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2010年12月

2010年12月30日 (木)

小さき花

京都東山にある建仁寺は、臨済宗建仁寺派の総本山ですが、俵屋宗達の国宝「風神雷神図」があるお寺(現在は京都国立博物館に寄託)といった方が分かりやすいかもしれません。若き道元も入宋する前にここで修行をしたのでした。
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昨年ですが、東京都大田区に住む書道家・金澤翔子さんの大作「風神雷神」が、建仁寺に奉納されたと報道されました。
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27日の「徹子の部屋」にも出演されていましたから、ご覧になった方の多いと思います。翔子さんは染色体異常によるダウン症と診断されました。書道家のお母さんは「二人で死ぬことばかり考えていた」と言います。5歳で書道を始めるとめきめきと才能を現わします。19歳で雅号「小蘭」を取得して何度かの個展も開いています。

小さき花 その金澤翔子さんが加島祥造さんと出会って生まれた『小さき花』を読みました。その躍動するような書には、書に関する知識の全くない私でも感動してしまいます。

本の「はじめに」から加島祥造さんが出版に至った経緯を紹介します。

 老年になると余計なものが削ぎ落とされて、本当に大切なもの、必要なものがもっと鮮やかになる。
 そんなことに気づき始めたとき、不思議な出会いがあった。
 まさに、「人間の本当の姿」を持った人たちだ。
 その一人が、この本ができるきっかけになった金澤翔子だ。ダウン症の翔子は、はじめから天から落っこちてきた生きものみたいだったんだよ。

 翔子はいつも愛に満ちている。いつも温もりにあふれている。彼女は書家である母・泰子と共に書に生きているが、もちろん金の勘定はまったくゼロだ。そもそもそういうことに動く脳は、幸か不幸か持ち合わせていない。
 だから、愛とか美とか、根幹にかかわることに敏感で、後は何も求めていない。
 翔子そのものも、恐ろしいパワーを秘めたその書も、人の目を求めていない。命のままに生きて書いているんだ。その美しさ、その力強さは、私たちに真似できない「本物」だ。

 人の目を求めない小さき花たちは、この伊那谷の山々でも美しい。花も人も同じだよ。

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自然と繋がる心でいるとき
大きな生命力を実感する

もちろん、「タオ」と読んでください。


Img_0001 君の命はいつも
君とともにいる

いま生きずして
いつ生きる


Img_0003 ピカピカの玉に
ならずに
ごろた石で
いることだ

これは加島祥造の『タオ―老子』第39章「五郎太石でいればいい」を踏まえているんですね。


Img_0002 いまあるがまゝでいればいい
いちばん好きなことを
するがいい
いま要るものだけ
持つがいい

老子の第1章に「玄之又玄、衆妙之門」とある。玄-計り知れない深淵の更にまた奥の深淵から、もろもろの微妙な働きが出てくる。森羅万象あらゆるものがくぐる門、衆妙の門があるのだ。


「玄ちゃん」のことがあとがきに書いてある。玄もダウン症の27歳の青年。玄は『タオ―ヒア・ナウ』がお気に入りの一冊。仏典・ウルトラマンとこの三冊が玄の布製のバッグにいつも入っている。

 私がMさんに「玄はなぜ『タオーヒア・ナウ』を読み始めたのか?」と問うと、とても興味深い答えがかえってきました。
 「"命"など、この本の中に出てくる言葉は、玄の好きな言葉が多いんです。たぶん深い意味を読むと言うより、言葉の響きから広がるイメージを彼なりに感じ取っているように思います。”タオ”という言葉からタオの世界を直感しているようで、たとえば、”風”、”山”、”夕日”--こうした自然現象に出会ったとき、『母さん、タオ』とよく言います。そして、この老子の言う”やさしい心”は、彼独特の愛を表現する言葉です」

翔子さんと加島祥造が最初に出会ったときのことを、母・泰子さんは次のように書いています。

 二年ほど前、鎌倉で翔子の父親の十年目の祥月命日のお墓参りをすませたあと、まだお会いしたこともない先生の個展に二人で出向いた。
 はたして、そこには先生がいらっしゃった!
 翔子は先生の姿を見ると、何を思ったのか、いきなり「お父さま」と声をあげて先生の懐に飛び込んだ。そして、先生も、翔子をその胸に強く抱いてくださった。
 比類なく翔子に優しかった父の面影と、優しい先生の姿が翔子の胸の中でシンクロしたのだと思う。抱き合っているその姿は神聖で侵しがたかった。

銭勘定や損得に振り回され、あまり役にもたたない会議に忙殺されている私たちよりも、翔子や玄の方が人間らしい生き方をしているのかもしれない。権力の中枢にいても何とか証人喚問を逃れようとする政治家、数億円の相続税を還付された御仁もいた。悪あがきする朝日新聞。年末になっても姿を見せなかった湯浅誠。「国民の生活が第一」がいつのまにか「政権を維持するのが第一」になったこの国。殺伐とした一年でしたが、翔子さんの書で少しは心が洗われた気がします。

がんが治るのか、いつまで生きることができるのかという問題すら、本当はどうでもよい些細なこと、大事なのは”いまここに”ある命を、”人の目なんかは気にせず”、おおらかに楽しむこと、そんな気づきを与えてくれました。

”小さき花”はただ、せいいっぱいに咲く、それだけのこと。いずれは枯れ果てる我が身の心配なんぞしない。それが命の本来のあり方。

小さき花 小さき花
加島 祥造 金澤 翔子

タオ―老子 (ちくま文庫) 天使の正体―ダウン症の書家・金澤翔子の物語 『求めない』 加島祥造 愛にはじまる―ダウン症の女流書家と母の20年 老子までの道―六十歳からの自己発見 (朝日文庫)

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2010年12月26日 (日)

『がん 生と死のなぞに挑む』書籍になりました。

4163725709 がん 生と死の謎に挑む
立花 隆 NHKスペシャル取材班
文藝春秋  2010-12

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ちょうど一年前のブログで、NHKで放映された「立花隆の『思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む』」に関して書いています。NHKスペシャルとして放映されたあと、番組ではカットされた内容も盛り込んだより詳細な特集がBS1で3本に集約されて放映されました。普段は滅多にテレビを見ない私ですが、幸いこの番組はすべて録画してDVDに残してあります。

この番組の放映の裏話や内容を補足して、書籍として出版されました。この本には最初のNHKスペシャル番組もDVDとして付録になっています。番組を見逃した方にはうれしい企画です。残念なのはBS1で放映された3本の番組は収録されていませんが、いずれNHKアーカイブスで見られるようになるでしょう。

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NHKスペシャルは、

  • 立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む

BS1の3本は、

  • 立花隆 思索紀行 人類はがんを克服できるのか①”がん戦争”100年の苦闘
  • 立花隆 思索紀行 人類はがんを克服できるのか②生命の進化ががんを生んだ
  • 立花隆 思索紀行 人類はがんを克服できるのか③生と死を超えて

NHKで制作されたがんに関する番組は、これまでに数百本に及ぶが、がんの本質論に真っ向から取り組んだ番組はこれが最初である、と巻頭に書かれています。

この番組の制作の意図を、立花氏は次のように書いています。

本書は、2009年11月23日にNHKから放送されたNHKスペシャル「立花隆 思索ドキュメント がん 生と死の謎に挑む」と一体になった本である。この本が読者として想定しているのは、あの番組をすでに見たという人である。

あの番組はとてつもない情報量を持っている。あの番組は、がんという病気の本質に真正面から取り組んだ、本邦初の本格的がん番組である。たくさんのがん番組が作られてきたが、そのすべてが、がんについての各論でしかなかった。しかし、あの番組は。がんの総論である。

がんとはそもそもいかなる病気なのかというがん本質論に真っ向から取り組んだ番組は、驚くべきことにこれまでただの一本もなかった。

過去のNHKの番組を片っ端から見ていくことで分かったことは、これまでの番組は、患者に気をつかうあまり、客観的な現実をありのままに伝えようとするよりも、患者の耳に入りやすいように加工した甘い情報を伝えがちだったことです。希望がもてない現実を前にしても、あたかも希望がまだまだたくさんあるかのような表現をしがちでした。

しかし、僕たちが作ろうとしていた番組は、そのような番組とは対極にある番組でした。

内容から気になる部分を抜き出してみます。

  • 大半のがんは完治が期待できない。
  • したがって、がんととことん闘おうとしても、その闘いはほとんど徒労に終わる
  • がんと共生、ほどほどの関係を保つことが、正しい折り合いの付け方

このあたりは近藤誠氏の意見と同じです。私もまた、ほとんど同じ考えを持っています。

  • がんと変異と進化能力とは、深い関係がある。がんのもっとも本質的な部分である。
  • 同じがんでも、遺伝子の変異は一人ひとり違う。がんは個別的である。

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外側の輪が遺伝子の配列を表わし、異常のある部分が線で結ばれている。下の図は同じ乳がんでも患者毎に遺伝子の異常箇所が違うことを表わしている。
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  • がんの世界は複雑系というよりも”超複雑系”。ほとんどひとつの宇宙と言っても良いほどである。
  • したがって、安易な一般化はできないし、全体をとらえることに人類は到達していない。分かっているのはほんの一部にすぎない。
  • 傷を修復する過程でマクロファージが果たしている機能を、がんは利用している。炎症反応を利用して、転移能力を獲得する。(この場面のCGは昨年のブログに載せてある)
  • がんは進化の過程で獲得した能力を利用している。だから、人間ががんになるのは特別のことではなく、起こるべきことがあたりまえに起こっているだけである。

世界中のあらゆる有機物質の抗がん作用を調査しているナチュラル・プロダクト・レポジトリーが番組で紹介されていましたが、この研究所が実は「フォート・デトリック」という世界最大の生物・化学兵器専門の基地内にあるという秘密も明かされています。
5-FU(フルオロウラシル)という抗がん剤があります。ゼローダ(カペシタビン)、TS-1も肝臓や体内で代謝されて5-FUに変換されることで効果を期待されている抗がん剤ですが、欧米ではまったく使用されていないという抗がん剤です。日本のRNA研究の第一人者である自然科学研究機構の前機構長志村令郎氏は、アメリカ留学中に研究資料としてずっと5-FUを使っていたそうですが、『5-FUが抗がん剤として使われていると聞くと、ビックリして、唇をぶるぶる震わせて、「あれはとんでもない毒です。全身のRNAがズタズタにされるのですから、あれほどひどい毒はない。僕だったら、がんになっても絶対に飲みません」といった話も紹介されています。

昨年のブログでは、立場氏がサプリメントを大量に服用していることに関して批判めいたことを書きましたが、それに関しても「あの場面本当は、”こんな場面使うな”といいつつ撮ったものだから無視してくださって結構です。僕が本当に、理屈も分かった上で飲んでいるのはビオラクチスくらいのものです」と釈明しています。患者の自然治癒力、免疫とくに炎症との関係も無視しているとも批判したのですが、本ではそれについても一定の理解を示しているようです。

年末年始に、DVDを鑑賞しながら「がんとはそもそも何者であるか」を今一度考えてみることも、今後の治療戦略を再考する上で有益だと思います。

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2010年12月24日 (金)

入れ歯が折れちゃったよ!

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いつもの散歩コースにある民家なのですが、ガレージの入口にいつもアンパンマンが鎮座しています。今月はサンタさんの衣装です。後の車はナンバープレートも付いているので"現役"らしいのですが、出し入れのたびにアンパンマンをどかすのだろうかと、他人事ながら気になります。


先週のチェロ忘年会でのこと。鳥の軟骨唐揚げをばりばりと食っていたら、軟骨をかむ音とは少し違う「バリッ」という音がした。吐きだしてみると入れ歯が真っ二つに折れていました。(飲み込まなくて良かったよ!)二十歳の頃に交通事故で前歯をほとんど失っており、義歯とは長いおつきあいです。今では身体の一部のように違和感もなくなっていますが、さすがに折れた入れ歯では年が越せない。

ネットで近くの歯科医を探したら、結構評判の良さそうな歯科医院が見つかったので早速電話をしたら、「来週でなければ予約が取れません。入れ歯の修理ですか? たぶん来年になると思います」と、声だけは親切で丁寧な先生の返事です。本当に正月を"歯無し"で過ごすことになりそうで、これじゃ"話"にならない(*^_^*)と、予約はお断わりしました。

少し遠いが、この義歯を造ってくれた歯科医院に電話したところ、「今からおいでください」との返事。こちらは結構大きな歯科医院で、診察用台がが10脚もあります。受付に行くと「平成13年に来て以来ですね」と言われました。「修理に30分ほどお時間をいただきますが、よろしいでしょうか?」と申し訳なさそうに言うが、来年までかかるのと比べれば30分なんて文句の言えるわけがない。壁を見るとこんな掲示が架かっていました。「当院には歯科技工士が勤務していますから、入れ歯の修理は迅速にできます」。評判が良くても先生一人の歯科医院では歯科技工士は置けないよなぁ、と納得。

Wshot200210_2 歯科技工士の世界も競争が激しいようです。聞いたところによると、昔のように歯型を取るのではなく、口腔内をレーザーで立体計測してデジタルデータを作り、メールに添付して中国・東南アジアに送信するのだそうです。受け取ったデータから入れ歯の型を作って、FedExで送ってくるのだとか。デジタル革命はこんなところにも影響しているのです。海外で造れば相当安くできるので歯科医は保険との差額が利益になるのでしょう。これはカナダの友人(彼も歯科技工士)の証言です。日本でも歯科技工士の仕事が減っているのでしょうか。年収データを検索すると平成13年当時の水準以下になっていますね。高齢化社会になるから歯科医や歯科技工士は足りなくなる、等といわれましたが、歯科医でさえもワーキングプアの時代、歯科技工士はなおさらです。

私の入れ歯はきれいに修理ができました。これでお正月の雑煮も大丈夫です。しばらく(9年間も)歯のチェックをしていないので、全体を検査してもらうことにしました。二カ所に小さな虫歯がありましたが、簡単に治るようです。歯周病も怖いですからね。こんな情報を以前にもアップしたことがあります。

歯周病によりがんのリスクが高まる可能性があるとの研究結果が27日明らかになった。インペリアル・カレッジ・ロンドンのドミニク・ミショー博士らが専門誌に発表した。

 歯周病歴のある男性医療専門家を対象にした長期研究で、がんを患う可能性が全体的に14%高いことが判明した。論文では「喫煙その他のリスク要因を考慮した上でも、歯周病は肺や腎臓、すい臓、血液のがんのリスク増大と大きな関連性があった」としている。

また、歯周病菌は、歯だけではなく、全身にも影響を及ぼすこともわかっています。組織や白血球などを破壊する歯周病菌の毒素や、炎症によってできる物質などが、全身に広がる危険性があるのです。具体的には動脈硬化の促進、誤嚥性肺炎、糖尿病の悪化、低体重児出産・早産などのリスクが生じます。

安西さんの「米国統合医療ノート」にもこんな記事がありました。

 歯をめったに/まったく磨かないと答えた人は、1日に2回磨く人に比べ、循環器疾患で入院するリスクが1.7倍高くなっていました(P<0.001)。
また血液検査をすると、炎症と関係するタンパクのCRPの値も(Ptrend=0.046)、血液凝固と関係するフィブリノーゲンの値も(Ptrend=0.015)、どちらも歯磨きが少ないほど有意に高くなっていました。体のどこかで炎症が起きており、血液が固まりやすくなっていることを示しています。

歯磨きを怠ると歯周病のリスクが高まります。歯周病になると、炎症は口の中で起きていても、その影響は血液にのって全身に及びます。その結果、重い循環器病を引き起こすリスクが高まっているようです。

がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」 『がんに効く生活』でも「2 炎症がもつふたつの顔」で、がん細胞が炎症反応をどのように利用しているかを説明し、「がん細胞が成長し、新しい領域を侵略するのに必要な炎症をつくりだすことを身体が拒否したとき」には、「この野蛮な武装集団(がん細胞のこと)を解体し、毒性を失わせることも可能である」と強調しています。

ですから、がん患者は玄米菜食やサプリメントに必死になる前に、先ず歯の検査をして、歯周病を治すことが先決だということですね。

今夜はクリスマスイブ。おいしいケーキを食べたあとはしっかり歯を磨きましょう。GI値が高く、トランス脂肪酸を大量に含むケーキは「がんの栄養」ですが、クリスマスくらいは、ま、いいかということにして。

2010年12月23日 (木)

アバスチンの乳癌への承認取り消し

米国食品医薬品局(FDA)がアバスチン(ベバシズマブ)の添付文書から乳癌適応を取り下げるよう推奨した、というニュースが流れています。アバスチンは、FDAの迅速承認制度により2008年2月にパクリタキセルとの併用で転移性乳がんへの適用が承認されました。しかし、迅速承認後の追加試験において、「アバスチン投与を受けた患者の延命効果は認められておらず、またそのような患者において重篤な副作用の頻度が有意に高かった」という結果が出て、FDAは承認をとり下げるように勧告したが、ジェネンテック社は自主的に取り下げることに同意していません。

今年6月に開催されたASCO 2010において、2つのフェーズⅢ試験でアバスチンは全生存期間を延長できない、と発表されていたのですが、今回のFDAの発表によってアバスチンの評価は決定的になりました。

「薬」かと思って投与していたら「毒」だった、というわけです。もっとも、承認時にもOSに有意な延長がなかったために賛否両論あったようで、"Genentech wins; patients lose,"などと強烈に皮肉られていたようです。

アバスチンはドラッグ・ラグとして代表的な抗がん剤です。日本の多くの乳がん患者会が「一日も早いアバスチンの承認を」と活動してきました。そして中外製薬は昨年10月に乳癌への追加承認を決定し、アバスチンの乳癌への適用は時間の問題だと思われていたところに、今回の一連のFDAの決定です。日本の承認への影響は必至でしょう。

ドラッグ・ラグ解消を唱えるあまり、国内の臨床試験を省略すべしという意見がありますが、今回のアバスチンの例をみれば、抗がん剤の承認には慎重な臨床試験と審査は欠かせません。効果の有無よりもまず安全を確認することが重要です。国内未承認の抗がん剤を一刻も早く使いたいという患者の気持ちは理解できますが、だからといって国内の審査は不要だ、省略できるということにはならない。過去の数々の薬害事件を忘れてはならないと思うのです。

また、抗体医薬品、分子標的薬だから副作用がない、画期的な抗がん剤だ、オーダーメイド医療だとかの意見は、まだ眉唾で聞いていた方がよい、危なっかしいということも明らかになりました。アバスチンは血管新生阻害剤としては世界で始めて承認された抗がん剤です。分子標的薬や抗体医薬がもてはやされて、さも画期的な抗がん剤であるかのように宣伝されていますが、がんも人間の身体も、そんなに単純なものではないと思い知らされました。アバスチンなどの腫瘍血管新生阻害剤には、がんの転移を促す作用があるのかもしれないという研究もあったのです。

世界で2番目の腫瘍血管新生阻害剤となるかもしれないと言われているOTS102、がんペプチドワクチンですが、果たしてもくろみ通りの血管新生阻害効果があるのかどうか、注目しています。

ドラッグ・ラグの対象とされている、これらの新しい抗がん剤は、承認されてもその薬価が高いことが問題です。なかには、イブリツモバブのように一回の薬剤費が470万円にもなるものがあります。患者負担は3割で高額療養費制度があるとは言え、月に8万円、上位所得者では15万円もの医療費負担を長期に続けることは、がん患者にとって容易なことではないはずです。そして、抗がん剤の投与を止めて「静かな自殺」を選ぶ患者がいるのです。

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膵臓がんに適用できる抗がん剤として、来春にはタルセバ(エルロチニブ)が承認されるとの噂があります。ゲムシタビンとTS-1の2剤しかない現状に新しい選択肢が増えると期待されていますが、タルセバは、GEMに比べて生存期間中央値がわずか10日延びるだけで承認されるのです。しかも1錠が1万円強します。がん治療費.comによれば、ゲムシタビンとタルセバを併用したときの医療費は322,130円になるそうです。10日の延命効果を大きいと考えるか小さいと考えるか、その患者それぞれの価値観や症状にもよるのでしょうが、副作用はちゃんと付いてきます。諸手をあげて喜ぶべきかどうか、疑問に感じるのは私だけでしょうか。

私は再発しても、タルセバは服用しないなぁ、たぶん。

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やみくもな「ドラッグ・ラグ解消論」は、問題をより深刻にする怖れすらあります。経済的に裕福な患者しか利用できないことにもなりかねない。ましてや、混合診療を解禁して未承認の抗がん剤を自由に(金のある患者だけの自由ですが)使おうというのは、非常に危ない対応ではないかと思います。

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2010年12月16日 (木)

術後3年半の定期検査

今日は術後3年半の定期検査でした。 CTも血液検査での腫瘍マーカーも異常なし。肝臓へも局所でも再発、転移はありません。

ほっとしました。まだ再発の可能性はあろうかと、そのときの質問事項もシミュレーションしていったのですが、杞憂に終わりました。これで半年間は癌のことは忘れていられます。 血液検査の結果をもらい忘れました。先生もすっかり忘れてしまったようです。確かCEAが3.6、CA19-9が19位だったと記憶しています。 今日はこれからチェロの今年最後のレッスン。終わった後で忘年会です。しっかりと楽しんできます。

2010年12月15日 (水)

ガンの患者学研究所 (5)

川竹氏は「ガン患研は事業収益を上げることに熱中しているのではないか」との疑問に、次のように答えています。

それでもなお、次のようにおっしゃる方もいます。「ガン患研は事業が多い。利益を上げることに熱心すぎないか」と。

日本のNPO法人の数は今、減ってきています。最大の理由は資金難です。会費など微々たるもの。欧米と違い日本では寄付も殆ど望めず、補助金も小額で運次第。というわけで三年もすれば活動不能。崇高な使命も志も虚しく宙にさまようのです。

だから私は、粗大ゴミを拾って事務所を始めた最初から、事業収益を上げることを自らに厳しく課してきました。

いついかなるときにも、百パーセント患者さんのために。いったん始めた活動は使命達成まで必ず継続。そのためには、経済的に完全な自立が絶対に必要なのです。

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先日ある支部長から、私宛に疑問が寄せられました。「ガン患研はなぜこんなに次々とイベントをやって組織を大きくしようとするのか。それを我々に手伝わせるのはどうも納得がいかない」というのです。

まず第一点。「なぜ次々とイベントをやって組織を大きくするのか」です。

それは、ガン患研と出会える人を一人でも増やしたいから。出会って下さる人が増えれば増えるほど、治る人も確実に増えていく。私はそう確信しているからです。

支部長さん。あなたが今、ガン患研の仲間たちと一緒にウェラー・ザン・ウェルへの道を歩んでゆけるのは、ガン患研がしゃにむに大きくなってきたからです。その幸運を、今も苦しみ続けている人たちにも、分け与えてあげてくれませんか?

ガン患研を手伝うのではありません。かつてのあなたそっくりの、まだ見ぬ後輩たちのお手伝いをしてあげてほしいのです。

確かに多くのNPO法人が財政難から解散したり、"自治体の下請け"となっている現状があります。あるいは暴力団の隠れ蓑となっている例も聞きます。川竹氏の言うことが言葉通りなら、経済的に自立することは、NPOを存続させるには大切に違いありません。

それではNPO法人「ガンの患者学研究所」の財務状況はどうなっているのか。本来なら事業報告書や定款はNPO法人自らがホームページなどで公開するべきものです。NPOキャンサーネットジャパンなどはウェブ上できちんと公開しています。ところがガン患研にはそれが見あたりません。そこで、ガン患研は横浜市の認可を受けたNPO法人ですので、横浜市市民局のHPを調べたら、ガン患研の財務状況が載っていました。

事業報告書の最新版は平成20年(2008年)です。決算期が8月31日ですから、この時期なら平成22年度のものがあっても良さそうですが、昨年度(平成21年度)の事業報告書すら未だに提出されていません。他のNPOではきちんと掲載されているので、横浜市が更新を忘れているということでもなさそうです。更に不思議なのは、事業報告書の期間が平成20年1月1日から8月31日までの8ヶ月間となっているのです。9月から12月までがなく、1年分の事業報告書になっていません。定款 を見ると付則に「この法人の定款変更当初の事業年度は、第37条の規定にかかわらず平成20年1月1日から平成20年8月31日までとし、翌事業年度は平成20年9月1日から平成21年8月31日までとする。」とあるので、一応筋は通っているようです。しかし、役員の任期を規定の例外扱いするなど、なんともおかしな動きをしている様子が見て取れます。内部事情で何らかの問題があったのかもしれません。

さて、8ヶ月分の事業報告書を見ると、セミナー・講演会の事業収入が約2600万円、寄付が346万円。これが主な収入源です。会費収入はゼロです。いのちの田圃の会会員はNPO法人の正会員ではないようです。するといのちの田圃の会費はどこの収入となるのか、この報告書だけでは不明です。

ガンの患者学研究所と同じ住所番地には(株)人間出版と日本ウェラー・ザン・ウェル学会が登録されています。電話番号こそ違いますが同じ団地の一部屋です。(株)人間出版は1998年に設立され、株主は川竹氏一人(大株主)で代表者も川竹氏です。社員は5人の、要するに彼のワンマンオーナー企業です。この前年にガンの患者学研究所を設立したとされていますが、ガン患研がNPO法人になったのは2003年ですから、その5年も前に(株)人間出版が企業活動を始めています。

(株)人間出版は川竹氏の著作や「いのちの田圃」を主に販売しており、他には圧力鍋や「お手当グッズ」などもあります。この人間出版の売上が年間約2億円です。NPO法人の事業報告書はまともに提出していませんが、株式会社の決算報告書はきちんと出しているようです。税務署は怖いですからね。東京商工リサーチのデータベースを検索すると、最近のデータは2009年8月決算のものです。

売上  198,477(千円)  利益  8,981(千円)  配当なし

税引き後の利益率4.5%ですから営業利益率は10%ほどになるかもしれません。社員数5人の企業としては優良企業です。配当はなしですが、川竹氏への印税や報酬を払ったあとの利益でしょうから、業績としてはたいしたものです。裏方のはずの人間出版の売上高が、NPOガン患研の収入の7倍もあるのです。

NPOガン患研と(株)人間出版の連携した活動。ビジネスモデルとしては成功しています。NPO法人の講演会・イベント活動で「いのちの田圃」の会員を集めて支部をつくる。その会員が手弁当でイベントの運営には協力してくれるから経費は最小限でよい。NPOがおこなう「がんの啓蒙活動」としてニュースになる。マスコミが宣伝してくれるから、宣伝費はかからない。今生きているがん患者を集めただけの千百人集会は、参加費24,000円と高額でも喜んで参加してくれる。大きな宣伝効果と財政を潤す効果の一石二鳥である。看板として安保徹氏や船瀬俊介氏の顔を借りておけば、がん患者は疑うことをしない。こうした活動の結果は最終的に(株)人間出版の売上へとつながっていく。たった5人の社員であっても十分に利益を上げていくことができる、というビジネスモデルです。

先の支部長たちの疑問に「ガン患研を手伝うのではありません。かつてのあなたそっくりの、まだ見ぬ後輩たちのお手伝いをしてあげてほしいのです。」と立派な志を述べるのは、昨年と今年の「事業報告書」を自らのホームページに載せてからにしませんか。でなければこれらの疑問に答えたことにはならないでしょう。

膵臓がん患者の「治ったさん」を100人、いや10人でも集めたならば、川竹式療法を信じる気になるかもしれません。(おわり)

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2010年12月14日 (火)

ガンの患者学研究所 (4)

川竹氏の『ガン・治る法則12カ条』には部分的に見れば賛同できるものも少なくありません。例えば「どんなときにも希望はある」。たとえ末期であっても希望を持つことは大切です。治った患者と会って勇気をもらうこともその後の治療に役立つことでしょう。「余命宣告はあてにならない」などはあたりまえすぎて、反対のしようがありません。「心こそ治す力」だというのも、プラシーボ効果を挙げるまでもなく、心が身体に(癌にも)影響することはあるはずですから、言葉通りの意味であるのなら賛同できます。

しかし、「がんは生活習慣病であると国立がんセンターも認めている」のは確かですが、ストレスや欧米型の食事ががんの大きな原因だとして、「原因がなくなれば、ガンという結果は必ずなくなる」と言うのは論理的に飛躍しすぎでしょう。原因を取ったからといって、それだけで結果がなくなるはずはありません。「できちゃった」からといって、その夜の行動をなくすれば「できちゃった婚」をしなくてすむわけにはまいりますまい。タイムマシンで過去に行って原因を取り除けば別でしょうが。

がんの原因も①心の持ち方の乱れ②食事の乱れ③ライフスタイルの乱れの3つに整理できるとしています。がん情報サービスに載せられている「新・がんを防ぐための12カ条」や「日本人のためのがん予防法」でも食事や運動、生活習慣、ライフスタイルの改善が重要だとしていますから間違いとは言えません。これらは予防法ですが、既にがんになった患者にもこの方法に準拠するようにと書かれています。しかし、人間は複雑系ですから、原因と結果が一対一には対応しません。多くの要因が複雑に関連して系全体が決まるのですから、これが原因だと言い難いのです。他にも遺伝的要因も、環境中の汚染物質による影響、レントゲン検診による放射線の影響もあるはずです。

川竹氏は「5年生存率の向上はまやかし」だと主張します。CTやMRI等の検査機器の精度が良くなったので小さいがんまで見つけられるようになった。だから「5年生存率が良くなったように見えるだけで、ガンによる死亡者数は増えています。三大療法ではガンは治らない」というのです。川竹氏が言うように「リードタイム・バイアス」や「レングス・バイアス」は存在していますから、5年生存率にバイアスがあるという、その主張は正しいと思います。生存率を見るときには注意が必要です。しかし、そこから「だから現代医療はちっとも進歩していない」と断定するのは性急すぎです。

がん統計が充実している大阪府の調査では、5年生存率の向上はリードタイム・バイアスと医療の進歩の両面があると分析しています。更に言えば、がんの病期をひとくくりにして生存率を批判するのではなく、病期ごとに比較するべきでしょう。生存率にそのようなバイアスがあるのなら、別の指標、例えば死亡者数の経年変化を調査することもできます。がんによる死亡者数が増加しているのは人口の高齢化が進んでいることも大きく影響しています。しかし、年齢構成を調整した年齢調整後の相対死亡率でみれば、膵臓がんのように死亡率の増えているがんもあれば減少しているがんもありますが、がん全体では死亡率は減少傾向にあります。主要国と比較しても日本はむしろ死亡率が低い方です。世界の例を見ない高齢化社会を迎えた日本では、他の病気で死ななくなったからがんになる人が増えたのであり、それにもかかわらず、年齢調整後のがんによる死亡率は近年減少傾向にあるのです。

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抗がん剤についても、船瀬俊介氏の主張をそのまま口移しにして、がんが半分に縮小した状態が4週間続けば有効だとして認可されている、副作用で殺されている、だから抗がん剤は使わない方がよいと主張します。確かに指摘の通りの点はあります。現在は延命効果がなければ認可されないように変わってきていますが、縮小効果だけで認可されていたのは事実でしょう。しかし一方で、抗がん剤が効いてがんが縮小し、おかげで手術ができるようになった患者もいます。縮小効果が無意味だとは断定できません。

川竹氏は食事は厳格な玄米菜食に徹するべきだと主張します。肉はもちろん魚もダメ、卵も牛乳もヨーグルト等の乳製品もすべてダメだというのです。その根拠は、治ったさんの80%以上が玄米菜食をしていた、アメリカの「ガンになってからの食事療法」が菜食主義者の食事を推奨しているから、というものです。私も基本的に玄米菜食主義です。しかし、がんになってからの食生活の効果についての研究は、世界的にも始まったばかりです。はっきりとわかっていることは、とても少ないのが現状です。玄米の効果はあると思いますが、青い魚に多く含まれるオメガ3不飽和脂肪酸の有効性も多くの臨床試験で明らかになりつつあります。肉も魚もダメというのは、これも短絡した思考でしょう。

9万人の日本人を対象にした体重変化と死亡率との関係を調査した多目的コホート研究があります。この研究の追跡調査中に、6,494人の死亡(うち、がん死亡2,888人、循環器疾患死亡1,011人)が確認されました。20歳からの体重変化により3群に分類し、性年齢階級別の死因別死亡率を比べました(図)。どの年齢階級でみても、5 kg以上体重減少の群において総死亡率は高くなっていました。また、5 kg以上体重増加の群においては死亡率の上昇は認めませんでした。体重減少はがんによる死亡率を増加させるのです。多くの医者が、経験からも痩せているがん患者は予後が悪いと言いますが、統計的にも明らかだということです。

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極端な菜食主義で体重が減少した場合は、がんで死ぬ確率が高くなるのです。現にマクロビオティックの大家久志道夫氏の奥さんは子宮頸がんで死亡しているし、久志氏本人も直腸がんに罹っています。奥さんは余命3ヶ月と言われ、それにもかかわらず8年生きたのはマクロビオティックのおかげだと言いますが、マクロビオティックでがんになったとも言えるのではないか。少なくともがんの予防効果はなかったと言えます。

エビデンス主義―統計数値から常識のウソを見抜く (角川SSC新書)

人間の体には脂肪分もコレステロールも必要です。和田秀樹著『エビデンス主義―統計数値から常識のウソを見抜く (角川SSC新書)』には次のように書かれています。

エビデンスの中には、コレステロール値が低いほど「ガンになりやすい」とか「うつ病になりやすい」という傾向が認められているものもあるのだ。次ページに示した2つの図は、それを表わしているものである。これを見れば分かる通り、コレステロール値が低い場合にガンになりやすく、うつ病が治りにくいという傾向が見られるのである。

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うつ病の図は省略しましたが、完全なる食事療法でコレステロールを下げることががんになりやすくするのです。だとすると川竹氏は悪い冗談を言っているのでしょうか。

がんが正常臓器に浸潤していくためには臓器の表面を覆っている基底膜を突破しなくてはなりません。基底膜を超えてもその先にある結合組織の間質中を進んでいかなければなりません。さらには筋膜・胸膜・腹膜・血管壁などのたくさんのバリアーを超えていかなければならないのです。これらが「がんに対する抵抗力」となるのですが、種々の膜の主要な構成成分はコレステロールなのです。がん患者が食事療法で痩せるのは非常に危険です。

「治る法則12カ条」からいくつか見てきましたが、他の”法則”も同じようなもの。生活習慣だとか心の有り様だとかの否定しがたいことや真実の一部分を取り上げて、それに自らの体験を織り交ぜ、条件の異なる現象にも拡大して一般化し「これが正しい」とする手法です。川竹氏の思考法は科学的に問題がありすぎるようです。似非医療法に特徴的な「白黒を付けたがる二分法」の思考です。ここには身体もがんも複雑系であり、原因と結果が一対一に対応しないという複雑系思考はありません。安保徹氏や船瀬俊介氏らとコラボレーションしているから、こうしたトンデモ思考法になるのか、あるいは同じトンデモ思考論者だから寄り集まっているのでしょうか。

そして行き着くところは、現代医療(三大療法)の否定です。「ごく初期の手術までは否定しません」とは言うのですが、治ったさんの体験談も現代医療を拒否してがんを克服したという類の体験談が重要そうに取り上げられているのをみれば、本音は三大療法の否定にあるのでしょう。似非療法の別の特徴に「新造語」の乱発があります。川竹氏もその例に漏れないようで、「自助療法」や「健康貢献度」を造語しています。自助療法とは「患者が自分でできる治療法や健康法のすべて」だそうですが、それがどうして大事かというと「健康貢献度が高い」から。

健康貢献度の図

三大療法は、医者の言うがままに手術台に上がって、ベッドに寝ているだけだから貢献度は小さい。代替療法も、漢方薬を処方されてただ飲んでいるだけではダメで、逆に風邪を引いても自分で直せば貢献度は100%であるというのです。治療に対して積極的に学んだり考えることは大切なことに違いないし、気の持ちようがプラシーボ効果を引き出すこともあるのですから、こうした考え方も確かにできるでしょう。しかし、ここでも「白黒を付けたがる二分法」が顔を出します。三大療法は貢献度が低いからダメとうのもそれです。患者も主体的に治療法を選び、新しい治療法を模索してセカンドオピニオンを受けたり、インフォームド・コンセントで医者と経堂で治療法を決定するのです。川竹氏の目には、患者はすべて無能で受け身の人間に写るようです。川竹氏の論に従えば、ガン患研の言うがままに玄米菜食をやるのは「健康貢献度」が低いということになるのではないでしょうか。

こんなガンの患者学研究所にあなたの命を預けますか?

川竹氏は、ウェラー・ザン・ウェル学会をつくって医学部の教科書をつくるという無謀な計画の前に、川竹式療法で治った人、治らなかった人のデータを出すべきです。2300人のいのちの田圃の会会員がいれば、相当信頼性のあるデータが集まるはずです。(次回へ続く

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2010年12月11日 (土)

『あなたの癌は、がんもどき』近藤誠

あなたの癌は、がんもどき 近藤誠氏が12月7日発売で『あなたの癌は、がんもどき』を出版しています。早速購入しました。

医学界に大論争を巻き起こした『患者よ、がんと闘うな 』(文藝春秋)から15年、孤高の医師、近藤誠が沈黙を破って今語る。最新臨床データに基づく「がんもどき理論」の最終見解!論争再燃必至!

だそうです。購買意欲をそそりますね。

このブログのサイドバーには、近藤氏の『データで見る抗がん剤のやめ方 始め方』を掲げてありますが、これは近藤理論を肯定するからではなく、この本に書かれている生存率曲線の見方が参考になると思ったからです。近藤理論については、正直なところ評価を迷っています。彼の理論的な記述に反論するほどの専門的な知識はないし、かといってがんには「本物のがん」と「がんもどき」があり、本物のがんは発見されたときには既に転移しているという主張には、納得しがたいものがあります。柳原和子さんも『がん患者学』で、近藤氏と親密に付き合いながらも彼の理論に納得したり反発したりと揺れ動いている心情を正直に書いています。

私の場合も、自分に当てはめたらどうなのだと考えたとき、一層分からなくなります。結局「私の場合、手術したことがまちがっていたのか」という問いに明確に回答をすることができません。膵臓がんで、手術できるにもかかわらず手術をしないということは、賢明な選択とはどうしても思えない。しかし、近藤理論では手術はデメリットの方が多いと言います。ですが、手術を拒否していれば、確実に私は今生きてはいないでしょう。

近藤理論に対する私の当面の結論は、膵臓がんでは「がんもどき」は希であるはずだ。つまり膵臓がんはほとんどが「本物のがん」と考えて対処すればよい、というものです。5年生存率4%程度ということは96%が亡くなるのだから「本物のがん」ということになる。したがって、膵臓がんについては近藤理論の妥当性を考える必要はない。しかし、転移や再発の場合に抗がん剤をやるべきかどうかという点については、近藤理論を整理しておく必要がある。これが当面の結論です。

今回の本では近藤氏のこれまでの主張を一部変更した点もあると書かれています。まだ三分の一ほどしか読んでいませんが、これまでの本よりは患者に分かりやすく書かれているようには思います。「ガンの患者学研究所」との関連で言えば、自然退縮は結構経験しているとも書かれています。自然退縮はがん細胞の遺伝子プログラムでアポトーシス(細胞の自殺)をスタートさせるスイッチが押された時であろうと示唆しているのが印象に残りました。

第8章の「臓器転移と局所再発-そのとき患者は何を選択すべきか」は、私の解決すべき疑問でもあります。再発したときには「無治療でいく」ことを選択肢の1つ(他はペプチドワクチンと休眠療法)にしていますが、近藤氏がどのように主張するのか気になります。

名医の「有害な治療」「死を早める手術」 (だいわ文庫) 名医の「有害な治療」「死を早める手術」 (だいわ文庫)
近藤 誠

がん治療総決算 (文春文庫) 患者よ、がんと闘うな (文春文庫) 成人病の真実 (文春文庫) データで見る抗がん剤のやめ方 始め方 あなたの癌は、がんもどき

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2010年12月10日 (金)

ウコンの品質、安全性・副作用

ウコンの話題を2回にわたって記載しましたが、市販のウコンにはクルクミンの含有量が少ないかほとんど含まれていないものをあります。

ウコンには3種類あり、

  • 春ウコン(日本名:キョウオウ 学名:Curcuma aromatica Salisb)
  • 秋うこん(沖縄名:うっちん 学名:Curcuma longa L.)
  • 紫ウコン(ガジュツ)

紫ウコンにはクルクミンはほとんど含まれていません。秋ウコンには多く含まれていますが、この他に「原種ウコン」という野生のものもあります。これがいちばんクルクミンの含有量が多いそうです。三重保健所の調査データによれば「原種ウコン粉末(沖縄産)」のクルクミン含有量が一番多く、8.0%となっています。「市販ウコン末の品質評価.pdf」をダウンロード

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健康食品の安全性・有効性情報でウコンのページには

危険情報
   
・食物中に通常含まれる量であればおそらく安全と思われる(64)。
・妊娠中の多量摂取は、月経出血と子宮を刺激するので使用しない(64)(66)(22)。
・授乳中の薬用量の摂取については信頼できるデータが充分でない(64)(66)。
過剰にまた長期間摂取すると、消化管障害あるいは消化管の不調が起きることがある(64)(63)。
・治療目的で用いられる摂取量は、胆管障害または胆石には使用してはならない。アキウコン(C.longa)は胃潰瘍または胃酸過多には使用してはならない(22)(64)(63)。
免疫が抑制されている人は、使用する際に注意が必要である(63)。
・健常成人11人(21-38歳)を対象とした無作為化クロスオーバー比較試験において、ウコン2.8g/日(シュウ酸塩55mg含有)を4週間、サプリメントとして摂取させたところ、シュウ酸塩付加試験(シュウ酸塩63mg含有ターメリック3.2g摂取)における尿中シュウ酸塩排泄量が増加したという報告がある(PMID:18469248)。
・C型慢性肝炎や慢性B型肝炎、II型糖尿病などの原疾患のある成人11名(男性8名、女性3名、平均年齢54歳)においてウコンとの関連が疑われる肝障害が報告されている。ウコンの摂取期間は3日-5年、11名のうち追跡可能であった10名は摂取中止により回復、回復または軽快までに要した期間は1日 -37週であったという報告がある(101)。
・C型慢性肝炎の患者は鉄過剰を起こしやすいことから鉄制限食療法が実施されるが、アキウコンの製品には鉄を多量に含有するものがあり、注意が必要であるという報告がある(PMID:17048058)。
ウコン摂取との因果関係が疑われる健康被害が報告されている。
 1) 薬剤性肝障害22例のうちウコンによるものが11例ある(2004263248)。これらの事例報告ではウコン摂取量、摂取期間、また、摂取した対象者は不明。
 2) 子宮筋腫による子宮全摘術、卵巣嚢腫による卵巣摘出術を受け、アルコール性肝障害の診断を受けた50歳女性が、原種ウコン茶を摂取(摂取量は不明)したところ、摂取後12日で皮膚掻痒・嘔気が生じ、摂取後18日で眼球黄染を発症した (2005140108)。
 3) プレドニゾロンでコントロール良好な自己免疫性肝炎の66歳女性がウコン製品(成分と摂取量は不明)を約10g/日、約4ヶ月摂取したところ、自己免疫性肝炎が増悪し、ウコン摂取を中止したところ、肝機能検査値(GOT、GPT、γ-GTP値)が正常値に近づいた(2002028078)。
 4) 58歳男性、繰り返す顔面の色素斑を主訴とし、ウコンによる薬疹と診断された(2004276909)。
 5) 66歳の男性が自家栽培のウコン茶を毎日1年間摂取したところ、全身に痒みを伴う皮疹が出現した(2004276908)。
 6) 61歳男性で漢方外用剤による皮疹が出現し、漢方外用剤に含まれるウコンによる接触性皮膚炎と診断された(2000183593)。
 7) 32歳女性が健康食品としてウコンの錠剤を10錠/日、約2ヵ月服用したところ、著明な高脂血症と肝障害をきたした(2006127731)。
 8) 57歳男性が健康食品としてウコンを2年間内服したところ、全身に痒みを伴う紅斑を認め、ウコンによる薬疹と診断された(2007023541)。
 9) 糖尿病と脂肪肝を患っている30代男性が、飲酒時にウコンを酒に混ぜて1ヶ月程度摂取したところ、肝機能が低下した(2006127897)。
 10) 軽度肥満でよく飲酒をする30代男性がウコンを大量に摂取していたところ、肝機能が低下して入院し、その後死亡した(2006127897)。
・職業的にウコンを使用していた64歳男性と59歳女性が、手や前腕、足の甲に紅斑や硬化、丘疹、水疱、掻痒などの症状を呈し、接触皮膚炎と診断された報告がある(PMID:9686976) (PMID:2960490)。
・健常者12名(男性7名、女性5名)を対象とした二重盲検クロスオーバー試験において、クルクミン20㎎を経口単回投与したところ、摂取後2時間にわたって胆のう萎縮が起こったという報告がある(PMID:10102956)。
・胆石の人は医師に相談してからのみ使用可である(23)(58)(63)。

禁忌対象者
・胆道閉鎖症の人には禁忌(23)(58)。

またWikipediaでも次のように書かれています。

ウコンの安全性・有効性・副作用について

健康食品としてウコンが注目され、ウコンを含有する健康食品も多数販売されているが、その安全性・有効性については、国立健康・栄養研究所のデータベースによると、有効性としては、ヒトの消化系・肝臓の症状改善や、参考として試験管内・動物他での作用、効果等が述べられている。危険性情報としては、摂取量、摂取期間、また、摂取した対象者は不明であるが、薬剤性肝障害22例のうちウコンによるものが11例ある等が述べられている。また日本肝臓学会の診断基準を満たした薬剤性肝障害症例(14施設 84症例)のうち、ウコンによる薬剤性肝障害は25%を占めたとされた。なお医療機関で処方される医薬品漢方薬の中には、ウコンを含有するものは存在しない[2]。クルクミン大量摂取による肝臓の脂肪変性も報告されている[3]。

以下の場合は、ウコンの摂取を控えるべきとされている。特に肝障害患者においては、サプリメントとして市販されている通常量で重篤な状態に陥った例が少なからず報告されている。またウコンによって自己免疫性肝炎を併発した可能性のある症例の発表もある[4][5]。 

    * 黄疸
    * ヘルペス
    * 妊娠中
    * 自己免疫性疾患
    * ウイルス性肝炎
    * 慢性肝炎
    * 肝硬変
    * 胆嚢炎
    * 消化性潰瘍
    * 胆石
    * 尿路結石

ウコンを含有した外用薬も市販されているが、これによるアレルギー性皮膚炎も報告されている[6]。

以上のように、しばしば「ウコンは肝臓によい」と言われながら、実際には肝疾患への投与は推奨されておらず、肝臓疾患を改善させるどころか、死亡例(2人:2004年)[7][8][9]を含んだ重篤な副作用の報道・報告があり、安易な内服は慎むべきとされている[10]。

肝臓によい、二日酔いに効くといわれるウコンですが、この情報を見ると逆に肝臓機能への悪い影響が心配されます。

がん患者がウコンを摂るべきかどうか? 少なくとも末期がん患者が大量に摂ることは慎むできでしょう。それ以外は自己責任・自己判断です。希に起きる副作用を心配するか、確かかもしれない癌への抗炎症作用を期待するか、それぞれその人の価値判断でしょう。

私は・・・・カレーライスを食べる機会を増やして、気が向いたときにパンに塗ってみる。肝機能をチェックしながらこれまでよりは摂取量を増やしてみることにします。ウコンに限りませんが、サプリメントは「一品主義」、多いほど良く効くだろうという「大量主義」は危険です。

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2010年12月 8日 (水)

ガンの患者学研究所 (3)

川竹氏は「人間はなぜ治るのか」の番組に大幅な追加取材をして、2年後に『幸せはガンがくれた』を出版しました。しかし、この本にはK病院関係者はすっぽりと抜け落ちています。それについての説明はまったくなく、こっそりと外しています。代わりに帯津三敬病院が付け加えられています。さすがに気がとがめたのかもしれません。

ガンの患者学研究所(以下、ガン患研)は2003年に「ガンを治したい千人と治った百人」を集めて千百人集会を開きました。今年(2010年)6月には第2回千百人集会を開いています。この集会は運動の成果を世間にアピールするチャンスであり、活動の資金面でも大きなウエイトを占める一大イベントです。第1回千百人集会に参加した(会場には入れなかったそうだが)船瀬俊介氏は、会場へ向かう道路が参加者でいっぱいだったと感慨深げに書いていますが、果たしてそうなのでしょうか。

ガン患研では「治ったさん」を次のように定義しています。
<基本3原則>

  1. ガンがない
  2. 生活習慣が改善されている
  3. 自他ともにウェラー・ザン・ウェルと認められる

<付帯条件>

  1. 末期、Ⅳ期、Ⅲ期の人は最後の治療から3年以上経過
  2. Ⅰ期、Ⅱ期の人は最後の治療から5年以上経過
  3. 自然退縮の場合は何期であってもガンが消えてから1年以上経過

これに当てはめると、私も「治ったさん」の資格がありそうです。どんな内容なのか、無料なら私もこの集会を覗いてみようかと思っていましたが、参加費用24,000円には、驚いて止めました。

日本には300万人のがんサバイバーがいるといわれています。毎年30万人が新たにがんと診断されます。この中から100人の治ったさんと1,000人の治りたい人を集める、生きているがん患者を1,100人集めることが、どうして世界初の大変なことなのでしょうか。7年前の第1回の集会に参加した「治ったさん」124人のうち、再発した人はいないのでしょうか。不幸にして亡くなられた人は一人もいないのでしょうか。だとすると、2回目の今年の「治ったさん」100人の中の10人程度は今年の集会に参加していそうなものですよね。

自然退縮=奇跡的治癒が起きて、がんが消滅する例はたくさん報告されています。例えばキャロル・ハーシュバグの『癌が消えた』などにも紹介されています。日本でも池見酉次郎氏や中川俊二氏が報告しているとおりです。『幸せはガンがくれた』には、川竹氏が中川氏を取材したときの様子も書かれています。私は自然退縮の存在を否定するのではありません。プラシーボ効果のように、心が病気を治すことは万人が認めています。従って、自然退縮(自然治癒)の例も精神と免疫の関係として積極的に研究して欲しいと考えています。

この本の中で、中川俊二氏の説として、がん患者の500人に1人は自然退縮しているだろうと書かれています。すると300万人のサバイバーのうち自然退縮した患者は6,000人ほどいるということです。今年の「治ったさん」100人のうち自然退縮した人は13人だそうです。6,000人の中から13人を集めるのは簡単なことのように思えます。川竹氏の言う自然退縮とは、西洋医学による治療を受けないでがんが消失した患者ですから、残りの87人は西洋医学による治療を受けた「治ったさん」ということになります。(この点は重要です。なぜなら川竹氏は三大療法は効果がないとして、事実上これを否定しているからです。これについては後で触れることにします)

このようなサバイバーの体験談を集めても、そこには客観的な法則=こうすればがんが治るという法則を見出すことはできません。「生きているがん患者を集めただけではないか」という疑問に答えることにはならないのです。

ここではガン患研の治療法を仮に「川竹式療法」としておきます。治ったさんは、たまたま治る時期に川竹式を行なったのかもしれません。あるいは、西洋医学による治療が時間をおいて効果を現わしたのかもしれません。川竹式療法を行なったが効果がなく再発・転移してしまった人は無視されています。休眠療法のU医師のクリニックには、名指しはしていませんが、川竹式を忠実にやったが効果がなく、どうしようもなくなった状態で助けを求めてくる患者が何人もいると書かれています。こうした「治らなかったさん」についてガン患研は一切触れません。100人の「治ったさん」の影に何百人、何千人の「治らなかったさん」がいるのでしょう。

パチンコを例に考えてみます。パチンコに勝った100日を分析します。ここでは簡略化して、勝った日にはある釘が右に傾いている台だったとします。これで「パチンコ必勝法」の攻略本を書けるかもしれません。実際、巷にはこの程度の攻略本が氾濫しています。しかし、負けた100日では台の釘はどのような状態だったのでしょうか。勝ったときと同じに右に傾いていたのか、それとも左だったのか。少なくとも負けた100日と比較しなければ、釘の傾きが勝因かどうかはわからないでしょう。(パチンコはやったことがないので、これ以上の深追いは止めておきます)

疫学的調査の基本的な方法を使って、川竹式療養を「やった、やらなかった」と「治った、治らなかった」で2×2の表をつくります。
次の表のマス目に該当するA,B,C,Dの人数を埋めます。

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千百人集会に参加した100人の「治ったさん」はAに入ります。A=100です。体験談はいつもA=100だけを宣伝します。しかし、もしかすると同じようにB=100だったのかもしれません。あるいはBの方が数倍も多いということも有り得ます。Aが100人いようが、Bが500人いれば「川竹式療法」は効果に疑問があるということになります。治らない人の方が多いということです。あるいは、A=100人でB=50人だけれども、C=D=100人いたとします。この場合は治ったのは「川竹式療法」のおかげではない、別に原因があるだろう推測されます。

ガン患研がCやDを調査するのは難しいかもしれませんが、Bが何人かは調査すればわかるはずです(もっとも、治らなかった=死亡ですから、困難な調査にはなるでしょう)。Aをいくらセンセーショナルに取り上げても、B,C,Dのデータがなければ、科学的に有効で納得させるデータにはなりません。

ガン患研のオフィシャルwebには「治ったさん」の体験を実名で紹介しているページがあります。ここに登場する19人のうち、ガン患研の設立(平成9年)以前に発病した方が13人です。昭和41年に乳がんを発病した方まで「治ったさん」とされています。確かに上記の治ったさんの定義には、川竹式療法を実行したとか、『いのちの田圃』の購読者だとかの条件はありませんから、目くじらを立てることではないかもしれません。しかし、要するに"がんになったが生きている人"の体験談を集めて書いてあるだけなのです。(膀胱がんのⅤ期、前立腺がんのⅤ期という方がいますが、がんの病期に"Ⅴ期"があったっけ??)サメの軟骨やアガリクスの宣伝本と何の違いもありません。

とは言っても、彼らの言うことはすべてでたらめで根拠がないとは私は考えていません。そんなことを言えば、その主張が非科学的です。体験談にはまったく価値がないとも考えません。第1回の千百人集会に集まった「治ったさん」124人の80%以上が玄米菜食をしていたそうです(無作為抽出ではないから数字の信頼性は低いが)。そして玄米(全粒穀物)には抗炎症作用があるという研究を合わせてみると、玄米菜食ががんに効果がありそうだという主張がより確からしさを増してくることになります。たった1例の体験からでもより詳細な研究へのきっかけになることもあります。それにはAとBを(更にはC、Dも)比較すること必要です。

一般にニセ科学(似非療法)には次のような特徴があります(菊池誠氏の著作より)

  • ニセ科学(似非療法)は白黒をつける
    二分法をよく使います。ストレスは体に悪い。低体温は病気の元だから暖めればがんも治る。マイナスイオンは悪くてプラスイオンは良い。人間も自然も複雑系ですから、絶対によいものや絶対に悪いものはなく、物事のすべてに両面があるのです。この前の記事に書いたように、本当に科学的であろうとすれば、歯切れが悪くなるのです。
  • ニセ科学(似非療法)は脅す
    「抗がん剤で殺される」などがいちばんわかりやすいですね。水道水にはトリハロメタンが含まれているから飲んではいけない。携帯電話で脳腫瘍が増える、などもこの類です。川竹氏も玄米菜食をいい加減にしている会員を烈火のごとく怒ったそうです。
  • ニセ科学(似非療法)は願いをかなえる
    かなえてくれるように見えるだけですが。それでも「もう治療法はありません」と言われた患者にとっては「最後の希望」に見えるのですね。書店に氾濫する健康本のタイトルを列挙してみれば説明は不要でしょう。私も最初はわけも分からずにずいぶん買いましたが・・・。

ガン患研はホメオパシーとも親和性がありそうです。第2回千百人集会の総合司会を務めた鎌田進さんは、SAMホメオパシーコンサルティングを運営する認定ホメオパスでした。ま、親和性があって当然というか、驚くことではありませんがね。(次回に続く)

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2010年12月 6日 (月)

六義園の紅葉&ライトアップ

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六義園の紅葉を観てきました。夕方のライトアップまでゆっくりと滞在し、吹上茶屋で抹茶とお菓子をいただいたり、地元のおいしいゆず羊羹を買い求めました。このゆず羊羹は、ゆずの香りと酸味が羊羹の甘さと解け合って、絶品です。

岩崎家ゆかりの地 六義園
 六義園は、五代将軍徳川綱吉の寵臣・柳沢吉保によって造られた和歌の趣味を基調とした回遊式築山泉水庭園です。江戸時代に造られた大名庭園の中でも代表的なもので、明治期には三菱の創業者である岩崎彌太郎の別邸でもありました。昭和28年に国の特別名勝に指定されています。

ライトアップ時には園内では三脚は使用できないということなので、一脚を持って行きました。青い光で川の流れと霧をイメージした演出は、迫力がありました。

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スライドショー

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2010年12月 4日 (土)

ガンの患者学研究所 (2)

「転移はがん細胞が弱った証」という安保徹氏の論理は、ホメオパシーの「好転反応」と同じです。レメディを飲んでいて症状が悪化したとき、「それはよくなる前に一時的に悪化することがあり、好転反応です」と主張します。適切な治療を受ける機会を失ってしまう点では、安保氏の「転移はがんが弱った証」も同罪でしょう。安保氏は川竹文夫氏が理事長を務める「日本ウェラー・ザン・ウェル学会」の副理事長を務め、ガンの患者学研究所が主催する講演にもたびたび登場しています。

Wshot200193_2 NPO法人ガンの患者学研究所は、元NHKディレクターの川竹文夫氏が代表を務めています。川竹氏は1990年に44歳で腎臓がんが見つかり手術します。その後再発予防のインターフェロンを10日ほどで中止し、それ以後はNHKディレクターの立場を生かして国内外のがんからの生還者を取材して回ります。その取材の結果を3本の1時間番組として1993年に、NHK教育テレビスペシャル『人間はなぜ治るのか』にまとめて放映します。

本人が「伝説の番組」というほど、放映後の反響はすさまじかったと言います。第1回にはそうした生還者、再発した乳がん、余命一週間の肝臓がん、直径12センチの乳がん、末期の胃がん、一晩に2度も意識不明になるほどの膵臓がんからの生還者たちが実名で登場します。膵臓がんの患者は、吹雪の中、病院の庭をたった独りで歩いた、と言います。それが生還者になった理由だろうと。また、第3回は「アメリカ編 イメージの治癒力」と題して、末期の脳腫瘍をイメージ療法で克服した少年が紹介されます。がん患者が実名で堂々と自分のがん体験を語り、「私はがんと精神的にどのように闘ったのか」が番組のテーマでした。全体としてがん患者に希望と勇気を与える内容であり、大きな反響をよんだことも理解できます。まだ十分解明されているとは言えないにしても、自然治癒力、精神神経免疫学が明らかにしつつある心と免疫との深い関係については、このブログでも肯定的に紹介してきました。

問題なのは第2回目「心がガンを治した」の内容です。第1回と第3回に紹介されている病院や患者はすべて実名で登場するのですが、第2回では病院名が「東京K病院」「三重県Y外科病院」「料理教室」と匿名で紹介されています。第2回目の番組の半分近くをこのK病院の紹介に費やしていますが、K病院とは「ホリスティック京北病院」のことで、反社会的な霊感商法を行なっている統一協会系の病院でした。番組には4人の患者が涙ながらに自分の体験を話します。更に宮崎県在住の長友明美さんの体験が紹介されます。アメリカで子宮絨毛がんで余命半年と言われた彼女は、手術を拒否して帰国します。「がんは不治に病ではないと、信念と希望を持ち続けた」「がん細胞を、許せ、愛せ、団結せよ」と言い続けたと証言しています。この長友明美さんは、講談社から『神さま! 産ませて―子宮ガンと闘い双子出産の母の記録』『がん治療を医者任せにするな!!』という体験本を出している統一協会員でした。有田芳生氏の『「神の国」の崩壊―統一教会報道全記録』に詳しく書かれています。

「神の国」の崩壊―統一教会報道全記録

一般の視聴者は、長友さんの体験談に素直に感動したことだろう。しかし、まったく別のことを感じた視聴者もいた。統一教会の元信者たちである。
「長友さんが『許せ、愛せ、団結せよ』という言葉を三度も繰り返したのを聞いてピンときました。これは統一教会の文鮮明教祖の言葉なのです。文鮮明は、一九七二年のウォーターゲート事件で再選を危ぶまれたニクソン大統領を応援する広告を出しました。そのスローガンが『許せ、愛せ、団結せよ』で、統一教会の信者なら誰もが知っている言葉なのです」(元信者)実は患者の長友明美さんも、K病院医師の林田繁氏も、統一教会のもっとも重要な伝統儀式である合同結婚式に参加しているのだ。林田氏は、一九八二年にソウルで行われた六千組の合同結婚式に、長友さんは一九七五年にやはりソウルで行われた千八百組の合同結婚式に参加した。その後、二人は統一教会の内部機関紙『祝福』や『ファミリー』にも紹介されている。

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K病院は一九五一年一月に医療法人として設立され、九二年九月二十八日に小林常雄氏が新しい理事長に就任している。小林氏はペンネームを天林常雄といい、「ホリスティック・メディカル・クリニック」という病院の院長を務めていた。この「ホリスティック・メディカル・クリニック」と林田氏が院長だった「ホリスティック・天王台・クリニック」が合併して『K病院』こと京北病院となる。近く「ホリスティック京北病院」と改められるという。実は天林こと小林氏も一九七五年の合同結婚式に参加、一九七九年に一心病院の副院長に就任、五年前に辞任している。
「この一心病院というのは、文鮮明教祖が提唱したもので、命名も文鮮明教祖。病院のパソフレットに、文鮮明夫妻の写真とともに創立の経緯が記されています」(教会幹部)

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ガン患者に向かって「死にたくないのならばどれだけお金が出せるのか」と言って、多額の金を巻き上げる統一教会系の病院がある。東京・巣鴨にある京北病院(「ホリスティック・メディカル・クリニック」を吸収。天林常雄理事長)がそれである。
統一教会信者が行っている霊感商法とは、人が生きていれば直面するなんらかの不安に付け込んで、その原因が先祖の因縁にあると脅し、壷や多宝塔、一和の高麗人参濃縮液などを不当に高額で販売してきた悪徳商法である。ところが天林常雄氏が行っていることといえば、それどころか人間の根源にかかわる生死の問題を「死にたくないのなら」と脅して不当に高額な金銭に換算させる。「究極の霊感商法」であると言わねばなるまい。
『99%ガンは防げる』『親が子どもを「ガン」にする』などの著者である天林常雄氏は、これまでどのような診療を行ってきたのだろうか。

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この番組に協力した「自然治癒力を考える会」は、京北病院を紹介してもらっては困る、とNHKに申し入れていたが無視されて匿名にして放映されましたのでした。しかも視聴者からの「病院名を教えて欲しい」という問い合わせには「会」のメンバーの電話番号を教えて、その人には400本もの電話が殺到して仕事にならなかったと言います。

この番組で紹介された「体外循環式全身温熱療法」は、感染症などの弊害があり今では行なわれていません。健康保険の利く「局所温熱療法(ハイパーサーミア)」とはまったく別物で、高額な自由診療の治療法でした。しかし、番組ではこうした点を批判的に報道することはありませんでした。

このように「人間はなぜ治るのか」は問題のある番組ですが、制作したディレクターの川竹氏にとっては、その後のガンの患者学研究所活動へと進むきっかけとなった”ご自慢の”番組のようです。ガン患研のウェブでもよく語られています。番組を録画したDVDも有償で貸与していました。

自分で言うのもなんですが・・・ 伝説の番組・教育テレビスペシャル『人間はなぜ治るのか』です。」と述べて”自慢の番組”であることを誇っています。NHKの集金人からディレクターへと奇跡的に出世した川竹氏にすれば、人生の財産なのかもしれません。しかし、「放送後、何日もNHKの電話は鳴りやみませんでした。」とはつまりK病院、Y外科病院を教えて欲しいという電話なわけです。自分が取材した統一教会系の病院に、こんなに反響があったと今でも自慢げに語っているのです。ここには公共の電波に反社会的団体を取り上げて宣伝をしたやったという反省は微塵もありません。

その後1999年7月9日には、全国霊感商法対策弁護士連絡会が、『週刊読売』編集部と発行元の読売新聞社に対し、ホリスティック京北病院のがん治療を賞賛した記事を掲載したことについて、記事掲載の経緯やこの病院の問題の認識など5点についての公開質問状を送りました。これに対して読売新聞からは7月20日付で回答がされています。こうした事件もあったのですから、川竹氏が、K病院が反社会的活動を行なっている統一協会系の病院であったことを未だに知らないということはないでしょう。この番組を自慢し続けているのは、自分の活動や主張に都合がよければ反社会的組織であろうが何でもかまわないという、川竹氏の弱点を表わしているのではないでしょうか。(次回へ続く)

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2010年12月 3日 (金)

「ウコンが膵臓がんに効く?」の続報

Img_3707_2 11月4日のブログで、ウコン(ターメリック、クルクミン)ががんに有効だという研究発表の話題をアップしました。今日、シュレベールの『がんに効く生活』を読み返していたら、「ターメリックには強力な抗炎症作用がある」と題して、M.D.アンダーソンがんセンターのバーラト・アガルワール教授の実験を紹介していることに気づきました。(産経の記事と表記が違いますが、同一人物でしょう)記憶に残っていないから、読み飛ばしてしまったようです。

ターメリックの根の黄色の粉末ほど強力な抗炎症作用がある食物成分はほかにない。抗炎症作用を引き起こす主な成分はクルクミンである。実験によると、クルクミンは、結腸がん、肝臓がん、胃がん、乳がん、卵巣がん、白血病など、さまざまな種類のがんの成長を抑制する。また、血管新生を抑制する効果もあるうえに、″アポトーシス″と呼ばれる細胞の”自殺″によりがん細胞を死減させる効果もある。
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アガルワールは、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得したあと、遺伝子工学で有名な製薬会社ジェネンテック社に生物学者として初めて雇われ、がんに対する新たな化学療法を求めて研究を始めた。そして一九九〇年代に、炎症性因子が腫瘍の成長に果たしている役割を発見する。その炎症性因子のひとつが、有名なNFカッパBである。アガルワールはのちに、ある論文の中で、がん細胞内のNFκBの有害な作用を抑制できるかどうかが”生死を分ける問題である″と書いている。
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台湾では、ゼラチンカプセルに入れたターメリックを使用して腫瘍の治療を行う実験を試みたが、吸収率がきわめて悪くなることが判明している。実際、カレー料理に使用される場合と同じように若干の黒コショウを混ぜないと、ターメリックは腸壁から吸収されない(単なるコシImg34701725_2ョウでは効果がない)。黒コショウは、ターメリックの吸収率を二千倍も高めてくれるからだ。インド人は、科学が証明するはるか以前から、食物に自然に備わっている相乗作用を知っていたのである。

乱暴ですが、下に該当の箇所をPDFでアップしました。(何度も書きますが、『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」』はぜひともじっくりと読んでみるべき本です。)「curcumin.pdf」をダウンロード

ターメリックにひとつまみの黒胡椒を混ぜ、バージンオリーブ油で解かしたものが最高の組み合わせです。

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2010年12月 2日 (木)

ガンの患者学研究所 (1)

安保免疫理論と上野式代替医療でガンは治る―なぜ三大療法でガン患者は治らないのか? 久し振りに安保徹氏に関することです。安保徹氏は非常に分かりやすい(トンデモ)人物です。『安保免疫理論と上野式代替医療でガンは治る―なぜ三大療法でガン患者は治らないのか?』から何カ所か拾ってみましょう。

上野 先生の理論でいえば、病気の起こり方はどれもいっしょ。それがどこの部位で起こるかによって病名が変わってくる。ですから、治し方もいっしょ、なのですね。

安保 そうです。病気の起こり方が全部いっしょなのですから、治し方もいっしょなのです。

上野 将来的には、「ストレス解消センター」をつくれば、すべての病気がそこで治ることも可能になりますね。

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安保 今年から、サラリーマンの厚生年金保険の自己負担額が二割から三割に増えました。きっと病院に行く人が少なくなるでしょう。自己負担額が増える→病院に行く人が減少→病気が減る(笑い)。なんとも皮肉な方程式ですが、私の持論です。

すべての病気はストレスが原因だから、ストレスをなくせばよいという、人間が複雑系だという認識のかけらもない、単純な思考方法の持ち主です。「厚生年金保険」は「健康保険」の単純な間違いだということは措いておくとしても、患者の自己負担を増やせば病気が減るなどという暴論を平気で口にする。

安保 ガンの末期になると、痛みが強くなります。WHOが痛みを取り除く方法などと言って、麻薬(モルヒネ)の使用を推奨しています。私は、それにも反対です。

上野 麻薬は法律で禁止されているのに、ガンの末期になったらどんどん打てだなんて、矛盾していますよね。

安保 本当にそう。そんなに麻薬がいいなら、若い人にも開放すべきなんです。
麻薬を使うと、リンパ球がすぐに、すべて破壊されます。麻薬を使い始めると、2、3日はハッピ-でいられる。でも、目は虚ろだし、コミニケ-ションできません。
最近、困るのは、若い医者たちが、ガン患者さんのために痛みの予防として使い始めたことです。私は「未来免疫療法」ならば、末期の患者さんでもガンが消える可能性があるのに、麻薬を使ってしまうとその可能性がゼロになる。

これはひどい話です。「ガン患者にいいのなら、若い人にも勧めればよい」という子供じみた論理を展開するとは、どういう脳みその構造をしているのか、本当に医学博士なのかと疑ってしまいます。WHOの三段階除痛ラダーについて勉強もしていないし、実際の臨床での経験も見ていないに違いありません。麻薬でリンパ球が破壊されるなどということは、モルヒネを打った患者の血液を検査すればすぐに分かることでしょう。こんなにすぐに分かるウソを平気で言うという厚かましさにはあきれかえります。上野さん、本当に医者なの? 先に紹介した『がんの最後は痛くない』の著作でも読んで勉強し直してください。疼痛治療に対して麻薬を適切に使用することは世界の標準になっています。むしろ日本ではまだモルヒネの使用量が少なすぎるといわれています。麻薬を適切に使用することによってがん患者のQOLが保たれ、結果的に余命も延び、よく眠れて食欲も増すのです。

安保 私は、ガンの痛みも治癒反応だと思います。さっきは転移のときに熱が出るって言いましたけど、末期の痛みでも熱が出るものなんです。でも、その痛みはガンを殺す闘いの反応なんです。だから、患者さんに「その痛みを死ね気で一週間我慢していてごらん。そうしたら、ガンは見事に消えるよ」と言うんです。

自然に、体が温熱療法をするようになっているなんて凄いですよね、生体反応は。例えば、紫外線を浴び過ぎて日焼けをしたときに、皮膚がほてる。あれも、壊された組織を修復するための治療反応です。しもやけで腫れ上がるのもそう。ガンだって、治す力が必ず備わっている。

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転移もそうです。転移は、ガンが原発巣に留まっていられなくなり、逃げ出している証拠です。逃げ出したガン細胞は、原発巣よりずっと弱いものです。それを知らずに三大治療など攻撃的な、いわば免疫力を奪い取る治療をしてしまうと、ガンが反撃して強くなるわけです。

「痛みを一週間我慢したら、ガンは消える」「転移はガンが弱くなって治る印」などという、臨床的には荒唐無稽な理論を堂々と披瀝するのですから、知らない患者はだまされるに違いありません。トンデモ医者、トンデモ教授の面目躍如というところでしょうか。

対談相手の上野紘郁氏は新潟と東京に「あさひ医王クリニック」を開設している医師ですが、このクリニックの治療法もすごいです。

  • 自立神経免疫療法(刺絡療法)
  • 自己免疫細胞培養活性化還元法
  • 温熱療法
  • 遠赤外線ド-ムによる保温
    遠赤外線放射体陶器風呂
    岩盤風呂(SGE岩盤風呂)や遠赤外線放射体陶器使用の低温サウナなども
  • 栄養療法
    野菜ジュ-スを大量に取り入れることで知られるゲルソン療法があります。それは、ゲルソン博士が編み出した世界的に有名なガン治療法です。
  • 抗ガン漢方療法
  • ス-パ-ライザ-治療法(Super Lizer Therapy)
    「直線偏光近赤外線星状神経節近接照射」
  • 免疫賦活剤注射/ガンワクチン注射
  • 新免疫複合療法
  • マイナスイオン療法
  • AWG療法(Arbitary Waveform Generator)
    これは、ガストン・ネサン博士が開発したソマチッド理論を応用したものです。ガン、心臓病などのさまざまな慢性疾患やウイルスなどの感染症に効果があることが判明しつつあります。簡単にその原理を説明すると、それぞれの病気には周波数があり、ガンならばガンに対する複雑な発振周波数を自動的に選択して体内に投射するというものです。それにより、ガン細胞のアポト-シス(細胞死)を足すのです。

トンデモ代替医療のオンパレードです。ガストン・ネサンのソマチッドは、あの帯津良一氏でさえも「効かない」と断言して止めてしまった代物です。「マイナスイオン」ですか。今は「ナノイオン」が流行っていますよ。「天仙液」も扱っているようです。

安保氏は基礎の免疫学者であり、がんの臨床経験のない人です。安保氏は「私の理論でいえば、ガンの70%は治る」と言うのですが、(治るはずだ)という仮説であり、その臨床的根拠を示すことは一切ありません。安保理論が臨床的に証明されたことは一度もないのです。科学的であろうとするならば、その理論を検証しなければなりません。どのような条件で70%のガンが治ったのか。30%の治らないがんはどんなガンなのか。がんの種類毎に差があるのかないのか。治らないのはどういう場合か。こうした検証抜きに「70%は治る」と言っても根拠のない戯言にしか聞こえません。

疑似科学入門 (岩波新書) 『疑似科学入門』に「科学者の見分け方」と題する章があります。

疑似科学であるかどうかを知る目安として、それをどんな人間が言っているかを見て判断する方法がある。私の判断基準を示しておこう。

一般に科学者は疑い深いから直ちに結論を出すことを避ける。明らかな証拠がないと、さまざまな可能性を考えてしまい、歯切れが悪くなるのだ。真実に忠実な科学者であるほどその傾向が強い。だから、そのような科学者にはテレビ局から声がかからず、人々に知られることが少ない。

しかし、目立ちたがり屋の科学者もいるし、自分こそは権威であると自認している科学者もいる。自分の知識をひけらかし、何にでも口を出したがる科学者である。これらの科学者に共通した態度は、知識に欠けている者を見下し、「こんなことも知らないのか」と尊大に振る舞うことである。あるいは、自分の意見が最善であると強調して、他人の意見に耳を貸さない態度も共通している。独自の意見を持つのはよいが、唯我独尊になっては見苦しい。

科学とは、知れば知るほどわからないことが増えてくるものである。自分は何も知らなかったと思い知らされるのが科学者の日常と言える。つまり、科学者は研究を極めれば極めるほど謙虚になる。自分の無知さを知って謙虚にならざるを得ないのだ。その観点からいえば、知ったかぶりをする科学者はもはや研究をストップしており、それまでに得た知識を誇っているにすぎないということができる。もはや過去の人であり、その知識は時代遅れになっている可能性が高いのだ。

「自律神経の白血球支配の法則」「胸腺外分化T細胞の発見」という仮説と業績を誇示して、ストレスをなくして体を温めればガンは治る、などという信仰によりかかり、学者としての論文はほとんど書かない一方で、アマゾンで検索すると91冊もの著作があるという人物によくあてはまる記述だと思います。

こんな安保氏も私にとってはありがたい存在です。というのは、「安保氏とコラボレーションしている(したがっている)人たちは、安保氏と同じ程度の人物である可能性が高い」と判断することが極めて高い確率で有効であると言えるからです。安保氏と親和性を有しているというだけで、"こいつは怪しいぞ"と思ってもかまわない。(たぶんそういうことになる)

安保氏とコラボレションしている組織の一つとして、がん患者には比較的よく知られたNOP法人「ガンの患者学研究所」という組織があります。元NHKディレクターの川竹文夫氏が代表を務めているNPO法人であり、6月に2回目の「千百人集会」を開催しました。「治りたい人」千人と「治った人」百人を一堂に集めようという集会です。

このNPO法人に関しては、ウェブ上では批判的に書かれたものが少ない。それならばと、今日から数回にわたって、この「ガンの患者学研究所」について批判的に考察してみようというわけです。(次回へ続く)

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