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2012年9月

2012年9月28日 (金)

入院中

今朝といっても深夜に腹痛でERに。腸閉塞の診断で、即入院となりました。まだつまりが開通してなくて、痛みが取れません。
一週間の入院予定です。
イレウスは二年ぶりだ。

2012年9月24日 (月)

がんと食事(5)

帰省していたので、ブログもしばらく間が空きました。続きにけりを付けなくては。

写真は室戸岬・坂本海岸のハイビスカス・ロードです。今年は9月末だというのに、まだ南国らしい暑さに汗が滴ります。

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がんと食事に関して書きたいことを書いていれば、切りがありません。数回のブログではとうてい説明しきれない。

キャンベルの書籍では、「がん予防」には動物性蛋白質を控えて(キャンベルはほぼゼロにという)、適度な運動をすることです。そうすれば、がんになる確率を小さくでき、がんで死ぬことはほとんどないというのです。シュレベールはさらに発展させ、その他の研究成果も取り入れて、いくつかの食品成分の効用や、精神的な安定ががんに及ぼす影響なども考えています。

疫学研究の結果にはいつでも批判や反論があり得ます。その根本的な原因は、医療の不確実性であり、人間の躰もがんも「複雑系」だからです。原因と結果が、一対一に対応しないのですから、「これががんの原因だ。こうすれば100%がんは防げる」とはなかなか言えないのです。それでもチャイナ・プロジェクトの研究結果は大きな影響を与えています。このような疫学研究は、もう二度とできないでしょう。

私自身は、がんとの闘いには免疫力を含めた体力が必要であり、少量の動物性蛋白質はあった方が良いと考えています。ですから、2007年の世界がん研究基金(WCRF)が提唱するように、1週間で300gまでの肉は許容範囲で良いと考えます。可能ならばさらに減らす方が良いのですが。

キャンベルは、ビタミンDとビタミンB12以外のサプリメントは摂る必要がないと言います。ただし、厳格な動物性蛋白質を数年間を超えて制限している場合は、ビタミンB12が不足するからサプリメントで補充した方が良いといいます。ビタミンDは、1日に20分程度日光に当たれば、食事からの摂取と合計して必要量は生産できます。ただ、1日室内で過ごすような人はサプリメントで摂っても良いが、1000IU/日を超えないようにと言っています。私の場合はマルチビタミン剤としてちょうど1000IUのビタミンDを毎朝摂っています。

ビタミンDの重要な働きについては、わざわざ補項を設けて開設しています。特に動物性タンパク質の多い食事を続けていると、活性型ビタミンDのレベルが低下し、同時にIGF-1と言われる「インスリン様成長因子」が活発になる。これは古い細胞の除去を妨害しつつ、新しい細胞の成長を促進させるように働く。こうした体内環境はがんの成長にとって好ましいものであるとしています。

牛乳と乳がん、前立腺癌、Ⅰ型糖尿病、多発性硬化症の関係は明白です。牛乳は離乳期を過ぎた哺乳動物が飲むものではない。まして他の動物の乳を飲むなんて、合理的ではありません。牛乳との関係は、先のコメントで説明したように、いろいろと評価が分かれています。分かれてはいるが、リスクが大きいのなら飲むのを中止した方が良いに決まっています。

牛乳が白くなければ、たとえば茶色をしていたら、誰も飲まないに違いないでしょう。

最後に糖質制限食との関係について。

キャンベル博士は、「心臓病で高血圧の肥満の男(アトキンス博士のこと)」が、「やせて心臓を健康に保ち、血圧の正常化を約束するダイエット法」を売っていると、アトキンスダイエットをぼろくそに批判しています。

江部康二先生はアトキンスダイエットを「スーパー糖質制限食」と書いていますから、これらは同じものだと考えて良いでしょう。しかし、「スーパー糖質制限食」の長期的評価のエビデンスはないと、江部先生も認めています。スーパー糖質制限食(アトキンスダイエット)で、発がんのリスクが上がるのか下がるのか、エビデンスはないということです。

スーパー糖質制限食なら、脂肪摂取比率50~60%ですから、そのような集団を長期に追跡した論文は存在しませんので、ご指摘どおり、スーパー糖質制限食の長期的安全性に関するエビデンスはありません。食事療法の長期間のRCT研究論文は極めて困難です。

また、コホート研究は参考になりますが、一定のバイアスが入ることは否めません。従いまして、エビデンス的にすっきりは、今後も極めて困難と思います。論文による信頼できるエビデンスが期待できない以上は、理論的に考えることが最善と思います。

  1. 過去エビデンスがある血液検査の動脈硬化のリスク要因が、スーパー糖質制限食で全て改善する。
  2. 発ガンの大きな要因としてエビデンスがある高血糖と高インスリン血症が、スーパー糖質制限食で改善する。
  3. 発ガン予防のエビデンスがあるHDL-コレステロールが、スーパー糖質制限食で上昇する。

スーパー糖質制限食実践により、1)2)3)の利点があります。
他の、どのような食事療法も1)2)3)の利点をクリアすることは不可能です。

と、発がん予防ができるはずだとしてキャンベル博士とは真っ向から対立します。キャンベル博士は、大規模な疫学調査(チャイナ・プロジェクト)などで、動物性蛋白質が癌を誘発することは証明されていると主張しているのです。

膵臓癌患者の場合、再発転移は避けたいからがん細胞は増やしたくない。しかしインスリンが少ないから血糖値の管理も必要です。気を緩めるとすぐに上昇します。

さて、どうするか? どちらが正しいのか?

江部先生も講演会などで言っているようですが、「肉を食べても良いというと際限なく食う人がいるが、物事には限度がある。消費する以上に食べると太るのはあたりまえだ。」

私の結論は、これまで通りの「プチ糖質制限食」です。低GI値の食品、玄米など、なるべく野菜を多く摂り、少量の肉と魚。バランスよく食べる。現状ではこれが<私には>良さそうです。最後は自分の体に聞いてみる。そうすれば自ずから答えが出てきます。黒豚を食ったら一晩下痢に悩まされたのだから。つまり、「玄米魚菜食」で、たまに肉を食えれば幸せという生活。我々団塊の世代が、小学生時分に食っていたものを食えば良いのだ。(完)

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2012年9月20日 (木)

ガン転移に効く植物由来化合物が40個以上も発見される

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連載中の「がんと食事」に関連した情報なので、転載します。

クルクミン、ビタミンDなどが、がんの転移を抑制する植物成分である可能性。BioQuickニュース日本語版。『がんの特効薬は発見済みだ』という、岡崎公彦氏の怪しげな本がありますが、特効薬なんかはありません。あるとすれば、それは”食生活を変えること”。実は目の前に見えていることなのです。

ワシントン州立大学(WSU)の研究により、40個以上もの植物由来の化合物が、ガンの進行を遅らせる遺伝子を活性化することが可能であることが判明した。 ガンの転移こそが致命的であるため、今回の発見はとても励みになる、とWSU薬学部教授および学部長のゲリー・メドウズ博士は語る。さらに、食生活の改善、栄養学的アプローチ、そしてこの植物由来化学物質を合わせて、多くの道を開いているように見えると言う。       

「我々は常に特効薬を探しているのです。そして、我々が食べる物や生活の傍らにこそ、そのような特効薬が存在するのです。我々はただ、それらを上手く使わないといけないだけなのです。」と、メドウズ博士は語る。2012年6月のCancer and Metastasis Reviews誌に掲載された本研究はメドウズ博士によって、いくつかの単純なロジックの元に進められた。ほとんどの研究はガンの予防または腫瘍の治療に 焦点を当てているが、致命的となるのはガンの他臓器への拡散である。そのため、腫瘍を治療するよりも拡散または転移をコントロールするほうが重要なのであ る。栄養学的アプローチと転移抑制遺伝子のコンセプトは学術誌などでもほとんど見られないため、PubMedの研究データベースを検索するのも一苦労で あった。

「研究者のほとんどは、研究目標に転移抑制遺伝子を含んでいなかったのです。これらは、研究の過程で見たその他大勢の遺伝子と同様に扱われていました。」と、メドウズ博士は語る。しかしメドウズ博士はそれらの研究に目を通し、転移抑制遺伝子がいつオン/オフされるのかを調べた。そ して、様々なガンにおける転移抑制遺伝子に影響を与える物質を複数見つけたのである。アミノ酸、ビタミンD、エタノール、高麗人参エキス、トマトカロテノイドリコピン、ウコンの成分クルクミン、ザクロジュースや魚油など、乳房、結腸直腸、前立腺、皮膚、肺およびその他のガンにおける遺伝子発現に影響を与える物質が浮かび上がってきた。通常、これらの物質は基礎となるDNAコードを変えることなく転移抑制遺伝子をオン/オフする、後成的な活動を見せた。

「ということは、これらの後成的なメカニズムは食べ物によって影響されるのです。そして、転移抑制遺伝子の調節にも関連しているかもしれません。食生活および栄養素の研究は進んでいないため、これは非常に新しい研究分野となります。」と、メドウズ博士は語る。本研究は2つのコンセプトを主張している。一つは、天然化合物がガンの転移を減速または停止することが可能である。栄養素と転移抑制遺伝子の関係を偶然にも関連付けた複数の研究は、これらの遺伝子をさらに念入りに調べる必要があることを示している。
「そして、これらの影響のほとんどはフォローアップされていないのです。まだ発見されていない様々な化合物や成分が存在する可能性は多いにあります。」と、メドウズ博士は語る。

さらに、メドウズ博士はこれらの研究によって、ガンを予防するという考えから、転移を防ぎながらガンと共に生きるという考えにシフトしようとしているようだ。
「我々は長年に渡りガン研究を続けてきました。しかし、ガンの存在する環境における研究は、ごく最近始められたばかりです。環境とはまさに人間の体のことで、この環境こそがガンの転移を左右するのです。」と、メドウズ博士は説明する。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Over 40 Plant-Based Compounds Found That Slow Metastasis

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2012年9月18日 (火)

がんと食事(4)

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DP2 Merrill F5.6 1/160秒 ISO200 清澄庭園にて


葬られた「第二のマクガバン報告」 (中巻) キャンベルは、第3章「がんの進行は止められる」と第8章「がん対策はどのように改善されるべきか」で、がんに焦点を当てて説明しています。

がんの進行過程を、(芝に例えれば)

  1. イニシエーション(形成開始期)芝生の種を蒔く
  2. プロモーション(促進期)芝が種から生長をはじめる
  3. プログレッション(進行期)隣の敷地や道路にまで広がる

に分けています。2.のプロモーション期、つまりがん細胞が発見可能な大きさになるまで成長し増殖する期間は、食事がいちばん重要となるときです。またこの時期にがんの成長に必要な要素が与えられなかったとき、がん細胞は「休眠状態」に入ります。このとき、動物性食物はがんのプロモーター(促進物質)となり、植物性食物はアンチ・プロモータ(抗促進物質)となるのです。どちらの食物が多い香によって、この過程ではがん細胞の増殖のONとOFFを切り替えて、コントロールすることが可能になるのです。

食べ物によって、ほとんどのがんを予防することができるのです。早期発見・早期治療などと言いますが、それ以上に「がんを育てないものを食べる」ことが重要です。

がんの再発・転移にも低タンパクの食事が有効だと言えるでしょう。

再発・転移したがんにはどうでしょうか。プログレッション期には食物でがんに対抗することはできないのでしょうか。これががん患者として一番関心があることです。再発・転移したがんには、放射線や抗がん剤ですら有効ではありません。治ることは期待できず、延命効果があるだけです。これらでもがん細胞を消失させることは難しいのですから、食事療法だけでがんが消えるはずもありません。癌が消えることを「科学的に」証明した食事療法は一つもありません。この点に関しては『がんに効く生活』がより詳細に書いているので、そちらを読むと良いでしょう。

しかし、キャンベルはまた次のようにも言っています。

致命的な皮膚ガンである進行メラノーマ(進行性悪性黒色腫)は、ライフスタイルを変えることによって軽減、あるいは回復が可能なことも、いくつかの研究が証明している。

実験動物の体内で発症し成長中のガンであっても、正しい栄養の摂取によって、成長をスローダウンさせたり、進行を停止させたり、あるいは回復させることさえ可能だ。幸運なことに、人間の場合でも、同じ「正しい栄養」の摂取が、最大限の症状改善をもたらしてくれるのだ。それは病気のあらゆる段階において可能なのである。

葬られた「第二のマクガバン報告」(下巻)プラントベースのホールフードは、治る可能性を高めてくれます。治らなくても、がんの進行を抑えてくれる高い可能性があるのです。シュレベールは『がんに効く生活』で、自ら証明して見せました。

肉はどこまで許されるか?

では、肉は一切食べてはいけないのでしょうか。いきなりゼロにしろと言われても難しいのではないだろうか。博士は次のように言っています。

「チャイナ・プロジェクト」の研究結果は、「摂取する動物性食品の割合が少なければ少ないほど、健康効果が高い」ということを示している。たとえ動物性食品の割合が10%から0%に減少した場合でもこの考え方は当てはまる。したがって「動物性食品の割合はゼロが最善である」としても不適切ではない。

しかし、このことは完全に証明されているわけではない。確かにほとんどの健康効果は、動物性食品の摂取量が非常に低いときに実感される。しかし、「ゼロ」ではないというのも事実だ。
したがって、私のアドバイスは、「食事からすべての動物性食品を排除すること」だが、むやみに完壁を期す必要はない。ということだ。

私の場合は、例えばカレーライスの中にポークが一切れあったとしても、それをよけたりはしません。おいしく食べさせていただきます。

乳がんと牛乳──がん細胞はなぜ消えたのか ただ、牛乳は一切摂らない方が良い。牛乳は子牛が摂るものであって、人間が摂るものではない。授乳期を過ぎた哺乳動物で乳を飲む動物はいません。

そして、これが大事なことだが、がんにならないことのためだけに食事があるわけではないのです。食べる楽しみもあれば、文化的側面もある。「豊かさが生む病気」が癌ならば、「貧しさが生む病気」もあるのです。癌にならないための食事が、必ずしも幸福とは限らない。どのような食生活をするかを選択するのはあなたです。

食べることは、外界の異物を体内に取り入れることですから、どんな場合でも「リスク」があります。それを言えば、生きていることがリスクなんですね。

      生きていることは、健康に悪い !

                                                                <続く>

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2012年9月17日 (月)

いのちに感謝の独演会 深川散策

昨日は深川・江戸資料館小ホールで開催された、樋口強さんの「第12回 いのちに感謝の独演会」に行ってきました。(撮影禁止のため、写真はありません)テレビ東京が取材していたので、いずれ放映されると思います。

ただ行くだけではつまらないので、ひとつ手前の門前仲町駅で降り、富岡八幡宮などを経て、深川の町を写真を撮りながら散策。清澄庭園までの3.2キロを約1時間かけて歩きました。岩崎弥太郎ゆかりの園内を愛でてから会場へ。資料館通りでは「案山子コンクール」をやっていました。ルート↓ですが、小さな路地に入ったものは省略しています。

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樋口さんのはなしに、みなさん多いに笑って、勇気をもらってきました。そうそう、毎回応援で出演している柳家喜多八師匠が、”めでたく”正会員になられたそうです。つまり昨年大腸がんの手術をしたと告白していました。

富岡八幡宮では剣道の奉納試合をやっていた。凛々しい女剣士。

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いまでは深川でもチャンバラごっこをする子どもはいない。

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風船ほおずき?と言ったかなぁ。撮っていたら玄関が開いて、女主人が顔を出して教えてくれた。微細な造形に感歎。(フウセンカズラだと、和美さんが教えてくれました。)

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出世観音

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「この店のあれがうまい!」って看板が出てた。まげが似合ってる。電卓でなく、五つ玉のソロバンというのが、またいい!

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清澄庭園

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清澄庭園

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バレエ案山子も「原発再稼働反対」と訴えています。

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安寿と厨子王?

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怖そう・・・

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コメントなし・・・でも分かる人にはわかる。

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最後です。

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ぶらぶらと3時間ほど歩いて、樋口さんの落語で笑って、今日も免疫力は充分に補充しました。

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2012年9月16日 (日)

がんと食事(3)

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DP2 Merrill F7.1 1/400秒 ISO200


葬られた「第二のマクガバン報告」(上巻) キャンベルが動物性蛋白質ががんの原因だと確信するようになった理由を次のように挙げています。

  • 通常は成人の病気である肝臓がんが、フィリピンの子供に異常に多い原因を研究していた。キャンベルらは、ピーナツやコーンに含まれるカビ毒のアフラトキシンを大量に摂取していることが原因である、と考えていた。ところが、この研究プロジェクトを通じて知ったことは、最も高タンパクの食事をしている子供たちが、肝臓がんになるリスクが最も高い、という事実だった。がんになっている子供は、裕福な家庭の子供たちだったのである。
  • インドの研究者は、ネズミを二つのグループに分けて実験していた。一方にはがんを引き起こすアフラトキシンを投与し、そのあとタンパク質が総摂取カロリーの20%というエサが与えられた。もう一方のグループにも同量のアフラトキシンが投与されたが、そのあとのエサはタンパク質の比率がわずか5%というものだった。20%のグループではすべてのネズミが肝臓がんを発症していた。そして5%のグループでは、すべてのネズミが肝臓がんを免れていた。100対0という、驚くべき結果であった。
  • 牛乳のタンパク質「カゼイン」を20%与えられたネズミは肝臓がんを発症したが、小麦タンパクのグルテンでは、たとえ20%与えても発症はしなかった。
  • 同様に、牛乳のタンパク質カゼインが、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染しているハツカネズミの肝臓がんを劇的に促進させることを実験で証明した。
  • 更に、シカゴのイリノイ大学の研究グループによる、ネズミの乳がんの研究では、カゼインの摂取量の増加が乳がんの発生を促進することを証明していた。

いよいよ人間に関して証明をする番である。キャンベルらは、チャイナ・プロジェクトと名付けた大規模な疫学調査によって、同じことを証明したのです。

「チャイナ・プロジェクト」は一九八三年に始められ、現在(2004年)も進行中の長きにわたる研究です。中国全土から65の郡を選び、それぞれ100人の成人を対象として、65の郡ごとに「食習慣」や「ライフスタイル」「病気の特徴」を比較しています。各郡ごとに、「食事やライフスタイルや病気の特徴が、どのように相互に関連し合っているか」を突き止めることが目的でした。ニューヨーク・タイムズ紙が「疫学研究のグランプリ」と絶賛した研究によって、人間においても、動物性蛋白質が各種のがんの発症を促進することが、疫学的に証明されたのです。

驚くことに、これらの実験において、がんの発症が確認されたあとでも、低タンパクの食事はそれに続いて生じるがんの増殖を劇的に阻止したのです。

キャンベル博士は、「重症の心臓病、ある種のやや重いがん、糖尿病、そのほかいくつかの慢性疾患は、食事によって回復可能であることを示す衝撃的な証拠がある」と断定します。

本書の核ともいえる「真実」

  • 環境や食品の中の化学合成物質は、たとえどんなに問題があったとしても、ガン発症の主たる原因ではない。
  • 両親から受け継いだ遺伝子は、病気の犠牲になるかどうかを決定する最も重要な要素ではない。
  • 「やがては遺伝子研究の成果が薬による病気治癒を可能にするだろう」といった期待は、今すぐ可能で強力な解決策を無視したものだ。
  • 炭水化物、脂肪、コレステロール、オメガ3脂肪酸などの栄養摂取をうまくコントロールしても、それは長期にわたる健康にはつながらない。
  • ビタミン剤や栄養剤のサプリメントは、長期にわたる病気予防の効果を与えてはくれない。
  • 薬や手術は、アメリカ人を死に追いやるほとんどの病気を治すことはない。
  • あなたの主治医は「あなたが最も健康になるために必要なこと」を、おそらく知らないだろう。
  • 糖尿病患者は食習慣を変えれば、薬をやめることができる。
  • 心臓病は食習慣だけで回復させることができる。
  • 乳ガンは、食べるものによって決まる「血中女性ホルモンのレベル」と関係している。
  • 乳製品の摂取は、前立腺ガンのリスクを高める。
  • 果物や野菜に含まれる抗酸化物質は、高齢者の知的能力の維持と関係している。
  • 腎臓結石は、ヘルシーな食習慣で予防できる。
  • 子供にとって最悪な病気の一つである1 型糖尿病は、間違いなく授乳習慣と関連している。

こうした研究結果は、「よりよい食習慣こそが、さまざまな病気から身を守る最も強力な武器である」ことを立証している。(つづく)

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2012年9月14日 (金)

がんと食事(2)

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DP2 Merrill F2.8 1/200 ISO100


キャンベル博士の「がんの原因は肉だ」という主張は、アメリカでは受入れられませんでしたが、1997年の世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)によるがん予防の勧告(14か条の勧告)には取り入れられています。

これは4500以上の研究を元に、「食べもの、栄養とがん予防」として報告されました。日本では、がん予防14か条、タバコの制限を加えてがん予防15か条として紹介されました。

  • 第1条 食事は植物性食品を中心とする。野菜、果物、豆類、精製度の低いデンプン質の主食など、できるだけ多様な種類の食べ物を摂る。
  • 第2条 体重はBMl(日本では体重/身長mX身長m)の数値18.5~25を維持して肥満を避ける。
  • 第3条 運動は1日1時間の早歩きと、1週間に合計1時間の強度の運動を行ない、体を動かす習慣を維持する。
  • 第4条 野菜・果物を1日に合計400~800g摂る。
  • 第5条 野菜・果物以外の植物性食品としては、1日に600~800gの穀類・豆類・イモ類・バナナなどを摂る。
  • 第6条 飲酒は勧められない。アルコール類を摂るなら男性は1日に2杯(ビール500ml、ワイン200ml、ウィスキー50ml、日本酒1合)以下、女性は1日1杯以下に控える。
  • 第7条 赤身の肉(牛肉、羊肉、豚肉など)は1日80g以下に抑える。
  • 第8条 総脂肪量を減らし、総エネルギー量の15~30%の範囲にとどめる。とくに動物性脂肪を控え、植物油を使用する。
  • 第9条 塩分は1日6g以下に抑える。香辛科やハーブ類を使用するなどして、減塩のための工夫をする。
  • 第10条 カビ毒に注意する。食べ物を常温で長時間放置せず、カビが生えたものは食べない。
  • 第11条 腐りやすい食品は、冷蔵庫か、冷凍庫で保存する。
  • 第12条 食品添加物や残留農薬に注意する。適切な規制下では添加物、汚染物質、その他の残留物はとくに心配いらない。
  • 第13条 黒こげの食べ物を避け、直火焼きの肉や魚、塩干し燻製食品は控える。
  • 第14条 栄養補助食品は、以上の勧告を守ればあえてとる必要はない。

当時、キャンベル博士はアメリカがん研究協会の創設を支援し、上級研究顧問の要職にありました。当然この報告においても重要な役割を果たしています。

2007年に、世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による同様の評価報告書「食物・栄養・身体活動とがん予防」が10年ぶりに 改訂されました。その中では牛・豚・羊などの赤肉・加工肉について大腸がんのリスクを“確実”に上げるとし、また、いくつかの食品や栄養素について“可能性大”と判定するなど、より多くのリスクおよび予防要因について考察されています。

  1. 肥満 ゴール:BMIは21-23の範囲に。推薦:標準体重の維持。
  2. 運動 推薦:毎日少なくとも30分の運動。
  3. 体重を増やす飲食物 推薦:高エネルギーの食べものや砂糖入り飲料やフルーツジュース、ファーストフードの摂取を制限する。飲料として水や茶や無糖コーヒーが推奨される。
  4. 植物性食品 ゴール:毎日少なくとも600gの野菜や果物と、少なくとも25グラムの食物繊維を摂取するための精白されていない穀物である全粒穀物と豆を食べる。推 奨:毎日400g以上の野菜や果物と、全粒穀物と豆を食べる。精白された穀物などを制限する。トランス脂肪酸は心臓病のリスクとなるが、がんへの関与は知 られていない。
  5. 動物性食品 赤肉(牛・豚・羊)を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ、燻製肉、熟成肉、塩蔵肉)は避ける。赤肉より、鶏肉や魚が推奨される。ゴール:赤肉は週300g以下に。推奨:赤肉は週500g以下に。乳製品は議論があるため推奨していない。
  6. アルコール 男性は1日2杯、女性は1日1杯まで。
  7. 保存、調理 ゴール:塩分摂取量を1日に5g以下に。推奨:塩辛い食べものを避ける。塩分摂取量を1日に6g以下に。カビのある穀物や豆を避ける。
  8. サプリメント ゴール:サプリメントなしで栄養が満たせる。推奨:がん予防のためにサプリメントに頼らない。
  9. 母乳哺育 6か月、母乳哺育をする。これは母親を主に乳がんから、子供を肥満や病気から守る。
  10. がん治療後 がん治療を行ったなら、栄養、体重、運動について専門家の指導を受ける。

これらの報告(勧告)は婉曲に表現していますが、動物性食品の摂取は極力減らすこと、赤肉(牛・豚・羊)は摂らないこと、摂る場合でも週300g以下にすることを提唱しています。これはキャンベルが『葬られた第二のマクガバン報告』で言っている「1日50g以下」に等しくなります。

キャンベル博士の「プラントベースでホールフードの食事」との考えが大きな柱となっていると考えて良いでしょう。「動物性食品をすべて止めろ」とは、抵抗が大きくて、生産者や業界を考慮した書き方になったのでしょう。

日本においてはどうでしょうか?

国立がん研究センターの「がん情報サービス」の「日本人のためのがん予防法」では、「2.科学的根拠に基づくがん予防とは」及び「3.発がんに関わるリスク要因の評価」でがんの種類ごと、食事・栄養のカテゴリーごとに分析しています。

動物性食品によるリスクを認識しながらも、しかし結論は、「食事はバランスよくとる。野菜や果物不足にならない」などと大きく後退しています。世界がん研究基金のもっとも重要な点、動物性食品を控えることを全く無視した内容となっているのです。(下の表3)

表3 日本人のためのがん予防法

―現状において日本人に推奨できる科学的根拠に基づくがん予防法―

喫煙 たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
飲酒 飲むなら、節度のある飲酒をする。
食事 食事は偏らずバランスよくとる。
      * 塩蔵食品、食塩の摂取は最小限にする。
      * 野菜や果物不足にならない。
      * 飲食物を熱い状態でとらない。
身体活動 日常生活を活動的に過ごす
体形 成人期での体重を適正な範囲に維持する(太りすぎない、やせすぎない)
感染 肝炎ウイルス感染の有無を知り、感染している場合はその治療の措置をとる。

厚生労働省の「食生活指針」も同様に、

  1. 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。
  2. ごはんなどの穀類をしっかりと。
  3. 脂肪のとりすぎをやめ、動物、植物、魚由来の脂肪をバランスよくとりましょう。
  4. たっぷり野菜と毎日の果物で、ビタミン、ミネラル、食物繊維をとりましょう。
  5. 牛乳・乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などで、カルシウムを十分にとりましょう。
  6. 塩辛い食品を控えめに、食塩は1日10g未満にしましょう。

となっているのですから、「乳製品は議論があるため推奨していない」とする世界がん研究基金(WCRF)報告を無視しています。どうやら厚生労働省とその管轄下にある国立がん研究センターは、「動物性食品ががんの原因」ということを認めたくないかのようです。

2007年の勧告の翌年に横浜市で開催された「国際栄養士会議」では、報告書作成に関わった研究者らが集まって詳細を報告しています。そのレポートが「がんナビ」に載っていて、

Kolonel氏は、「膨大な論文のレビューの結果、植物性食品を中心とした食事により、口腔がん、咽頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、膵 がん、結腸直腸がんのリスクが低下することが確実」と語った。また、植物性食品を中心とすることで、動物性食品の摂取量が減り、過体重や肥満の予防にもつ ながり、がんのみでなく、循環器系の疾患の予防にも有効とした。
James氏は、肥満とがんに関する発表を行い、「これまでの体系的なレ ビューから、過剰体重が食道がん(腺がん)、膵がん、結腸直腸がん、乳がん(閉経後)、子宮内膜がん、腎臓がんのリスクを高めることが明らかとなってい る」と語った。加えて、「世界中で成人・小児とも過剰体重の割合が増加しており、この傾向になんとか歯止めをかける必要がある」とも力説した。

と書かれています。「がん予防10か条」は、『がんの補完代替医療ガイドブック』にも紹介されているのですが、その精神を正しく国民に伝えているとは言えないようです。(続く)

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2012年9月13日 (木)

がんと食事(1)

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DP2 Merrill F3.2 1/80秒 ISO200


どのような食事をすべきかは、がん患者にとって切実な問題です。食事で治ることはあるのだろうか? 再発や転移の可能性を少しでも小さくするためには、どのような食事にすれば良いのだろうか?。いやいや、がんになった以上、何を食べようが同じなのか。

私が最初のがん(直腸がん)になったとき、手術後に主治医に「これからどのような食事をすれば良いでしょうか? 何か気をつけることはありますか?」と尋ねたのですが、先生は「何を食べても大して変わりません」という返事でした。シュレベールも同じような体験をして、しかし彼は「代替療法を無視するのは勿体ない」と、積極的に食生活を変えていきます。
私自身はいまも、シュレベールの『がんに効く生活』に書かれている玄米魚菜食あるいは地中海食に準じた食生活をしています。

The China Study: The Most Comprehensive Study of Nutrition Ever Conducted And the Startling Implications for Diet, Weight Loss, And Long-term Health この本のなかで、キャンベルの『The China Study』を引用した箇所がいくつかあります。
例えば「種と土壌」(p.176)では、

最初の小さな腫瘍が大きく成長していくために必要な条件が満たされないようにすれば、進展期の成長を抑えることが可能である。この段階ではさまざまな栄養素が大きな力を発揮する。ある栄養素はがんの成長を促進する(プロモータ)。また、ある栄養素は、がんの成長を抑制する(反プロモータ)。がんは、プロモータが反プロモータよりも多いときに増殖するのである。反プロモータが圧倒的に多ければ、がんの成長は抑制されるか、あるいは止まる。
まさにシーソーの原理である。この原理が極めて重要であることは、いくら強調してもしすぎることはない。

「食物は、常に汚染物質に打ち勝つ」(p.198)

シュレベールに大きな影響を与えた『The China Study』は、アメリカではベストセラーになっており、クリントン元大統領もこの本を読んで食事を植物ベースに変えたそうです。そして体重が11kgも減量し、心臓病も改善したと、CNNのインタビューで語っています。(リンク

『The China Study』は邦題『葬られた「第二のマクガバン報告」』で全3巻、下巻が2011年2月11日(3.11の一ヶ月前)に完訳となっています。私は3.11後の未曾有の混乱の最中でもあり、完訳に気がつきませんでした。

著者のT・コリン・キャンベル氏は、「栄養学分野のアインシュタイン」と言われるように、永年栄養学研究の第一線で活躍してきたコーネル大学名誉教授です。

1982年に全米科学アカデミー(の下部組織NRC)が公表した「食生活、栄養とがん」の委員であり、この報告書をまとめた委員のひとりです。この「食生活、栄養とがん」は、発表されると大きな反響を呼びました。また、牧畜団体などからもさまざまは妨害、反対を受けました。それはまるで1977年の「マクガバン報告」が公表されたときと同様でした。そしてこの報告書の内容はアメリカ政府の食事摂取指針に生かされることはありませんでした。この本の邦題はそのことを意識しています。

この本でのキャンベルの主張をごく簡単にまとめれば、

がんの原因は、肉と牛乳の摂取であり、「プラントベースでホールフードの食事(未精製の植物性食品)」はがんを予防し、再発と転移を防ぎ、ある種の大きくなった腫瘍にも有効である。

ということです。彼は肉だけではなく、魚・卵・牛乳・乳製品も健康に悪いと主張しています。

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2012年9月11日 (火)

週のはじめに考える「言わねばならないこと」

ふうきさんのご冥福をお祈りいたします。2006年に切除不能の膵頭部がんの告知をされ、抗がん剤だけで6年もの長きにわたって闘病されました。副作用に絶えてでも生きる価値もあるのだ、ということを示してくれました。


9月9日の東京新聞社説。「週のはじめに考える 言わねばならないこと」を転載しておく。(すぐに消されるので)明治の新聞記者 桐生悠々の生き方に比べて、今の大新聞(朝日・読売・日経・産経)を批判している論説と受け取った。

 桐生悠々という新聞記者がいました。権力や軍部を痛烈に批判した気骨の人です。大勢に流されず、本質を見極める姿勢は今こそ必要とされています。

 一八七三(明治六)年、金沢に生まれた桐生悠々(本名・政次)は東京帝国大学を卒業した後、新聞社を渡り歩きました。本紙を発行する中日新聞社の前身の一つである新愛知新聞や、長野県の信濃毎日新聞などでは主筆を務め、晩年を名古屋で過ごします。

 その報道、論説の特徴は「言わねばならないこと」を書く姿勢を貫いたことにありました。

◆気骨の人、桐生悠々
 悠々が健筆を振るった明治後期から昭和初期は、発展途上にあった政党政治が、軍部の台頭で衰退していく時代です。

 騒然とした中、悠々の論説は、海外にまで視野を広げた豊富な知識に基づいて藩閥政治家、官僚、軍部の横暴を痛撃します。

 例えば一九一八(大正七)年、富山県魚津から全国に広がった米騒動。米価の暴騰は当時の寺内内閣の無策が原因だったにもかかわらず、政府はその責任を新聞に転嫁し、騒動に関する報道を禁止します。憤った悠々は、八月十六日付新愛知社説「新聞紙の食糧攻め 起(た)てよ全国の新聞紙!」の筆を執ります。

 「現内閣の如(ごと)く無知無能なる内閣はなかった。彼らは米価の暴騰が如何(いか)に国民生活を脅かしつつあるかを知らず、これに対して根本的な救済法を講ぜず、…食糧騒擾(そうじょう)の責を一にこれが報道の責に任じつつある新聞紙に嫁し…」

 悠々は、寺内内閣を厳しく断罪し、内閣打倒、言論擁護運動の先頭に立ちました。寺内内閣への批判は全国に広まり、ついに総辞職に追い込まれます。

 時は流れて信毎時代、三三(昭和八)年八月十一日付の評論「関東防空大演習を嗤(わら)う」です。

◆無意味な想定嗤う
 掲載の前々日から行われていた陸軍の防空演習は、敵機を東京上空で迎え撃つことを想定していました。悠々は、すべてを撃ち落とすことはできず、撃ち漏らした敵機が爆弾を投下し、木造家屋が多い東京を「一挙に焦土たらしめるだろう」と指摘します。

 悠々の見立ての正しさは、その後、東京をはじめとする主要都市が焦土と化した太平洋戦争の惨禍を見れば明らかですが、この評論は軍部の怒りや在郷軍人会の新聞不買運動を招き、悠々は信毎を追われます。

 守山町(現名古屋市守山区)に戻った悠々は、「他山の石」という個人誌を発行して糊口(ここう)をしのぎます。軍部、権力への旺盛な批判はやみません。

 悠々は他山の石に「言いたいこと」と「言わねばならないこと」と区別すべきだとして、「言いたいことを言うのは、権利の行使」だが、「言わねばならないことを言うのは義務の履行」であり、「義務の履行は多くの場合、犠牲を伴う」と書き残しています。

 たびたび発行禁止、削除処分を受けながらも軍部、権力批判を続けた悠々から学ぶべきは、強者の言い分をうのみにせず、自らの知識と判断力でその非を指摘する使命感の強さです。真の記者魂と言い換えていいのかもしれません。

 平成の世の日本にも、言わねばならないことは満ちています。

 まずは消費税増税。民主党政権にとってはそもそも公約違反であり、それでも強行するのは民主主義を危うくします。

 社会保障と税の「一体」改革と言いながら、社会保障の抜本改革は見送られ、増税だけが決まりました。政府や国会の無駄もほとんど削られないままです。速やかに衆院を解散して国民に増税の是非を問うべきなのに、その前に必要な衆院「一票の格差」是正は与野党対立で手付かずです。国会の不作為と言わずして何と言う。

 原子力発電もそうです。いったん事故が起これば取り返しがつかないのに、この暑い夏を「原発ゼロ」で乗り切れたのに、なぜ原発維持の選択肢が生き残るのか。

 事故が頻発する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを「世界一危険」として返還が決まった沖縄の米海兵隊普天間飛行場になぜ配備するのか。沖縄県民に過重な負担を強いることで成り立つ日米安全保障条約は不平等ではないか。

 私たちの新聞にとって、これらは「言いたいこと」ではなく「言わねばならないこと」です。

◆「志」を受け継いで
 悠々は七十一年前のあす九月十日、太平洋戦争の開戦を見ることなく六十八歳で亡くなりました。

 歴史に「たら」「れば」は無意味ですが、悠々だったら今の日本を見て、何と論評するでしょう。

 碩学(せきがく)の先輩には及ぶべくもありませんが、言わねばならないことを言う志と気概は、私たちが受け継ぎたいと考えているのです。

往年の朝日新聞ならこのような社説を載せたのでしょうが、今日では見る影もありません。それに比べて、東京新聞の覚悟のほどを確認できる社説です。

読売・産経・日経・朝日は解約して、東京新聞を取ろう!

これでもう、アピタルからも、ヨミドクターからも、日経メディカルからも、取材やインタビューの依頼は来ないだろうなぁ。

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2012年9月 9日 (日)

植松稔『抗がん剤治療のうそ』(2)

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DP2 Merrill F2.8 1/250秒 ISO200


抗がん剤治療のうそ ~乳がんをケーススタディとして~ (ワニブックスPLUS新書) ITT(Intention To Treat)解析のルールに縛られないで、クロスオーバーした人たちを別に扱った試験もあります。植松稔先生の新著『抗がん剤治療のうそ ~乳がんをケーススタディとして~ (ワニブックスPLUS新書)』では、乳がんの分子標的薬ハーセプチンの例を取り上げています。2005年のクリニカル・オンコロジー誌に載った論文です。

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「グラフ1」とは、同じハーセプチンの試験で、2001年のNew England Journal of Medicine誌に載った論文のことです。これらもクロスオーバー試験でした。上の図のように、生存率でわずかに差があります。ところが、後からハーセプチンを投与した患者と最後までハーセプチンを使わなかった患者を分けてみると、

Img_0001
生存率はかなり低くなります。このように、ITTルールに縛られないで分析することも可能なのです。

植松先生はこの著作で、臨床試験の「クロスオーバー試験」という性質を巧みに利用して、抗がん剤は急いで使う必要もないし、ほとんどの患者には効果がない、ことをわかりやすく説明しています。重要な結論だけを書けば、

  • 抗がん剤による真の再発・転移予防効果は5%ほどである。
  • 抗がん剤による真の延命効果は10%程度である。
  • ハーセプチンは転移が進行してから使っても効果は同じ
  • 術後の再発予防で抗がん剤を使う必要はない
  • 最近はIPCWメソッドという詐欺のようなルールが出てきた

など。比較的抗がん剤の効きやすい乳がんでこの程度ですから、他のがんではもっと効果は小さいだろうと予測できます。この著作は、乳がんの患者会「イデアフォー」の会報に連載したものに加筆して出版とのことですが、新書ながら非常にわかりやすく、要領よくまとめられた良書です。

また、セレクティブ・クロスオーバーとIPCWメソッドを使った詐欺的な論文が現れだしたと警鐘を鳴らしています。

  1. 「専門家が言っているから正しい」は、しばしばいとも簡単にひっくり返る。(3.11後はこれはもう国民的常識になっているが・・・)
  2. 統計学のルールを鵜呑みにしない。(統計とは、わずかの違いしかないときに、相手を論破するためのツールです。誰が見ても明らかなら統計学など必要ありません)
  3. 専用のコンピュータソフトにデータを入れれば、誰でも簡単に高度な統計分析ができる時代です。大事なのはデータが現実を反映しているかどうか、人間が判断することです。
  4. メタアナリシスが重要視され、いかにも最高の統計分析とされているが、所詮は多数決の原理。真理は多数決では決まらない。(メタアナリシスを過大評価するな)
  5. 遺伝子構造は一人一人違う。がん細胞もひとりの人の腫瘍内でも異なっている。たまたま同じ器官に生じた腫瘍というだけで同じ病名がついているが、(遺伝子が違うのだから)全く同じがんということはありえない。
  6. したがって、遺伝子の違う別人のデータで作ったガイドラインに縛られることはない。(標準治療は平均治療。平均的に死んでいくことだけは保証されている)

抗がん剤には患者が期待するほどの効果はない。しかし、一部の患者には非常に効果があり、延命に寄与している。延命効果は乳がんの新しい薬で20%程度、その他のがんではもっと低いだろう。ごく希に腫瘍が消失するような例もあるが、それは数千人に一人程度で、抗がん剤のおかげかどうかも明確ではない。逆に抗がん剤で命を縮める患者もたくさんいるはずですね。

陽子線治療はエックス線に比較してほとんど優れた点はないことを強調しています。北海道がんセンターの西尾院長も同じことをいっていましたね。箱物を作っても、技量の低い放射線技師しかいなければ、役にたたないと。

最後は「医療の不確実性」に行き着きます。”自分”に効果があるかは、やってみないとわからない。

必読文献に違いありません。

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2012年9月 8日 (土)

植松稔『抗がん剤治療のうそ』(1)

SDIM0919

DP2 Merrill F5.6 1/200 ISO200


近藤誠氏が『抗がん剤は効かない』で、効かない例として挙げたベクティビックスの臨床試験があります。

ベクティビックスは治癒切除不能な進行・再発結腸・直腸癌への適用が認められた分子標的薬です。全生存率(OS)の延長効果がないのに、無憎悪生存率(PFS)が改善しとの理由で新薬として承認されたものです。近藤誠氏は全生存率(OS)に差がないのであるから承認すべき薬ではない、と主張しています。グラフを見れば、確かに延命効果はなさそうです。

Besthi

この近藤氏の主張に対して、この臨床試験はクロスオーバー試験であり、そのことを説明しない時点で近藤氏の主張はアウトだ、との反論がありました。SHO先生のブログなど。 臨床試験中に、BSC(ベスト・サポーティブ・ケア:緩和治療とほぼ同じ)群に振り分けられた患者が再発した場合、何もしないということは人道上問題があるので、その時点で新薬を投与する場合があります。本来新薬投与の予定がない患者に途中から新薬を投与するので、クロスオーバー試験となるわけです。

ベクティビックスの「審議結果報告書」P.51 を見れば、

本試験には463 例(BSC 群232 例、本薬群231 例)が登録され、本薬群で投与が行われなかった 2 例を含む全例が有効性及び安全性の解析対象とされた。なお、BSC 群の177 例(76.3%)が継続投与試験に移行し、176例で本薬が投与された。

と書かれています。BSC群の76.3%の患者にベクティビックスが投与されたわけです。

しかし統計処理上のITTルールというものがあって、後で新薬を投与しても最初の振り分けのままで統計処理をする必要があるらしいのです。76%の患者に新薬を投与したBSC群と、100%投与した本薬群を比較してグラフ化しているのですから、グラフが接近するのは当然だとなります。ただ、この臨床試験がクロスオーバー試験なら、次のことが言えると思います。

クロスオーバー試験でOSに差がないということは、最初から抗がん剤を使っても、腫瘍が大きくなったことが確認されてから使っても、生存率は変わらない。

SHO先生らの反論は的を射ていると思います。しかし、素人考えですが、どうしてこのような処理をするのでしょうか?。3つのグループに分けて考察すれば良さそうなものです。そうすれば実際の効果も明らかになるはずです。

U抗がん剤治療のうそ ~乳がんをケーススタディとして~ (ワニブックスPLUS新書)SAオンコロジーセンターの植松稔先生の新著『抗がん剤治療のうそ ~乳がんをケーススタディとして~ (ワニブックスPLUS新書)』は、臨床試験の「クロスオーバー試験」という性質を巧みに利用して、抗がん剤は急いで使う必要もないし、ほとんどの患者には効果がない、ことをわかりやすく説明しています。

植松先生には、PET検診の結果膵臓がんの転移が疑われたとき、サードオピニオンを受けたことがあります。そして「PET検診はあまり信頼性がないから、もう一度造影CTを撮ってから判断した方が良い」と助言をいただきました。その結果、転移ではなくアーティファクトだと判断されました。おかげで鹿児島まで行って放射線治療をする必要が無くなったのです。こうした経験から、植松先生は自分の病院の経営よりも患者の利益を優先する立派な先生だという印象を持っています。そのときのブログ記事はこちらです。↓

  1. 転移ではなかった
    ポイントの放射線治療をする予定だったが、植松先生の提案でもう一度CTを撮ることになった。昨年のすい臓がんを見つけたときにお世話になった山王の伊藤医院でお願...
  2. サードオピニオン
    接場所へ。「明るいがん治療」の著者である植松稔先生の直接の面接。どことなく若いころの堀内孝雄に雰囲気が似ていました。部屋に入るなり、「元気そうなのでびっく...

(つづく)

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2012年9月 7日 (金)

写真展と国会議事堂前抗議集会

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DP2 Merrill F5.6 1/200 ISO200 再開発予定の町、京急蒲田駅前商店街


SIGMA SD1のfoveonセンサーの解像度と、このセンサーの画像をモノクロデジタルにした表現力が一度に確認できる写真展、桐島ローランド写真展「TIMESCAPE」。これは絶対見逃せない。八重洲のIsland Galleryに行ってきた。

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ボリビアのウユニ塩湖近くの機関車の墓場。モノクロデジタルもここまで来たか!と感歎し、見とれてしまった。foveonセンサーの画像は、階調の再現力がすばらしく良い。空のグラデーションにも破綻がない。ダイナミックレンジも大きい印象を受ける。A1サイズに印刷された作品でも、細部のディテールはみごとだ。

深くしまった黒は Canson の100%コットン写真用紙「BFK RIVES」を使っていると、会場にいた女性から教わったことも収穫だった。桐島ローランドがいろいろと試して、これがいちばんだという話だった。カメラはSD1 Merrillだが、DP2 Merrill も同じCCDセンサーを使用している。いずれ私もDP2で挑戦してみる。

 

その後は地下鉄で桜田門駅まで行って、恒例の金曜日国会議事堂前の抗議集会に参加した。今日は「原子力規制委員会の人事撤回せよ!」だ。国会前には5時半頃から続々と集まりだした。まだまだ暑いが参加者も熱い。

 

Sdim1081

Sdim1084

本日の写真はすべてモノクロでした。

2012年9月 2日 (日)

愛犬の死

一度は獣医から安楽死を勧められていた我が家の愛犬・ヨークシャーテリアの年長の方が、先日28日に亡くなった。15歳と6ヶ月だから、人間ならば80歳から90歳近くとなろうか。

自分の心に現れた「喪失感」の大きさに、いささか戸惑っている。いや、私だけではなく、遺されたもう一頭の年少のヨークシャーも、なんだか違う雰囲気を感じるのか、おとなしく寂しそうにしている。

今年の1月には15歳の誕生日を祝った。その時の写真だが、こんなにも元気そうだった。老犬には見えない。

7

慢性腎不全で毎日輸液を100cc注射していた。あの小さな体に毎日100ccはたいへんだっただろうなぁ。おかげで持ち直したが、次第に内臓のあちこちが悪くなり、ひと月ほど前からは立つことも困難で、その日の調子が良ければやっと歩けるく状態だった。

がんばってトイレまで歩こうとする姿が痛ましかった。尿を垂れ流すので、床を1日に何度も拭き掃除しなければならなかったが、そんなことも全く苦にはならなかった。最後は肺炎を併発し、獣医からも「ここ数日が峠だろう」と言われていた。最後の日はけなげにも、4つの脚を踏ん張って、長い時間しっかりと立っていた。

子犬で我が家に来て、いつの間にか私を追い越して先に老人になった。そして先に逝ってしまった。これにある種の理不尽さを感じる。「無常観」とでも言っても良い。

しかし、こんな気持ちは、どうやら私だけではなさそうで、中野孝次も、飼っていた紀州犬のハラスが亡くなった喪失感の大きさを紛らわすために、編集者に勧められて『ハラスのいた日々』をいう本を書いているくらいだ。この本への反響を次のように遺している。

その本が出版されたのが一九八七年、つまり高度経済成長成熟期で、日本でもさかんに犬が飼われ始めたころであったせいか、これは<編集者の>高橋さんや私の予想を超えてよく読まれた。犬の本への反響は普通の本のそれとまったくちがうことも、この本を出してみて始めてわかった。

人間の死に対する以上の悲観を犬の死がもたらすこと、その喪失感と悲観の大きさのあまり心身の不調を来した人さえいること、その救いようのない思いを私のハラスの死への思いを記した文章を読むことで慰められたこと、などがそれらの手紙に共通するものだった。つまり人間の犬に寄せる思いのほどが、ときとして人の人に寄せるそれ以上に深く切実であることが、それらの手紙によってわかったのだった。(『犬のいる暮し』より)

自分の親や兄弟を亡くしたときの喪失感とも違う。この喪失感はどこから来るのだろう。

それはたぶんこのような理由からだろう。私たち人間は、ローランズが『哲学者とオオカミ―愛・死・幸福についてのレッスン』で述べているように、「内なるサル」を飼っていて、サルの得意技である「計算」することによって生きている。一方でイヌ(もちろんオオカミであるブレニンも)は「計算」や利害関係の契約によっては生きていない、からだ。イヌとの関係は計算が入る余地がないし、「おまえは俺に何をしてくれるんだ?」という損得勘定でもない。むしろ一方的にこちらがイヌに提供する関係なのである。

なぜわたしたちは、少なくともわたしたちの一部は、イヌが好きなのだろうか。イヌはわたしたちの魂の、久しく忘れられていた領域の奥底にある何かに語りかけるのだ、と思いたい。そこには、より古いわたしたちが住みついている。わたしたちがサルになる前に存在していた部分だ。これはわたしたちがオオカミだったころの魂だ。このオオカミの魂は、幸せが計算のなかには見いだせないことを知っている。本当に意味のある関係は、契約によってはつくれないことを知っている。(『哲学者とオオカミ』より)

P1020513

つまり、愛犬を失った喪失感は、意味のある深い関係を失った喪失感でもあるからだ。親や兄弟の間でも、ある種の「計算」は存在するが、イヌとの間にはそれがない。だから深い喪失感に陥ることができるのだと思いたい。わたしたちはイヌとの関係において、失われつつある「内なるオオカミ」を見ているのかもしれない。

わずか15歳の一生は短い。人間の100歳だって短さにおいては似たようなものだ。ビッグバンによってこの宇宙が誕生してから137億年。40億年前にこの地球に生命が誕生した。私も愛犬も、137億年間は存在しなかったのだ。そしてつかの間のこの一瞬、この世に存在した。そしていずれだれもが死んでいく。その後はまた「”わたし”の存在しない時間」が流れていく。40億年後に、この天の川銀河が、254万光年の彼方にあるアンドロメダ銀河(M31)と正面衝突し、地球も太陽もばらばらに飛び散ってしまうまで。

銀河×アンドロメダ星雲衝突は約40億年後。その時地球の空はこんなすごいことになっている

今日あたりは、やっと少し元気が出てきて、チェロの練習も再開している。

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