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2011年8月 7日 (日)

ストロンチウム90はNK細胞を不活性化する

内部被ばくにより骨髄に取り込まれたストロンチウム90は、免疫系の細胞にダメージを与える。さらにナチュラルキラー(NK)細胞の正常な活動を妨げるという。

ストロンチウム90は、β線を出してイットリウム90となり、さらにβ線を出してジルコニウム90となる。2回のベータ崩壊するので影響は2倍になる。イットリウム90からのβ線は228万電子ボルトという高エネルギーで、水中を10mmまで届くことができる。ICRPの計算では、骨髄に”均等”に被曝するとされるが、カルシウムと似たストロンチウム90は、骨髄細胞が必要とするところに集まるのであり、いわゆるホットパーティクルとなり、均等に分布するのではない。

1968年のStokkeらの研究では、0.01mGyの線量で骨髄細胞への障害が現われた。さらに1977年にWigzellらはストロンチウム89がNK細胞を非活性化すると発表している。

J Immunol. 1977 Apr;118(4):1503-6.

Suppression of natural killer cell activity with radioactive strontium: effector cells are marrow dependent.
Haller O, Wigzell H.

Abstract

NK cells with lytic capacity for Moloney leukemia virus-induced lymphomas have previously been found to occur spontaneously in spleens from nonimmune adult mice. Here, 89Sr-treatment is shown to suppress NK cell function in adult mice without similarly affecting other cell-mediated immune reactions. Thus, selective 89Sr-sensitivity distinguishes NK cells from other killer cell types. The present results indicate that in vivo a functional bone marrow is needed for generation and maintenance of NK activity.

関連研究:

Impact of 90Sr on Mouse Natural Killer Cells and their Regulation by Alpha Interferon and Interleukin 2

私のこれまでの考えを変える必要があるかもしれない。「今直ちに影響が出るレベルではない」とは政府の常套句であるが、今被ばくをしても発見されるほどのがん細胞に成長するには20年はかかる。だから、高齢者や私のように数年後の生存率が明らかに低いがん患者にとっては、内部被ばくもたいした脅威ではないと思ってきた。それは内部被ばくによる細胞のがん化は、DNAの損傷だけであるとされてきたからだ。

しかし、放射性ストロンチウムは、DNAではなく、細胞膜を破壊することによってNK細胞の正常な働きを阻害する、というのがWigzellらの研究だ。NK細胞ががん細胞を発見して破壊するチャンスが少なくなり、がん細胞が生き残る確率が大きくなる。骨髄内で前駆細胞から絶え間なく再生されるリンパ球の数も少なくなる。この仕組みには、細胞膜に対しては、低線量率の放射線が高線量率のときよりも5000倍も大きな効果を与えるという「ペトカウ効果」が関わっている。

今はがん細胞が見つからないが、体のどこかにがん細胞がある、あるいはがんの再発・転移はないけれでも、どこかにがん細胞があれば、体内ではNK細胞をはじめとした免疫細胞とがん細胞が拮抗して、危うい状態でいることもあるだろう。そこに放射性ストロンチウムによる免疫力の低下が加わることになる。

溺れそうになって、やっとの思いで泳いでいる人の背中に、あと1kgの荷物を載せたらどうなるか。なかには耐えきれずに溺れる人も出てくるに違いない。ストロンチウム90がその1kgの荷物に相当するかもしれない。20年後ではなく、再発の瀬戸際にいるがん患者にとっては明日にも影響が現われる、ということもあり得る。

内部被ばくについては、未だによく分かっていない。ほとんど何も分かっていないと言っても良いくらいだ。今日のNHKBS1の「内部被曝に迫る~チェルノブイリからの報告」では、25年経った今でも住民には、原爆ぶらぶら病」と同じような疲労・倦怠感を訴える人が増えている、心臓疾患も増えていると放映されていた。内部被曝の脅威を否定する主張もあるが、下のグラフのように明らかな相関関係が読み取れるとする主張もある。

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人間と環境への低レベル放射能の脅威―福島原発放射能汚染を考えるために ストロンチウム90はセシウム137のあるところには一緒にあると考えた方が良い。その割合は、1/10~1/1000まで、いろいろなデータがあって、実際はよく分からない。政府も測定していないが、福島原発から60kmの地点で検出したというニュースもあった。

ごくわずかであっても内部被曝が避けられないとすれば、がん患者は何をすれば良いか。ラルフ・グロイブは『人間と環境への低レベル放射能の脅威』で、ストロンチウム90の細胞膜への攻撃を防ぐために、

  • 特に食事を通して摂取しなければならないビタミンA(βカロチン)、ビタミンEとC、酵素の働きを守るセレニウム、亜鉛、銅、マンガンなどの微量栄養素

を摂ることを勧めている。

ビタミンEは非常に重要である。確実に細胞膜に定着し、急激な連鎖反応はビタミンEが存在する細胞膜場では止まってしまう。ビタミンCとセレニウムもまた細胞膜の防御には事情に重要である。

活性酸素・フリーラジカルの働きを抑える抗酸化作用のある食べ物、栄養素をこれまで以上に積極的に摂ったほうがよい。それによって内部被曝による発がんやさまざまな身体的影響を低減できる可能性がある。私が毎日飲んでいるマルチビタミンにはこれらの要素が過不足なく含まれている。もちろん食事から摂る方が良いが、その食物が放射能で汚染されているとしたら、どうすべきか、答えに窮してしまう。

ペトカウ効果

低線量の放射線による影響は、高線量の場合のDNAの損傷とは異なる仕組みで現われるのであり、その主役は活性酸素による細胞膜の破壊であるとするのがペトカウ効果である。

ペトカウ効果について日本のWikipediaはまだ登録がないが、英語のWikipediaには説明がある。<Petkau Effect> ノーベル賞に値する発見だと言われているが、発見されて40年も経つが、日本では認知度が低い。

1972年にカナダ原子力公社のアブラム・ペトカウが偶然に発見した効果である。細胞膜に似たリン酸脂質の人工膜にエックス線を照射して破壊するには、260mSv/分で合計35000mSvを照射する必要があった。ところが、水に放射能を持った食塩(放射化されたNa-22)を溶かして、0.01mSv/分という低線量率で長時間照射したところ、全量でわずか7mSvで細胞膜は破壊された。つまり、ごくわずかの線量を長時間照射すると、5000分の1の放射線量で同じ効果があることを発見したのである。この現象は次のように説明されている。

放射線によって生じる活性酸素は、細胞膜の脂質と作用して過酸化脂質を生成し、細胞を損傷する。低線量では活性酸素の密度が低く、再結合する割合が少なく効率よく細胞膜に達し、細胞膜に達すると連鎖反応が起こるため、放射線の影響は低線量で急激に高まる。

より詳しくは肥田舜太郎さんの『内部被曝の脅威  ちくま新書(541) 』に丁寧に説明されている。


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