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2016年8月

2016年8月31日 (水)

チェロは膵臓がんに効く?

今日からまた出張です。宿のエアコンの効きが悪くて、窓を開けた方がまだまし。ま、都内と違って夜は涼しいのでいいか。

久しぶりにチェロの話題。もちろんブログには書かないけど、ほぼ毎日楽器を出して励んでいますよ。

チェロのボーイングは「脱力」が大事だと言われながら、私の場合は、弦に対して結構圧力をかけているようです。これじゃ豊かな響きは出てこない。

いつも参考にさせていただいているへったぴセロ弾きさんがブログで「ゆるゆるボーイング」なる方法を紹介していました。

弓の毛を極端にゆるゆるに張り、開放弦でゆっくりと、圧力をかけないで、弦と直角に一点を弾くという事だけ心がけて、練習する、これを毎日数分間、1週間続けたら結果が出るとのこと。

早速やってみたが、確かに余分な力が抜けて(弦に対して力を加えことができない)、それでも十分に豊かな音が出ます。弦に対して直角でないと十分な音が出ない。これな良い。そのまま音階練習を行って、ほんの少し(いつもよりもずっと緩く)弦を張って、アリオーソ、白鳥、鳥の歌と曲を弾いてみると、確かに音が違う。

これまでは弦の反発に対して「なにくそ」という気で弾いていたのが、弦を抱き込み、抱擁するような感じで音がつながる。弓が安定してくる。

しばらくこれを続けよう。

チェロは膵臓がんに効く、かどうかは分かりませんが、欧米で盛んな音楽療法には一定の効果がありそうです。

確かにモーツァルトのアダージョなどは、聴いていて気分が良いです。自然と瞑想になっている。ピアノ協奏曲の第2楽章のAdagio、クラリネット協奏曲のAdagio、 K.540のアダージョ ロ短調、どれも良いですね。

膵臓がんで闘病中の東京オリンピックの「名花」チャスラフスカさんが亡くなった。ご冥福をお祈りいたします。

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2016年8月30日 (火)

NHK-BS「どこに向かう日本の原子力政策」に驚いた

先日NHK BSで放映された「解説スタジアム-どこに向かう日本の原子力政策」の録画を観た。

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水野倫之委員を筆頭に6人の解説委員全員が「原発の再稼働に反対」と述べていた。番組を通してのアンケートでも約8割が再稼働に反対であり、これはもう国民の総意といって良いだろう。したがって、受信料で運営されているNHKが、原発再稼働や核燃料サイクルに否定的な報道をするのはあたりまえなのだが、籾井会長が就任以来、政府の方針に反する報道は抑制されてきたように見える。

そこに、NHKの解説委員の全員が明確に反対を述べた番組を放映したのだから、驚くと同時に、相当腹をくくっての番組なのだろうと感じた。

論点は明白でした。原子力規制委員会は「新基準に適合するかどうかを判断するのであって、安全かどうかを審査しているわけではない」「避難計画は審査の対象ではない」と言い、政府は「新基準に適合し、安全が確認された原発は再稼働をする」と、相互に責任の押し付け合い。

アメリカでは避難計画の策定と避難訓練の実施が再稼働の前提であり、それに適合しない原発が廃炉になっています。

一方で、昨日の新聞では、

 原子力規制委員会が運営主体の変更を求めている日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県)が再稼働を目指す場合、大幅な国費の追加負担が必要と政府が試算し、菅義偉官房長官を交え廃炉も選択肢に対応を検討していることが29日、分かった。原子力機構関係者によると、新規制基準への対応費や設備の維持費などで4千億~5千億円かかるとの観測も機構内にある。
 政府内には、廃炉を決断すべきだとの見解もある。存廃が政治判断され、存続前提のシナリオが白紙に戻る可能性が出てきた。廃炉が決まれば、核燃料サイクル政策の見直しは必至。

と報道されている。この動きを察知しての放映だったのかも。

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Kindle Unlimited 解約した

鳴り物入りで始まったKindle Unlimited。一ヶ月は無料で体験できるというので申し込んだが、読みたい本がない。コミックはたくさんあるようだが興味がない。

読みたい本は、一冊一冊丁寧に探してお金を出して買うべきかと思う。

青空文庫で古典を探した方が良さそうだ。で、柳田邦夫の『遠野物語』、カフカの『変身』、島崎藤村の『破壊』、宮澤賢治の『春と修羅』、『鴨長明の『方丈記』をKindleにダウンロード。

やはり読書は紙の本だなぁ。積ん読本も一杯あるけど、カメラを担いでぶらっと出かけるときにはKindleを持っていこう。

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2016年8月29日 (月)

今日の一冊(55)帚木蓬生『受難 』

実験の計画やデータ整理があり多忙なのに、ついつい読みふけってしまいました。

帚木蓬生は『三度の海峡』以来、ほとんどの作品を読んでいます。今回の『受難』もまた、朝鮮を舞台にした作品です。

母と二人で滝壺に転落して水死した高校生の姜春花(カンチュンファ=はるか)は、津村リカルド民男が拓いた博多細胞工学研究所で最先端のiPS細胞による再生医療によって、レプリカとして再生する。

その方法というのが、万能細胞を3Dプリンタを使ってインクジェット方式で噴射しながら、もとのからだと同じものを作り上げていくという方法。なるほど、インクジェットのインク粒子と細胞の大きさはほぼ同じだから、できなくはないのだろう。

そして、多数の高校生が犠牲になったフェリー「世越号」沈没事故、北朝鮮の最高指導者暗殺計画が絡んでくる。

祖父と暮らすことになったはるかは、救出された高校生らと連絡を取りながら、沈没事故の真相に迫ろうとするのだが、レプリカであるはるかの身体には、数ヶ月で皮膚に亀裂が生じ、顔も老婆のようになる。何度も3Dプリンタによる修復を繰り返さざるをえない。

冬の京都の描写もいいね。特に桂離宮の簡素な佇まいが目に浮かぶようです。(行ったことはないけど)

最後はあっと驚くどんでん返しで、姜春花のレプリカであるはるかは半年の命を終えるのですが、それを予期していたかのように、はるかは、多くの人と出会い、たくさんの旅をし、日本と韓国の食事を堪能し、それらの全てをスケッチとして書き残します。半年を、20年も30年分も生きたと。

細胞が劣化して皮膚に深いしわができる。修復すれば数ヶ月は元通りの生活ができるが、紫外線や激しい運動はダメ。そしていずれは内臓細胞にまで劣化が及んだら・・・。これって抗がん剤治療に似ています。抗がん剤が効けば生きられる。耐性が付けば新しい抗がん剤を。しかし、いずれは・・・。

そうしたときに、はるかのように十分にいのちを生き切ることができるだろうか、などと考えてしまいます。

〈インタビュー〉帚木蓬生『受難』

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2016年8月24日 (水)

明日のクロ現+「“穏やかな死”を迎えたい ~医療と宗教 新たな試み~」

明日8月25日のクローズアップ現代+には、大津秀一先生も出演するようですね。

“穏やかな死”を迎えたい ~医療と宗教 新たな試み~

「死んだらあの世にいくのか?」「死んだら無になってしまうのか?」 がんなどで余命わずかとなり、死期が迫ったとき、誰しもが抱く不安や恐怖。 これらの不安を和らげるため、いま全国の病院に、僧侶や牧師が入り、末期患者に寄り添い始めています。 無宗教だった女性が、宗教者の力を借りて、穏やかな最期を迎えるドキュメント。 タレントの壇密さんと、現役緩和ケア医と共に、新たな“死の処方箋”を考えます。

臨床宗教師とは、僧侶で膵臓がん末期の田中雅博さんも著作で、末期のがん患者へのスピリチュアルケアの重要性を訴えています。「スピリチュアル・ペイン」を「いのちの苦」と日本語を充て、日本の医療現場には「いのちのケア」が決定的に欠けていると苦言を述べています。

体の痛みを止める医師が必要であるのと同じように、『いのちの苦』の専門家が必要です。それがほとんどいないのは日本の医療の欠陥です。

人というのは、元気なうちは自己の欲望にとらわれたり、怒ったり、他人を差別したりするものです。しかし死が避けられないとなったときは、そうした ことから離れて、自分のいのちを超えた価値を獲得するチャンスでもあります。いのちより大事にしたいもの。それは信仰を持たない人にとっても、自身の『宗 教』だと思うんですよ。それに気づくことができれば、その大事なもののために残りの時間を生きることができるのではないでしょうか。

余命宣告されて「いのちの危機」が訪れたとき、それは「いのちが危ない」と同時に「機」は「チャンス」の意味もある。いのちが危ないときこそ、自分のいのち より大切なものを見つけることができたなら、それはその人にとっての「宗教」である。ホスピス運動の創始者、シシリー・ソンダース女史が「死にゆく人の尊厳」とは「死んでゆく人が、自分の人生に価値を見出すこと」と定義したように、尊厳を持って死を迎えることができるに違いない。

がんと死を考えるのに良い機会かもしれません。

あれっ、大津先生の肩書きが「東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンター医師」となっている。近くだわ。

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マインドフルネス やってますか?

8/21のサイエンスZeroでマインドフルネスが紹介されていました。『新・瞑(めい)想法 “マインドフルネス”で脳を改善!

ひと言で言えば、私がブログで取り上げてきた内容がコンパクトにまとめて紹介されていました。

私たちの脳は、デフォルトモード・ネットワークの状態にあります。これは車で言えばアイドリングに相当する状態です。しかし、これが強いと常に過去のことや未来のことばかりに意識が集中して、今現在のことが疎かになります。カバットジンはこれを「自動操縦状態」と言っています。

あのときに検査をしておけば・・・、とか、今の抗がん剤が効かなくなったら・・・、余命はどれくらいだろうか・・・とか、ほとんど過去と未来のことばかりを考えている状態が多いのではないでしょうか。

マインドフルネスは、そうした雑念に「気づき」、今ここにある自分に意識を集中することができるようにします。

それがどのような効果があるのか、番組で紹介されたのは、マインドフルネスで脳の構造まで変っていく。また遺伝子の活性化までも影響を与えることができるのです。

マインドフルネスを短時間行なっただけで、脳のdlPFC(前頭前皮質背外側部)といわれる部分が活性化します。dlPFCは脳のなかのさらに司令塔ともいわれる部分です。

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デフォルトモード・ネットワークが脳のなかでさまざまな雑念を生み出すのですが、dlPFCが働くことによって、うまくコントロールされ、雑念が生じにくくなるのです。

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さらに、マインドフルネスによって脳のなかで記憶を司っているといわれる海馬の灰白質が大きくなり、

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扁桃体は小さくなります。ストレスが多い人やうつ病に人は、扁桃体が大きく、海馬が萎縮している場合が多いのですが、マインドフルネスは、扁桃体を小さくして海馬を大きくさせることで、ストレスから早く回復できるようになります。

さらに、病気やストレスに関係しているといわれるRIPK2遺伝子の活性化を抑えることも実証されています。

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RIPK2は炎症に関係する遺伝子で、肥満やがんになると体のなかでは炎症反応が続いており、またがん細胞は炎症反応を利用して増殖することが知られています。

マインドフルネスは炎症に関係する遺伝子にまで影響を与えることができる、つまり、「心の有り様によって遺伝子も変る」ことが科学的にも分かってきたのです。

炎症とがんとの関係を長年にわたって研究してきた三重大学教授の三木誓雄氏は、「がんの組織がIL6とともにIL6受容体をも高発現していることに 注目してきた。その結果、 IL6が中心となってがん悪液質が発生、しかもがん組織自ら産生したIL6を自ら受容して増殖する患者にとっては大変迷惑な循環現象が起こっていると捉え るようになった。」「食べても、食べても痩せる」という悪液質の特徴の背景には炎症があると三木氏はいう。がんに由来する炎症マーカー(CRP)値上昇は がんが発見される何年も前から続くことになり、結果的に大きなダメージを患者の身体に与えている。

マインドフルネス瞑想法の効果は、免疫システムの正常化、炎症の減少などが証明されています。2ヶ月間の瞑想だけで、免疫システムがインフルエンザ・ワクチンに強く反応するようになり、白血球はNK細胞も含めて正常になり、がんとより強く戦えるようになったのです。

家族に I LOVE YOU!』のトミッチさんもマインドフルネスで効果を実感しているそうですよ。

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2016年8月23日 (火)

今日の一冊(54)『期待の膵臓癌治療─手術困難な癌をナノナイフで撃退する! 』

久しぶりの「今日の一冊」ですが、まだ発売前の本です。膵臓がんへのナノナイフ手術の第一人者森安史典医師へのインタビューをまとめた本です。

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森安史典(もりやす・ふみのり)1950年、広島県生まれ。75年、京都大学医学部卒業後、倉敷中央病院、天理よろづ相談所病院、京都大学医学部附属病院で勤務。米国エール大学への留学を経て、96年、京大助教授となり、2000年より東京医科大学病院消化器内科主任教授(現職)。最先端技術を導入した肝臓疾患の診断、治療に定評がある。09年より瀬田クリニック東京非常勤医師として、がん免疫細胞治療の診療にも取り組む。趣味はゴルフ。

森安医師は、瀬田クリニック東京の非常勤にとして免疫療法にも取り組んでいる。← これ、ちょっと気になる経歴。

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内容紹介
手術できない膵臓癌に対して唯一の治療法「不可逆電気穿孔法」(通称ナノナイフ治療)

ナノナイフといってもメスではなく、開腹しない治療法で、開腹のような体力の低下が起きない。アップル社のスティーブ・ジョブズさん、坂東三津五郎さん、横綱の千代の富士・九重親方の膵臓癌に関する報道で、膵臓癌の難治性が改めて注目された。

初期の膵臓癌に特徴的な症状はなく、受診し膵臓癌と診断された時には、多くは手術不可能、何も治療しなければ平均生存率が半年といわれ、最後の難攻不落の癌である。

その膵臓癌に対しナノナイフ治療という最先端治療が、2015年4月よりやっと日本で始まった。先陣を切って治療を行なっている森安史典医師に、この最先端治療について、インタビューを行ない、まとめた本である。

森安史典医師は、東京医科大学病院消化器内科主任教授として長年消化器癌治療に携わり、今年3月退官後、4月より山王病院で精力的にナノナイフ治療を行なっている。

現在、肝細胞癌の標準的な治療として位置づけられている「ラジオ波焼灼術」も、日本で最初に始めた医師の一人。「森安先生が認めて導入した診断法や治療法は、10年後には必ず日本の医療現場で主流になる」と言われているという。

<はじめに>より引用

2016年1月、国立がん研究センターが癌患者の10年生存率を初めて公開した。胃や乳癌のステージI(最も軽度)では9割以上が10年以上生存していることに対し、膵臓癌はステージIの患者でも3割以下しか生存できない。膵臓癌は自覚症状もなく進行し、早期発見も極めて難しい。癌が発見されたときにはすでに手術不可能である場合が多く、患者に突然の余命宣告する「難攻不落の癌」といわれている。ゆえに患者は一刻も早く新たな治療法が開発されることを待ち望んでいる。

この最も困難な膵臓癌に、『ナノナイフ』と呼ばれる全く新しいアプローチで挑んでいるのが森安史典医師である。その詳細は本書で解説するが、ナノナイフという電極針を癌患部まで刺し、高圧電流で癌細胞を撃退するというものである。切除不可能の膵臓癌に対し、残された最後の望みといえる最新治療である。

この治療の画期的な点は、第一に開腹手術ではなく、皮膚から数本の針を刺すだけで身体への負担が少なくて済む点である。第二に電流が流れた場所の癌は細胞死するので癌の取り残しが極めて少ないことである。癌が複雑に血管に絡みついて、数年前までは打つ手がなかったような膵臓癌に対しても、このナノナイフで治療が可能になった。

欧米では、わずか3日後に退院するほど画期的な治療法である。 ナノナイフ治療は日本ではまだ始まったばかりである。アメリカでは外科手術とナノナイフを組み合わせる治療がされている。癌を取り残すことなく、再発を防ぐ効果をあげているという。森安医師は、膵臓癌以外にすでに肝臓癌へのナノナイフ治療を実施しているが、今後、さらに適応範囲は肺癌・乳癌・胃癌・大腸癌・前立腺癌と広がることが期待される。

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パンキャンの「膵癌治療の最前線2016 in 東京」でも紹介されていました。

今年2月の週刊ポストの記事も紹介しておきます。

 近年になり、早期発見が難しい膵がんに対し、特異的なタンパク質が発見され、腫瘍マーカーとして早期発見の有力な手段となっている。しかし、今のところ手術可能なステージ3までの膵がんの発見は約15%で、残りの約85%は手術不能である。だが、抗がん剤しか治療選択肢のなかったステージ4Aの膵がんに対し、ナノナイフ治療の臨床研究が始まっている。
 これは、がん細胞に体外から針を刺し、針の先端の電極に3000ボルトの電流を短時間通電させることにより細胞に孔(あな)を開け、がんを死滅させる治療だ。東京医科大学病院消化器内科の森安史典主任教授に話を聞いた。
「ナノナイフ治療については、18例の肝がんに対して臨床研究を実施し、有効性と安全性が確認できました。そこで、昨年4月から局所進行性で遠隔転移のないステージ4Aの膵がんに対し、8例を目標として臨床研究を行なっています。現在6例に実施しましたが、その多くの症例で腫瘍が小さくなっています。この治療は転移のあるステージ4Bには適応しません」
 膵がんのナノナイフ治療は、全身麻酔を行ない、身体の表面から超音波の画像を見ながら針を刺す。膵臓の周りには胃や十二指腸があるが、それらを貫通して注射針程度の太さの針を、がんを取り囲むように刺す。
 例えば3センチの膵がんの場合、がんを取り囲むように2センチの間隔で4本の針を刺す。針の先端の1.5センチだけ電気が流れる構造で、プラスの針からマイナスの針に向かって電気が流れる。3000ボルトの高電圧で、1対の針の間に1万分の1秒という短時間で80発から160発通電すると、がん細胞にナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)の孔が開き、細胞質が溶け出す。
 これで臓器を壊すことなく、がん細胞だけをすべて死滅させられる。ナノナイフ治療は、2008年にアメリカで始まり、当初は肝がん治療が主だった。
「ケンタッキー州ルイビル大学のマーチン博士のグループは、ステージ4Aの膵がん200例にこの治療を実施しました。50例で腫瘍が縮小し、手術可能となり、残り150例は抗がん剤併用で延命が得られています。
 平均生存期間は、抗がん剤単独に比べて約2倍の24か月に延びています。局所の再発は3%で、ナノナイフ治療は膵臓にとどまっているがんを強く抑える効果(局所制御能)があることも実証されました。そのためアメリカでは、膵がん治療に使われる例が多くなっています」(森安主任教授)
 膵がんのナノナイフ治療は、10日から2週間程度の入院を要する。通電範囲では、がん細胞と周辺の正常細胞も死滅するため、胃や腸の粘膜に潰瘍が生じたり、膵炎が起きたりするからだ。これらの回復のため安静と絶食が必要で、肝がん治療よりも若干入院期間が長い。欧米では肺がん、前立腺がん、腎がんなどの治療に用いられており、今後は日本でも導入されることが期待されている。
■取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2016年2月19日号

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2016年8月22日 (月)

本庶佑:がんは治る

台風9号が関東を直撃。八王子付近はすごかったらしいが、大田区はそれほどでもない。こんな日はバロックを目一杯音量を上げて効くに限る。

トレバーピノックのバロック名曲集。バッハのオルガン曲、そしてヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「海の嵐」

科学 2016年 07 月号 [雑誌] 岩波の『科学』で本庶佑さんが「がんは治る」を連載している。本庶佑(ほんじょ たすく)さんとは、いま注目を集めているオプジーボ、免疫チェックポイント阻害剤の作用機序となるPD-1抗体を発見した方。4月号からの連載でまだ続いている。

いくつか気になった記事の内容を紹介する。

PD-1抗体は、特定のがんだけに効くのではなく、すべてのがんに効くであろうということです。 多少の有効性の違いはあったとしても、原理的にすべてのがんに効くであろうと思 っています。

免疫チェックポイント阻害剤は膵臓がんには効かない、と言う先生もいますが、断定するのはまだ早いでしょう。

米国国立癌研究所(NCI)が運営する診療試験の登録システム「National Cancer Institute|Clinical Trials」で、「PD-1 Pancreatic Cancer」で検索するといくつかヒットします。ざっくりと検索しただけで、内容までは確認していないが、相当数の臨床試験が登録されていると思われます。期待しましょう。

ほぼ例外なく、抗がん剤の治療では、がんの転移と再発がおこってしまいます。これが大きな課題として残り、それを説明するものとして、がんの幹細胞があるのではないかといった考えもあります。 がん幹細胞があるかどうかはいまだ論争が続いていますが、私の考えでは、この考え方自体が、化学物質の抗がん剤ではがんを完全には治すことができないということを示しているとみえます。個々の抗がん剤ではあれほど効果があるにもかかわらず、がんを根治できないジレンマからでてきた説明ではないかという気がします。

抗がん剤ではがんは治らない。症状の緩和とわずかな延命効果があるだけ。それを受入れない患者もいて、最期の最期まで抗がん剤を打ち続ける。返って寿命を縮めているのだろうが、抗がん剤を打つことが「希望」になってしまっている。免疫チェックポイント阻害剤が膵臓がんにも効果があり、保険適用できるようになれば、こうした馬鹿げた悲劇も少なくなると思われる。

従来の免疫療法の多くは、免疫系ががんによって抑えこまれているのを、もう一度元気にするために、自動車でいうところの“アクセル"をより踏み込む、という努力をしてきました。ところが、どうも免疫系の“アクセル"のほうに問題があるのではなくて、“ブレーキ"が目いっぱいに踏み込まれている状態が免疫寛容であって、その“ブレーキ"をはずすことが重要であるということに気づいたのです。それが、PD-1抗体治療の発見です。

がんペプチドワクチンも”アクセル”を目いっぱいふかすことも目指していたのですが、効果が実証できませんでした。

オプジーボもメラノーマ患者の30%には効果がありません。その原因を追及するとともに、さまざまな方法が研究されているようです。

他のがん腫においては、正確にはわかりませんが、半分くらいの人には効かない可能性があります。現在、多くの研究者がこの問題を認識して、解決に当たろうとしています。すなわち、いわゆる不応答性の人に対して、どのような対処方法があるのか、という問題です。

PD-1抗体治療に加えて、別の種類の免疫系のブレーキをさらに阻害する方法、あるいは、低用量の抗がん剤を投与する、あるいは、低い線量の放射線治療を組み合わせるといった、さまざまな組み合わせによる新しい治療法を多くの研究者が検討しています。

低用量抗がん剤との併用も研究されているのですが、日本では民間の病院において、低用量のオプジーボと抗がん剤の併用が行なわれています。オプジーボが高価だから、保険適用外のがんに対して、低用量で対処しようというわけですが、多くの問題を孕んでいます。

爆発的に研究が進んでいるけど、はたして第4の治療法となるのか「夢」で終わるのか。それにしても、PD-1抗体を発見したのは日本人なのに、日本の研究は出遅れている。

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2016年8月18日 (木)

十全大補湯が膵臓がんに効果

Twitterでは呟いたのですが、出張中なのでブログにアップはちょっと後回しになった。

【十全大補湯】進行性膵がん患者における免疫学的パラメーターの変化/論文の意義

  • 徳島大学医学部消化器・移植外科の池本哲也先生らは、漢方薬の『十全大補湯』が膵臓がん患者の免疫機構を強化し、生存期間を延長させる可能性があることを報告しました。
  • 今回の研究以前に膵臓がんの患者では健康な人と比べて血中の制御性T細胞の数が多く、この数が多いほどがんが進行することを明らかにしています。つまり膵臓がん患者で制御性T細胞を減らすことができれば、がんの進行の抑制、ひいては生存期間を延長できる可能性があります。
  • 『十全大補湯』を投与されたこれらの膵臓がん患者では投与前と比較してCD4/CD8比が高くなることが分かりました。このことは『十全大補湯』の投与で、がん細胞排除を命令するヘルパーT細胞が増加していることを示しています。
  • 『十全大補湯』はナチュラルキラー(NK)細胞の働きは弱めずに細胞障害性T細胞の活動を活発にする効果があると考えられます。
  • 十全大補湯は進行性膵がん患者で抗腫瘍免疫を抑制する制御性T細胞数を減少させる。このことは膵がんでの様々な併用療法を行った際に良好な免疫賦活効果につながる可能性がある。

良いことずくめの内容ですが、60名程度の前向き比較試験ですので、確かなことは言えません。しかし可能性はある。

十全大補湯、実はすい臓がんカフェの申込みロームにも、標準療法以外の選択肢として記してあるのですが、何人かの方が試されているようですね。

がん研有明病院の漢方外来、星野惠津夫先生の著書でも、十全大補湯いちばん重要視されていました。

星野先生、また6月に新著を上梓されています。
これで5冊目?

劇的に膵臓がんが治るというわけではありませんが、予後の改善にある程度の効果があるかもしれません。

ただ、漢方外来を受診すると一抱えもある漢方薬を処方されて途方に暮れる患者も多いのが実情ですね。食欲がないのに大量の漢方を飲まなければならないというだけで、お腹がいっぱいになったりする。

  1. 今日の一冊(11) 『漢方薬でがん治療はもっと楽になる』
    がん研有明病院の星野惠津夫先生が監修した漢方の本。『漢方薬でがん治療はもっと楽になる (健康ライブラリーイラスト版)』【西洋医学との併用...
  2. がん研有明の漢方がん治療:漢方で転移がんが消えた!
    がん研の星野惠津夫先生が2冊目の本を上梓されています。2010年に出版された『漢方で劇的に変わるがん治療』はがん治療における漢方...

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常陸秋蕎麦の名店

「すい臓がんカフェ」今回も盛況ですね。遠くからも来られる方がいて、しっかり運営して、来て良かったと思っていただけるようにしなければ。

昨日から利根川河口付近に出張です。秋にある京都での学会発表に備えて実験データ取りです。土曜日に帰る予定。昨日はトラブル続きだったが、今日は順調にいった。

この地に来ると、いつも寄る蕎麦の美味しい店「京七」で、今日も天ざる。この付近のそば屋を何軒も廻ったけど、ここの蕎麦がいちばん。小エビのかき揚げはぷりぷりしていて新鮮です。

食べログの評価は3.02だけど、こんなのアテにならないね。

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ここの蕎麦は、常陸秋そばと北海度のキタワセソバのミックスでつなぎが五分、つまり九割五分蕎麦となる。

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常陸秋そばは、幸手市の「ふくろう」でも使っていた。そばの美味しい店はこれを使っている場合が多い(という私の感じ)

亭主が写真の石臼で毎日挽いて手打ちにしている。香りが良い、蕎麦はわずかに緑がかっている。昼時には売り切れになることも多い。

常陸秋そばは、昭和53年に茨城県久慈郡金砂郷村の在来種から改良した品種で、茨城県の奨励品種に指定されている。そば特有の香りと風味、甘みがある。全国のそば職人から「玄そばの最高峰」との声もあるとか。

そばは本当にピンキリです。高くてもまずい店はまずい。藪蕎麦が美味しいとは限らないね。

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2016年8月16日 (火)

甲状腺の検査

今日はがん研で甲状腺の超音波検査でした。昨年膵臓がんでCTを撮ったときに偶然左の甲状腺に異常が見つかり、細胞診の結果は良性だったのですが、念のために一年後の検査をとなった次第です。

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ヒマワリが咲いていたが、暑すぎるのか元気がない。

今日は超音波の検査だけで診察は来月。まぁ、過剰診断だと思うけど、なんだか最近左の甲状腺辺りに違和感がある。

乳頭がんであれば10年生存率98%だから、まったく心配はしていないし、その前に、別の何かでお迎えが来るはずだ。膵臓がんに比べたら病気のうちには入らない。

受付で「今日はキノシタさんが二人いるので、注意してね」と言われた。注意するのはそちらだろう、検査結果を取り違えたりしないでほしいな。

案の定、別のキノシタさんは既に検査室に入って私しかいないのに、その方のフルネームを呼んでいた。部屋に引き返して今度は私の名を呼んでくれた。

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2016年8月15日 (月)

『すい臓がんカフェ』参加者プロフィール(途中経過)


第2回『すい臓がんカフェ』への申込が、定員の半数30名に達しました。申込をされた方々、ありがとうございます。

今回も、遠くは長野県、ドイツから一時帰国して参加される方もいるなど、すい臓がん患者やそのご家族の「生の情報が欲しい」という思いがひしひしと伝わって参ります。

どなたからどのような情報を得ることができそうなのかを、事前に把握していただくことによって、当日の進行が円滑に進むだろうと考え、個人情報が特定できない範囲で参加者のプロフィールやメッセージを公開いたします。
(申込の際の「個人情報保護方針」で「個人が特定されない範囲で、入力内容をブログなどで紹介することがあります」とお断りしてあります。)

満席になり次第、あるいは締切後に、改めて全員のプロフィールをアップする予定です。

ブログを開設されている方も多く参加表明されています。

  • 膵臓癌になってしまった。
  • 膵臓がんでも幸せに楽しく生きる
  • 主人のすい臓がん闘病記
  • とみさんのブログ
  • 家族にI LOVE you
  • 膵臓癌に…
  • ARISUの連絡帳

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膵臓がんと闘うたくさんの仲間がいます。

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2016年8月14日 (日)

「シン・ゴジラ」観てきました

行かないつもりが、やはりゴジラが上陸した地点に近い映画館で観てきましたよ。

Shingodzilla

呑川を、橋や係留されている漁船をなぎ倒しながら上流に向かい、蒲田駅でも大暴れ。それから品川方面に向かったのだから、多分我が家も踏みつぶされたか尻尾でなぎ払われたに違いありません。

危機に際して、相変わらずの行政の縦割りや、自己保身を皮肉りながら、役にたたない「有識者会議」を開いて時間を浪費する姿は、天皇の生前退位でも安倍政権の「有識者会議」に引き継がれていますね。

アメリカは「無理難題をふっかけてくる」「日本は米国の属国だ」との批判も随所に出てきます。

かといって娯楽映画ですから、これで良いのでしょう。

初代のゴジラは水爆実験によって生まれたのですが、シン・ゴジラも改定に捨てられた核廃棄物をくって突然変異を起こしたという設定です。

一固体のなかで進化と続けることができるようになり、エネルギー源はまだ発見されていない放射性元素で、その分裂エネルギーを利用している。

ゴジラの細胞のパスウェイのような図面が出てきます。それをスーパーコンピュータで解析して、ゴジラの弱点が見つかり・・・・。これ以上はネタバレになるのでやめておきます。

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2016年8月13日 (土)

オプジーボのはかない夢

マスコミが「夢の新薬」ともてはやしてきた免疫チェックポイント阻害剤(オプジーボなど)の否定的なニュースが早速出てきましたね。

抗がん剤に耐性の付いた再発進行性小細胞肺がんで、生存期間中央値9.4ヶ月に対して、オプジーボの12.2ヶ月という数字でした。

しかし、未治療の患者群では、必ずしもうまく行かないことが8月5日にブリストルマイヤーズスクイブ社から発表され、会社の株価が一挙に18%も下落するという事態が発生しました。

541人の未治療の手術不能肺がん患者さんに対して、従来の抗がん剤と比較した試験を行い、「ニボルマブは細胞毒と比較して、PFS(無憎悪生存期間)の延長は観られなかった」とブリストルマイヤーズのCEOから発表されたのです。

「理論的には効くはず」の患者群に対して効果が実証できませんでした。

この薬でたちどころにがんが消えてしまうわけではなく、わずかの延命効果があるというだけのことです。けっして「夢の新薬」などではありません。それも今回の発表で怪しくなってきました。

薬のチェック」で浜六郎氏は既にこのことを警告している。

マブ剤は、日本では 2001 年に販売が開始されたリツキシマブを皮切りに、抗癌剤、抗リウマチ剤などとして臨床応用されている。重症の関節リウマチでは、過剰な腫瘍壊死因子
(TNF-α)やインターロイキン-6 などサイトカインによる炎症をモノクローナル抗体が和らげる。しかし、異物監視機能としてのサイトカインの働きをも弱めてしまうために、結核や敗血症など感染症が悪化するとともに、癌も増える。

2015年に非小細胞肺癌への使用が承認されたニボルマブは、癌細胞を攻撃するTリンパ球(キラー T 細胞)の重要なタンパク(PD-1)のモノクローナル抗体である。これがPD-1 に結合することで、その働きを保護し、癌細胞を攻撃する力を失ったキラーT 細胞の癌細胞攻撃能力を取り戻す、とされる。この働きだけなら、なるほど、夢の新薬となりえよう。

機序に関するメーカーの動画は、こうした説明に終始している。そして、「世界初の新しい免疫療法」「命を助ける待望の新薬」「がん患者の生存期間を延長させる」等々、人々に誤解を与え、戸惑わせる文言がインターネットやメディアでは飛び交う。医療者自身も同様に、患者へ説明している。

しかし、PD-1 に結合してキラーT細胞の活動を抑制するPD-L1は、抗原提示細胞(APC)など免疫細胞にも発現する。癌の抑制よりも、正常の免疫細胞の機能を抑制し、癌を逆に進行させ、感染症悪化、自己免疫疾患発症につながりうることが、毒性・臨床試験、市販後の害反応報告で明らかである。

マブ剤も、ニブ剤も、決して、夢の新薬ではない。寿命短縮の危険因子はすでにかなり判明している。本質的な利点と欠点、利益と害を正確にとらえる必要がある。

免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1の発現状態によっては、返って寿命を短縮することもある。そこまで検査して投与しているのだろうか。

●ニボルマブが PD-1 受容体に結合すると、癌細胞のPD-L1がPD-1に結合できず、癌細胞をアポトーシスさせる細胞傷害性T細胞の能力を回復させ、癌を縮小させるとされる。
●だが、PD-L1が発現するのは、癌細胞だけではない。抗原提示細胞(APC)や単球-マクロファージ、血管内皮細胞、制御性T細胞など正常の免疫細胞にもPD-L1は発現する。ニボルマブは、これらの機能をも阻害し、免疫を抑制し、感染症の悪化や自己免疫疾患、癌増悪など重大な害を生じうる。

マスコミや権威者達が「夢の新薬」ともて囃したときには、眉に唾を付けてよく考えてみることが大事です。「新薬にはすぐに飛びつかない」との教訓がここでも有効です。

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お盆休み

今年もいつも通り、お盆の休みはどこにも出かけない。新幹線は混んでいる。飛行機代は高い。宿も高い。高速道路は大渋滞だ。

どうして、みんな混雑する時期に一斉に出かけようとするのか。

会社勤めでは、この時期に休みが取りやすいからだろうが、サラリーマンの有休消化率は主要国のなかで勧告についでしたから2番目の60%だという。

ずらして休みを取れば良いものを、と思うのだが。

「シン・ゴジラ」が人気らしい。昨年の9月に蒲田駅前や近くの商店街でロケをやっていた。観には行きたいが、この暑さでは出かける気力もない。

音楽を聴いて溜まった本でも読むとするか。

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2016年8月12日 (金)

天皇の「お言葉」はがんサバイバーの終活

天皇の談話(いわゆる「お言葉」)に対して、いろいろな意見があるが、81%が生前退位に賛成している。

全文をじっくりと読んだけど、すばらしい文章力だし、考え抜かれている。なによりも物事に真摯に向き合い、言葉が、私の意思を理解して欲しいという熱情にあふれている。昨今の政治家の言質を取られないための、何の内容もない発言ばかりを聴かされ続けた身には、誠に新鮮であった。

現天皇ほど、憲法の精神を具現化し、尊重しようとして者はいない。折に触れて先の大戦の反省や平和への思いを、皇后や皇太子も含めて語っている。戦前の「絶対主義的天皇制」に戻してはならないと覚悟している。政治に翻弄されることだけは避けたいと。

いろんな見方や意見があるが、私は「がんサバイバーの終活」と受け取った。前立腺がんの手術をされ、再発防止のためにホルモン療法を受けているのだから、骨密度も低下しているだろう。このままでは体力的に相当きついはずだ。
人生をどのように終わらせるのが良いのか、皇太子をはじめ皇族の将来のことも含めて、良く熟慮された結果であろう。そして国民に対して、象徴天皇制を安定的に続けるためには「生前退位」が必要だと説いている。

天皇崩御に際して、一年以上続く行事やそれにともなう社会の停滞に対して憂慮されている。

始めにも述べましたように、憲法の下、天皇は国政に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長い天皇の歴史を改めて振り返りつつ、これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。 

国民の理解を得られることを、切に願っています。

と締めくくられている。

憲法に定める象徴天皇制を安定的に継続するために「お考え」を述べられた。最後に国民に対して「さあ、次は貴方たち国民の番ですよ。よく考えてね」とバトンを渡された。

生前退位に、あの日本会議のメンバーが猛反発している。 「生前退位は国体の破壊に繋がる」など久しぶりに「国体」という言葉を聞いた。

「国体」は万世一系の神聖な天皇こそが日本の国家の精神的な支柱であるとし、そのような存在として天皇崇敬を鼓吹し、そこに「美しい日本の国柄」を見ようとする理念である。現天皇は、そのような「国体」よりも、象徴天皇の現制度のもとで、個人としての在り方、終活を模索されている。

安倍政権は「有識者会議」を設けようとしているが、これは引き延ばし策だろう。彼らは生前退位は認めたくない日本会議のメンバーであり、万世一系の神聖な天皇、戦前の絶対主義的天皇制を理想としているのであるから、あれやこれやの策を弄するだろうが、そうすれば国民の支持を失うことになる。

天皇陛下、なかなかの策略家です。すぐに皇室典範を改定して生前退位ができるようにすべきです。憲法改正せずともできます。

天皇制とは残酷な制度です。天皇には職業選択の自由も居住地域の自由もない。結婚の自由も全面的の担保されているとは言いがたい。普通の基本的人権が認められていない方々です。その制度のなかで生きざるを得ない。全体のために(天皇)個人が犠牲になる、民主主義に反する制度です。

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2016年8月 8日 (月)

がんの王様と言わないで

九重親方が膵臓がんで亡くなった報道に関して、マスコミでも「すい臓がん」の話題が続いています。その多くが興味本位の気がします。

すい臓癌を巡る報道への私的な見解。マスコミのみなさん「がんの王様」と言わないで。

も、一石を投じた記事でした。

「見つけにくい」「見つかったときには、多くが進行している」「再発率が高い」「10年生存率は最低」

これほど続くと、めげてしまいます。がんばっている気持ちがぽっきりと折れるかもしれない。

マスコミの紋切り型の記事や番組には腹立たしくなります。彼らは「売れてなんぼ」なんだから、そんなのを相手にいちいち腹を立てない。

でもね。まず事実を知ることも大切です。「大丈夫ですよ」とその場限りのことばを言われても、いずれ厳しい事実と向き合う日が来ます。

すい臓がんの10年生存率は4.9%です。すべてのがんの中で最低です。
しかし、20人に1人は10年生存できるんだ!と考えてみれば希望につながります。

実際に、手術や抗がん剤の進歩によって、年々すい臓がんの治療成績、生存率も高くなってきているのです。ステージⅣbだって、長期生存例や「治ったもどき」で元気な方もいます。希望はあるのです。

「がんの王様」を受け入れ、治療の進歩を信じて自分でできることを精いっぱいやる。生活の質を維持しながら、残された日々を輝いて生きる。

それが「がんサバイバー」ではないだろうか。

がんとの闘いだけに貴重な人生を費やすなんて、もったいないと思いませんか。治ることに執着すると、人生をムダにしかねません。がんなんて特別な病気ではないんだから。なにしろ、国民の半分はがんになる時代でしょ。ありふれた病ですよ。

「あんたは完治したから、そんなことが言えるんだろ」との声が聞こえてきそうですが、このブログの最初から読んでいただければ、そうでないことが分かっていただけると思います。

がんであろうがなかろうが、今日のこの1日を精いっぱい生きる。それ以外に何か特別な方法がありますか。

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2016年8月 2日 (火)

今日の一冊(53)『孤独を克服するがん治療』

このブログでも時々紹介している『がん治療の虚実』sho先生の初めての本です。

ブログ『がん治療の虚実』では、がん治療の科学的根拠を一般の患者にも分かりやすく丁寧に説明してくれます。これって結構難しいことなんですね。「科学的」にこだわれば専門用語や統計の話になる。難しいことを難しく説明するのは簡単ですが、難しいことを優しい言葉で説明することは相当のエネルギーと深い理解がないとできません。

sho先生は、

私はがん治療医として、20年以上にわたりがん患者さんと接しています。また、勤務医としてできることに限界を感じ、NPO法人宮崎患者共同勉強会を設立してがん患者さんの不安や要望に正面から対応してきました。
本書では、実際にがん患者さんやその家族から寄せられる質問を厳選しました。その上で、ひとりのがん治療医として医学的妥当性を保ちつつ、患者さんの心情に寄り添ったアドバイスを綴っています。

と本書を上梓した動機を述べています。

  • がんを告知された患者にとって、目の前が真っ暗で落胆することが多いでしょう。告知された当初は「何が分からないのか、分からない」状態です。
  • 抗がん剤は本来、患者の苦しみを和らげるためのものです。耐えられない副作用に耐えてまで抗がん剤をやるのは本末転倒です。
  • 代替医療は「絶対悪」ではないと考えています。「まだ別の選択肢がある」と患者が希望が持てることもある。
  • がん治療だけに残りの人生やお金をつぎ込むのは懸命ではない。
  • 治療だけの修行のような人生となるのは、あまりにももったいない。

などなど、患者会を主催していたsho先生ならではの、実践的な助言が豊富に載っています。

本の中の随所で「がんの患者会」や「がんサロン」に出かけて、サバイバーの方と触れあいましょう、と提案しています。同じ苦しみや悩みを抱えてきた先輩の経験が大いに参考になるからです。

主治医との円滑なコミュニケーションをとるために、困っていることや気になることを箇条書きにして(ここからがいい!)

  • 事前に手紙として郵送しておく
  • 受付けに手紙を渡しておいて電子カルテにスキャンしてもらう(主治医がうやむやにしにくくなる)
  • 看護師や薬剤師に事前に渡しておく

を提案しています。そっか、今は電子カルテの時代だから、受付けにスキャンさせあておけば主治医も否応なく見ることになりますね。

また、たくさんの参考図書が紹介されているのも役にたちます。私のブログで紹介した書籍も多く載っています。

最近は東京支部もでき、月に1回の「東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)」も開催しています。

第8回東京支部会(NPO法人宮崎がん共同勉強会)

がん患者さんやその家族、あるいはがんについて興味ある人は誰でもご参加いただけます。
当日は女性看護師も出席しますので、女性の方々もどうぞ。
ご自身あるいは当該がん患者さんの診療情報をお持ちください。
セカンドオピニオンほどではなくても、応用の利く助言ができると思います(ただし個別相談ではなく、出席者全員の前での助言となります)。

時間:2016年8月27日(土)14時から3時間
場所:喫茶室ルノアール 新橋汐留口駅前店の2階会議室
東京都港区新橋2丁目21番1号 新橋駅前ビル2号館2階 
アクセス
JR新橋駅汐留口出てすぐ
参加費用: お飲み物代含めて1000円
(諸般の事情で領収書は出せません)

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2016年8月 1日 (月)

九重親方の治療法は間違っていたのか?

元千代の富士、九重親方が膵臓がんの転移で亡くなりました。61歳は早すぎます。毎年行っている昨年6月の健康診断で膵臓がんが見つかり、7月に手術するも、他の臓器に転移していたそうです。

転移が見つかってからは、セカンドオピニオンで植松先生のUMSオンコロジークリニックに行き、「少ない抗がん剤でも治療する方法がある」とのことで、年初から四次元ピンポイント照射療法を受けたといいます。

がん闘病の九重親方 抗がん剤拒み樹木希林と同じ放射線治療

これについて、腫瘍内科医の勝俣範之医師はTwitterで次のように呟いています。

しかし、UMSは「放射線との併用で少ない抗がん剤でも治療できる」と言っているのであり、植松医師の著書『抗がん剤治療のうそ』も近藤誠氏のような抗がん剤否定本ではありません。

また、ガイドラインは参考にすべきものであって、逐一これに従わなければならないと考えている勝俣医師の方が「エビデンス至上主義」でしょう。

EBM(evidence-based medicine)とエビデンスはレベルの異なる概念であって、EBM=エビデンスではない。

膵臓がんに対して、これこれのエビデンスやガイドラインがあるから、患者は抗がん剤を受けるべきである、というのはEBMではないし、EBMを曲解している。

「エビデンス」と「患者の意向」と「医療者の臨床技能」とを個々の医療プロセスにおいて統合することによってEBMが実践されるのであって、「エビデンス」だけで治療方針が決まるというのは、腫瘍内科医の傲慢である。

『「四次元ピンポイント照射療法」ですが、きちんとしたエビデンスの報告がない』と勝俣医師は言うが、転移した膵臓がんに対してエビデンスのある抗がん剤治療があるのなら教えて欲しいものだ。私の主治医である齋浦先生は「再発・転移した膵臓がんにはエビデンスのある治療法、抗がん剤はありません。再発を早く見つけて抗がん剤をやっても、遅く見つけても生存期間はあまり変らない」とはっきり言われていた。

どっちもきちんとしたエビデンスはないんだよ。

アピタル夜間学校の放映に関してこのように記事にしたことがある。

コメンテーターが、進行大腸がんに対するTAS102という抗がん剤の生存率曲線について、「先生なら、この治療法をやりますか?」と質問したのです。

20150819_20_22_51

TAS102を投与した患者の生存期間中央値は7.1ヶ月、プラセボ群では5.3ヶ月と、1.8ヶ月生存期間が延びるというデータです。

勝俣先生の回答は、「手足のしびれや、声が出ないという副作用がないのなら、やるかもしれない」でした。手足のしびれがあり声が出なければ医師としての仕事ができない、趣味の楽器演奏ができないと考えての回答ではないかと推察できます。わずか1.8ヶ月の延命効果なら、この抗がん剤は使わない、たぶん家族にも勧めないということなのでしょう。最後は患者自身がQOLと副作用、延命効果を天秤に掛けて判断するしかない、と締めくくっていました。

「患者自身がQOLと副作用、延命効果を天秤に掛けて判断するしかない」と。なんだ、自分の身になれば分かっているのではないか。ことばに一貫性がない人だね。

九重親方が、QOLを重視する考えで、少ない抗がん剤と放射線治療を選択したのであれば、それがEBMの実践なのである。7月の名古屋場所も途中まで務めることができたのだ。命よりも大事なことがあるんだよ。それを見つけることが人生を生ききるってことなのだ。親方の生きざまはまさにその通りではないか。

膵臓がんの転移だからステージはⅣbだろうが、それで1年近く生存したのであるから、統計的な抗がん剤治療の成績と大差はないと言える。

九重親方のご冥福をお祈りいたします。

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