がん一般

2017年9月17日 (日)

深層心理が免疫細胞のエピジェネティクスに変化をもたらす

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エピジェネティクスについてはずいぶんと書いてきました。(最後にリンクを貼ってあります)

環境と遺伝子の間:あなたのエピジェネティクスは常に変化している」で、

スティーヴ・コール博士は、社会的に孤立し慢性的に強い孤独を抱えた人は、免疫システムに何らかのエピジェネティックな変化があるのではないかとの仮説を立てた。

DNAマイクロアレイによる遺伝子発現解析を行い、社交的なグループと孤独なグループを比較したところ、約2万2,000というヒト遺伝子のうち、209の遺伝子の発現において大きな相違が見られた。孤独感を感じている被験者は、炎症にかかわる78の遺伝子が過剰発現となっており、逆に抗体の生成や抗ウィルス反応にかかわる131の遺伝子においては、発現量の低下が見られたという。

研究チームは、幸福感が免疫細胞に及ぼす影響についても追求している。2013年7月29日付けで『米国科学アカデミー紀要』に掲載された論文では、驚くべきことに幸福の種類によっても免疫細胞のエピゲノムが変化すると発表されている。

物欲を満たすことや、おいしいものを食べるという行為で得られる短期で浅いHedonicな幸福では、免疫細胞が活性化するどころか孤独感を感じているのと同じようなエピゲノムのパターンが見られた。逆に社会に貢献することで人生に意味を見出すような、深い満足感を伴うEudaenomicな幸福感では、炎症反応に関連する遺伝子が抑えられ、抗ウイルス反応に関連する遺伝子はより活性化されていた。

遺伝子の実態はDNA(デオキシリボ核酸)で、ワトソンとクリックが発見したように二重らせんの構造をしています。しかしDNAは二重らせんのままむき出しになっているのではなく、そのまわりに多様な有機分子を結合しています。いわば腕をワイシャツの袖で覆っているようなものです。DNAは衣服をまとい装飾品で飾りたてているのです。

この有機分子が、遺伝子を活性化(タンパク質を作る指令)させたり不活性化させたりするのです。遺伝子には自分自身を活性化させることはできません。どういうタイミングでどの遺伝子を活性化させるかは、細胞核の外からの情報として与えられます。しかもこれらの有機分子は長時間同じ遺伝子にくっついている、場合によっては子孫にまでその状態が引き継がれるのです。遺伝するのは遺伝子だけではないのです。

エピジェネティクスとは

「エピジェネティクス」とは、遺伝子の働きを調整するこれらの分子が、どのようにして遺伝子をコントロールしているのかを研究する学問分野で、21世紀のこの十年間で急速に発展している分野です。特にがんに関するエピジェネティクスはよく研究されています。がん細胞内では多くの遺伝子がメチル基を失って「脱メチル化」していることが知られています。これによって遺伝子活動の異常が生じます。細胞増殖を抑制できなくなるのです。がんは遺伝子の突然変異によっても生じますが、多くが遺伝子の脱メチル化なのです。突然変異は元には戻せませんが、脱メチル化は、エピジェネティックなものなので元に戻すことができるのです。

コール博士らの研究は、心のありようがエピジェネティックに遺伝子に作用して、免疫系に影響を与えることを実証したわけだが、物欲や所有欲による幸福感では逆に免疫細胞は不活性化する、利己的な利益ではなく他者への利益を考え行動している人は、遺伝子が発現して免疫細胞も活発化するということですね。

「利己的遺伝子」という書籍もあったが、利己的では良い遺伝子は発現しないのです。

私利私欲や損得勘定だけで人生を送っていると「真の幸福」を得ることができず、病気になりやすいし、がんの治りも遅いのです。

マインドフルネスに「他者への幸福」を願う瞑想があるが、他者が幸福になることによって、自分にも真の幸福が訪れるのだろう。

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2017年9月13日 (水)

がん患者はCT検査を控えるべきか?

最近何人かの方から、腫瘍マーカーが上がってきたので心配で、CT検査を受けたいけど、CT検査をすればがんのリスクが増えのでは・・・という質問を受けました。

このブログの過去の記事を引用しながら、もう一度考えてみます。

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近藤誠氏は「CT検査でがんになる」というレポートや書籍があります。

内容を箇条書きしますと、

  • CTによる被ばく線量はエックス線の200~300倍である
  • 1回のCT照射による被ばく線量(実効線量)は18~29ミリシーベルト(mSv)
    ただし、通常は1回の検査で2、3回は照射する
  • 低線量でも発がんリスクがあるとして、原発労働者には40mSvでも労災認定されている
  • 原発労働者の生涯の累積被ばく線量が20mSvでも発がん死亡数が増加している
  • 広島・長崎の被爆者の経過観察の結果、10~50mSvでも発がんによる死亡数が増加している
  • 欧米では以上のデータを根拠に、医療被ばくの低減に真剣に取り組んでいるが、日本では専門家も患者保護に動こうとしない
  • 最新鋭の多列検出型CTは1スライスあたりの被ばく線量を減少させるはずだったが、装置が急増することによって逆に総被ばく線量は増加している。より詳細で広範囲の撮影が可能になったためである
  • 日本のがんの3.2%は医療被ばくが原因といわれたが、いまではそれは2~3倍になっていると思われる
  • 不必要・不適切なCT検査、「とりあえずCTをやっておきましょう」という検査が多すぎる。医者に知識がないのと病院経営上の理由でムダなCTが行なわれている。
  • 胸部CTによる肺がん検診のくじ引き試験では、寿命延長効果は認められなかった。マンモグラフィによる検診もがんの予防効果はないとの論文がある。

といったところです。「がんもどき」の近藤先生ですが、これらの主張は概ね正しいと言えます。

確かに日本の医療被ばくは多すぎます。人口百万人当たり日本は107台で第1位、第2位のオーストラリア56台の倍になっています。OECDの平均は25台です。
それでも欧米ではすでに数年前からCTによる被ばく線量を問題にしています。

ラジオロジー誌2009年11月号に掲載された、米国放射線防護測定審議会および放射線の影響に関する国際連合科学委員会の発表を元にした研究では、全世界 での画像診断による1人当たりの被曝線量が、過去10~15年で倍増したことが明らかになっている。中でも米国は、他の国と比べて被曝量の増加が多かっ た。
 
さらに他の研究では、1980~2006年の間で、画像診断による被曝量が6倍になり、また過去56年間で、放射線または放射性医薬品を用いた年間の診断回数は、15倍に増加したと推定されている。

米国がん研究所(NCI)の放射線疫学の客員研究者によれば、「CTの使用頻度は劇的に上昇し、安易に使用されるようになっている。CT検査を行う場合、まず、本当に検査が必要であるかどうかを調べた上で検査する必要があるかを検討すべきなのに、今はその基本を忘れて、病気でもない患者にどんどんCT検査を行うようになってきている。また、頻度だけでなく、CTをいつ使用すべきかという検討がなされてこなかったことを反省し、医学界全体として、使用対象を慎重に検討し、検査の利点が有害性を上回る場合にのみ行うべきである」としている。

放射線による発がんのリスクを勧告しているのはICRPです。

ICRP(国際放射線防護委員会)の勧告は出されるたびにより厳しくなっています。例えば放射線業務従事者の被ばく限度は50mSv/年という時代が長く続いたのですが、 1990年勧告では「いずれの5年間でも100mSvを超えない」ことを定めて、実際上年間20mSvの制限がかかるようになりました。この20mSvという線量は、近藤医師も書かれているように1回のCT検査で超えてしまう数字です。

ICRPはCT検査のような外部被ばくの場合、累積で1000mSv被ばくすると、がんなどによる生涯死亡リスクが5%増加すると勧告しています。

1回の造影CT検査による被ばく量を50mSvとすると、それによる生涯死亡リスクは0.25%増加することになります。20回のCT検査で1000mSvですから5%増加です。

ところで、「二人に一人ががんになる時代」と言われますから、仮に生涯のがんのリスクが50%とすると、それが50.25%に増えるというわけです。あるいは20回の累計なら55%になる。

しかも、今浴びた放射線によってDNAに傷がつき、それが目に見えるがん細胞にまで育つには10~20年かかると言われています。

ですから、辛辣にはっきりと申せば、初期のがんならともかく、膵臓がんのように、治らない末期がんの患者が20年後にがんになるリスクが5%増えることを心配することはないのです。(主治医はこんなにあからさまには言わないでしょうが)

それよりも、今の腫瘍の状態を頻繁に確認して、治療方針を考える、変えるなりに活かしたが利口です。

要は、どんな検査にもリスクとベネフィットがあるのですから、今どちらを選ぶべきかを賢く選択しましょう。

私の経験と対処法

  • 症状がないのにCTは撮らない。「取りあえずCTを撮っておきましょう」と言われたら、「まずレントゲンをお願いします」
  • 五十肩で整形外科に行ったら首の周りを5枚ほど撮られそうになった。2枚に減らしてもらった。
  • 会社の健康診断でもバリウムによる胃の検査は拒否しています。症状がないのに被ばくしてまで検査するような信頼性はないと考えるからです。
  • 歯科医の全周撮影、あれは相当の被ばく量です。歯医者にはなるべく行かない。良く歯を磨けば、被ばく線量低減に効果があるということ。
  • PET検診では4~5mSvの被ばく線量になります。造影CTよりも一桁小さい被ばく量ですが、PET検査による被ばくは「内部被ばく」です。外部被ばくと同等に考えることはできません。「石炭ストーブの前で暖をとっている人に伝わる平均エネルギー(外部被ばく)と、その赤く焼けた石炭を食べる人に伝わるそれ(内部被ばく)とを分別しない」で計測しても、真の効果は分かりません。PETによる5mSvはCTのそれと同じではないのです。
  • 私のPET体験はこちらに書きました。症状もないのに毎年PET検診を受けるなどという愚かなことは止めておく。済陽高穂氏の西台クリニックのように、旧式のPETですべての患者を検査しようとするような病院には近づかない。

ムダな被ばくは避けていますが、一度膵臓がんの再発が疑われたことがあり、通常通りに10mmピッチでCTを撮ろうとしたのを、私から要求して2mmピッチに変えてもらいました。被ばく線量は5倍になりますが、再発かどうかを正しく判断するには必要があると考えたからです。おかげでセカンドオピニオンをお願いした低用量抗がん剤治療の先生からは「イヤーきれいな画像ですね。これで判断したのならまちがいないでしょう」といわれ、再発なしで無罪放免でした。

確かにムダな検査が多いし、国民全体の総被ばく線量はもっと下げる必要があります。しかし必要なCT検査は被ばく線量や10年、20年後の発がん気にすることなく(気にする必要もない)受けましょう。

患者も

正しく怖がることが必要です。

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2017年9月 9日 (土)

今日の一冊(79)『がん光免疫療法の登場』

がん光免疫療法の解説本が出ました。がん光免疫療法は、以前のブログ「光免疫療法(近赤外線免疫療法)の動画」でも触れていまが、今後のがん治療に大きな期待の持てる技術です。

毎日新聞社の医療記事に多く関わってきた永山悦子氏に、開発者の小林久隆氏が協力して上梓したものです。

がん光免疫療法の登場──手術や抗がん剤、放射線ではない画期的治療

光免疫療法は、米国国立衛生研究所(NIH)の主任研究員である小林久隆らの研究グループが、ネイチャー・メディシン誌上にて、その開発を発表したものです。

以前の記事では「がん細胞だけに特異的に結合する抗体というものは存在しない」ので、効果は疑問です、と書いたのですが、この解説本を読むと私の早とちりだったかもしれません。

小林さんが最初に開発したのは、抗体ががん細胞にくっついたことを「眼で見て」確認できる技術でした。がん細胞にだけくっついた抗体が光るようにしたのです。

IR700という、新幹線の塗料にも使われている物質にハーセプチンなどの分子標的薬を抗体として乗せ、近赤外線を当てるとがん細胞が破裂することを確認したのです。

その機序は次のとおりでした。

  1. IR700に硫酸基をくっつけて水溶性に変える
  2. 分子標的薬を抗体としてこれに乗せて注射で体内に届ける
  3. この抗体にくっつく抗原は正常細胞にもあるが、正常細胞は1万程度の抗原を持ち、がん細胞は数万~数百万の抗原を掲示している
  4. 700ナノメートルの近赤外線を当てると、硫酸基のケイ素が切れてIR700は一瞬で水に溶けない不溶性となる
  5. その結果抗原や抗体が変形して細胞膜に無理な力がかかり、たくさんの穴が開く
  6. 細胞膜に約1万の穴が開けば細胞が破壊されることが分かった
  7. 正常細胞も同様の変形を起こすが、抗体-抗原の数が少なく、1万に届かないので、穴が開くまでには到らない
  8. これは抗がん剤のような化学作用を利用するものではなく、「物理化学的」な破壊方法といえ、「ナノ・ダイナマイト」と名づけられた
  9. がん細胞は「免疫原性細胞死(免疫を誘導する細胞死)」と呼ばれる死に方であり、がん細胞が破裂すると、近くの樹状細胞に「がん細胞が死んだ」というシグナルが届き、樹状細胞が活性化してT細胞にがん細胞を攻撃するように指令を出す
  10. IR700に制御性T細胞の表面にあるCD25高原とくっつく抗体を載せて実験をしたら、がん細胞が免疫から逃れる守り神である制御性T細胞が2割まで減少し、NK細胞の9割が目ざめて活発になった
  11. これらの免疫細胞の働きによって、原発がんだけではなく、遠隔転移したがんも消失することが確認できた
  12. つまり、利口ながん細胞が免疫抑制によって自己を防御していても、それを無視して免疫反応が活発に働き出す

こうした機序らしいです。非常によく考えられた開発戦略ですね。本来の免疫の力を復活させるという点で、免疫チェックポイント阻害剤のオプジーボと似ていますが、オプジーボは全身の免疫力が高まるので自己免疫反応が避けられませんが、光免疫療法では、T細胞やNK細胞は、制御性T細胞が「門番役」として守っていたがん細胞だけを攻撃するので、自己免疫反応は起きないと確認されています。

マウス実験では、肺がんと結腸がんを持つマウスの肺がんだけの制御性T細胞を破壊したところ、結腸がんは残ったままでした。

アメリカでは頭頸部がんに対して安全性を確認する第一相試験が終わり、7人の患者のうち4人のがんが消失した。現在、各種のがんに対する第2相試験が進行中である。

日本では楽天が、この治療法の特許を持つアスピリアン社と合弁会社を設立して治験を進めると発表されています。楽天の会長三木谷さんは、父親を進行した膵臓がんで亡くしているのですね。

小林さんは「日本で治療として実現するのは3年~4年後でしょうか」と述べています。がん治療の選択肢が広がることを期待しています。

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2017年9月 5日 (火)

代替医療のみで治療するがん患者は生存率が低い

表記の話題でネットは賑わっていますね。ハマリョウさんも書かれています。

原論文はこちら

「今回の研究では、米国内のがん患者のデータベースから、限局性の乳がんまたは前立腺がん、肺がん、大腸がんと診断され、代替療法のみを受けることを選択した患者280人を特定。」とされていますが、どのような代替医療を受けたのかは判明しません。JCASTの記事によれば、

NCDは、認定を受けた米国内の医療機関1500か所以上から集めた信頼性の高いデータが蓄積されており、患者のステージ(がんの進行状況)はもちろん、標準治療を受けたか否かも記録されている。
   そこでまず「標準治療を受けていない」とされていた患者を「代替医療を受けていた患者」と想定。データから、「診断時に転移は確認されていない」「末期がん(ステージ4)ではない」「がんが進行しやすいような他の病気や遺伝的特徴がない」など死亡率に影響を及ぼしそうな条件が均等なものを抽出した。

とのことなので、代替医療を受けていたかどうかは確認していないのです。

さらに、「最初に発生した原発部位から広がっていなく限られた狭い範囲にのみある<限局性のがん>に対し」ですから早期がんに限った話です。患者数も280人では少なすぎます。

「結論として、本発明者らは、標準治療をを伴わずに代替医療での治療を最初に選択した癌患者は死亡する可能性がより高いことを見出した。」と、最初に代替医療を選択した(と推測される)患者が対象であり、その後標準治療をおこなった可能性もあると示唆されています。

ですから正確に言えば、早期がんで標準医療を受けた患者とそれ以外の患者集団を比較したら死亡リスクが2.5倍になった、と言うべきでしょう。それは当然の結果でしょう。驚くほどのことではありません。その中には無治療も含まれているかもしれません。医療保険の劣悪なアメリカでは、保険のない国民は代替医療に走るか臨床試験を受けるしか治療の方法はありません。

膵臓がんの5年生存率を10%(死亡率90%)としたとき、その2.5倍は225%?。そんなことはあり得ないから、治りやすいがんに限った話しでしょう。

しかし、日本のわれわれが知りたいのは、

再発・転移したがんで、標準医療に代替医療を上乗せした場合の効果なんです。

今回の研究は、それに対する答えにはなっていません。日本では、近藤シンパ以外は無治療を選択する患者はいないだろうし、代替医療だけの患者もほとんどいないでしょう。

それに、患者のQOLは考慮されていません。耐えられない抗がん剤の副作用を嫌って、余命が短くても、副作用のない無治療や代替医療を選んだ患者のQOLは考えられていないのです。エビデンスなどなくても、ごく希にでも効果を実感できて激しい副作用がないのであれば、十分に高い医療費を払う価値はある、と考える患者もいるでしょう。

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2017年8月27日 (日)

第3回がん撲滅サミット 岡田直美医師、光免疫療法の小林久隆氏が講演

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第3回がん撲滅サミットが11月にパシフィコ横浜で開催されます。昨年は一部の患者団体、医師から執拗な妨害があり、混乱したことが記憶に新しいです。

主催者団体の代表顧問の中見利男氏が開催に当たって次のようなインタビューに応じています。
第3回がん撲滅サミット提唱者に聞く~戦うべきはがんであり、患者同士や医師同士ではない~

中見 昨年はお騒がせしたことについては反省しております。しかし昨年、登壇予定だった二人の医師の方は確かにクリニックと名がついておりますが、我々の紹介したかった治療法は少量抗がん剤治療と動注塞栓術でした。この二つの治療法を二人の先生は保険適用第一で進めておられたので、ほかに治療法がないという人でエビデンスの確立はできていないものの、どうしても他の選択肢が欲しいという方々のためにご紹介する予定でした。ある患者団体の代表の方が声を上げたのですが、これについてはメディアはすい臓がんなどの重い症状を抱える他の患者団体や直接該当する二人の医師の方にも取材をされるのだろうと考えておりました。本来それがジャーナリズムだと思うのですが、私自身その後の対応に走り回っていたので、積極的に説明に回れなかったことが唯一残念です。中には業務妨害に匹敵する行為を行った医師の方々もおられましたが、事を荒立てるのではなくまずは大会を実施することを私自身、優先したのです。もっとも私自身に患者さんのお役に立てればと思う気持ちが強かったことと、あらゆる意味で勉強不足があったのだと思います。

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今回はがん研有明病院が主催者に名を連ねています。三好立先生らの再登板を期待していたのですが、実現しないようです。そのかわり、ブラックジャックを目指す医師『このまま死んでる場合じゃない』の著者 岡田直美医師が公開セカンドオピニオンに登壇します。

是非ともお話を聞きたいものですね。そうそう、次回10月の『すい臓がんカフェ』には、もう一人の共著者である善本孝香さんが講演をしてくださいます。

岡田医師は次のように述べて、エビデンス史上主義者を批判しています。

動注なら動注の論文をたくさん集めて、統計解析した論文。これをメタアナリシスと言いますが、これが、もっともエビデンスレベルが高い、信頼度が高いものとされています。論文の筆者が動注をしたことがあろうとなかろうと関係ないのです。一見客観性はあるように見えますが、机上の空論というか、何か腑に落ちないのです。

いくら私が再発・転移した患者さんを治したからと言って、「それは単なるケースレポートでしょう」「エビデンスというにしては弱い」と一蹴されてしまうのです。これまでの治った患者さんのすべてについて分析し結果を論文にしても、それは後向き試験(過去のデータをまとめたもの)で、客観性に乏しいと、高く評価されることはありません。

〝個人〟がどんなにたくさんの患者さんを治したとしても、治療をしたことがない「論文屋さん」に勝つことは不可能なのです。

この説明は動注だけでなく、低用量抗がん剤治療についても言えることですね。現場の医療者は論文屋さんと論文屋さんの受け売りをする医師には勝てっこないのです。

「アメリカのがん撲滅戦略と光免疫療法最前線」と題して、小林久隆氏(NIH(米国国立衛生研究所)/NCI(米国国立がん研究所)主任研究員)の講演もあります。

こちらもまだエビデンスに乏しい治療法ですが、まさか昨年のように妨害はしないだろうね。

第3回がん撲滅サミットは、今回からは事前申込み制です。すでに残り少なくなっているようです。参加を考えている方は早めの申込みを。

申込先はこちらです。

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2017年8月21日 (月)

今日の一冊(78)『65歳からは検診・薬をやめるに限る!』

名郷直樹医師の本は、何度も紹介しています。彼の主張が私の考えに良く合うからです。

長生きするのは善なのか?

スパコン「京」の開発予算の審議で、蓮舫さんは「2番ではダメなんですか?」と言ったが、世界一の長寿国になっても「1番でもダメ」なようで、まだ健康第一だとやっています。これじゃおかしくないですか?

「健康第一」は間違っている (筑摩選書) ということを書いているのが名郷直樹医師の『「健康第一」は間違っている』なのです。タイトルだけをみると「医療否定本」のようですが、名郷医師は『EBM実践ワークブック』などの医師向けの著作もあり、EBMに基づく医療を先進的に行ってきた方です。

世の中が「健康第一」「長生き第一」「医療は万能」にぶれすぎているから、真逆の考えをあえて打ち出そうというのです。

今回紹介する著作『65歳からは検診・薬をやめるに限る!』も同じ趣旨ですが、高齢者の治療に焦点を絞って書かれています。

老人に「いつまでも元気で長生き」を強制している社会の風潮があるのではないか。人間に寿命があり、医療や薬では老化は防げないのだから、「いつまでも」は無理だと誰もが分かっている。しかし、寝たきりで家族に迷惑をかけたくないから、無理に運動し、塩分を控え、甘いものも我慢している。どこか少し調子が悪いといっては病院で薬を出してもらって安心する。

子どもが独立して、定年を迎えたら「健康第一」はやめて「今の時間を楽しむ」、高血圧や血糖値なんぞは気にしないで「おいしいものを食べる」のが得策だ。

薬を飲んだからといって、長生きできるわけではない、むしろ副作用で寿命を縮めることもある。65歳を過ぎたらがん検診もしない方が良い。早く見つけたからといって長生きできるとは限らないし、抗がん剤の副作用で返って余命が短くなる。

「ピンピンコロリ」が理想だというが、がんで死ぬのは「ピンピンコロリ」に近いのじゃないだろうか。ある日気づいたら膵臓がんの末期だった、というのは高齢者にとっては「ピンピンコロリ」の理想的な最期かもしれない。苦しいのは最期の数日からせいぜい1ヶ月程度だし、膵臓がんでも最期の日までほとんど痛みのない人もいる。

80歳になろうかという末期がんの親を、あちらこちらの病院や先進医療にと奔走している家族や子どももいる。熱意や愛情は充分に理解できるのだが、それは果たして高齢者の親にとって幸せなことなんだろうか。本人の意思を尊重してのことなのだろうかとしばしば思う。実は「息子が、もっと長生きしてと熱心に勧めるから、仕方なく抗がん剤を打っている」という患者は意外と多いのだ。

先の『すい臓がんカフェ』にもそうした方がいて、私は「もちろんあなたの価値観次第ですが、無理に治療をすることもないのでは。それよりも今の時間を有意義に過ごすことを考えては」と話した。その方は「なんだか気持ちが吹っ切れました」と納得した様子で、次回のカフェにも参加してくれました。

私は主治医に「再発転移したら積極的な治療はしません」と何度も宣言してきた。膵臓がんが見つかった当初のブログにも「人は何かの原因で死ぬ。がんで死ぬのは悪い何かではないよな」と書いたものだ。その覚悟で生きてきて「たまたま」生き残っただけの話し。

「いつまでも元気で長生き」なんぞと、不可能な夢はもうそろそろ捨てても良いのではなかろうか。そんなことに悩むより、人は老いるのが当然。がんにも病気にもなる。老いたら子どもや介護保険の世話になれば良い。ぼけや徘徊も老いがなせるものと達観し、ぼけた老人が人権を尊重されて余生を送れる、そうした社会にする方向に力を尽くせば良い。超高齢社会を迎える日本は、高齢者が幸せに死を迎える社会になれるかどうかのテストケースだろうと思う。

高齢者は検診もしない、がんになっても治療をしないも1つの選択肢です。もちろん積極的に治療法を探して挑戦するのも、その方の価値観次第で、決して悪いわけではない。

高齢にがん患者の親をもっている方には「目から鱗」かもしれません。

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2017年8月17日 (木)

ゲノム・シークエンス

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先の記事「プレシジョン・メディシンのまとめ」の続きです。

前回の記事を書いたあと、遺伝子解析に関して調べてみたが、どうにも納得できない点がいくつかある。

ひとつには、遺伝子解析の費用の問題。SCRUM-Japanでは患者の自己負担はないが、他の北海道大学病院や京都大学病院の場合、検査費用が50万円~100万円以上となっている。

イルミナ社の最新式次世代シーケンサーを使えば、全ゲノムシークエンスでも10万円以下である。

遺伝子検査には、大きく分けて

  1. パネルシークエンス(特定の遺伝子を検査)
  2. 全エクソンシークエンス(タンパク質のコーディング領域(エクソン領域)を網羅的にシーケンス・変異解析を行う)
  3. 全ゲノムシークエンス

とあるが、国立がん研究センターなどが進めているのは1.のパネルシークエンスであり、せいぜい数百の遺伝子異常を見つけられるだけである。

厚生労働省では、国内の医療従事者や研究者による「がんゲノム医療推進コンソーシアム懇談会」を立ち上げ、がんゲノム情報を用いて、医薬品の適応拡大やがんの診断・治療、新薬の研究開発など、より有効・安全な個別化医療の提供体制(がんゲノム医療推進コンソーシアム)の構築を目指すとしています。

計画では、100種類以上の遺伝子変異を一度に調べられる検査機器を、優先的に薬事承認して開発を後押しし、医療現場での検査を早期に可能にする。

また、がんゲノム医療推進コンソーシアムでは、

  • 「遺伝子パネル検査(がん等に関する遺伝子を複数同時に測定する検査)」を早期に承認し、一定の要件を満たす医療機関において保険診療として実施すること
  • 保険外併用療養を活用した全ゲノム解析を実施すること

とされ、全ゲノム解析は費用がかかるから、当面はパネル検査で行こうということらしい。しかし、全エクソンシークエンスでも1人6万円くらい(市販価格は10倍としても60万円)で解析できると言われているから、

NCCオンコパネルは、国立がん研究センターが中心となり開発された遺伝子診断パネルであり、日本人に特徴的な遺伝子変異を適切に診断できるように作られている。 (国立がん研究センタープレスリリースより)

よりは優位なはずである。

北海道大学病院や京都大学病院の「オンコプライム」も、

OncoPrime(オンコプライム)では200を超えるがん関連遺伝子で起こっている遺伝子変異を一度に調べる事ができます。(京都大学医学部付属病院のサイトから)

と、200程度の遺伝子を検査できるだけです。これでは半分以上の遺伝子異常を見逃してしまう恐れがある。

世界は「全ゲノムシークエンス」に舵を切っているのに、日本はガラパゴス化して、全エクソンシークエンスにも及ばないパネルシークエンスに固執しているのか、不可解である。

GI-screenの検体はアメリカに送って、

胃がんや大腸がんのような罹患率の高いがんでも複数の標的分子により1-5%の頻度の小集団に細分化され、希少がんのような小集団となりつつあります。このような背景のなか、がん患者さんに最適な治療薬をいち早く届けるためには、標的分子を正確かつ迅速に同定することです。そのためには標的分子を包括的に同定するマルチプレックス診断薬開発が必要となります。

解析手法としては、米Thermo Fisher Scientific社の次世代シーケンサーをベースとするマルチプレックス診断法「Oncomine Cancer Research Panel(OCP)」を採用する。

とのことだ。マルチプレックス診断とは、1サイクルのアッセイ(検定)手順の間に複数の被検体を解析できるのだが、効率は良いが特定の遺伝子のみの検査には変わりない。

素人考えで間違っているかもしれないが、どうも世界の趨勢に遅れているようで気に掛かる。

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2017年7月28日 (金)

病床数を減らせば、がん患者は減るか?

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NHKで人工知能に関する2つの番組を見た。録画してあったのをやっと再生。

1. 人工知能 天使か悪魔か 2017

2. AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン

1は昨年放送されたものの続編で、チェス・囲碁に続いて将棋でも、佐藤天彦名人を完膚なきまでに打ち負かして、既にAIに勝てるプロはいなくなったと衝撃の内容。AIが人間社会にどんどん入り込んでくるだろうが、将棋の世界での問題は、これからの社会全般の先取りではなかろうかという羽生善治さんの指摘は、的を射ている気がする。

ただ私としては、コンピューターの黎明期に「コンピュータが言うから正しい」と、生命保険の勧誘員や結婚相談所が、プログラムの仕組みも分からずに「神」のように信じていたことが思い出される。AIブームにもそうした傾向がありはしないだろうか。

2.のマツコが登場した番組ではAIというよりは、ビッグデータを駆使して日本の未来を提言するという内容だった。1.の「機械学習」や「ディープ・ラーニング」とは何の関係もない。

おもしろいと思ったのは、AIからの最初の提言。

健康になりたければ病院を減らせ

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AI(NHKが開発したAIもどき)では、病院のベッド数とがんの死亡者数には相関関係があるという。さらにはバナナの販売量とも相関関係があるらしい。

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病床数が減ればがん死亡者数は下がり、脳血管疾患による死亡者数も65歳以上の死亡者数(男)も減り、女性の平均寿命は延びる(との相関関係がある)。

その実例が、財政破綻した夕張市の例。

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財政破綻した夕張市では唯一の総合病院が閉鎖し、病床数が10分の1になった。しかし、がんによる死亡者数も脳血管疾患による死亡者数も減少していた。まさにAIが指摘したとおりであった。

AIは「相関関係」は指摘するが、それらの因子の因果関係まで説明するわけではない。因果関係は人間が判断しなくてはならない。

病床数が減って、気軽に病院にかかることができなくなった夕張市民は、食事に気を遣い、運動をし、ボランティア活動にも参加することが多くなった。その結果、健康になったのではなかろうかというのが、コメンテータらの説明である。

この番組、「AI」を看板にしているが、人工知能とは何の関係もない。しかし、なんだかAIはすごい!という意識を植え付けようとしている。AIで何らかの新しい社会的傾向や問題点を見つけ出すのではなく、番組制作者が考えている社会問題を、統計学的に分析してその根拠を示そうとしているだけに過ぎない。

実際に病床数を減らしたらがんの死亡数が減ることを保証しているわけではない。「相関関係」があることは「因果関係」があることを証明するわけではない。雪が降れば白鳥がやってくるからと言って、白鳥がやってきたから雪が降るわけではない。

AI研究の最前線では、AIの限界が明らかになりつつあるにもかかわらず、マスコミは、あたかも“知能があるかのように”期待を煽りすぎる。所詮は人間のプログラムに従って、高速に関係性や相関性を”計算”しているだけのことである。

AI神話はやがて「AIバブルの崩壊」となるに違いない。

ま、しかし、がんの治療において、医療だけに頼るのでなく、運動と食事、適切な社会参加が、治療結果に良い影響を与えるのだということは明らかになった。(AIに依らずとも既知のことだが)

免疫療法やサプリメント、その他の代替医療も否定しないけど、どうじに運動と食事にも、それら以上に関心を持ってほしいものだ。


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2017年7月12日 (水)

ビタミンDの話題

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という毎日新聞の記事がありました。

研究チームは2016年5月から1年間、同大の学生など20代の女性延べ101人について、日焼け止めの使用頻度や食生活など習慣などを調査した。その結果、日焼け止めを週3回以上使うグループの血中ビタミンD濃度の平均は、通年で基準を下回る「欠乏状態」だったという。厚生労働省によると、骨や健康を保つビタミンDの血中濃度の基準は1ミリリットルあたり20ナノグラム以上で、それを下回る場合は欠乏状態とされる。

太陽光(紫外線)を浴びれば、必要なビタミンDは必要量を体内でつくることができるのですが、日焼けによるシミ、ソバカスを嫌ってクリームを塗ったり、真夏でも長袖のシャツを着ている女性の方も多いですね。

骨粗鬆症などのリスクが高くなるのはもちろんですが、ビタミンDの研究は大きく変わりつつあります。その効用が骨の形成だけにとどまらないことがわかってきました。ビタミンDが強力な抗がん作用をもつことや免疫応答の重要な調節因子として働いていることを示す証拠が数多く見つかっているのです。

ビタミンDがその優れた効果を最大限に発揮できるのは、血中に相当量が存在する場合であることもわかってきています。たいていの人のビタミンD血中濃度はそれよりも低いのです。さらに追い打ちをかけて日焼け止めクリームを塗ると、一年中ビタミンD不足の状態になりかねないのです。

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美容と健康のバランスをどう取るか、ビタミンDの豊富な魚などを積極的に食べるようにしましょう。それでも足りない場合にはサプリメントを考えてみましょう。

また、こんな記事もあります。

ビタミンDが不足している人は20年近くのうちに死ぬリスクが高い

ビタミンD血中濃度が最低(54pg/mL未満)だったグループは最高だったグループ(78.2pg/mL以上)に比べて総死亡リスクが54%高い。

血中濃度が高い人(約125nmol/ml超)に比べて早死にするリスクが90%高い。

国立環境研究所(茨城県つくば市)の研究によると、冬の札幌でも76分間の日光浴で成人が1日に必要とする量のビタミンDを作れます。 スペインのバレンシアで行われた研究では、真冬の1月に 1,000IUのビタミンDを得るには130分間の日光浴が必要だという結果になっています。
十分なビタミンDを得るのに必要となる日光浴の時間は、服装(長袖か半袖かなど)や姿勢の影響を受けるので、日光にさらされる皮膚の範囲が狭ければ必要となる日光浴の時間が長くなります。 一般的には、日光に当たりすぎてもビタミンDが過剰に作られる心配はありません。

私が日常的に摂っているのは、大塚製薬の「ネイチャーメイド スーパービタミンD(1000I.U.) 90粒」です。

ビタミンDが1000I.U.含まれていて、90錠で700円程度と廉価です。

このブログのビタミンDに関する記事を以下にリンクしました。

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2017年7月 3日 (月)

免疫チェックポイント阻害剤で一部患者のがん悪化

免疫はなかなか思い通りにはいかないね。

免疫チェックポイント阻害剤で一部患者のがん悪化

免疫チェックポイント阻害剤は免疫系の働きを解き放つ強力な薬剤で、一部の進行がんの患者のがんを消滅させると期待されている。しかし、最近の2つの研究から1,2、PD-1阻害剤と呼ばれるこの種の治療薬の使用により、一部の患者で逆の結果、つまりがんの広がりが加速される可能性が示唆された。現在、研究者らはその理由を明らかにしようとしている。

Natureのダイジェストです。

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