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2010年6月

2010年6月27日 (日)

『今あるがんを眠らせておく治療』

今日は私の62歳の誕生日。3年前に癌研に入院した日でもあります。一週間遅れの父の日も重ねて、昨夜は家族で祝ってくれました。娘からは山崎の12年を2本。少し飲み過ぎで食べ過ぎだったのか、少々胃もたれ気味で早めに寝てしまった。

高橋豊の今あるがんを眠らせておく治療―がん休眠療法のすべてがわかる (名医の最新治療)

高橋豊氏の『高橋豊の今あるがんを眠らせておく治療―がん休眠療法のすべてがわかる (名医の最新治療) 』が発売されています。『がん休眠療法 』『決定版 がん休眠療法 』に続いて3冊目です。前著が出された2006年から5年近く経っており、この間の治療の経験、分子標的薬をはじめとする抗がん剤の進歩を踏まえた内容になっています。もちろん「休眠療法」の基本的な考えは変わっていません。

ASCO 2009の会長公演においてRichard Schilsky会長は、

「がん患者は、一人一人が生物学的・臨床的に異なり、また、社会的・経済的にも異なるなかで、すべての患者をひとつの方法でマネジメントすることは適切ではない」と訴えた。また、以前から標準治療において、副作用もなく、治療を長く継続できる患者がいる一方で、副作用がきつく、治療を継続できない患者もいることが知られていた。こうした薬物代謝の違いは遺伝的な多様性からきていることもわかってきた。血液検査を行うことで、副作用が少なく、予後が改善される治療へと 患者を誘導することが可能だ。もはや「フリーサイズのシャツのように、すべての患者を一つの治療法で管理する(One size fits all)」ことは最適ではない。

と訴えたと報じられました。これからはテーラーメイド治療だというわけです。それに関して著者の高橋豊氏は「抗がん剤治療のテーラーメイド治療とは、一人ひとりのわずかな遺伝子の違いから生じる、薬剤の分解酵素の量に合わせることです。分解酵素の量に基づく(抗がん剤の)投与量の個別化は、遺伝子学的にも薬理学的にも理にかなったこと」であり、抗がん剤の「量こそ大事」だと書いています。

休眠療法・メトロノミック療法、梅澤医師は「ちゃらんぽらん療法」とブログで書いていますが、同じ考えに基づいています。この本では「標準治療ががん難民を生んできた」と指摘しています。年齢も性別も抗がん剤へ副作用も無視して、一律に体表面積だけで投与する抗がん剤量を決める。副作用に耐えられなければ「もう打つ手がありません。緩和医療を考えてください」と放り出される。こうして大量のがん難民をつくってきたのが国立がん研究センターであると批判されてきました。この点ついて、新しい国立がん研究センターの嘉山孝正理事長も認めているのです。(こちらこちらの記事を参照)高橋氏は、休眠療法が普及すればがん難民は減るはずだと述べています。

高橋氏はまた、副作用の個人差が大きい抗がん剤塩酸イリノテカンやジェムザールでは延命効果が小さく、個人差が小さい抗がん剤TS-1などでは延命効果が大きい、これは個人にあった量の抗がん剤を投与すればそれなりの効果があるはずだという根拠になり得ると述べます。

がん休眠療法を受けることのできる医療機関が記載されています。東京と千葉に集中していますが、もっと全国に普及して欲しいものです。

休眠療法は、自分が再発・転移した場合の第一の選択肢として考えているので、情報は大切に保存しておきます。

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2010年6月25日 (金)

ビタミンDとメラトニン

運良く3年を迎えることができたのだが、これで安心だと考えているわけではない。すい臓がんの予後の悪さを考えると、ついつい悲観的にないがちだが、気を取り直して「今を生きる」だけのこと。

「がんサポート情報センター」の『治療が難しい「再発膵がん」の最新治療』をあらためて読んでみた。

膵がんでは、手術した人のほぼ半数以上が1年以内に再発します。3年以内には9割近くが再発します。

再発後の抗がん剤の効果も向上してきたためか、手術した人全体の5年生存率は2~3割と少し成績がよくなっています。ただし、ほとんどの人でがんが再発します。1期でさえ、5年生存率は約53パーセントにとどまります。

術後に再発した方の平均的な生存期間に関してはいくつかのデータがありますが、抗がん剤などの治療の効果がない場合は、再発がわかってからだいたい3~6 カ月と言われています。

膵がんの特徴は、他のがんにくらべて、1~3期で再発する人が多いことです。そもそも手術した範囲で、がんが取りきれていれば治るはずです。根治手術したのに再発する人は、もともと遠隔転移のある4b期なのです。手術で取った範囲外に、目に見えないがんの浸潤や転移が存在していて、それが増殖してくるわけです。

乳がんや胃がんで早期だと言われる1センチのがんが、膵がんでは1~2ミリのがんに相当するのかもしれません。がんの進行度は、単に腫瘍の大きさだけでは測れません。

再発した人で長生きできるのは、きっちりとした手術を受けて、手術した部分からの局所再発のない人に多く見られます。抗がん剤にも反応しやすい傾向があります。一方、局所の再発があると、痛みがあったり、ご飯が食べられなくなったりと、全身状態が悪くなります。
術後は、再発を見逃さないために、定期的な診察と、腫瘍マーカーや画像による検査を続けていきます。ただし、術後の再発を早期に発見したことで、生存率がよくなったというデータはありません。

気の滅入るような内容ばかりだが、そんなことは先刻承知のはずだから今更落ち込むことでもあるまい。「3年以内には9割近くが再発します」とあるように、3年が一つのターニングポイントだと考えて良いだろう。これを何とかクリアしたのだから、気を引き締めて、希望を持って続けるだけだ。

今日はがんに効果があるかもしれないサプリメントについて書いてみる。ビタミンDとメラトニンについてはこのブログで何度も紹介してきたが、あらためて整理してみる。

ビタミンD
アメリカにおける補完代替医用に関しては安西さんの「米国統合医療ノート」を参考にさせてもらっている。新しい情報が迅速に提供されているので非常にありがたい。このサイトで「ビタミンD」で検索した記事の一覧をこちらで開くことができるので、まずは目を通してもらいたい。
米国統合医療ノートにおけるビタミンDの記事

血中ビタミンD濃度が高い人はがんになるリスクが低い、というデータを前にご紹介しました。これは良い食生活や適切な日光浴など、総合的な生活習慣がもたらす影響を示したものでしたが、今度はそれをさらに絞込み、ビタミンDのサプリメントを摂るだけの違いでがんのリスクが減少するというデータが出ましたのでご紹介します。アメリカ臨床栄養学会誌6月号に発表になった米国クレイトン大学の研究です。

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ところで日本のビタミンDの食事摂取基準は220 IU、耐容上限量は2,000 IUです。私の摂取量は多すぎるように見えるかも知れませんが、専門家の間ではビタミンDは10,000 IUまで安全とされており、私の知り合いのビタミンD研究者も毎日3,000 IU飲んでいます。

もし機会があれば日本のサプリのビタミンD含量をご覧ください。多くが100 IU/日程度の実にささやかなものです。

日本の基準が低すぎ、サプリも用量不足で、そもそもビタミンDへの関心が薄いために、日本では多くの方がビタミンD不足なのではないでしょうか。そして多くの方が、ビタミンDさえ足りていればかからずに済む病気にかかっているのではないでしょうか。

こういった記事が並んでいる。私も毎日ビタミンD(D3-コレカルシフェロールとして)2000IUを服用している。3000IUにすることも考えなくはないが、20分間日光に当たるだけで20,000 IUという大量のビタミンD3が合成されるといわれているから、天気のよいときはたくさん散歩をするだけでも効果がある。心配なら血中ビタミンD濃度を測って、それから対策を立ててもよかろう。

日本で販売されているビタミン剤は含有量が低すぎて話にならない。3000IUも摂ろうとしたらずいぶんな量と金額になるはずだ。私は海外から個人輸入をしている。がん患者はミネラル分も不足しがちだから(玄米食だとミネラルが不足するというデータもある)、マルチビタミンとしてビタミンDを含んだものを購入している。詳しいことは「私のがん攻略法」に書いてあるとおりだ。

メラトニン

奇跡のホルモン、メラトニン、

メラトニンについても何度か書いた。「メラトニンについて(1)」「メラトニンについて(2)

米国統合医療ノートのメラトニンの記事」の検索結果をリンクしておく。

重要なのはこちらの記事「メラトニンとがん治療」であろう。

前回と今回の論文に紹介されている主要論文をまとめると下表のとおりです。

【放射線療法との併用】
がん種症例数抗酸化剤(/日)効果副作用文献
頭頚部がん 540 ビタミンE 400 IU、ベータカロテン 30mg(ベータカロテンは途中で中止) 再発↑*、死亡↑* 1a, 1b
頭頚部がん 54 ビタミンE 400mg - 2
膠芽腫 30 メラトニン 20mg 生存↑ - 3
【化学療法との併用】
がん種症例数抗酸化剤(/日)効果副作用文献
転移肺がん 100 メラトニン 20mg 安定↑、縮小↑ 5
固形がん 250 メラトニン 20mg 消失↑、縮小↑、生存↑ 6
転移大腸がん 30 メラトニン 20mg 安定↑ - 7
肺がん 70 メラトニン 20mg 生存↑ 8
前立腺がん 48 エラグ酸 180mg 消失+縮小↑、生存↑ 9
白血病 124 ビタミンA 50,000 IU 生存↑ ↑* 10
    • は好ましくない結果、↑は増加・上昇、↓は減少・低下を示します。
    • 次のような論文は除外しました:医薬品についてのもの、経口投与でないと思われるもの、どちらにも何の有意差もないもの、症例数が30例未満のもの、要旨さえ確認できないもの。

すい臓がんのデータがないのが残念だが、安西さんは

もしもがん治療と同時並行して何らかの抗酸化サプリメントを服用するのなら、現時点ではメラトニ ンを第一推薦にすべきではないかと思います。

メラトニンは脳の松果体(図)から分泌される睡眠を司るホルモンとして知ら れていますが、このところがんとの関連が注目されています。検索すると、高名なテキサス大のMDアンダーソンがんセンターやスタンフォード大が、メラトニンを用いたがんの臨床試験をいま何件も平行して進めています。

と述べている。メラトニンは体内(松果体)から分泌される物質であるから、仮にがんに効く可能性があっても製薬企業は臨床試験はしない。特許が取れない物質(薬)に莫大な研究費をつぎ込むような奇特な資本的企業はないからである。MDアンダーソンがんセンターなどの公的研究機関の研究を待つばかりだが、我々はそれを待っていられない。以前の記事にも書いたとおり、FDAへの重篤な副作用は報告されていない(唯一の副作用がぐっすりと眠れること)ということだから、メラトニンを無視するのは勿体ない。

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表の信頼度レベルでいえば、これらの研究はコホート研究あるいは非ランダム化比較試験に該当するだろう。採用するには十分はレベルだと考えて良い。

問題は試験データがメラトニン20mgを摂っていることである。市販のメラトニンは1mg、3mg、5mgであり、20mgは医療機関向けである。私は3mgから始めて徐々に増やし、現在は5mg×2で10mgを就寝前に服用している。これを20mgにすべきかどうか、もっか思案中である。

米国統合医療ノート」には「一般の方へ」として「メディサプリ」のサイトにリンクされている。ここでビタミンD3と20mgのメラトニンを購入することができる。(「メラトニン 20mg」でgoogle検索すれば他のサイトも出てくるが、信頼のおける業者かどうかは分からない)かかりつけの医院の名前を明記するという条件で、医家向けの特定サプリメント・メラトニン20mgを購入することが可能である。

進行した癌にも効果があるのだろうか?それは現状では分からない。しかし、『奇跡のホルモン メラトニン』の第6章ガン治療の革命は、これまでの研究成果を説明している。この書籍に書かれた以後の研究結果については安西さんのブログを参考にすればよい。

落葉隻語 ことばのかたみ

ビタミンDとメラトニン。飲むべきか? それは自分の身体には自分で責任を持つという答えしかない。自己責任で情報を吟味して判断すればよいことだ。ただ、日本人は「安全・安心」に過剰に反応しているのではないだろうか。抗菌グッズが売れるなどというのもその証だし、宮崎産の品物はすべて忌避するという「風評被害」を生んでいるのもこの過剰な安全・安心反応だろう。リスクゼロの社会生活は不可能なのである。多田富雄が『落葉隻語 ことばのかたみ』でこう書いている。

近頃、日本人には過剰な無菌思考がある。もともと私たちの周囲は黴菌だらけである。カビや細菌、総称して黴菌と人類は共存しながら進化してきた。

昔、私の母など、残ったご飯の糸の引くのを平気で食べていた。確かに雑菌は増殖しているが、お腹を壊すことはなかった。家族には炊きたてのご飯を食べさせた。お客に料理を使い回した料亭とはまるで精神が違う。

口から入る日常の雑菌にさらされて腸管の免疫が強化され、下痢を起こす黴菌に抵抗力を獲得する。アレルギー体質も少なくなる。

子供がたまに発熱したり下痢したりするのは、黴菌との戦い方を習得しているからである。学習の場は主に腸管である。成長の時期にここで戦い方を学習しないと、雑菌に対する抵抗力が弱くなり、逆にアレルギーを起こしやすい体質になる。免疫学者の私が言うのだ。信じていい。

あまりにもリスクを避ける生き方は、返ってリスクを背負い込みことになるのはがん治療でも同じではないだろうか。多くは答えのない問題なのである。(いかさま業者にカモられないためにも)極力調査し熟慮もするが、どこかで目をつぶって跳ばなければならないときがある。

NHKの『プロジェクトX~挑戦者たち~』は、リスクに果敢に挑戦した者にだけ与えられる栄誉がある、というドラマではなかったのか。

決してビタミンD、メラトニンを勧めているわけではありません。自己判断・自己責任で対処してください。

2010年6月24日 (木)

クリンソウ(千手ヶ浜)

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週末に奥日光に行ってきた。前から計画していたクリンソウの群生地の撮影である。中禅寺湖湖畔千手ヶ浜にある個人の敷地内であるが、一般に開放されていて、今ではすっかり有名になり、都内からも日帰りの観光バスがでているくらいだ。私は贅沢に温泉と撮影旅行(いつも温泉がつかないと落ち着かない)。奥日光の源泉は硫黄分が多くて黄色いお湯であるが、体がよく温まる。露天風呂には4回も入っただろうか。屋内の温泉よりも露天風呂のほうがα波が高くなるという実験があるそうだ。湯のなかで小鳥のさえずりを聞き、風の音が自分の耳鳴りのように聞こえ、硫黄が鼻をつく。身体から力が抜けていく。温泉は自然に浸る、野生が甦る、身体ではなく心を洗う。どこかの国とのサッカー戦があるらしく、風呂場に人影がない。これ幸いである。温泉に来てまでテレビを見ることもないだろうにと思うが、人それぞれ。勝手にすればよい。私はテレビも明かりも消して、静寂のなかで多くの国道を走るかすかな車の音と虫の声を聞きながら、ぼんやりとした時間を過ごしている。

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朝、開けたままの窓から小鳥の声で目が覚める。まだ午前4時半であった。木々の輪郭が次第に白みかけてくるにしたがって、鳴いている小鳥の声が違ってくる。カゲロウが部屋に迷い込んできた。部屋に小さな露天風呂がついているのだが、このお湯がいつまで経っても温かくならない。1時間出しっぱなしにしておいたが、冷たくて入れたものではない。飾りと考えれば腹も立たないからそう思うことにした。

クリンソウの花言葉:幸福を重ねる・物覚えのよさ・少年時代の希望、物思い

三春の滝桜をアップしたとき、亡くなった茶長さんからコメントをいただいた。その返信に「6月にはクリンソウを撮りに行くからぜひ見て欲しい」と書いた。あれから2ヶ月。残念だが茶長さんには間に合わなかった。

クリンソウを茶長さんに捧げます。

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2010年6月21日 (月)

プラシーボ効果

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今日の夕焼け:あした天気になぁ~れ


3年目にたくさんの方から励ましのコメントをいただき、びっくりしています。このブログはあまりコメントを期待しないで、私が好きなことを書いているというスタイルなのです。しかし、同病の方に少しでも希望が持てる情報を届けられるとしたら、もう少し続けてみようかなという気になります。

陶さん、niさん、のりさん。元気の出るような内容を目指しますので今後ともよろしくお願いします。あまり肩肘張らずに、好きなことを好き勝手に書いていきましょう。ときどきは長期に休むこともありますがあしからず。

左のツールバーに「癌と闘う本-私のお薦め」を設定してみました。このブログではたくさんの本を紹介しているのですが、以前には共感していた本が、いまではあまりお勧めとは言えないようになったりもします。私の考え自体が変わるのであるから仕方がない。少しは利口になっているのならよいのですが、その点に関して自信はない。だから、あくまでも現時点でのお勧めということです。

プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬

ハワード・ブローディの『プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬 』この本は紹介したことがない。プラシーボに関しては研究もほとんどされていないようで、本も根拠になった論文を明らかにしたり、科学的に検証されて有益なものがほとんどない。

がん患者にとっては、プラシーボであろうとなかろうと、そんなことは関係ない。治ればなんだってよいのだ。私たちの「体内の製薬工場」はときには末期のがんでさえも奇跡的に治癒させたりする。こうしたプラシーボ効果を思い通りに引き出すことができれば、必要なときに”スイッチを入れる”ことができれば、なんとすばらしいことだろう。しかし、現状ではプラシーボ効果のメカニズムもよく分かっていない。プラシーボ効果と言うものが存在するという点に関しては、現在医学の医者であれ、代替療法を勧めている医者でも、否定する者はいないだろう。どうすればプラシーボ効果を引き出すことができるのか、著者の提案である。

著者が本の内容をまとめている。これを見てみよう。

  • プラシーボ反応を考えるときは、「体内の製薬工場」をイメージするとわかりやすい。プラシーボ反応を科学的に探究すると、人間のからだには、体内で化学物質を放出し、ほとんどの場合は自力で治癒する能力があると思われるからである。ある種の治癒的なメッセージには、体内の製薬工場を始動させ、その働きを高める力があるらしい。
  • 体内の製薬工場をもっとも効果的に刺激するメッセージは、病気が私たちに対して持つ『意味』を変化させる。意味がポジティブな方向に変化するのは、私たちが病気の説明を十分に受けたと感じるとき、周囲の人たちからの思いやりを感じるとき、自分を悩ませている問題に対して主導権を持っていると感じるとき、である。
  • 人間はあるできごとについて物語を織り上げることで、そのできごとに意味を与える。そして体内の製薬工場は、私たちが自分の健康状態や病気について織り上げる物語から強い影響を受ける。より明るい結末を組み立てることで、私たちは意味を変化させ、それによって体内の製薬工場を刺激することができる。

「この本にあるアドバイスはどれも、絶対に治癒するという秘策や保証ではありません」。プラシーボ反応には多くの謎があるが、それはこれからの研究で解明されるかもしれない。あなた自身にも、病気に対するあなたの反応にも謎はあるが、注意深く探ればその答えは見つかるかもしれない。それでも本質的なところで、プラシーボ反応の少なくとも一部は、神秘のまま残される宿命なのである。それを理解し、受けいれないかぎり、プラシーボ反応は私たちに治癒反応として十分に作用してはくれないだろう。

これは根本的なパラドックスにつながる。すなわち、あなたが治癒を必死に願えば願うほど、求めれば求めるほど、治癒は遠のいていってしまうのである。その意味で治癒は愛に似ているのかもしれない。愛する人が欲しいと必死になるあまり、誰かと会うたびに夢に見た人生の伴侶を求めるような態度を取るなら、いずれはそうなったかもしれない人さえ遠ざけてしまい、すべての愛をつぼみのうちに摘みとる結果になってしまうだろう。出会いをうまく活かし、お互いに満足できる恋のできる人は、たいてい相手を必死で求めているわけではなく、それが運命なら独りでも生きていけるという自信を持っている人である。ふさわしい伴侶を引き寄せるのは、まさにこの自信なのである。
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<プラシーボ効果あるいは治癒に対して>疑いが頭をもたげてきたとき、私たちは二つの反応のどちらかをとる。この二つは一見ほとんど同じものに見えるかもしれないが、じつは大きな違いがある。ひとつは「チクショー! こんな疑いはどこかへ捨ててしまわなくちゃ。心をポジティブにして、それをからだと結びつけなきゃ治療はうまくいかないぞ。だから疑いは追い払わなきゃいけないんだ。そうしないと体内の製薬工場は働いてくれないからな。」希望と期待をこのように考えることは、また自動販売機の罠(硬貨投入口に正しい硬貨を入れれば、目的の品が出てくるように病気が治ると錯覚することを指す)に落ちることである。これでは治癒を高めるより妨げることになりがちだ。
疑いに対する第二の反応は、それを自然なことと見るものである。あなたはこう考える。「どっちにしても、結局この治療が効くかどうかは知りようがない。でも、希望を持っていれば治療がうまくいく可能性は高まるだろう。だから希望を呼びだすために自分でできることを考えてみよう。それも責めたり、罰したり、何かを引き替えにしたりしないでやってみたいものだ。つまるところ、これは私が治るかどうかの問題だけじゃない。私はどんな人間になりたいか、私の人生をどんな物語にしたいかの問題なのだ。必要とあらば、希望を持った人間になるか、疑うばかりの人間になるか、自分で決めるしかない」
この二番目の考え方のほうが、治癒をもたらす可能性はずっと高い。

長々と引用したのは、私の基本的な考えと同じだからである。「一年有半」「サイモントン博士の講演会」などで書いた「老子的思考」にも通じるのです。

プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬 プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬
ハワード ブローディ Howard Brody

偽薬のミステリー 内なる治癒力―こころと免疫をめぐる新しい医学 身体が「ノー」と言うとき―抑圧された感情の代価 パワフル・プラセボ―古代の祈祷師から現代の医師まで 人はなぜ治るのか―現代医学と代替医学にみる治癒と健康のメカニズム

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2010年6月20日 (日)

『地球交響曲第七番』

たまたまアンドルー・ワイルのウェブを見ていたら、ワイル博士が5月に日本に来ていたようですね。知らなかった。ニュースにもならなかったような気がします。私が気付かなかっただけかもしれませんが。
明治神宮に参拝したとか、蕎麦を食ったとかの写真があります。

映画「地球交響曲第七番」にワイル博士が登場しており、その完成披露試写会をかねての旅行らしい。YouTubeの予告編はこちら

映画は東京都写真美術館で7月17日から上映されるのとこと。

地球交響曲第七番
~全ての生命が潔く、健やかに生き続けるために~

地球交響曲「第七番」は、母なる星GAIAからミクロのバクテリアまで、この世の全ての生命体が、その内部に秘めている生命の叡智・自然治癒力の、健やかな発現を願い、祈る作品にしたい、と考えています。

自然治癒力とは、ふだんから全ての生命体の中で働き続けていて、その複雑極まりない生命システム全体の統一と調和を整えている“目には見えない力”のことです。

時に、その生命体が命の危機に遭遇した時、それ迄の自分の生命システムを一気に変えて、その危機的状況下でも生き延びることのできる新しい生命システムに組み替えてゆく、神秘的な力も秘めています。ごく稀な例とはいえ、末期癌や不治の病から奇跡的に生還され、健やかに生き続け、穏やかに生を全うされた方々の話をお聞きになったことがあるでしょう。彼らは異口同音に言います。
「命の危機に遭遇した時、その苦しみを忌むべきこととは捉えず、かけがえのない試練と受け止め、感謝の想いすら持って、からだの内なる声にしたがって、今、自分にできることを精一杯やっていると、フト気が付くと死の淵から生還していた」というのです。

すなわち、危機的状況下で自然治癒力が、健やかな方向に発現するか否かのひとつの鍵は私たちの心のあり方にあったのです。
今、母なる星GAIAは悪性の肺炎に苦しんでいます。過激化する天候異変は、自らの力で病を癒そうとするGAIAの巨大な自然治癒力の現れです。そして、私達人類は、そのGAIAの心を荷う存在です。
「第七番」では「GAIAの自然治癒力」の健やかな発現を願って、GAIA本来の「心」とはなにか、その「心」に寄り添うために、私達人類は今、なにに気付き、なにを捨て、なにを取り戻すべきか、を問いたいと思います。

龍村仁監督のこの言葉は、なんだか私がブログで言い続けてきたことと響き合っていますね。日本神道との関係がどのように扱われているのか、ちょっと気になりますね。まぁ、観てから評価すればよいか。

2010年6月17日 (木)

定期検査 3年をクリア!再発転移なし

今日は癌研での定期検査でした。P1010118_2
毎年アジサイの咲くこの季節になると、3年前の慌ただしいできごとを思い出します。癌研の庭にもアジサイが満開になっていました。

CTと血液検査でしたが、9時に病院に入って血液検査。その結果をみてから造影CTを撮り、画像が解析室で解析されている間に食事。1時45分から診察という流れでした。食事はもちろん東京會舘の「會舘オムライス」に生ビールを一杯。病院で飲む生ビールはなんと格別の味がします。入院中にこのレストランに来ても患者には出してくれませんでしたから。当たり前ですが。

検査の結果は、局所再発も転移もなし。腫瘍マーカーも正常値であり、血液検査のその他の項目にも異常はありません。
   CEA:  4.2
   CA19-9:18.2

Img_2 好中球パーセントが少し低いが、これはリンパ球パーセントが増えたためであり、リンパ球を増やす努力をしているのだから、これでよい。「がんになったら、健康になった」というデータです。体重が減ったこと、運動している、食事に気をつけている、これらの積み重ねがこのデータです。

手術後3年をクリアしました。

膵臓がんでは3年生存率と5年の生存率にはあまり大きな違いはないから、再発するリスクはゼロではないだろうが、あまり気にするほどのことでもないのでは?と先生に質問。
先生は「膵臓がんは10年ほど前まではほとんど全員が亡くなっていたわけで、治療法が進歩した最近になって5年生存者のデータが揃いだした状態です。アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学は膵臓がんの治療数が世界一の病院ですが、そこへも5年生存者のデータが集まっているのです。そしてそのデータでは5年たってからでも再発する例が報告されています。元のがんが再発するというのではなく、別の新たなすい臓がん細胞ができるのではないかといわれています。すい臓がんはまだ原因すら未解明のがんですから、油断はできません。5年経っても経過観察は続けましょう。」と言われました。

私は「もちろん検査は続けますが、自分の気持ちとしてはここでサバイバー宣言をします。」と告げたら笑っていましたね。

夜はチェロのレッスンです。駅の地下で野菜天ざると麦焼酎のロックを注文。今日は昼はビール、夜は焼酎と二回も飲んでしまった。チョロのレッスンは大丈夫か?
案の定、楽譜を読み飛ばしたりでさんざんでした。今日のレッスンはメンバーの二人がお休みで、少し前から参加したDさんと二人だけ。レッスン後に話をしていたら、Dさんも先月癌研で手術をしたそうで、しかも、同じ先生だと分かってびっくりでした。チェロ友ががん友だった。

チェロをやっているとがんの治癒率が高いというエビデンスが、Dさんと二人で証明できるのではなかろうか、と思ったりして・・・。

2010年6月13日 (日)

iPad狂想曲

Googleリーダーに登録してあるパソコン関係の記事は、このごろiPad一色の様相である。しかし、私にはiPadの使い道が分からない。いや、新しいデジタル機器は嫌いな方ではないし、ポメラも発売されたら早速買って使っている。しかしiPadのどこが魅力的なのかさっぱり理解できない。理解できないから買わない。高すぎるということもあるが。

要するにiPadは情報を消費するための機械である。これで何か生産的な作業をするようにはできていない。ブログの記事を書けなくはないが、画面上のキーボードでは押した感覚がないだろう。内田樹がiPadでブログを書き始めたそうだが、脱字や不必要なスペースがはいっていて読みづらい。本を読むには重すぎる。軽い軽いと宣伝するが1kg以下のノートパソコンが出回っている時代に680gは軽いとは言えまい。本を数冊持てば結構な重量になるのだから、いくら入れようがデジタルでは重さは増えないからというのも、一度に読むのは一冊なのだから納得させられるものではない。それに私はまだデジタル書籍にはなじめない。線が引けないではないか。書き込みもできやしない。確かにコピーしたり検索するには重宝かもしれないが、さっさとコピーした情報は得てして記憶に残っていないものだ。

かくいう私も携帯電話はスマートフォンに替えた。スマートフォンに替えたら日常の情報の管理が格段に便利になった。BlackBerryにそっくりのdocomoのSC-01Bにした。タッチパネル&QWERTYキーを搭載しているのがこの機種にした理由である。フルキーボードがついているので入力が格段に楽だ。

これまでインターネット上の情報の収集に使ってきたOneNoteと紙copiのデータを全てEvernoteに移行した。過去のがん関連の貴重な情報がすべて詰まっている。そしてSC-01Bにもモバイル版のEvernoteをインストールした。これでどこにいても情報にアクセスできるようになった。ついでにメールもGmailに移行した。過去5年分のメールをすべてGmailに転送しても5Gバイトであり、7Gの無料スペースのあるGmailでは余裕である。GmailはマイクロソフトのExchangeサーバーに対応しており、この5Gものメールが必要なときにいつでもスマートフォンで検索できるからすごい。

青空文庫の宮沢賢治のものなどもスマートフォンで読んだりしている。今は『銀河鉄道の夜』や『武蔵野』『高瀬舟』『貧乏物語』が私のスマートフォンに入っている。ちょっとしたすきまの時間に読むには手頃であり、iPadでなければならないということもない。

GoogleカレンダーとRemember the Milkを連携させて、Todo管理を任せている。これでやるべきことの管理がすっかり安心できるようになった。今やること・いつかはやりたいことなどをすべてこのシステムに預けてしまえば、リマインダーが知らせてくれるまでは忘れていられる。SugarSyncDropBoxもインストールして自宅と会社のPCのデータをシンクロさせている。さらにスマートフォンにもモバイル版を入れたから、大量のデータがいつでも見ることができる環境になった。

頭は記憶する場所ではなく、問題を解く場所である。こうしてパソコンがなくても同じ情報にいつでもアクセスできる状態にしたが、さてこれでばりばりと仕事をしようというのではない。

ぼんやりの時間 (岩波新書)

やるべきことを能率よくさっさと片付けて、空いた時間をたくさん作ろうというのである。空いた時間はぼんやりとして過ごそうというのである。辰濃和男が『ぼんやりの時間 (岩波新書) 』という本を出している。人生におけるぼんやりとする時間の有用性を説いているのだが、中野孝次も『閑のある生き方』で同じことを言っていた。放浪の詩人高木護は、こどもに「お父さん、うちの財産はなんだろうねぇ」と聞かれて、「何もない。しかし何もないでは子供たちも困るだろう」と考えて高木家の財産目録を作った。

  • 何者にも拘束されない自由
  • 一日、ぼんやりしていられること
  • 低収入で暮らせる体
  • 自然たちと仲良くなれること
  • 老い、あるいは持病

がむしゃらに働くことが美徳だという我々の世代が、こんなおかしな日本を作ってしまったのではないかという根本的な疑問に問いかけるためにも、ここらでちょっと立ち止まるのも悪くはないに違いない。

高木護にはこんな言葉もある。「これからどこへ行こうとか、どこまで行こうとか、目的や目標を作るな」「ゆっくり歩いても、急いで歩いても、一日は一日である。ならば、一日をゆっくり歩いて行け」味のある言葉だ。ぼんやりしているときには心が解放されている。心が解放されていれば、足元の自然が見えてくる。人間は生かされているのだということが分かってくる。

一日ぼんやりと自然と仲良く、粗末な暮らしでもよいという。老いも病気も財産だという考えは、ちょっと気分が悪くても病院にかかろうとする現在の老人を痛烈に当て付けている。「今は将来の準備期間」という考え方が日本人には染みついている。勉強して一流の大学に入り、大企業に就職し、定年後はほどほどの楽な暮らしがしたい。そのための「今は準備期間である」というのだ。しかし、それではいつまで経っても自分の時間は持てやしない。今日は明日のためにあるのではなく、今日という「いまここに」ある時間をあるがままに使わないで、どうして満足できる人生と言えようか。がんを治したい! 切実な思いに違いない。だが、治って何をするんですか? 「今」はがんを治すための準備期間にしか過ぎないのですか?

治ったら、妻にも優しくして子供たちとも語らいの時間をたっぷりと取って、やりたくてもやれなかった趣味を始めて、旅行や気のおけない友人たちとゆっくりと語らって・・・・。

それを今やればよいではないか。がんであろうがなかろうが、今を十分に生きるということではないだろうか。と、良寛も西行も鴨長明も、セネカも同じことを言っている。彼らのように世を捨てることもままならないから、せめてやるべきことをデジタルの助けを借りて能率よくさっさと片付け、のんびりとした時間をたっぷりと作ろうという魂胆であるが、こうしてブログを書いていることはさて自分に必要なのかどうか、と考えだすときりがないからやめておく。

2010年6月12日 (土)

外気功で病気は治るのか

『健康問答』で、帯津良一医師が、五木寛之との対談で次のように述べている。

イギリスでスピリチュアル・ヒーリングのセミナーに参加したとき、初日にいきなり遠隔治療を行なわされた。私は川越の病院に入院中の患者さんに「気」を送りました。この人は胃癌の手術の後腸閉塞を何回も併発したりして、衰弱しDIC(播種性血管内凝固)を起こしていました。祈るような気持ちでロンドンから川越まで「気」を送りました。後日、成田空港に迎えに来た看護師長は「○○さんね。すっかり元気になりましたよ」と言うではありませんか。翌朝患者さんの病室に行くと、「ロンドンから気を送ってくださったのはいつのことなのですか?」と聞くので、「時差を考えると水曜日の朝の4時頃かな・・・」「え、本当ですか?私がよくなってきたのは、丁度その頃からですよ」(内容はまとめています)

五木寛之が「遠隔治療での治癒例はあるのですか?」という質問に対して、帯津医師が「患者さんや家族に頼まれて遠隔気功をこれまで何回かやったことがある」と答えた後、上のような一例をあげている。

「気」というものがあるかどうかという問題に答えるのは難しい。そんなものは科学的に証明されていないというのは簡単であるが、ある事象が「存在しない」ことを証明することは、ほとんど不可能である。例えばヒマラヤの雪男やネッシーは存在するかという問いに対して、「存在しない」ということはなかなか証明できない。ネッシーの写真はでっち上げだったことが分かっているが、だからといってネッシーがいないということにはならない。まだ見つかっていないだけかもしれないし、かつては存在したが今は死に絶えてしまったという反論だって成立する。「気」や「ツボ」は解剖学的には見つけられないが、だからといってないということもできない。

もっとも「気」とはなにかという定義をはっきりさせないで「気は存在するか」と問われても答えようがない。「あなたは神の存在を信じますか」と問われても「神」とは何かをはっきりさせないでは答えようがないのと同様である。

この本には帯津氏のこうした定義のはっきりしない言葉が随所に出てくる。

  • ホメオパシーは命のレベルに働きかける
  • 気功は命の場のエネルギーを高めてくれる
  • 物質の持っている物質性を排除して、エネルギーだけを残し、一分子も入っていない状態にして、それを水に投影させるのです。

命の場?命の場のエネルギー?エネルギーを水に投影させる?なんのことやらさっぱりと理解できない。もっとも「場のエネルギー」は物理学的にはきちんと定義されている。場はある物理量が空間的に分布している様子であるから、「命」を物理量で表わせれば「命の場のエネルギー」と言えるかもしれないが。

問題は、ロンドンから川越に「気」を送ったから患者が治ったのかどうか、二つの事象には因果関係があるのかどうかということである。帯津氏にいわせれば、偶然で説明することができなくはないが、このようなことが起こる確率はきわめて小さい。だから、何かの不思議な力が存在するのではないか、ということだろう。

このように、少数の限られた観察から一般的な命題や法則を導き出す推論形式が「帰納的推論」である。帰納的推論は便利であり、私たちが生活するになくてはならないものである。もともと人の思考法は帰納的であり、子供が世界を認識していく過程も帰納的推論が頼りになるのです。しかし、帰納的推論には、ときとして大きな落とし穴にはまることがある。鳩は空を飛ぶ。鳩は鳥である。したがって鳥は空を飛ぶ。この帰納的推論が誤りであることは、ヤンバルクイナやダチョウやペンギンは空を飛ばないという事実によっ て反論される。

したがって、遠隔治療あるいは外気功を送ったときに、患者が治らなかった例はどれくらいあるのか、ということを検証する必要がある。ま、こんなことは普通の知性の持ち主なら誰にでも分かることだ。しかし帯津医師は何度か遠隔治療をした経験があるにもかかわらず、たまたま治った一例しか挙げようとはしない。だいたい治療だとかサプリメントでがんが治ったという例は、こうした帰納的数論の誤り犯している。群馬大学医学部の丸山悠司教授らは「外気功を科学的に検証した」実験を行なっている。その結果、外気功はプラシーボ効果に過ぎないとしている。

患者が病院に行くのは、具合が悪いからである。そして具合の悪い状態は、ある平均値の上下で変動する。血圧であれ血糖値であれ、ある正常値の上下で変動している。たまたまある治療を受けた後に具合がよくなったからといって、その治療法のおかげであるとは限らない。これを「平均値への回帰」というが、あるサイクルで変動している状態があって、たまたま下降する時期にある治療法を施したら「治った」ということにされるのである。

帯津医師はいくつもの推論の誤りを犯しているようだ。しかし、この先生を非難するのは酷かもしれない。あのユングでさえも、心理治療の最中に患者と神聖甲虫の夢の話をしていたら窓に甲虫がぶつかってきたという偶然の一致を経験し、シンクロニシティ(共時性)という原理を発見したという錯誤を犯している。ユングは晩年は占星術の研究に没頭したという。

私は患者が、とくに現代医療では治癒する見込みのない患者が代替医療を取り入れることは反対しない。むしろ積極的に取り入れた方がよいと考えている。患者は治るのなら、それがプラシーボ効果であるかどうかは関係ない。治るのなら何でもよいのであり、プラシーボで治って何が悪いか、と思う。現代医療を放棄しないのならレメディーを舐めていてもよいだろう。しかし、医療の世界に一定の大きな影響力を持つ帯津医師のような方が、あまりにも非科学的な推論でその影響力を広めているといたら、これは放っておけない。現にホメオパシーや食事療法だけでがん治療をしようとし、現代医療から遠ざかっている患者が多い。手術や抗がん剤をやめるべきだという代替医療家も数多くいる。彼らは「治らなかった例」は決して明らかにしようとはしない。

2010年6月 8日 (火)

ASCO 2010 Gemcitabine & nab-paclitaxel(アブラキサン)

ASCO 2010は今日まで開催ですね。膵がんに関してもたくさんの発表があるようですが、抗がん剤の多剤併用療法が多いように思います。

なかで気になるのが、Gemcitabineとnab-paclitaxel(アブラキサン)の併用療法。実はこの発表はすでに4月に「癌Experts」で紹介されている。こちら

nab-paclitaxelは、アルブミン結合をさせたナノ粒子にパクリタキセルを封入した製剤であり、nab-paclitaxelは溶媒を含まず、転移性乳癌に対する化学療法の治療選択肢として開発された。抗腫瘍活性を示す薬剤の周囲でアルブミンと結合することで高用量の投与が可能で、溶媒を含むパクリタキセルよりも高濃度のパクリタキセルを腫瘍部位に送達できる。
米食品医薬品局(FDA)は、nab-paclitaxelをIIB~IVの黒色腫と膵癌の治療薬として、オーファンドラッグに指定している。

さて、ASCO 2010のPancretic Cancerでは、nab-paclitaxel関連の発表が3件ある。

その中でAbstract No: e14675が非常に興味を惹かれる研究である。切除不能膵がん及びボーダーライン上にある患者に対する試験において、Gemcitabineとnab-paclitaxelの治療を受けた13人中3人(23%)の患者が腫瘍が縮小して(ステージダウンして)手術が可能になった、とある。

Results: 3/13 (23%) underwent surgical resection with curative intent. CA19-9 response was 13/13 (100%), RECIST response was: PR-9/13 (69%), SD-3/13 (23%) and PD-1/13 (8%). EORTC PET response was: PR-7/10 (70%), SD3/10 (30%). No patients encountered drug related grade 4 or higher toxicities. There were 2 cases of grade 3 neutropenia,1 case of grade 3 anemia and no cases of grade 3 or higher thrombocytopenia; 4 patients had grade 2 neuropathy.

結果:3/13(23%)が治療の結果(腫瘍が縮小し)、外科的切除術が適用された。CA19-9は全員に反応が見られた。RECIST(固形がんの治療効果判定のためのガイドライン)による判定は、PR(部分寛解)-9/13(69%)、SD(不変)-3/13 (23%)、PD(増大)-1/13 (8%)。EORTC(欧州癌研究治療機関) によるPET判定基準では、PR-7/10 (70%), SD3/10 (30%)であった。

Conclusions:
Gemcitabine and nab-paclitaxel has a very promising antitumor activity in unresectable and borderline resectable pancreatic cancer patients. Investigation in a larger cohort of patients is ongoing.

ゲムシタビンとナブ-パクリタキセルは、切除不能膵がん及び切除可能かどうかの境界線上にある膵がんに対して、非常に有望な抗腫瘍効果を有する。より大規模な試験が進行中である。

70%に部分寛解であり、その他は不変、増大した患者は一人もいない! 手術不適用のすい臓がん患者には希望の持てる発表です。日本での早期の治験と承認を要求していきましょう。


ASCOなどの英語サイトを見るには「ライフサイエンス辞書ツール」をインストールしておくとマウスオーバー辞書として機能し、多くの難解な医学用語の日本語訳が表示されます。詳細は「ライフサイエンス辞書をマウスオーバーで」の記事に紹介しています。

2010年6月 5日 (土)

散歩と運動

早いものだ。今月末で手術後丸3年になる。すでに初Marsus02001_2夏の陽気の日々が続く。散歩コースの道ばたには、 気の早い紫陽花が花を開いている。私の散歩、といっても会社までのJR一駅区間で約2.6km。早足で歩くと25分ほどの距離を、お気に入りのMARSUS Da Vinciシリーズのバックパック(大人のランドセルといったほうがぴったり)を背負って歩く。歩き終わると冬場でも気持ちよく汗ばんでくる。これから先の季節には下着の着替えが欠かせないから、MARSUSには着替えを入れている(万一のための紙おむつもひとつ)。毎日ではないが、無理をしない程度に週に2、3日は歩くようにしている。

運動はがんの予防だけではなく、再発した患者でも、手術の適用ができない患者でも有効だ。運動に関するエビデンスはすでに確立されていると言っていい。「がんと闘う」なんて勇ましいが、多くの場合は「闘う」のではなく、抗がん剤の副作用に「耐えている」といったほうがよい。あるいは「あのサプリメントが効くかも、こちらの食べ物が効果があるかも・・・」と、あたかもたったひとつの「魔法の弾丸」が、幸運にも自分に劇的な効果が現われて、がん細胞があっという間に消えてくれる。こんな宝くじ並みの幸運を期待して右往左往しているのではないだろうか。

がんと闘うのは、そのような魔法の弾丸を探すことではない。運動、散歩。正しい食べ物と平安な心、十分な睡眠。当たり前のことを地道に続けることだ。ベッドに寝たきりでも運動はできる。片方の足、指の一本を動かすことから始めればよい。昨日も書いたが、もう一度『がんに効く生活』を隅から隅まで読み返してみるとよい。きっと希望が湧いてくる。

チェロのレッスンは上級コースに進級P1010115した。テキストの オタマジャクシは真っ黒。こんな音符が弾けるのかしら、と危惧していたが、レッスンが始まると何とかなってしまう。我ながらそれなりに進歩していることを実感する。フォーレの「夢のあとに」もある。今から楽しみだ。今週から新しいメンバーのDさん(女性)が参加。これで男女2名ずつ、4名のクラスになった。Dさんは杉田劇場での私のチェロデビューのとき一緒に舞台に上がって演奏をした顔なじみ。これまでは個人レッスンでやってきたのだが、今回からグループレッスンということ。1時間が楽しくてあっという間に過ぎていく。楽しいことをやるのが、変な抗がん剤なんかよりよっぽど効果がある、というのは多くの先生のいうところだ。ひとつひとつ、人生を楽しみながらの積み重ね。これががん治療の王道だと思う。

2010年6月 4日 (金)

久留米医大も『がんに効く生活』を推薦 (他2件)

がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」

久留米大学のがんペプチドワクチン事務局の「よくいただくご質問」に新しい項目が追加されました。「#6がんと食事について2回目」

 

この中で私が以前から紹介して推薦してきたシュレベールの『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」 』が好意的に取り上げられています。

一般的には、食事療法にも限界がありますし、西洋医学的な治療を合わせて実践しても有効性が得られない場合が殆どです。しかし、「がんに効く生活」に記載されている内容をすべてもしくは一部分実践した場合には長期生存が得られる可能性は高まるように思われます。そこで今回はまず、その本のうち食物に関連した部分について取り上げます。それ以外の部分を含めて一読されることをF氏にはお勧めしました。

もちろん、がんと炎症との関係にも言及されています。がんが治るなどと断定的なことは言えませんが、ゲルソン療法とは違い、シュレベールの著書は根拠となる論文も合わせて載せていますから、現時点ではもっとも信頼性の高い食事療法に関する書籍ではないかと思います。

このページを読んだなら、ぜひシュレベールの『がんに効く生活 』を熟読されるとよろしいでしょう。私はもう何度も読み返して、ページには沢山の赤や緑の傍線がいっぱいの状態です。


ASCO年次総会が今日からシカゴで開催されますが、術前に放射線あるいは化学療法を受けた膵がん患者は、そうでない患者に比べて生存期間が4倍に伸びるという研究が発表されるようです。

術前治療による病理的効果が膵がん患者の予後を予測する

 膵がんは早期発見が難しく、予後は不良であるが、術前の化学療法や放射線療法で顕著な効果が得られた膵がん患者は、そうでない患者に比べて、生存期間はおよそ4倍にもなることが、米Fox Chase Cancer CenterのYun Shin Chun 氏らの研究で明らかになった。詳細は、6月4日から8日までシカゴで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表される。

ただ、足の速い膵がんですから、放射線や化学療法をやっている間に腫瘍が大きくなってしまうのではないかと、素人としては考えるのですが、どうなんでしょうか。切れるのならさっさと切った方がよい、と私は考えて、初診のその場で手術日まで決めたのです。ASCOでの正式発表が気になります。もっとも、切除不能の患者が術前治療で切除可能となったような場合、この発表は朗報でしょうね。希望が湧いてきます。


こちらもがんと炎症の関係に注目した情報です。

2月9日の「がんと炎症の関係」で紹介した「プロシュア」服用とゲムシタビンのランダム化第Ⅱ相試験が神奈川県立がんセンターで計画されているようです。UMIN CTR 臨床試験登録情報の閲覧ページにアップされています。

  • 切除不能膵癌を対象としたゲムシタビン+プロシュア服用治療とゲムシタビン単剤治療のランダム化第Ⅱ相試験実施計画書(YCOG001)
  • 対象疾患名     膵癌
  • 目的  未治療切除不能膵癌を対象として,ゲムシタビンとプロシュアTM(以下プロシュア)の併用療法と,ゲムシタビン単剤療法の有効性と安全性をランダム化Ⅱ相 試験で比較検討する。
  • 介入  Gemcitabine 1000mg/m2 を週1回day1, 8, 15と3週連続投与し(30分で点滴), 1週休薬する.4週を1コースとして腫瘍増悪を認めるまで繰り返す。
    プロシュアを1日最大2パック服用する。
  • 試験問い合わせ窓口
    神奈川県立がんセンター消化器内科  上野 誠
    〒241-0815 横浜市旭区中尾1-1-2
    電話    045-391-5761

他にも、膵がん・ペプチドワクチン療法に関する新しい臨床試験の情報が更新されています。

2010年6月 1日 (火)

「言葉」の大切さ、「疑う」ことの大切さ

がんのブログだから政治的な記事は遠慮していたが、鳩山総理の言動にはあきれ果ててしまい、書かずにはいられない。

「最低でも県外」「辺野古の美しい海を埋め立てるのは問題だ」「命をかけてやる」と言った言葉とはまったく反対に、最悪の元の案に戻ってしまった。阿部・福田・麻生と、政治家の言葉の軽さにうんざりして、「もしかしたら」と民主党に期待した国民が反動で”鳩山拒否”になるのは当たり前だ。こうして4人の総理の顔を思い浮かべてみると、なんだかデジャビューのようだ。

「海兵隊の抑止力について知れば知るほど必要だと分かった」というのであれば、どういうことを知ったのかを明らかにすればよい。自分独り合点していても国民には届かない。もしかすると、抑止力の実態を知ったが、それは説明できないということかもしれない。その場合に想定されるのは抑止力の実体が、沖縄には未だに「核兵器がある」ということかもしれない。核兵器の存在については、アメリカは否定も肯定もしないという戦略をとっている。ないことになっている核兵器がある、それによって抑止力が担保されている、という説明を受けた鳩山さんが国民に説明できないのは当然だ。沖縄にはいまだに核兵器が配備されていて、それが抑止力である(と彼らは考えている)。論理的に考えればそうなる。

一年の半分以上も沖縄にはいない海兵隊が、抑止力になるはずがない。仮に抑止力というのなら、米軍は2008年に韓国の基地を3分の1に縮小し、ソウル近郊の龍山基地の返還にも合意しているが、「抑止力」の相手が北朝鮮であるのなら、最も距離が近い韓国の基地をどうして閉鎖・縮小するのか説明がつくまい。フィリピンでは米軍は、クラーク空軍基地から90年代に撤退している。だからといってフィリピンとアメリカとの友好関係が損なわれたということはない。フィリピンや韓国のほうが、アメリカに対して対等にものを言っているということだ。どうも日本人は(日本の政治家は)アメリカの言うことはまちがいない、もっともだ、という誤った観念があるようだ。長年の習慣から思考停止になっているのだろう。

韓国海軍の哨戒艦「天安」が3月に沈没した事件について、鳩山総理が急に積極的になった。この件を持ち出して北朝鮮の脅威、抑止力の必要性を訴えたいという魂胆が見え透いている。
この件に関しては田中宇がおもしろい憶測を書いている。「天安」は米軍の原子力潜水艦との同士討ちで沈没した、という見方だ。韓国のKBSテレビが報じた地図なども参考にして「同士討ち説」を説明している。大いにあり得ることに違いない。

北朝鮮がやったのかもしれない。ビルマのラングーン爆破事件、キムチョンヒラニよる大韓航空機の爆破、日本人の拉致問題、これらは北朝鮮の犯行が明らかな事件であり、今回も北朝鮮の軍事行動だという可能性は高いと思う。しかし、その証拠が不十分だ。米英豪の合同調査団はその構成メンバーすら明らかにされていない。調査報告書には誰の署名も記されていない。

調査報告書が発表されたとき、北朝鮮からの「専門家の代表団を派遣するので、証拠を検証させてくれ」との申し入れに対して、韓国政府は「殺人犯が検事になるようなもので、こんな申し出を許すわけにはいかない」と拒絶している。米英豪なら第三者で検事役が務まるとでも言うのだろうか。ロシアや中国が参加しているのならまだしも、米英豪は国際法上では未だに北朝鮮とは交戦中の国である。これで検事役とは無理だろう。北朝鮮の調査団を受け入れて韓国の主張を堂々と言えば良いではないか。

「北朝鮮ならやりかねない」との考えには一理はある。私もそう思う。しかし、それを言うのならアメリカだって同じこと。アフガニスタンでイラクで国際法を無視した無法の限りを尽くしてきたのはアメリカであり、キューバのグァンタモ空軍基地には他国の主権を無視して拉致してきた兵士や民間人が未だに拷問・尋問されている。アメリカだけが正義だという思い込みは危ない。すくなくとも、「なんだかよくは分からないけど、どこかおかしいよね」という庶民感覚は持っていた方がよい。

福島瑞穂は良くやった。消費税反対で大量の議席を得たのに、その信を裏切って消費税導入に舵を切った村山総理の轍を踏まなくてすんだというだけでも褒めてあげよう。「言葉に責任を持つ政治を」のひと言は我々の胸にすとんと落ちる。しかし、良くやったが、遅かった。年末の派遣村で、派遣法の抜本的な改革を約束しておきながら、実質的に約束を反故にした。福島瑞穂自身が「言葉に責任を持つ政治」をやってこなかったのだ。また、社民党自身が普天間基地の「移設」の呪縛から抜け出せていない。沖縄に要らないものは日本中どこでも要らないのであり、移転先探しに終始している限りは「言葉に責任」を持つことなど不可能だ。大臣を罷免され、連立から離脱したからとて、「移設条件付き変換」を推進してきた福島瑞穂の責任が免れるはずもない。フィリピンを見習え、韓国を見習え、そして普天間は無条件で変換させよ。これをオバマに直談判するために訪米せよ。

   信なくば立たず

今の政治家にこれを期待するのは無理なのだろうか。

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