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2010年1月

2010年1月28日 (木)

進行膵がんにセツキシマブ・ゲムシタビン・オキサリプラチン併用が有効

  局所進行膵癌に対し、2カ月間セツキシマブ・ゲムシタビン・オキサリプラチンを併用し、その後、セツキシマブとカペシタビンの併用および放射線療法を行う治療法において、その有効性と安全性が多施設で行われたフェーズ2試験で確認された。結果は、1月22日から24日まで米オーランドで開催された2010 Gastrointestinal Cancers Symposium(ASCO GI)で、米M.D.アンダーソンがんセンターのC.H.Crane氏が発表した。

 対象は、局所進行膵癌患者69人。51人は切除不能な局所進行膵癌で、18人は切除可能とも不能とも言い難いボーダーライン上の膵癌だった。CTより病変の大きさを判断した。

 平均追跡期間は12.5カ月で、生存期間中央値は18.8カ月だった。1年生存率は67.8%、2年生存率は30.9%、3年生存率は18.5%。全生存期間について、切除不能群とボーダーライン群との間に有意差はなかった(p=0.670)。セツキシマブの有効性との関係が指摘されている有害事象、皮疹の有無による全生存期間の差もなかった(p=0.329)。

 手術可能かどうか、ボーダーライン上にあった膵癌患者のうち7人が完全切除可能となり、2人は生存中、2人は合併症により死亡した。切除を行った7人とそれ以外の患者で全生存期間を調べたところ、こちらも有意差はなかった(p=0.224)。

 放射線療法による部分奏効(PR)は19%、腫瘍の微量縮小(MR)は17%、安定(SD)は45%、進行(PD)は18%であり、57%の患者で何らかの効果が得られた。化学療法に伴う有害事象は、グレード3/4の血液毒性が13%、グレード3/4の消化器毒性が10%、倦怠感が3%、神経毒性が2%などだった。

 Crane氏は、「このレジメンは、有効性と安全性の面から十分忍容性があると思われた。手術を行わずに3年以上にわたり病勢をコントロールできる可能性がある。ゲムシタビンとセツキシマブ、ゲムシタビンとオキサリプラチンを比較する形でのフェーズ3試験を検討している」と結んだ。

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2010年1月27日 (水)

大塚製薬がOTS102ワクチンの製造販売に

がんペプチドワクチンも製造販売元が2社になり、早ければ今年末の保険適用を目指して活発な動きがあるようです。

大塚製薬が膵がんなどで開発中のがんワクチンの国内サブライセンスを獲得

 大塚製薬は1月26日、扶桑薬品工業とがん治療用ワクチンOTS102の日本における製造販売に関する契約を締結したと発表した。今回の契約によって大塚製薬は、扶桑薬品工業からOTS102の日本における製造・販売サブライセンスを受ける。OTS102については、オンコセラピー・サイエンスが日本における独占的な製造・販売権を扶桑薬品工業に供与している。サブライセンスに伴って、OTS102の上市後は大塚製薬と扶桑薬品工業が各々のブランド名で販売し、製造は大塚製薬が行う。OTS102の開発は、オンコセラピー・サイエンスが引き続き行い、大塚製薬と扶桑薬品工業は、開発費用を負担する。

 OTS102は、がん細胞の生存と成長に必要な新生血管の内皮細胞に高発現し、正常組織にはほとんど発現していない血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)たんぱく質の一部から構成される製剤。投与によって新生血管内皮細胞に対する強い免疫反応を誘導し、抗腫瘍効果を発揮する。現在膵がんを対象にフェーズ2/3試験、胆道がんを対象にフェーズ2試験が行われている。

 大塚製薬は、2008年1月にオンコセラピー・サイエンスよりOTS11101を含む膵がんを対象とした治療用ペプチドワクチンの独占的な開発・製造・販売権を取得している。この際にOTS102の膵がんに関する海外の製造・販売権を取得していた。

2010年1月26日 (火)

イレウス

イレウス(腸閉塞)を起こしたようで、昨日は夕方から激しい腹痛、嘔吐に見舞われました。ガンの末期になる場合もあるのですが、私のはたぶん「機能的イレウスとよばれるもので、腸管の気質的な原因がなく、腸管を支配する神経の障害により腸管の運動障害がおこり、腸管内容が停滞するもの」だろうと思います。
膵臓手術後の後遺症で、食後は必ず下痢になるため、毎食前アヘンチンキを服用しています。たぶんアヘンチンキの効き過ぎで、腸の神経が必要以上に鈍感になったのでしょう。

腸の途中から先に食物が行かず、胃のあたりで激しい腹痛が続きました。腹回りも膨張してベルトがきついくらいです。嘔吐も複数回、嘔吐すると少し楽になります。イレウスは緊急手術も必要になるほど怖い症状ですが、原因が予想できたので、タクシーで自宅に帰り、そのままベッドへ。深夜に近くになってやっと大量の便とガスが出ました。おかげで急速に体調も回復。しかし、1日ですっかり疲れました。

これ、世間では「糞詰まり」というのでしょうね。人間は単純化してみれば口と肛門を両端の出入口としたパイプのようなもの。食ったものがきちんと出てくれれば、それが一番の幸せ。人間は「ウンチ製造器」であり「糞袋」です。パイプと考えれば身体の表面も胃腸の表面も外部に接しているわけで、小腸に大量の免疫細胞があるのは、外部と接触するからでしょう。10年前に直腸がんの手術をしたとき、切ったあとの自分の肛門がしっかりするまで、半年の間人工肛門を着けていました。半年後自分の肛門からウンチが出たときの幸福感は、いまでもありありと思い出します。当たり前のことが当たり前にできる、これが一番の幸せです。末期のがん患者に、一番したいことは何ですか、と聞くと、「家に帰りたい。自分の居場所に座って庭の草花を眺めたい」。「気のおけない仲間とおしゃべりがしたい」「デパートで買い物がしたい」。こんな希望が多いのです。今日と違わない明日が来て、何でもない1日が過ぎていく。これが一番の幸せです。

「ウンチ製造器」として「まぁ、こんなものか」と暮らしていれば良いものを、過ぎたる欲が出てくると「4億円の出所は?」などと追求されるようになるのですね。社会的に成功すると「もしかして俺はすばらしい性能のウンチ製造器かも」なんて誤解をすることになる。そりゃ機械にも少しは性能の差がありますよ。しかしたかがウンチ製造器、基本的性能には違いがないわけで、失敗も成功も「たまたま」であり、偶然の要素が大きいことを知らねば。

たまたま―日常に潜む「偶然」を科学する

ビル・ゲイツが世界の長者になったのも、野村監督の楽天が優勝したのも、ハリー・ポッターがこんなに読まれているのも、偶然=たまたまの要素が大きい。能力が5のAチームと9のBチームが対戦したとして、Aチームが連続して勝つ確率は3割はある。

ハリー・ポッターの原稿は9社の出版社からはねられ、グリシャムの『評決のとき』は26社からはねられ、『アンネの日記』は「退屈」「典型的な家族間の口論とつまらない悩みと青臭い感情のわびしい記録」として複数の出版社からはねられている。並外れた内容の小説でも成功するとは限らない。

「並外れた事象に並外れた原因は要らない。」多くの事象がランダムネスに従っているとき、並外れたことが起きるのは珍しいことではない。ヒトの身体もがんも、多くの要因が複雑に関連しているのだから、ことの起こる前に結果を予想するのは難しい。しかし、起きてしまったあとでは、その経過をいちいち言い立てることはできる。天気予報がいい例で、予想に反して今日雨が降ったことを、予報士は「寒冷前線が少し南に移動し、高気圧が北に・・・」などと説明することはできる。しかし、同じ予報士が明後日の天気を正確に言い当てることは難しい。『あと知恵』でランダムな事象を説明することはたやすいのである。

代替医療にも同じことが言える。プロポリスやアガリクスを飲んで治った患者を拾い出すことは簡単である。しかし、私が飲んだ結果を100%性格に保証してくれる人はいない。

逆も言える。食事療法、運動をする、深呼吸や瞑想、身体を温める。これらはいってみれば弱い野球チームのようなものである。しかし、勝つ要素が小さくてもいくつかの要素を粘り強く実行していれば「並外れた事象」が起きることは、決して小さな確率ではないのである。

代替医療をどう考えるか、がん治癒には何が大事かということをランダムネスの考えて説明できる。代替医療を盲目的に信用はしない、しかし、いくつかの方法を実行していれば「並外れた」結果が起きるのは、実は自然界にはありふれているのである。レナード・ムロディナウの『たまたま』を読んでこんなことに思い至ったというわけである。

さらには「プラシーボ効果」も考えなければならないが、別の機会に。

プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬 プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬
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2010年1月25日 (月)

がんペプチドワクチン 150症例登録完了

オンコセラピー・サイエンス社ががんペプチドワクチンの第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験の患者登録を行なっていましたが、このほど予定の150症例を3ヶ月早く登録完了したようです。

                   平成22 年1 月25 日
各 位
            神奈川県川崎市高津区坂戸3 - 2 - 1
           オンコセラピー・サイエンス株式会社
             代表取締役社長 冨田 憲介

          (問い合せ先)取締役管理本部長 山本 和男
              電話番号 044‐820‐8251

膵臓癌に対するOTS102 第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(PEGASUS-PC Study)の患者登録終了のお知らせ

                 記
当社にて実施中の、膵臓癌に対する癌治療用ワクチンOTS102 のゲムシタビン塩酸塩を対照とした二重盲検試験である第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験(PEGASUS-PC Study)は、このたび、プロトコールで規定した150投与症例の登録が終了しましたのでお知らせいたします。これは、予定よりも約3ヶ月早い終了となります。
今後は、半数の症例結果が判明した時点で第三者機関である効果安全性委員会での中間解析(主目的は有効性の確認)が予定されており、この結果も適宜お知らせいたします。               以 上

PEGASUS-PC Study と命名されたこの治験は、東京大学医科学研究所の中村祐輔教授らが開発したがんペプチドワクチンの治験です。予定より早く治験結果が出てくると思われます。期待が高まります。

パンキャン主催の『第1回研究者と話す会【東京大学医科学研究所】』が1月29日に開催されます。中村祐輔教授から直接「がんペプチドワクチン」の効果について説明が聞ける機会です。こちらも期待しています。私も参加申し込みをしています。


2010年1月22日 (金)

代替療法について考える(2)

今日はいつもの糖尿病専門医の内科医院へ。アマリールを処方してもらう。ヘモグロビンA1cは5.6程度で正常値だが、念のため少量を服用し続けている。「不思議だよね。インシュリンがでてるのが」とまた口癖のように仰る。ランゲルハンス島は膵体部、膵尾部に集中していて、私はこの部分を切除しているからインシュリンが不足するはずだということ。しかし、正常に分泌されているのが不思議でならないらしい。「C-ペプチドの量を検査させてください」との提案。インシュリンの前駆物質であるプロインスリンの抗生物質であり、ランゲルハンス島の膵β細胞内で、インシュリンとC-ペプチドに分離されて血中に放出される。どのような役割をしている物質なのか、未だに不明だといわれている。「そんなに不思議なら、先生、私が死んだら解剖してみては」といったら笑っていた。「私は26年間医者をやっているが、あなたのような患者は初めてだよ。」と、元気すぎる膵臓がん患者を目の前にして、正直な感想を漏らした。「膵がんは3年経てば、(完治といわれる)5年は大丈夫だよ」と仰る。あと5ヶ月だ。


代替医療を考えるとき、書籍からの情報に頼るのは危険だ。書店に氾濫している多くの書籍が「バイブル本」というべき内容であり、匿名の体験談やエピソードだけで、その代替医療・サプリメントを勧めているからである。代替医療に関して信頼できる書籍は非常に少ないのが現状だろう。むしろ、インターネットの信頼のおけるサイトの情報をチェックする方が良い。

本日は偶然に補完代替医療に関する重要なウェブでの更新が重なった。

ひとつは、月刊誌『がんサポート』の発行元が制作している「がんサポート情報センター」のサイト。ここに「代替医療」の更新リストがあり、『がんサポート』8月号の代替医療に関する記事がアップされた。内容は、ほとんどのサプリメントに効果はないが、AHCCに肝臓ガンの再発予防効果の可能性がある、という点が目新しい。とは言っても、二重盲検法による試験結果ではなくコホート研究であるから、信頼性は高くはない。サプリメントに関しては新しい情報が多く載せられているようだ。アミノアップ化学(株)が無料でAHCCを提供し、金沢大学などで治験が進んでいる。少なくともこの点だけは勇気ある行動だとアミノアップ化学を評価したい。他のサプリメント業者も、本当に自社の製品に自信があるのなら無償で提供して公的機関による治験を行なうべきだろう。

ふたつめは、「がん情報サイト」PDQ日本語版に新たに「補完代替医療」各論が追加されたとこと。PDQは米国国立がん研究所(NCI)が発信する世界最大のがん情報サイトであり、その日本語版が「がん情報サイト」である。ここに、代替医療の新しいページが追加されている。

ゲルソン療法、コエンザイムQ10、サメ軟骨などの評価が書かれている、なかに「714-X」というものもある。これは昨年12月23日のブログでちょっと紹介した、ガストン・ネサンのトマチッド学説によるがん治療薬のこと。樟脳をリンパ節に注射するという似非医学。

さらに金沢大学におられた大野智医師が東京女子医大特認准教授の肩書きで「週間がん もっといい日 VOL191」に紹介されている。この中で、厚生労働省がん研究助成金による「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」のサイトにリンクがされている。ここには『がんの補完代替医療ガイドブック 第3版』がPDFファイルでダウンロードできる。

補完代替医療に関する情報の集め方として、インターネット上の情報は次のチェックリストで、

■ 誰が運営しているサイトですか?
■ そのウェブサイトは、なにか資格認定を受けていますか?
■ 誰のために、何を目的にしているサイトですか?
■ 特定の商品の販売サイトではありませんか?
■ その情報は事実に基づいていますか?また、その情報源は確かですか?
■ 新しい情報ですか?

書籍についても次のチェックリストでチェックしましょう。

■ 著者は、その分野の専門家ですか?
■ 著者は、その分野について、十分な調査していますか?
■ その書籍は、利害関係のない他の専門家に批評されていますか?
■ 複数の視点・観点で書かれていますか?
■ 参考文献のリストは掲載されていますか?
■ その出版社、著者は、特定の広告主や団体に関係がありませんか?
■ 掲載されている内容は、最新のものですか?

など、がん患者が陥りやすい展、考慮すべき点が書かれている。

代替医療を考えているのなら、先ずこれらのサイトをじっくりと読んでみることだ。なまじ米原万里さんのような読書家・多読家であっても、いかさま代替医療に時間も金も命も持って行かれることになりかねないのは、先日のブログで書いたとおりだ。

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2010年1月18日 (月)

代替療法について考える(1)

がん患者にとって、代替療法は大きな関心事です。なぜか? 理由のひとつは、現在医学の標準治療では治らないがんが多いということです。以前に比べて手術で治るがんが増えてきたとはいえ、再発・遠隔転移したがん、手術不能のがんでは抗がん剤・放射線治療は所詮は延命治療であり、完全治癒を目指すものではないことを、今では多くのがん患者が知るようになったからでしょう。もうひとつには、治療を医者任せにするのではなく、自分にも何かができるはずだと考えるがん患者が増えてきた。その何かとは?自分にできることはと考えていくと、自己免疫力を高めることしかないという結論に行き着き、自己免疫力を高める方法として何らかの代替療法を探すことになるのです。自分の命は自分の管理下に置きたいというのは、人間として当然の要求だと思うのです。

しかし、いわゆる権威のあるサイト、信頼のおけるサイトというところには、自己免疫力を高めることの重要性を説いたものは少ない。もっぽら悪徳がんビジネスが「自己免疫力」を宣伝の道具として使っているわけで、これらと一線を画したいサイトでは触れることが難しいこともあるのでしょう。また、自己免疫力に関してのエビデンスが乏しいのですから、エビデンスの明確でないことを公共的なサイトで紹介することには躊躇することも理解できます。

例えば、がん対策情報センターが「患者必携」という小冊子をすべてのがん患者に配布しようとしており、現在試作版ができあがっています。「患者必携 がんになったら手に取るガイド

「患者必携」の膵臓がんに関するページを見ても、がん患者として何か積極的にできることはというと、ほとんど書かれていない。そこで巷の代替療法・サプリメントに期待する患者が増えることになるのでしょうが、これはまた悪徳がんビジネスの跳梁跋扈している世界です。ところが、そうした情報のどれが怪しいのという情報もほとんどない。従って、いつまで経っても新しいがん患者がこうした業界の餌食になることが繰り返されることになるのです。

打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫)

卵巣癌で亡くなった米原万里さんの『打ちのめされるようなすご 』に(本のタイトルも「すごい」ですが)、「癌治療本を我が身を以て検証」という章があります。週刊文春に亡くなった年の2006年に掲載されたものですが、ここに米原さんが実際に体験された代替療法について、辛辣に書かれています。

金を返すからこう来なくていいと言われたのが2件、自分からもらった薬を段ボール箱に入れて送り返したり、まさに「お笑いがん治療」とでもいうべき内容です。爪をせっせともんだってがんが治るはずがないのに、米原さんでさえ騙されてしまうのですね。これから代替医療に命を預けようかと考えているがん患者にとって、大いに役立つかもしれません。

以後の内容は米原万里さんの著作からの抜粋ですから、営業妨害、名誉毀損と訴えたい方がいたら、あの世の米原万里さんを告訴してください。できないだろうけど。

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癌治療に関する書籍を読みまくり、代替療法と呼ばれる実にさまざまな治療法に挑戦してきたのだ。身を以て、本が提案する治療法を検証してきたとも言える。結果的に抗癌剤治療を受けざるを得なくなったその経緯は、万が一、私に体力気力が戻ったなら、『お笑いガン治療』なる本にまとめてみたいと思うほどに悲喜劇に満ちていた。

活性化自己リンパ球療法

読み進む内に最も惹かれたのは、癌と闘う自分自身の免疫力を高める方法。中でも、免疫の主役である白血球中のリンパ球を、患者の血液から抽出し培養強化して患者の体内に戻す活性化自己リンパ球療法だった。手術、放射線、抗癌剤の三大療法に較べてはるかに身体に優しいのがいい。

星野泰三/水上治著『高速温熱リンパ球療法 ガン治療最後の切り札』(メタモル出版)が勧めるのは、活性化自己リンパ球療法と(癌が熱に弱く、リンパ球は高温で活性化するという特徴を生かした)温熱療法を組み合わせた魅力的な治療法なのだが、健康食品の宣伝販売に熱心すぎて金儲け一辺倒が透けて見える上に、成功例ばかりを列挙しているのが逆にひどく怪しく思えた。著者のもとで治療を受けていた従兄弟が亡くなったのを思い出し、好奇心もあって一応資料を取り寄せてみる。院長である著者の星野が背にするロココ風インテリアに思わず笑ってしまう。

活性化自己リンパ球療法を推奨する多数の本の中にあって、淡々とした叙述に終始する
江川滉二著『がん治療 第四の選択肢』(河出書房新社)は、いかにも学究肌の真摯な探求心、癌患者の苦痛を少しでもやわらげたいという静かな情熱が伝わってきて胸を打つ。

癌の再発予防のために、著者が開設した瀬田クリニック系列の新横浜メディカルクリニックに通うことに決めた。培養されたリンパ球が最大値に達するのが採取後二週間ということで、二週間に一度通院して血液の採取と培養されたリンパ球の静脈への注入を行う。
一時期瀬田クリニックで修業をしていた医師から、実は患者の一〇%を医師が占めていると聞かされた。日本の人口比から考えると突出した数字。医師たち自身が、いかに三大療法を信用していないかを物語っていて可笑しい。

初日、「現在当院で治療中の患者の中で貴方が一番軽症ですね」と励まされる。本書の中でも、この療法は予防的に用いた方が効果的であるはずだと書かれていたのを思い出し、さらに心強くなる。ところが、その日、瀬田から新横浜に出向いていた著者の江川滉二医師が、「できれば、開腹し転移の恐れがある卵巣残部、子官、腹腟内リンパ節、腹膜を全摘し抗癌剤治療を行った(J医大0医師の①バージョン)上で当治療を受けた方がいい」と述べたので、耳を疑った。①バージョンの苦痛と危険を避けたいがためにこの治療を受ける決心をしたというのに。これは、「第四の選択肢」では無かったのか。単なる三大療法を和らげ補佐する副次的療法に過ぎないのか。それにしては、高すぎるのではないか。
私の剣幕に驚いたのか、当面はこの治療法だけで大丈夫でしょうということになった。しかし、私の中で治療法に対する懸念と不安は膨らむ。それは、一年四カ月後の再発によって裏付けられた。少なくとも私には、当療法は予防的効果を全く発揮しなかったことになる。

再発が判明した時点で、J医大のO医師よりも熱心に手術を勧めたのは、新横浜メディカルクリニックのK院長だった。「さもないと三カ月以内に痛みが出てきて歩行困難になる」と脅しさえした。同院のウリである活性化自己リンパ球療法よりも三大療法に対する信頼の方がはるかに強いように見受けた。

サメ軟骨・フローエッセンスなど

お呪いのつもりで、友人の勧めるフローエッセンス(ネイティヴアメリカンに伝わる抗癌効果のあるとかいうハーブテイー)、サメ軟骨、それに『悪性ガンは腸から治せ!』(メタモル出版)が推奨する乳酸菌飲料を服用していた。いずれも藁をも掴みたい癌患者の弱みに付け込んで犯罪的に高価であったが、再発によって全く無効であることを確認できた。近藤誠が前掲書で「一般に患者。家族は、いかがわしいものであればあるほど、大金を支払わされている」と述べているのは至言。

断食療法、食事療法

まず注目したのが、二〇〇五年二月二四日号の読書日記で紹介した『ガンは恐くない』の森下敬一博士の治療法である。その論旨は以下の通り。癌は酸毒化した血液の浄化装置であるから、癌をいくら叩き潰そうとしても、肝心の血液の浄化が行われなければ、再発は防げない。逆に血液が浄化されれば、癌は自然に消滅する。血液の酸毒化を抑制するには、食餌療法が最適である。

早速、森下敬一博士が主宰する、お茶の水クリニックに赴く。二月半ばの恐ろしく寒い朝。古いマンションのワンフロアー、廊下も部屋も高度成長期以前の小学校のように寒い。
血液酸毒化の要因の一つに冷えもあったはずなのに、と思う。予約を取るのも一苦労だったが、待合室は満席。芋を洗うような混み具合の中で、体脂肪率、肺活量、握力、骨密度、内臓、血圧、血液などの検査が行われる。これも、小学校の健康診断を紡彿とさせる。

検査結果をふまえての、森下博士の診察は午後になるので、近くにある、森下食餌療法に則った食堂で昼食をとる。酵素ジュース、豆入り玄米ご飯にごま塩をかけたもの、たくあん、干しぶどう、こんにゃくの白あえ、高野豆腐、お数入りのみそ汁。驚くほど少量。
これをすべて百回以上噛んで食べろと言う。唾液こそが最良の薬であり、食物に含まれる発癌物質も噛むことで消滅するのだ、と。しかし、鮨を百回も噛む気はしないなあと思う。
森下博士の診断。肝臓、腎臓、婦人科系の働きが落ちている。体脂肪率が高すぎるので三分の一に落とすように。 一日に一時間は汗を流し、一週間に一度は半日ほど山歩きをするように。癌は、食餌療法と吸玉療法を徹底してやれば、半年後には完治するだろう。その上で、強化食品なるものと薬草茶を数種処方された。一〇万円を軽くオーバー。帰宅してから、近藤誠医師の至言「いかがわしいものであればあるほど、大金を支払わされている」を思い出し、購入したものを段ボールに詰めて返却した。ただし、森下式食餌療法と運動療法だけは取り入れることにした。

ハイパーサーミア(温熱療法)

さらに注目したのは、癌細胞が熱に弱いことを利用した温熱療法(ハイパーサーミア)。
このテーマで数冊目を通したが、菅原努/畑中正一著『がん・免疫と温熱療法』(岩波クティブ新書)が分かり易くコンパクトにまとまっている。患者が高熱を出すウィルスや細菌に感染した結果、癌が自然消滅した例はかなり昔から医師たちによって観察されて来た。
癌細胞が四二 ℃で死滅するので、体内に出来た癌細胞を選択的に四二~三 ℃に加熱する方法が世界各地で模索されるようになった。体内の患部に正確に熱が到達する電磁波の究明など、多くの難関を乗り越えて著者たちはついにサーモトロンという機材を開発する。

加熱は免疫力を高めるという副産物ももたらすというから、いいことずくめではないか。早速、日本ハイパーサーミア学会のHPにアクセスして、サーモトロンを導入している医療機関を検索する。リストの中から横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター放射線科に電話をすると、現在はやっていないとつれない返事。横浜市立市民病院放射線科に尋ねると、電話口に出た医師が懇切丁寧に説明してくれた。温熱療法はあくまでも部分療法なので他に転移が無いことが確実な場合しか有効でなく、現在は抗癌剤や放射線療法の補助的手段でしかないと。神奈川県内には他に千代田クリニックという個人病院があり、HPを覗くと、ハイパーサーミアにより多数の成果を上げている旨謳っているので予約を入れた。

そこへ、文藝春秋の担当編集者Fから看過できない情報が入る。肺癌を病む作家のKが本書を読み、かなり期待を持って都立駒込病院を訪ねた。応対したKという東大医学部出身の放射線診療科医が、「放射線と温熱療法の当初、併用で効果を高める治療を積極的に推進してきたものの、現在では、温熱療法は害が無いどころか転移の危険があり、自分も実際に転移で患者を失った苦い経験がある。今では全国の主要な病院ではほとんどやっておらず、効果があるとしているのは九州の産業医科大ぐらいだ」と言ったという内容を本書の著者である菅原医師に問い合わせると、同僚の近藤元治医師から次のような回答があった。「K先生がそんなことを言っているとは夢にも思いませんでした。根拠は、温度が上昇すると癌組織の血流が増えるから癌細胞を血液でばらまくと言うものと推測しますが、学問的根拠に欠けています。貴女の心配は無用ですが、ハイパーサーミア学会でも取り上げ議論するよう取りはからいます」

学会の議論の動向など待っていられない身の私は、不安を抱えつつも千代田クリニックを訪問。外科医出身という院長にこの間の論議の内容を伝えると、「放射線科医というのは、診断は他科の医師が行うし、実際の施術は技師が行うものだから、暇すぎて理屈っぽくて過激になり易いのよ」と一笑に付した。心電図や肺のX線検査をした上でサーモトロンを試す。ワンクール八回、保険が利くので、検査費含めて二万円強。治療時間は一時間弱。患部のある箇所の上下両面から液体の入ったマットを当て、これを徐々に温めていく。
二九℃で私は音を上げた。脂肪が熱によって捻転していく痛みに耐えられなくなったのだ。施術後、院長に、部分麻酔を使えないものだろうか、と尋ねると、にわかに顔を歪め、「貴女には向かない治療法だから、もう来るな。払った費用は全額返す」と言われてしまった。病院の事務方によると、患者に治療法について云々されることが我慢ならない性格で、こういうことは度々あるとのこと。

安保徹/福田稔の刺絡療法

当読書日記二〇〇三年一一月二七日号で紹介した『免疫革命』の著者安保徹の著書に目を通すと、『免疫学問答』(河出書房新社)にしても、『体温免疫力』(ナツメ社』にしても、『ガンはは自分で治せる』マキノ出版)にしても、詐欺ではないかと思うほどにあまりにも内容に反復が多く、前作のコピーに少しだけ新味を加えるという造りだ。おそらく出版社が先に刊行された本と寸分違わぬ本を書いて欲しいという依頼の仕方をしているのではないか。好意的に解釈すれば、文学者は同じことを語るのに毎回異なる表現を模索するのに対して、科学者は同じことは同じ表現でしか表現できないのかも知れない。藁をも掴む思いの癌患者に金と時間の空費を強いることになるのだから罪作りである。

ただ、癌の発生を免疫系の仕組みから解釈し、人間には癌を自力で治す力が秘められているとする安保理論そのものは魅力的なのだ。癌患者は例外なく免疫抑制状態にあり、それを解除するだけで癌は自然退縮に向かう。ところが三大療法(手術、抗癌剤、放射線)はいずれも強烈に免疫を抑制するので一時的に癌を縮小できても新たな癌発生の条件を作っている。必要なのは、免疫力の向上。白血球中の顆粒球は交感神経の、リンパ球は副交感神経の支配下にあるので、癌と闘うリンパ球を増やすには、副交感神経が機能するリラックスした生活に転換すべく、①生活習慣を見直し、②癌に対する恐怖ストレスから解放され、③免疫を抑制する治療を受けず、④積極的に副交感神経を刺激する。④については、安保理論成立の切っ掛けとなった、福田稔医師の考案した爪もみ療法を紹介。
『奇跡が起こる爪もみ療法』(安保徹/福田稔監修 マキノ出版)は、両手の薬指を除く各指の爪の付け根をかなり強めに揉むことで、誰もがどこでもいつでも自分で副交感神経を刺激しリンパ球を増やすことができるとしていて、写真入りでやり方を説明している。当然、入浴中や電車での移動中など私はせっせと爪もみに勤しんだ。ただ、これはあくまでも福田稔医師が考案した療法の簡易バージョンで、本格的な治療では、刺激箇所は爪の付け根以外の箇所にも及んでいるようで、いくつもの成功例が列挙されている。福田稔著『難病を治す驚異の刺絡療法』(マキノ出版)によると、治癒例は癌はおろか、パーキンソンなど多くの難病に及んでいる。

当然、直接福田稔医師の治療を受けたいと願うのだが、彼の本拠地は新潟。同じ療法を首都圏で実践している医院は無いものか、インターネットで検索したところ、刺絡療法(自律神経免疫療法)の聖地と呼ばれているらしいXクリニックを発見。早速電話を入れるが、かなり混んでいて一月半後に予約が取れる状態。刺絡部門を担当する七名の医師の一人、Zが東京近郊に癌治療に特化したクリニックを開設しているのを知り連絡すると、予約が可能なのは一カ月後、毎年千人の患者を断るほどに盛況の模様。諦めていたら三時間後に先方から電話があり「今週中の都合のいい日にいらっしゃい」という有り難い提案。どうやらZ院長が、某新聞に連載していた拙エッセイの愛読者で特別に計らってくれたらしい。この時点では物書きであることの幸運に感謝したものだが、その後、逆に不運だったのではと後悔することになる。

クリニックを訪れてまず見せられるのがビデオ。マクロファージが癌細胞を浸食していって最終的に滅ぼすさまが撮影されている。「肉体内の様子ですか、それとも実験室のビーカーの中での出来事ですか」と尋ねると、院長は「えっ」とそんな質問をされるのは初めてという反応。どこかに電話を入れて、「実験室です」との答え。「癌細胞はヒトのですか」と問うと、またしても「えっ」と発して「ヒトだと思うけどなあ」と言いながら電話をかけ、「ラットでした。ラットの癌細胞です」とのこと。

治療室に通されると、持参したMRIやCTの画像にざっと目を通した院長は、「貴方と同じように卵巣原発が鼠蹊部に転移した癌がここの療法を受けて消滅した例がある」と嬉しいことを言う。「ただ一年後だったか、甲状腺のあたりに転移して新潟の方で放射線治療を受けたということだけど、その後どうなったのかなあ」とこちらの不安を煽るような不吉なことを平気で発する。次に治療を始めるのかと思いきや、「僕は患者の話をじっくり聞く方針なんです」と切り出すと、待ちかまえていたように、自分を取材した雑誌記事をこちらに読ませたりしながら約一時間半にわたり持論を一方的に展開。安保徹先生は必ずノーベル賞を取るはずだとか、活性化自己リンパ球療法の某クリニックに勤めたことがあるが、安保徹の免疫論を与太話と馬鹿にされたので辞めたとか、そのクリニックは驚くほど患者の死亡率が高い、それは三大療法、特に抗癌剤治療を薦めているからだとか……。説得力があったのは、活性化自己リンパ球療法では、リンパ球を体外に取り出して二週間後に体内に戻すので、その後そのリンパ球が体内で活力を保つのはせいぜい一、二週間程度、そこへいくと、刺絡療法では、体内にあるリンパ球を治療直後に増殖させるのでリンパ球の寿命が長い、しかも一回につき活性化自己リンパ球療法一回分と同じ程度に増殖させながら、料金は一万円未満というくだり。

「安保徹『免疫革命』はお読みになったと思うけど、『免疫革命 実践編』はまだでしょう」と院長。「そこにも書いてあるけれど、安保教授は『転移は癌が治るサイン』と述べているが、臨床現場でそんな例は希有です」と、安保理論で私がかなり期待した箇所をあっさり否定。

実際に治療に入る。治療前に採血。注射針で全身の治療ポイントを浅く刺して副交感神経を刺激していく。針の代わりに治療用に開発されたレーザーを使っても効果は同じとのこと。治療は週一回、四回目の治療直前に採血して、それまでの治療効果を見る。

『実践編』を早速購入。執筆者の一人が現在までに手元に集まったデータをもとに「リンパ球が二五%以上あって、リンパ球数が一三〇〇以上あれば、七〇%以上の人が快方に向かう」という手応えを得ていると言う。最近の血液検査のデータを確認すると、私の場合、リンパ球の割合が三七・三%、数は二一六〇で、可能性のあるカテゴリーに入る。ところが、四回目の治療直前の採血結果では三二・三%と割合が落ちていて、しかも腫瘍マーカーは不気味に増え続けている。八回目の治療直前の採血結果では、三七・七%、二六五〇と持ち直しているが、五月の連体を挟んで二週間ほど治療を休んだ後のこと。効果に疑問を持った私は、治療直後の検査を依頼した。すると、三四.一%、二三〇二とわずか三〇分以内にリンパ球が激減している。「私は幸運な七〇%以上の人々には入らないのでは」と問うと、「平均すると増えていくものなんだ」「平均と言っても私の場合はどうなんです」「科学は平均を基準に置くんだ」「医学は応用科学ですから、個別具体的な患者に合わせて適用されるのでは」「いちいちこちらの治療にいちゃもんをつける患者は初めてだ。治療費全額返すから、もう来るな」という展開になったのだった。こうして刺絡療法と共に爪もみ療法もただちに止めた。効く人もいるのだろうが、私には逆効果だった。

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2010年1月17日 (日)

ビタミンDが、癌の転移を押さえる可能性 メイヨークリニック

またビタミンDが癌の転移予防に効果的だという研究結果が出ました。メイヨークリニックでの研究です。このブログでも何度がビタミンDについて取り上げており、リンクを張ってある「米国統合医療ノート」でもビタミンDの有効性が何度も取り上げられています。
(この話題も昨年の 昨年12月8日付で原文にリンクして紹介されています。原文の日本語訳がやっと出たということです。)

「ビタミンDと癌の転帰との間の関連性について強力な知見が得られた」と、この試験の責任医師で、ロチェスターにあるメイヨークリニックの内分泌学者 Mathew Drake医学博士は述べる。「これらの知見は非常に刺激的である一方で予備的なものであり、他の試験での検証が必要である。しかし、ビタミンDのサプリメントがリンパ腫の治療を補助する可能性を提起しており、今後の研究を促進するだろう。」

ビタミンD値が不十分な患者とビタミンDが最適値にある患者とを比較した場合、ビタミンD欠乏患者では疾患進行が1.5倍で、死亡リスクは2倍であった。

得られた知見はビタミンDと、癌リスクおよび予後との関連性をさらに支持するもので、ビタミンDのサプリメントが、既に何らかの癌と診断された患者に対しても役立つ可能性を示すものだ、とDrake医師は述べる。「ビタミンDが癌の始まりや進行に果たしている明確な役割は不明である。しかしビタミンDが、癌を制限する他の重要な過程の中で、細胞増殖や細胞死の調整に何らかの役割を果たしていることははっきりと分かっている。」

この知見は、ビタミンDが総体的な健康にとって重要であることを示唆する他の分野での研究を強化するものでもある、とDrake医師は述べた。「ビタミンD値を維持するのは非常に簡単で、毎日、安価なサプリメントを摂取するか、あるいは夏に15分の日光浴を週に3回行うだけで、体脂肪中に蓄えることができる」。多くの医師が1日に800~1200IU(国際単位)を推奨しているとDrake医師は補足した。

日本ではビタミンDの平均摂取量が5μg(200IU)/日、上限が50μg(2000IU)/日とされていますが、世界の専門家が勧めている摂取量は1000~2000IU/日です。桁が違います。この量を食物だけから摂ることは困難です。まだ十分な知見に達していないとはいえ、世界の趨勢は高用量のビタミンDの摂取を進める方向です。高くて効果の明かでない巷のサプリメントには手を出すのに、安価なビタミンDのサプリメントを摂らないのは、がん患者としては「もったいない」ことのようです。

高価なサプリメントに手を出すがん患者は、「こんなに高いサプリメントだからきっと効くはずだ」という錯覚に陥りがちです。そんながん患者の錯覚を利用して、悪質ながんビジネス業者は「サプリメントは安くすれば売れない。高ければ高いほどよく売れる」と言い切っています。きっと研究開発費がかかるから高いのだろうと、善良で悪徳ビジネスの餌食になりそうながん患者は考えるのでしょうが、ちょっと待ってください。新薬の研究開発費に多額の資金をつぎ込んでいると思われる大手製薬企業の財務内容を見てみましょう。

日本と世界の大手製薬企業の、総売上高に占める研究開発費は20%前後です。そして広告宣伝費・販売促進費が40%以上を占めていると言われています。テレビのコマーシャル、MR活動と言われる、医師を相手の営業活動(飲ませ食わせも!)が研究開発費よりも大きいのです。大手製薬企業ですらこのようですから、エビデンスのための治験などに金のかからない巷のサプリメントに多大な研究開発費がかかるはずがないのです。

サプリメントの選択に迷ったら、「理由がなく高価なものは避ける」という一点だけを判断基準にするのも、簡単ですが効果的な選択方法だと言えます。一生飲み続けられる金額かどうか、じっくり考えてみてください。

ちなみに、私が毎日服用しているマルチビタミン剤には2000IU/日のビタミンDが含まれています。

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2010年1月 8日 (金)

余命一年 落語家になる

余命一年 落語家になる ~楽しいことはラクなこと~

37歳の若さでステージⅣの十二指腸がん、膵臓がんになり、余命一年 未満と告げられた街道徳尾さんの本『余命一年 落語家になる~楽しいことはラクなこと~』があります。告知後は部屋に閉じこもっていた著者が、「一年でやりたいことは何だろう?」と考えたとき、気になった新聞記事をきっかけに落語家養成講座に入門。5歳から7回の手術、膵頭十二指腸切除術は8回目。「もう辛いことはたくさん、これからは楽な、楽しいことだけを」との思いでアマチュア落語家になります。

彼女も「がんになって良かった」と感じている患者のひとりです。もちろん「よかった」という思いだけがあるはずはなく、辛いこともいやなことも、後悔もあり、しかし、やはり『がんになって良かった」という部分が、確かに私にもあります。がんにならなければやらなかったこと、「いつかはきっと」と考えていたことを、がんの告知を受けて残されて年月を考えたとき、思い切って踏ん切りを付けてできることがあります。これが脳卒中だとか交通事故であれば、そんなことを考えている時間はありません。また、「死とは何か」「ヒトはなぜ生きているのか」など、人生や生命についても考える時間的余裕があります。だから、私も「がんになって良かった」と思うひとりです。

今日の毎日新聞に、最近の彼女のインタビュー記事があります。

もうひとつの風景:2010家族点描/7 進む勇気忘れず、高座へ
 ◇末期がん告知後、閉ざした心 初めて聞く落語に魅せられ、養成講座受講

 

     □

 「体調を聞かれたら、『おかげさまで順調に弱ってます』って答えてるんです」

 街道徳尾(かいどうのりを)さん(39)=福井県鯖江市=は、ベッドの上で屈託なく笑う。アマチュアの女性落語家。福井市内の総合病院のホスピス病棟に、昨年10月から入院している。

 来月には地元で、半年ぶりの高座を控える。「つとまるか不安もある。でも、気合を入れていかんと」と、扇子を振っておどける。見舞いに来た両親と弟も、つい笑顔に誘い込まれる。「余命数カ月」の告知から、2年半が過ぎようとしている。

     □

 5歳の時、小腸にポリープが見つかり、27歳までにポリープ切除など7回の手術を重ねた。腸は約1メートル短くなった。

 福井市内の広告会社でグラフィックデザイナーとして働いていたが、07年春から激しい腹痛が続き、名古屋市内の大学病院に入院。十二指腸と膵臓(すいぞう)に悪性の腫瘍(しゅよう)が見つかり、リンパ節にも転移していた。「ステージ4」(末期がん)と告知された。

 通算8回目の手術は、膵臓と胃の一部を摘出するなど13時間に及んだ。術後、医師は「(余命は)数カ月単位で考えてほしい」と話した。

 退院後、理容店を営む実家に戻ると、2階の自室に鍵をかけて引きこもった。一人涙ぐんだり、がんの本を読みふけった。両親や弟に会うのは食事の時だけ。ささいなことでも声を荒らげ、つらく当たった。「死ぬまでに何ができるだろう」と焦りだけが募った。

     □

 気になる新聞記事があった。大阪市内にできた落語の常設小屋「天満天神繁昌亭」が開く落語家の養成講座。肝臓がんを克服した男性受講者を取り上げ、《落語と出合い「がんになって良かった」と思えるようになった》とコメントを紹介していた。

 試しに大阪の繁昌亭を訪れ、初めて落語を聞いた。幽霊がばくちをする噺(はなし)「へっつい幽霊」。笑福亭松喬さんの巧みな話芸にどんどん引き込まれ、涙を流して笑った。

 「つらいことは、もうたくさん。おもしろいことだけを考えて生きていきたい」。すぐに「入門講座」に申し込んだ。

 08年4月から半年間、大阪に月2回通った。午前9時半から始まる講座に間に合うように、母ハル子さん(62)は朝3時に起き、弁当を作った。けいこは着物姿で受けるため、祖母房子さん(85)は前夜から実家に泊まり込み、着付けを手伝った。

 徳尾さんは滑稽(こっけい)噺「道具屋」を覚えると、房子さんとハル子さんを練習に誘った。自宅近くの公園の芝生に2人を座らせ、3回演じた。引きこもりはなくなっていた。

 発表会には親族が総出で駆けつけ、客席で見守った。めくりには「天神亭楽々」。講座の呼びかけ人、桂三枝・上方落語協会会長が徳尾さんの病気を知り、「落語をいっぱい楽しんで」と命名してくれた。

 受講者のリレー公演で徳尾さんの出番は1分だったが、ハル子さんは心配で見ていられず、終わると目頭を押さえた。房子さんは「何も言うことない」と抱きしめてくれた。

     □

 09年春までに「中級」も修了。小学校や病院、がんの患者会、老人施設などから依頼を受けるようになり、高座にあがった。噺の枕に自分の病気も織り込む。がん患者からは「生きる勇気をもらいました」と声をかけられた。

 ホスピス病棟に入院してからは、体調は一進一退が続く。体重は以前の半分の30キロ台まで落ちた。仕事は職場復帰できないまま退職し、5年間交際した婚約者とも破談になった。がんは多くのものを奪ったが、家族の大切さを教えてくれたのもがんだった。

 「誰も明日のことは分からない。私は余命を教えてもらったおかげで、残りの人生をどう生きるか、考えることができた。一歩を踏み出す勇気を忘れずにいたい」【清水優子】(毎日新聞 2010/1/8)より

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2010年1月 7日 (木)

樹状細胞療法の追跡調査、米国ではがん患者減少、アマニに癌縮小効果

ニュースを3件

  1. 信州大学附属病院などが、樹状細胞療法の効果を確認するため、来年度から治験を実施。
  2. アメリカではがん患者が減少。ただし、白人の膵臓がんは増加
  3. アマニがガンを縮小する効果(MDアンダーソンがんセンター)

1. 樹状細胞療法の追跡調査を開始

 信大病院を中心とした数カ所の大学病院の研究グループが来年度、新たながん治療法として期待される「樹状細胞療法」について百人規模の全国的な追跡調査 を始める。比較データが乏しく、効果の程度が明確でなかった同療法の有効性を検証し、医療保険適用へのステップにする狙いだ。
 信大病院のほか、愛媛大などの大学病院が連携して調査。最初の1、2年間は膵臓がん、乳がん、胃がんなど5、6種類のがんについて、同療法を受ける患者と受けない患者合わせて、それぞれ数十人ずつ治療効果を調べる。(信濃毎日新聞 1/6)


3人に1人のがん進行抑制 信大付属病院、新療法で成果

2010年1月6日 09時23分 

信州大付属病院(長野県松本市)が、手術などでは治療が難しいがん患者を対象に、免疫細胞の司令塔とされる「樹状細胞」を使った新たな免疫療法を 施したところ、3人に1人の割合でがんの進行が抑制されたことが分かった。副作用も少なく、同病院分子細胞診療室の下平滋隆室長は「がんの標準的な治療法 にしたい」と話している。

 がん治療は手術、抗がん剤などの化学、放射線の3つを組み合わせた療法が基本だが体への負担や副作用が懸念される欠点がある。

  同病院は2008年11月から、症状が進行し他の治療が難しい患者に樹状細胞療法を実施。10代から70代の男女30人に施した結果、10人程度にがんの 縮小や進行を抑えるなどの効果が見られた。胃がんの50代男性、卵巣がんの50代女性の2人からはがん細胞が完全になくなったという。

 ただ、この治療法は実績が少なく公的医療保険が適用されないため、患者の費用負担が重いのが課題。同病院は治療効果を証明するデータなどをまとめ、保険適用が認められるようにしたい考えだ

樹状細胞療法  樹状細胞は人間の体を病原菌などの外敵から守る免疫細胞の一種。がん治療では患者の体内から樹状細胞を取り出し、がん組織をそれに与え たり、がんの目印を人工的に持たせたりしてがん細胞を外敵と認識させる。その後体内に戻すと樹状細胞はほかの免疫細胞に指示を出し、がん細胞を攻撃させ る。(中日新聞 1/6)


この「樹状細胞療法」はテラの技術ですね。この日のニュース後、ジャスダックに上場しているテラの株が168円高の1233円と急騰してます。同社ホームページでは、事業内容に、「樹状細胞ワクチン療法等の研究開発及び同技術・ノウハウの提供」とあります。テラは最近全国で「最新がん免疫療法セミナー」も開催しているようです。アイマックスがん治療の研究開発も進行中で、東京大学医科学研究所発のベンチャー企業です。同じ研究所の中村祐輔教授らの「がんペプチドワクチン」とは違い、こちらはWT1ペプチドを使った技術です。


2. 米国年次報告書で全体的な癌発症率の持続的低下を発表

NCIニュース 2009年12月7日

主要な保健および癌機関の報告によると、すべての癌を総合した場合の新規診断率および死亡率は米国の男女全体とほとんどの人種および民族集団で最新の期間中に顕著に低下した。

こ の低下は男性の3大癌(肺癌、前立腺癌、大腸癌)、女性の3大癌のうちの2つ(乳癌、大腸癌)の新規発症率および死亡率の低下によるところが大きい。米国 の全癌種の新規診断率は1999年から2006年にかけて平均でほぼ毎年1%低下し、死亡率は2001年から2006年にかけて年間1.6%低下した。

これらの結果は米国国立衛生研究所の一機関である米国国立癌研究所(NCI)、疾病対策予防センター(CDC)、アメリ カ癌協会(ACS)、北米がん中央登録協会(NAACCR)の研究者らが著した報告書によるものである。本報告書はjournal Cancer誌早期電子版に2009年12月7日付で発表された。

全体的な癌発症率は依然として女性よりも男性で高いが、男性は発症率(新規症例)と死亡率(死亡)が著しく低下した。大 腸癌は男女ともに3番目に多い癌で、米国で癌による死亡原因の第2位となっているが、全体的な発症率は低下しつつある。しかし、50歳以下の男女の発症率 増加が懸念されると報告書で述べられている。

人種および民族集団別に見ると、癌による死亡率は黒人の男女で最も高く、アジア系および太平洋諸島系の男女で最も低かった。人種および民族による死亡率の 傾向はほとんどの癌部位で類似していたが、米国で癌による死亡原因第4位である膵臓癌の死亡率は白人の男女で増加したものの、黒人の男女では低下した。


3. 植物由来のアマニが前立腺がんを縮小させる潜在的能力は

オメガ-3脂肪酸、リグナンおよび食物繊維が豊富なアマニ(アマ科に属するアマの種子)は、日本ではあまり馴染みがないが、欧米では早くからがん、心臓病、動脈硬化、高血圧など生活習慣病を予防する食材として利用されてきた。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの最近の研究によって、アマニは前立腺がんのリスクを低下させる可能性があると、その抗がん作用が裏づけられた。

人々がもっと植物由来の食事をしていれば、前立腺がんを含め、がんのリスクは30~40パーセント低下する可能性があることが明らかになっている。

この健康的な食事としては、果物、野菜、全粒の穀物、豆、ナッツ、ならびにアマニなどの種が含まれる。

「がん細胞は他の細胞に付着することで転移します。アマニに含まれるオメガ-3脂肪酸は、細胞同士が結合したり、血管壁に付着したりすることを防ぎ、リグナンは男性ホルモンの一種であるテストステロンや他のホルモン値を低下させる可能性があります。テストステロン値が下がることで、男性は前立腺がんに罹患する可能性が低下するとみられます」

とMDアンダーソンの行動科学教授であり、パワーフードとしてのアマニの可能性を調べた医学博士・登録栄養士は述べた。

この研究は、161人の男性を対象に行ったもので、アマニががんを縮小させる潜在能力についての知見を得るものであった。

男性らは前立腺がんであると診断されていたが、まだ治療を開始していなかった。

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2010年1月 4日 (月)

正月は温泉気分

元日から石和温泉の和穣苑で温泉気分でした。「一の宿俱楽部」の宿でして、このところ続けてここに加盟している宿にお世話になっています。30部屋以下のこじんまりした宿ばかりだというのが気に入っています。

信玄の菩提寺、恵林寺にて初詣で。でも私は神社仏閣_mg_2186 で手を合わせたことも、賽銭を上げたこともない不信心者です。神や仏にすがる気持ちがこれっぽちもないのですね。人間の知恵を超えた何かの存在を信じることができない。人間の知恵の及ばない何かがあることは認めますが、それはまだ我々の知識がまだこの世界をほとんど知っていないというだけのことであり、それをもって超越的な存在を想定する必要はないと思っているからです。「まだまだ知らないことがたくさんある」ただそう思っていれば良いというだけのこと。がんが自然治癒することがあり、その機構を説明することはできませんが、だからといって「永遠なる存在」や「神・仏」を持ってくる必要はないのです。信じる人がいることまで否定はしませんし、勝手に信じている分には私の干渉する範囲ではありませんが。親鸞の『善人尚もて往生をとぐ いわんや悪人をや』ではないですが、悪人の私がこうして生きのびているのも、浄土真宗の教えるところかも?自信はありませんが。そういえば我が家は浄土真宗の檀家だった。一応は。五木寛之の『親鸞』が本屋に並んでました。そのうちに読んでみよう。
P1000931
宿の料理は正月らしい飾り付けの組み合わせ。腕の良い料理長をお持ちのようで、心のこもった料理をおいしくいただきました。外出しないで連泊でゆっくりするつもりでしたが、妻が「忍野八海」に行ったことがないというので、予定変更。カメラを担いで忍野巡りと相成りました。

P1000943 このヒョウタンをかたどった氷の器、どうやってつくるのかと聞いてみましたら、「ふうせんに水を入れてヒョウタンの形にして凍らせ、風船を割る」のだと。なるほどうまいことを考えるものだと感心しました。

年初の挨拶をたくさんいただいたのですが、「_mg_2221元気ですか?」という挨拶になぜか「まだ生きていますか?」という含みを感じてしまいます。 妻 の従兄弟というのが、旦那がある企業で膵臓がんの抗がん剤を開発しています。すでに臨床試験も始まっているのですが、ですから膵臓がんの知識が我が愛妻よりも多くあるわけです。電話がかかってくると、私のことを心配して「○○さん、元気ですか?」と聞くそうです。「まだ再発しないでの?」という意味ですよね、これは。「「何をぐずぐずしているの!」という気は、相手にはないのでしょうが、そう聞こえるのはがん患者のひがみだけではなさそうです。暮れに借金の催促をされている気持ちになります。開発中の抗がん剤がビックルするほど効果があるものなら、「_mg_2273治験に参加してみたら」とでもなるのでしょうが、その申し出がないところを見ると、私の余命中の開発は間に合わないのかもしれんなぁ。

「2年半も再発しないというのは、もしかすると膵臓がんではなかった のと違う。誤診かも」という、親切な(?)挨拶もありました。だとしたら、膵臓を切り取った私の立つ瀬がない。「誤診と違う、絶対に」と思わないことには、切り取った膵臓に申し訳がない。再発しないのは私の努力の結果ではなく、「たまたま」でしょうから、誤診という可能性もないことはない。『たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する』を読んでいるところですが、これがおもしろい。いずれがんとの関係を考察して紹介してみます。

今日の話題は、あっちに行ったりこっちに行ったり、まさに「Drunkard's Walk 千鳥足」でした。

今年も、

  拾った命だから、のんびり生きる

まだ、サバイバーとは言えませんが、目標は「完全治癒

2010年1月 1日 (金)

謹賀新年

新年あけましておめでとうございます。

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新年は連泊で石和温泉にてのんびりしています。

正月を温泉でなんていう贅沢は生まれて初めて。

生きているうちに、やりたいことはやっておきます。

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