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2010年10月27日 (水)

患者よ 混合診療解禁の口車に乗せられるな!

私の混合診療に反対の理由は、第一には昔の歯医者でのいやな思い出だろうか。しばらく歯医者には行っていないから分からないが、今でもそうかもしれない。歯科医に初診でいくと初診カードを渡された。そこには「保険診療のみ、自由診療でもよい」のどちらかに○を付けるようになっていた。金に糸目を付けない治療なのか、健康保険の範囲内で治療をするのかを患者が選択するのである。(歯科医がワーキングプアになる当節だから今はこんなことは少ないのか?)
混合診療が解禁されたら医療全体がこのようになる。財布の中身と今月の生活費を胸算用しながら待合室で頭を抱えなければならなくなるのではないか。

「あなたの膵臓がんには、抗がん剤としてTS-1とジェムザールが使えます。自由診療でしたら、アブラキサンもアバスチンも、その他患者様の希望するものすべてOKですが、治療費としては一ヶ月で○○十万円~上限なしになります。効果の違いですか?アブラキサンなら運が良ければ手術ができ、完治の可能性もありますが、TS-1やGEMでは難しいでしょうね」と言われて悩まない患者がいるだろうか。

ドラッグ・ラグの問題と混合診療解禁をごっちゃにしている議論をよく見かける。「海外で有効性の認められた薬がまだ未承認で保険で使えない」のがドラッグ・ラグであり、早急に承認するように厚生労働省に働きかければよい問題である。それを待っていられないから、あるいは一部の臨床試験で有効だったから保険適用の薬と一緒に使ってみたい、というのが混合診療解禁派の(患者の)主張である。ドラッグ・ラグを解消するために混合診療解禁を言うのは、物事の本質を見ない短絡すぎる主張だろう。

実態はどうなのか。メトロノミック療法・休眠療法のU医師の場合は、保険で可能な抗がん剤は提携病院で行ない、未承認の薬を自分のクリニックで処方するという方法である。これなら混合診療にならない。混合診療はあくまでも「ひとつの医療機関で」両方を行なうことを禁止しているのであって、同じ病気でも別々の医療機関でそれぞれの治療を受けることまでは禁止していない。

混合診療裁判を起こした清郷伸人さんの場合も、神奈川県立がんセンターでLAK細胞療法を同時に行なっていたから問題になったのであり、患者の情報を共有した上で、LAK療法を別の専門病院でやれば何の問題もなかったはずである。実際にそのように行なっている病院もある。都内の大学病院と「がん患者のあきらめない診察室」で有名な千葉ポートメディカルクリニックが提携して診療を行なっている。これはtweeterに「『がん患者の・・・』は使い勝手がいいんだよね。未承認の抗がん剤を希望する患者はここに紹介している」と大学病院の医師が投稿しているので分かったのだが、何ら問題のない合法的な方法だ。経済的に余裕のある患者はそのようにすればよい。

「がんサポート情報センター」内の記事で、千葉ポートメディカルクリニックの今村医師は次のように語っている。

「混合診療を避けるには、未承認抗がん剤の治療を、入院中や受診中の病院やクリニックとは異なるところで受ければよいのです。もちろん、両者の医師同士の密接な連携が不可欠です。しかし、異なる病院・クリニックで未承認抗がん剤の治療を受ければ、その分のみを自費負担すればよいわけです。実際、私はそうしたやり方で行っています」<こちらも

免疫細胞療法・NK療法を受けている患者の大部分が、病院で抗がん剤をやりながらそれらの代替医療を受けているのではないか。瀬田グループの治療成績をPDFで見ることができるが、大学病院などでの抗がん剤の併用している患者だと、公然と書かれているではないか。米原万里さんの闘病記を読んでも、いろいろな代替療法(瀬田グループも含めて)と抗がん剤とを別の病院で併用している。東京女子医科大学も保険診療の利かない附属の「青山自然医療研究所クリニック」を開設して保険外診療を行なっている。例のホメオパシーでさえもこのクリニックと連携して堂々と行なえるわけだ。こうした現実があるのに清郷さんがどうして裁判までする必要があるのか、どんな不利益をこうむったというのか。私にはまったく理解できない。

不思議なことに、現実にこうした形で(患者から見た)混合診療は可能であり、広く行なわれているのだということを、どうしてなのか賛成派も反対派を言わない。「国に政策があれば、民には対策がある」ということだ。

「地方にはそのような使い勝手の良い病院がない」と反論されるかもしれない。しかし、それは地域格差の問題であり、地域格差は現にある。しかし混合診療解禁で地域格差が解消するわけではないだろう。

世界的に有名は医学雑誌ランセットが、2011年9月に日本特集号を出すと報じられ(全文を読むには無料の会員登録が必要です)、国内でそのプロジェクトも発足している。

日本特集号を組む「理由の第一は、日本は大きな国であり、1億2700万人の医療をどう担うのか、国際的にも関心が持たれていること。第二に、日本は東アジア地域で大きなパワーを持っており、同時に新興国の経済発展、対中関係、対米関係、平和へのムーブメントといったセンシティブな政治課題を抱えていることだ。日本の医療界は、こうした政治的な議論において、より大きな発言力を持つべきだ。そして第三に、日本からの発言は、これまで国際社会から無視されてきたと思うからだ。日本が大きなパワーを持つべきなのは明らかなのに、グローバルヘルスを語る際、日本の意見は抜け落ちている、あるいは弱い。」ということです。

そして、なぜ皆保険制度に注目しているのかとの質問に、

 今から10年前、2000年の九州・沖縄サミット後に、世界各国はミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDG)を採択した。MDGが設定された背景には、われわれは“選択”をしなければならない、目標には優先順位を付け、少数に絞らなければならないという考えがあった。

 しかしこの10年で、こうした考え方は変わった。ちょっと待て、“選択”なんてしちゃいけない、この世界に生きている人はみな平等だ。全員が最高水準の医療を受ける権利がある。だから、限られた病気、少数の目標について語るのではなく、どんな病気であっても、どこに住んでいても、全員の健康を達成することを考えなければならないと考えるようになった。これは健康についての考え方の大きな変化だ。健康を人間の権利(human rights)として考えるようになったのだ。

 皆保険制度とは、このエンドポイントを達成するためのメカニズムだ。そこで、「どうやったら皆保険制度が達成できるのか」というもっともな疑問が生じる。この疑問を解決するために、既に皆保険制度を取り入れている国を研究しなければならない。

 日本は、早くに皆保険制度を取り入れ、それを堅持するために様々な努力をしているという点で、非常に重要な事例であり、他国に大きな教訓を与えることができる。日本の経験は、成功したこと、直面する課題のいずれも、先進国だけでなく途上国にとっても参考になるのだ。

寡黙なる巨人 (集英社文庫) この世界的にも先進的な、宝物のような日本の公的医療に風穴をあけるのが、「混合診療」です。いままで「例外」とされてきた「混合診療」が医療現場に本格的に持ち込まれることになる。これによって何が起こるのか。いまは一部の例外にしか認められていない「高度先進医療」や歯科医療の「金属床」の総入れ歯、「差額ベッド」などに加えて、例えば「制限回数を超える医療行為」(リハビリなど)も新たに混合診療の対象になる。世界的な免疫学者であり、先頃亡くなった多田富雄さんが『寡黙なる巨人』という本を出しているが、脳梗塞に倒れても果敢にリハビリ治療に挑戦して、指一本で原稿を書くまでに回復した。それにはリハビリ療養士の大きな援助があったからだと書いている。そしてこのリハビリ回数の制限に「命を奪うものだ」と反対して新聞に投稿し、大きな反響をよんだことは記憶に新しい。

診療報酬上のルールで定められた制限回数を超えるリハビリテーションは、保険外併用療養費制度の「選定療養」の中で提供されることになっている。以前は、リハビリは何回受けたとしても保険が適用されていた。しかし、多田富雄さんたちの反対にもかかわらず、医療費抑制策の一環としてリハビリの実施に関して日数制限が設けられた。その影響で、制限回数を超える実施は保険外療養とされてしまったわけだ。混合診療が原則解禁となれば、こうした“保険外し”がますます広がることは目に見えている。混合診療解禁と医療費抑制はセットになっていることを念頭に置かないといけない。未承認薬がどんどん使えるという単純な話ではないのです。

「混合診療」が拡大していくと、保険が適用されていないものを診療行為に組み込みやすくなる。「混合診療」が比較的多く認められている歯科医療を見れば明らかだが、保険外診療の範囲が広がり、結局は患者負担は大きくなるはずだ。混合診療が解禁されれば、多くの医療機関が自由診療に力を注ぐことは間違いないだろう。患者個人あたりの収入単価を上げるには保険診療と組み合わせて自由診療部分の収入を伸ばすのが、最も手っ取り早いにちがいない。当然、患者の窓口負担は増えてしまう理屈です。また、ビタミンC療法だのいかさま免疫療法、はてはホメオパシーのような有効性が証明されていないどころか、有害な治療でも保険診療と組み合わせて提供できるので、いかさま医師の犠牲となる患者は今以上に増え続けるだろう。

日本の医療制度は、新しい医療技術や新薬の安全性・有効性を検証したうえで保険適用にしてきた。高額だった治療が保険内で可能になることによって、公的医療制度が国民に定着してきた歴史を持っている。かつて保険外診療だった肝臓がんのラジオ波治療、人工透析、腎臓移植などが、医療技術の進歩に従って、また患者、国民の要求によって保険適用にされてきた。公的保険による医療を基本として「混合診療」を認めなかったからこそ、こうした治療が保険で可能になったのだ。ドラッグ・ラグの問題は「混合診療」を禁止してこそ解決できる。混合診療が解禁になれば、未承認の抗がん剤は永久に承認されないか、かえって承認が遅れることになりかねない。

保険外診療が広がり、公的保険の範囲が狭められたならば、新しい医療技術や新薬を使ったり、手厚い治療を受けられるのは経済的余裕のある金持ちだけということになる。現実に多田さんの例はそれを示しているのではないか。いまでもある「所得格差」が「命の格差」につながる状態が、いっそう押し進められるのではないだろうか。公的医療保険制度の土台が崩れていくことを混合診療解禁に賛成する患者は望んでいるのだろうか。

中村祐輔先生のがんペプチドワクチン療法は、あれほどの治験データがあれば自由診療でもうけることは十分に可能なはずだ。しかし、中村先生はすべての膵臓がん患者を救いたいという一念で臨床試験をし、保険適用になるように頑張っているのでしょう。巷の免疫細胞療法のように、ペプチドワクチンを一部の経済的に豊かな患者だけのものにしてよいはずがない。

最近保険会社の「がん保険」テレビコマーシャルが変わったことに気がついていますか。例えばオリックス生命は「1000万円まで、がんの先進医療を受けるときに保証します」とうたっている。NK細胞療法とセットになった保険もあるようだ。混合診療が解禁されることは、彼らにとってはビッグチャンスなのです。混合診療解禁は、民間医療保険の市場拡大により巨額の利益を得ることができる日米の保険会社の要求だという側面もきちんと把握しておく必要がある。医療分野での規制緩和は、もうけるチャンスなのです。しかしそのようなことはおくびにも出さない。あくまでも「患者の利益になる」かのような宣伝しかしません。

混合診療の解禁は、われわれがん患者にとっては、一部につかの間の利益はあるかもしれないが、長期的には悪影響、国民全体から見ても医療崩壊を一層推し進める愚策であり、患者がこれに賛成するのは自分の首を絞める行為だろう。

混合診療の問題を保険財政の問題としてとらえ、増大する医療給付の財源をどうするかという観点からの意見がほとんどである。しかしこれでは憲法25条の生存権の問題であるという認識があまりにも希薄ではなかろうか。健康保険を生命保険のようにとらえて、相互扶助であり、持つ者が出して持たない者が恩恵を受けるという主張があり、世代間の対立を煽るかのような政府の主張や、批判精神を失ってしまって、それを無批判に垂れ流しているマスコミの姿勢には問題がある。健康保険制度は相互扶助ではなく、憲法に保障された国民の権利であると厚生労働大臣が国会で答弁しているのである。

例によって長くなったからこれくらいにしておきます。


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コメント


なーるほど。
ありがとうございました。
私は自家がんワクチンをやったので、ちゃんと信じて、治すようにしたいと思います。
再発の恐怖におびえすぎないことも大事ですね。

kathyさん。
混合診療の実態についてはマスコミもよく分かっていないで報道しているようですね。
自家ワクチン療法のセルメディシン(株)のドクター通信では下記のようなメールを発信してています。
http://www.cell-medicine.com/

こうした宣伝行為も違法ではありません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

   抗がん剤が効きにくい“スローな癌”こそワクチンで

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 大学病院の先生方へ:「混合診療禁止」政策により大学病院内では「自家がんワクチン療法」が実施できなくても、先生ご自身の患者様に対して、お近くの関連クリニックにて簡単に実施できます。

 既に、大学病院教授で、この方式により患者様の希望を実現されている先生方も複数おられます。
 具体的な方法は弊社まで直接お問い合わせください。
 新たに「自家がんワクチン療法」を自院でも開始したい病院の先生方は、どうか遠慮なく弊社にご連絡下さい。直接説明に伺います。
 大病院から小型診療所まで、どこでも簡単に実施可能です。しかも肝癌では、すでに無作為比較対照臨床試験で有効性が証明されているエビデンスレベルの高いがん免疫療法です。

       セルメディシン株式会社
       TEL:029-828-5591、FAX:029-828-5592
       E-mail: tkb-lab@cell-medicine.com

私がかかった病院では標準治療しかしてもらえないため、
手術時に抗がん感受性テストを受けたかったのですが、できませんでした。
それ以来、混合診療禁止には、納得いなかったのですが、
手術や緊急性のあるものでなければ、
病院を分ければ、混合診療ができるのですね。
貴重な情報、ありがとうございました。

こんにちは。
臓器移植について調べていてこちらのサイトを拝見致しました。
肝臓移植や腎臓移植など、わからないことが多く不安に思う方々がいると思います。
そんな方々に少しでも情報提供をできればと日々、勉強と努力をしています。
貴サイトにありました情報や意見は大変参考になりました。
ありがとうございました。

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます。
ありがとうございます。

混合診療の問題は以前から関心を持っており、なぜ混合診療が禁止されているのか、禁止されることでどのようなメリットがあるのか理解したいと思っていましたが、その回答を知ることができました。
私自身が混合診療禁止に疑問を覚えたのは、国立のがん専門病院で「手術はできない。膵がんは、どこの病院でもジェムザールとTS-1しか治療はできないから、あえてうちで治療する必要はない」と言われたためです。そのときは大きなショックを受けましたが、その後、U医師にセカンドオピニオンを受け、標準治療以外にもさまざまな治療法があることを教えていただき当初のショックが和らいだことを思い出します。
多くの病院では、標準治療以外にも治療方法があることを教えてくれません。幸い、いまはインターネットでさまざまな情報を得ることができますから、病院で教えてくれなくても自ら情報を得る努力をすべきで、その努力をしない人は治る方法を知らなくてもやむを得ないのかもしれませんが。
しかし、自分で調べてこの治療を受けたいと思っても、身近に治療を引き受けてくれる病院がなく途方にくれている方も多くいらっしゃいます。現実問題として、U先生や千葉ポートメディカルクリニックのように情報や治療方法を考えてくれる医師に出会うチャンスは少なすぎるように思えてなりません。
一方で、お金と命を天秤にかけるような医療のあり方がよいのか、皆保険が崩壊してもよいのかと言われると言葉に窮しますが、混合診療禁止によって患者が情報を得る機会が大きく制限されている現状にも疑問を感じます。いい解決策があるといいのですが。

混合診療について非常に参考になりました。保険がきく診療と保険の効かない診療を別々の病院で受ければいいのですね。ここまでは頭が働きませんでした。いつも情報有り難うございます。今後ともよろしくお願いいたします。それにしてもすごい読書力・情報力でにはいつも脱帽しております。
直腸がんを手術して2年1ヶ月。昨日、半年ぶりでCTと血液検査を受けてきました。貴方様の病院とは異なり直ぐには結果が出ません。来週の月曜日に結果が出ます。おそらくは問題が無いと思います。貴方様は直腸がんの手術後5年で膵臓がんが発生したと、このブログで言われていましたので、私もまだまだ安心できない気持ちでいます。

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