1650億ドル、3位インド27兆8030億ドル、大きく遅れて4位日本6兆6730億ド ル、5位ブラジル6兆740億ドル、6位ロシア5兆8700億ドル、7位英国3兆7820億ドル、8位ドイツ3兆6030億ドルの順になる」という予測』 を紹介している。中国・インド、その他のアジア諸国・ラテンアメリカ諸国の台頭がすさまじい。いつまでもアメリカ一辺倒の思考から抜け出せない日本に未来 はないだろう。

カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

「永遠平和のために」は光文社の古典新訳文庫にも収められている。こちらは中山元の新訳である。古典を新しい訳で見直そうという試みが続いているようだ。加島祥造が「老子」をまったく新しく『自由詩』とも言えるような新訳で出したことが一番印象に残っている。そして光文社の新訳古典文庫には読んでみたい古典がたくさん並んでいる。この中から正月休みにはアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」と「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。後者はまだ2巻しか手に入れていないが・・・。 レーニンの「帝国主義論」もどのような訳だろうか。

世界が大きく変貌しようとするとき、人の精神世界においては古典への回帰が起こる。

【追記】「永遠平和のために」には藤原新也・野町和嘉・江成常夫らの写真が収められている。これらの写真がまた良い。

2008年1月 2日 (水)

謹賀新年

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あけましておめでとうございます。

今年もぼちぼち書いていきます。6月の誕生日には60歳になります。自分が還暦を迎えるなんて、まだ実感がありませんね。

元日にはヨドバシでEOS-40Dのボディを買いました。EOS-20Dを2004年10月に購入して以来、約10,000枚の撮影をしていまし た。いろいろな場所で、多くの傑作(自分なりの)を撮ることができたカメラでした。40Dはシャッターも軽快になり液晶も大きくて、撮っていて快適なカメ ラです。ライブビュー機能も重宝します。

キヤノンはだいたい1年半の間隔で新機種を出してきます。10D→20D→30D→40Dとなり、いずれ50D→60Dとなるのでしょうか?

60Dが出るであろう3年後まで、絶対に『生きてやるぞ!』と決意をした新年です。

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