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2008年8月19日 (火)

銀河系と治癒系

非線形科学 (集英社新書 408G)

2月9日のこのブログで『非線形科学』(蔵本由紀著)を紹介しました。本の帯には「生命体から、非生命体まで、森羅万象を形づくる、隠された法則とは?」と書かれていました。

今日のテーマは「森羅万象に通じた法則」があるのなら、それとガンの治癒との関係を考えてみようということです。

フラクタルな性質を例に挙げれば、海岸線や雲、河川と毛細血管の枝分かれパターン、稲妻と壁のひび割れ、銀河団の分布構造、これらが同じフラクタル 性を持っているが、これらはどのような物理的プロセスによって形成されているのか? そこにはまだ人間が知ることのない普遍的メカニズムがあるはずだとい うことを確信させてくれます。
「非線形科学」はマクロの現象を、要素に分解しないでマクロのままとらえようとする科学です。自然はなお奥深く、人類はまだそのほんの一部しか知っていないのでしょう。Koch_curve

フラクタルとは、全体の一部・部分が全体と相似である構造、ということができるのですが、よく知られているのは右のようなコッホ曲線です。

稲妻・ひび割れ、血管、樹木、海岸線、銀河の分布、株価の変動などにフラクタル図形を見ることができます。Cavernodsa

フラクタルな性質を示す自然のパターンはたくさんあり、これまでは単に雑然としていると考えられていたものの中に、多くの秩序が秘められているということが分かりつつあります。自然あるいは宇宙には、まだ人類が知らない広範な諸現象に共有される普遍的メカニズムが存在しているということを示唆しているのです。

カオス図形において現われるファイゲンバウム定数というものがあります。ロジスティック写像などの分岐図において等比級数の公比の逆数δとして定義され、

δ=4.669201609・・・・・・・・・

となることが知られています。この値は無限回の周期倍化分岐を通じてカオスが現われるシナリオを持つ全ての系において共通の値を持つのです。水銀を用いたベルナール対流の実験、発振電気回路と、物理的関係のないモデルに同じ値が現われてくるのです。

光の速度・プランク定数・素電荷など、物理的普遍定数が存在することはよく知られていますが、物理的成り立ちの異なるシステムの間に同じファイゲンバウム定数が存在するということは驚異的なことで、複雑系の世界にはまだ我々人類が知り得ない多くの公理が存在するはずだということを推測させてくれます。人類の到達点はまだ、「幼年期の終わり」(アーサー・C・クラーク)に過ぎないのです。

血管の分岐構造や腸の内壁などはフラクタル構造ですが、それは次のような理由によるものだろうと考えられています。

血管の配置を考えたとき、人体において体積は有限であり、血管が占有する体積は可能な限り小さいことが望ましいわけです。一方、ガス交換等の機能を最大限にするには、血管表面積は可能な限り大きく取れる方が良いのです。
このような理由から、有限の体積の中に無限の表面積を包含できるフラクタル構造(例えばメンガーのスポンジを参照)は非常に合理的かつ効率的であることが解ります。しかも、このような構造を生成するために必要な設計情報も、比較的単純な手続きの再帰的な適用で済まされるので、遺伝情報に占める割合もごく少量で済むものと考えられるのです。

ミクロの世界において合理的だと考えられる構造(フラクタル構造)は、河川の形や銀河系の分布におけるようにマクロにおいても合理的だと推測できます。『上は下の如く、下は上の如く』ということです。ただ、我々人類は、まだその本当の原理・公理を発見できていないのです。

人体における免疫系を考えてみます。遺伝情報を司るDNAは、紫外線や放射線などによる電離作用、環境中の有害物質による損傷などにより、遺伝情報の一部が絶えず壊されています。しかしそれが決定的なダメージならずに、人類が今日まで生き延びているのは、細胞のあるいは2重らせん構造を持つDNAの自己修復機能によるのです。

ナイフで指を切った傷が治っていく過程も、驚異的な仕組みで成り立っています。毛細血管が再生され、皮膚表面の細胞が連携しながら傷口をふさぐようにかさぶたが盛り上がって治っていきます。しかしそのスイッチがどういうメカニズムで始まるのか、正確には分からないことがたくさんあります。

私自身のことをいえば、2000年に直腸がんになり、直腸を切除しています。半年間は人工肛門から排便していましたが、今は自分の肛門から排便ができています。私のは肛門から5センチほどの場所にある腫瘍で、通常なら一生人工肛門になるはずなのですが、当時の主治医の先生が新しい術式を開発したからやってみないかということで、そのおかげで人工肛門にならずにすんでいます。5センチの場所の直腸がんを切除して人工肛門でなくてすんでいるのは日本記録だということでした。半年ごとに定期検査をしていますが、レントゲン写真を見ても全く普通の人と変わらない直腸になっています。つまり、切除した直腸の代わりに大腸が大きく広がって直腸の機能を自己修復して回復しているのです。

このように細胞レベルだけでなく、臓器レベルでも自己修復機能が働いているわけです。

更に上のレベル、人体全体、心の働きを含めた精神系をも統合した自己修復機能があってもおかしくはありません。『上は下の如く、下は上の如く』です。

癒す心、治る力―自発的治癒とはなにか (角川文庫ソフィア)

アンドルー・ワイルは癒す心、治る力』(自発的治癒とはなにかの中で、『治癒系』という考えを提唱しています。人体には次のようなシステム系があるのですが、

  • 運動器系     骨系 - 靱帯系 - 筋系
  • 循環器系     血管系 - リンパ系
  • 神経系        中枢神経系 - 末梢神経系
  • 臓器系        消化器系 - 呼吸器系 - 内分泌器系 - 生殖器系 - 泌尿器系
  • 免疫系
  • 感覚器系     視覚器系 - 聴覚器系 - 嗅覚器系 - 外皮系

ガンに打ち勝つ患者学―末期ガンから生還した1万5000人の経験に学ぶ

免疫系を統合し、身体性・精神性・霊性を含んだものを「治癒系」としてます。サイモントン療法関連の多くの著作(たとえば「がん治癒への道」)でも、治癒に関しては同じような考え方を述べています。柳原和子著の『がん患者学(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)や、末期がんから生還した一万5千人の経験から学ぶ『ガンに打ち勝つ患者学』においても自然治癒力・自己免疫力・自発的治癒力など言い方はさまざまですが、がんサバイバーに共通しているのは「治癒系」の力を信じて生還しているということです。

現代医療は癌を完全には克服できていません。時のアメリカ大統領リチャード・ニクソンが「人類が月に着陸したように、20世紀までにガンを地上から抹殺する」と宣言しましたが、ガン患者は着実に増加しています。

まして膵臓がんは予後の悪い病気です。現代医療だけではせいぜい20%の5年生存率であり、手術の適用ができない場合は更に数字は悪くなります。しかも5年生存率は患者のQOLには無頓着です。5年と1日で死亡しても「生存」であり、ベッドに寝たきりであっても「生存」です。「健康」とは、自分で生活を遂行できて、楽しいこと嬉しいことをたくさん体験することだとすれば、「生存=健康」とは言えません。

治癒系、自然退縮、自然緩解、免疫などについては、分からないことの方が多いのですが、それは人類の到達点がまだその程度だということであり、いずれはもっと分かるようになるのでしょう。しかし、今ガン患者である私どもは、それを待っていることはできません。

分からないけれども、そうした事例があることは確かです。

医師の加藤眞三さんのブログにこんな記事がありました。

 人の寿命はわからないと前章で述べましたが、その最たるものは「がんの自然退縮」です。日本の心身医学の創始者である九州大学の故池見酉次郎教授は、中川博士とともにがんの自然退縮例を研究しました。この研究により池見教授はストレス学説で有名なハンス・セリエ博士のセリエ賞をとられたのです。がんの自然退縮は500から1000例に一例はあると考えられているのだそうです。

 池見教授は、74人のがんの自然退縮がみられた患者さんで、精神生活や生活環境を詳しく分析できた31人をまとめています。31人中23人(74パーセント)に人生観や生き方の大きな変化があったとされています。
その23人の中7人はかねてから人間的な成長度の高い人や真に宗教的な生き方をしてきた人たちであり、がんの告知がきっかけになり、永遠の命へのめざめが起きたそうです。5人は信仰をもっていた人たちの中で、がんを宣告されることによって信仰の対象としていた教祖や神仏に自分のすべてをまかせきるという全託の心境になったとされています。5人は家族からのサポートや周囲の人の温かい思いやりに包まれて主体的な生きがいのある生活へ転換が起きた人であり、6 人は生きがいのある仕事に打ち込んでいった人だそうです。このように、約4分の3の人では、生きがいや生き方に大きな変化 があったときに、がんの自然退縮 があったというのです。 

私の経験でも、その数は多くはありませんが、悪性腫瘍が治療もしないのに退縮した例を2人みています。二人とも宗教的に高い地位にある人で、がんの告知 や治療の説明を受けた後に、それを受け止め、自分自身で積極的な治療は受けないことをきめた人です。池見先生の分類では、実存的転換や宗教的目覚めがあっ た人にあてはまると推察されます。

 

「治癒系」があると信じて、それを利用する

いのちの輝き―フルフォード博士が語る自然治癒力

病院で抗がん剤を投与している、あるいはその治療は終わって今は経過観察という名の「執行猶予」の身である、いろいろな状況の患者にとって「自分ではいま何ができるのだろうか」と考えるのは当然の成り行きでしょう。

私の答えは『自己治癒力を高める』ための方法、生活に切り替える、ということです。それ以外には今の私にできることは無いでしょう。

非線形科学がデカルト以降の要素還元主義を廃して、「全体をあるがままに見る」科学であるのなら、現代医療はいまだデカルト的な人体を臓器の集合とみる要素還元主義のままです。その行き着く先が現在の医療崩壊であり、発展途上国の住民には手の届かなくなった高度医療であり、しかもその高度医療を担っている医者自身が自分のがんすら治せないという『滑稽な』現象です。

一方でワイルやサイモントン、フルフォードらの提唱する治療・治癒への道は非線形科学が目指しているものと同じように思えます。病気・がんを診るのでなく、人間と生活・こころを診るということです。

稲妻と銀河系に同じフラクタル構造があるのなら、DNAと人間の心・精神・からだ全体にも「治癒系」という機能があって不思議ではないと推論できるはずです。

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カール・セーガンのSF小説『コンタクト〈上巻〉 』のラストは、円周率πの計算を続けると、遙かな最後に創造主からのメッセージが暗号として込められているというシーンですが、ファイゲンバウム定数もフラクタル構造も、創造主の知恵・暗号なのかもしれません。人体も宇宙と同じかそれ以上に複雑で千万無量の構造と機能を持っているのです。

東洋医学においてはそれを「気」といい、アンドルー・ワイルが尊敬するフルフォードは「生命場」あるいは「生命エネルギー」というのですが、老子の「タオ」はそれらを統べる宇宙のエネルギーということなのでしょう。

残念ながら「治癒系」が確かに存在するにしても、それをどのように活用すれば100%がんが治るということは言えません。我々はまだその一部に関する知識しか持ち合わせていないのですから、100%これで大丈夫とは当然ならないのです。しかしその治癒に向かう確率を高めるための方法は、数十年間そうした治療を続けてきた人たちが紹介してくれています。 これを利用しない手はありません。(つづく)


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