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2012年5月31日 (木)

セシウム137の体内放射能(1)

4月からの「食品中の放射性物質に係る新たな基準値」が施行されて2ヶ月が経とうとしている。100Bq/kg以下の食品は「安全」であるとして、年間の被ばく線量も1mSv以下だと公表されている。福島県ではホールボディカウンターの測定結果を、これもシーベルト単位で公表しているが、1mSv以下と以上で分けて人数でしか発表していない。南相馬市立総合病院の坪倉正治医師はアピタルで次のように言っている。

しかしながら、事故後1年経った今では、検出されたセシウムがいつ摂取したものかわからず、Sv値を正確に計算することが不可能です。実はSvの計算方法(仮定の置き方)が数種類あり、どのような仮定をおくかで、Svの値が2桁ぐらい変わってしまいます。

これでは福島県のホールボディカウンター測定結果も信憑性がない。むしろベクレルのままで公表すべきだが、なぜかそうしない。内部被曝線量を小さく見せたいという思惑が感じられる。セシウム137を経口摂取した場合の、ベクレルからシーベルトへ換算するための「実効線量係数」は1.3×10^-5とされており、これにはストロンチウムやプルトニウムなどの寄与も含んでいるというが、根拠もはっきりせず、ブラックボックスである。実効線量係数は、内部被曝を過小評価する道具となっていると言っても良い。

放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ そこで、何回かに分けて内部被曝をベクレル(Bq)のままで考察してみる。使用する資料は、ICRP Pub.111『原子力事故または放射線緊急事態後の長期汚染地域に居住する人々の防護に対する委員会勧告の適用』という長~い書名で日本アイソトープ協会から翻訳が出ている。現時点では無料でPDFファイルが閲覧できるようになっている。もう一冊は、ユーリ・I・バンダジェフスキーの『放射性セシウムが人体に与える 医学的生物学的影響: チェルノブイリ・原発事故被曝の病理データ』です。

汚染の特性

ICRP Pub.111の「2.2 汚染の特性」には、詳細な説明抜きで下のような図2-2が載っている。

1000Bqを1回摂取してその後は摂取しない場合、毎日1Bq摂取を1000日間続けた場合、同じく毎日10Bqを1000日間続けた場合の、体内放射能の推移をグラフ化している。本文にはセシウム-137の生物学的半減期としてどんな値を採用したかなどの詳しい説明はないが、

同じ総摂取量に対して期間末期における全身放射能は著しく異なる。これは、汚染された食品を日常的に毎日経口摂取する場合と、断続的に1回摂取する場合との負荷が本質的に異なることを示している。

と書かれている。

Image_000_2

10Bq/日は、成人の1日の食品摂取量を1.6kgとすれば、6.25Bq/kgの食品汚染度に相当する。これは多くの食品放射能測定器においてはほぼ検出限界でNDとなる値である。この食品を1年間摂取した場合の内部被曝線量(預託実効線量)はだいたい0.1mSv程度となるであろうから、ICRPに準じれば「健康への影響はない」レベルとなる。もちろん食品の新規制値100Bq/kgよりもはるかに小さい汚染度である。経口摂取したセシウム137の放射能値に実効線量係数をかければ預託実効線量が求まる、これがICRPの論理である。

更に詳しく検討するために、この図にいくつかの計算値を追加してみた。

Zu2_2

追加したのは、色付きの線で描いた

  • 初期値=1000Bqで1Bq/日の摂取→青
  • 初期値=1000Bqで10Bq/日の摂取→赤
  • 初期値=1000Bqのままで増減しない6.9Bq/日の摂取→オレンジ

の3組のデータである。

Pub.111の図2-2は実効半減期としていくつを採用したのか不明だが、私の計算では100日を採用した。ICRPと同じグラフができたので、こちらも100日を採用していると思われる。

実効半減期とは

体内に取り込まれた放射性物質は、その同位元素の物理学的半減期と生物学的半減期にしたがって減衰する。1日に減衰する量は、体内に蓄積されている量に比例する。したがって減衰は指数関数となる。

Image_003 の関係がある。セシウム137の物理学的半減期は約30年であり、生物学的半減期は70~100日と言われている。また年齢別では次のようなデータがある。

 0~1歳     9日
 2~9歳    38日
 10~30歳  70日
 31~50歳  90日

セシウム137の場合は、物理学的半減期>>生物学的半減期であるので、物理学的半減期は無視しても良い。ここではICRPに倣って100日として話をすすめる。

考察

このグラフから、次のことが言えるだろう。

  1. ICRPも書いているが、1000Bqを1回摂取することと、1Bqを1000回摂取することは、総量は同じであっても最終の体内放射能は同じではない。1000日後、前者は0.98Bqであるが、後者は145Bqとなり、著しく異なる。
  2. 最初の体内放射能が0Bqでも1000Bqでも、継続的摂取の結果はある同じ値(平衡値)に漸近する。1Bq/日なら145Bq。
  3. 10Bq/日では同じように平衡値1448Bqに接近していく。
  4. 体内放射能が増減しなくなる1日の摂取量(a)は、初期の値(A0)と実効半減期(D)に依存する。A0=1000Bqのとき、a=6.9Bqである。(オレンジの線)

    Image_004
  5. 平衡値(Amax)は初期値には無関係で、1日の摂取量によって決まる。仮に初期の体内放射能が大きくても、2年ほどすれば平衡値に近づいていく。したがって、毎日の食事の汚染度は重要であり、10Bq/日以下であれば平衡値は1500Bqを超えることがない。

    Image_006

バンダジェフスキーの病理解剖データ

バンダジェフスキー氏は先に挙げた著作で次のように述べている。

とくに、心血管系疾患で死亡した患者の心筋には、消化器の疾患で死亡した患者より、確実により多くのセシウム137が蓄積していた。感染症で死亡した患者の肝臓、胃、小腸、膵臓には、心血管系、消化器系の疾患(おもに胃潰瘍や十二指腸潰瘍)で死亡した患者に比べて、はるかに多くのセシウム137が蓄積していた。感染症の子どもは、先天性欠損のある子どもより多くのセシウム137を骨格筋に蓄積していた。

チェルノブイリ事故で汚染されたゴメリ州(37~185kBq/平方メートル)の生後14日から14歳までの子どもを対象に心電図検査をおこなったところ、年齢層により55.9~98.1%の子どもに心電図異常が認められた。おもに不完全右脚ブロック洞結節伝導系の自律神経障害による異常であった。
ゴメリ医大に在籍する18~20歳の大学生では48.7%に明確な心電図異常が認められ、この学生たちのセシウム-137の平均濃度は26.00±2.00Bq/kgであった。
突然死した患者の部検標本を検査したところ、99%に心筋異常が存在し、心筋にはおよそ26Bq/kgのセシウム-137が取り込まれていることが分かった、としている。

体内に取り込 まれた放射性セシウムが平均 40- 60Bq/kgの場合、心室の心筋細胞に微細だが明確な損傷が認められた。全細胞の 10- 40%が非代償性の病変を起こし、規則的収縮ができなくなった。心筋の収縮機構が破壊され、組織溶解を伴わない萎縮性病変が観察された。筋小胞体網の細管が拡張し、ミトコンドリアの膨隆、巣状の筋小胞体の浮腫が認められたが、これらの病変は、細胞膜の浸透性の異常とイオン代謝の重大な変化を意味する。

Banda0

Banda1 セシウム137が、体重1kgあたり26Bqを超えると、危険な領域に入るとバンダジェフスキーは警鐘を鳴らしている。そして上のグラフによれば、毎日10Bqのセシウム137を取り込み続ければ、2年ほどで1450Bqとなる。体重が60キロの成人ならば24Bq/kgとなり、心血管系の異常が起きうる危険な蓄積量になる。1日の10Bqとは、食品の摂取量を1.6kgとして、食品の汚染度は6.25Bq/kgである。これはNaシンチレーターによる食品の放射能測定器の測定限界程度である。

(続きます)


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