がん一般

2017年3月21日 (火)

樋口強「いのちの落語独演会」受付始まる

樋口強さんが年に1回、がん患者とその家族だけを招待して開催している「いのちの落語独演会」の開催要領が公開され、受付が始まりました。

私も毎年楽しみにしています。今年の出し物はなんだろう?今年は事前に案内はがきも届いています。常連だからかなぁ。

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「第17回いのちの落語独演会」ご案内

○日時:2017年 9月17日(日)13時~ (約3時間)
○場所:東京・深川江戸資料館小劇場
○木戸:ご招待 (対象は、がんの仲間とそのご家族に限定 優先枠内で先着順)
○申込要領:「いのちの落語独演会」ページから

津波もがんも笑いで越えていのちの落語家が追った3.11

今年もまた、元気で深川江戸資料館でお会いしましょう。

深川江戸資料館と江戸東京博物館を間違えて、そっちに行ってしまう人もたまにいるそうです。

今年も早々に「満員御礼」になりそうな気がします。申込みは早めが良さそうで。

2017年3月 9日 (木)

今日の一冊(69)『サイレント・ブレス』

サイレント・ブレス 久しぶりの小説の紹介です。作者の南杏子さん(ペンネーム)は都内の終末期医療専門病院に勤める現役の内科医師で、この小説がデビュー作です。この病院では、末期の患者にはタバコもアルコールも夜更かしも制限なしだそうです。

サイレント・ブレス」とは
静けさに満ちた日常の中で、穏やかな終末期を迎えることをイメージする言葉です。多くの方の死を見届けてきた私は、患者や家族に寄り添う医療とは何か、自分が受けたい医療とはどんなものかを考え続けてきました。人生の最終末を大切にするための医療は、ひとりひとりのサイレント・ブレスを守る医療だと思うのです。

と著者が語るように、治すための医療だけで本当に患者は幸せなのか、人はどのようにして死を受け入れるのか、あるいは受け入れることができないのか。親を介護している家族、あるいは自分自身がまもなくそうした問題に対処せざるを得なくなるがん患者にとっては、重く切実な問題です。小説という形でリアルに説得力を持って訴えてきます。

大学病院の総合診療科から都内三鷹の訪問クリニックへの異動を命じられた水戸倫子は「左遷」かと意気消沈して、それでもクリニックでの勤めを始める。

「私、医者なんて全然信じてないから」と言い放つ末期乳がんの女性ジャーナリスト綾子。彼女はかつてキューブラー・ロスの『死の受容』への五段階、否認と孤立・怒り・取引き・抑うつ・受容を翻訳したことがあり、自分もそういう段階を踏むはずだと考えていた。しかし、「あんなに上手くいくものではなかった」と綾子は言う。

綾子の元には革ジャンを着てヘルメットを持ったスキン・ヘッドの怪しげな男が頻繁に出入りしている。一緒に外泊もしたりする。倫子も家族も不信感を募らせているのだが・・・。
綾子がいよいよ最期かと思われたとき現れたそのスキン・ヘッドの男は、実は臨床宗教師で、キューブラー・ロスの『死の受容』によっても受容できない綾子が、「家族に知られないように変装してくるように」と依頼した住職だったのです。住職との対話によって綾子はおのれの死をなんとか受容しようとする。

綾子の臨終に際して日高住職は「臨終勤行」を執り行います。

仏教の教えには死への苦悩の対処として、まず「死に至る原因と闘う」段階があり、それが無理なら「死を受容する」段階へ移るという。さらにそれも困難なときは臨床宗教師に導いてもらい、「受容できない自分を受容する」ことによって真の心の安寧が得られると説明されていた。

22歳の筋ジストロフィー患者の保は、母子家庭である。介護に疲れた母親が保を捨てて失踪する。しかし、保はその母親を許し、自らの死をも素直に受け入れている。

倫子が研修医時代の病院長であった権堂勲は、消化器癌で著名な外科医であった。わずかでも治る可能性があれば積極的に手術に臨み、多くの医師にとっても最後の砦であった。『諦めないガン治療』等の著作もあったその権堂が、ステージⅣの膵臓がんと診断される。「医者は自分の専門分野のがんになる」というジンクスそのものである。しかも緩和医療も受けない「完全な医療拒否」を宣言し、死亡診断書だけ書けば良いと倫子を指名したのである。周囲は唖然とするが、権堂は意に介さない。

その権堂が「もう少し生きてみようかな」と治療を受けるようになり、いぶかしがる倫子らを連れて、大井競馬場、とげ抜き地蔵、多摩動物公園に出かけて誰かと会おうとする。実は権堂は、過去に自分が手術して20年以上生存している”スーパー長期生存者”を訪ねて、世間に報告することを最期の自分の役割と考えての行動だった。その一部始終は週刊誌に掲載され、権堂はそのインタビューの中で、

医療にはおのずと限界があるが、多くの医師は闘いをやめることを敗北と勘違いしている。ところが、闘うだけではいずれ立ちゆかなくなる瞬間が来る。そのときに求められるのは別の医療だ。死までの残された時間、ゆったりと寄り添うような治療がいかに大切かを私は身をもって知った。

と語る。

大河内教授の「医師には二種類いる。死ぬ患者に関心のある医師と、そうでない医師だ」「死ぬ人をね。愛してあげようよ」「治らないと分かったとたんに患者に関心を失う。しかし放り出すわけにもいかないから、ずるずると中途半端な治療を続けて、結局病院のベッドで苦しめるばかりになる」

すとんと胸に落ちる言葉だと思うのは、私ががん患者だからだろう。私自身も両親と義父を介護した経験がある。自分の父親のときは、肝硬変から肝臓がんになったのだが、介護保険もない時代で私も若くて二十歳台だった。自宅での10年もの介護は、本当に先の見えない長くて暗い時間だった。

老後は自宅での介護が理想だといい、政府もそれを推進しようとしているが、本当にその体制があるのだろうか。著者も香山リカ氏との対談(こちらこちら)で、

「病院死」よりも「在宅死」のほうが正しい、好ましいとしても、家族にとっては負担が大きい。誰もがそれを実行できるわけではないと思うからなんです。

何年間も在宅で看ていると、やはり家族が疲弊しきってしまいます。ご本人やご家族が在宅を望み、それができる環境ならばいいとも思いますが、それ以外の選択肢として、最期のときを笑顔で安らかに過ごせる、信頼できる病院が理想なのかなと思います。

実感としてその通りだと思う。子どもたちには私と同じ思いはさせたくはないから、私は主治医に「先生、膵臓がんが再発・転移したら積極的な治療はしません。経過観察と苦痛を取ってくれるだけで良いですから」と言い続けてきた。そのときが来ないで10年経ってしまったが。

前の記事で紹介した『決められない患者たち』にも書かれていたが、終末期における事前指示書(リビング・ウィル)が必ずしも役にたつとは限らない。「治療効果がないと思われるとき、死期が近いと思われるとき」と書いたって、そこにはグレーソーンが存在する。なにを持って治療効果がないと判断するのか、そもそも治療効果って何か。医師も家族もグレーゾーンの中で決断できず、ずるずるとムダな延命治療をすることになりがちである。

幸いなことに、膵臓がんは最期も「足が速い」。運が良ければベッドで寝たきりになるのは数週間くらいだ。この程度なら、もしかすると在宅介護でもいけるかもしれない。ブログでも実際にそうした膵臓がん患者が何人もいた。

  • いずれ何かで死ぬのなら、がんで死ぬのは決して悪い「何か」ではない。
  • 治りたがる患者が、必ずしも幸福になるとは限らない。

わずかな延命効果しかない抗がん剤にいつまでも「奇跡」を期待することはない。もういちど「やめどき」を考えてみることも大切です。医療に唯一の正解はないのだけども、結局最後は「患者が何を望むのか」ってことです。

追記:ブログでソラさんが治療を断念して家に帰る決断をしたと知る。なかなかできることではないですよね。ソラさんの英断に敬意を賞します。

2017年3月 6日 (月)

今日の一冊(68)『決められない患者たち』

決められない患者たち 医療において、患者の意志決定はどのようにされているのか、治療において唯一の正しい答えはあるのだろうか。

治療をすべきかどうか、いくつもの治療法があり、それぞれにリスクとベネフィットがあるとき、患者はどのようにして選択しているのかを、ルポルタージュした本です。

EBMに従うのが最良の医療だといっても、

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エビデンスが常に「最善」とは限らない。いろいろなバイアスがある。患者の状況も常に変化し、全てが把握できるわけではない。医師の技能もピンからキリである。要するに、医療には多くのグレーゾーンがあり、将来起こり得る状況を予測することは難しい。

患者の価値観もときによって異なる。高血圧の薬を飲むことを拒否する「自然主義派」の患者でも、がんともなると手術や放射線も拒否しないで最善の治療を受けようとする。

患者の多くが、治療法の意志決定に際して「隣人のアドバイス」を最も重視していると統計的には示されている。「〇〇でがんが治った」などもこれに含まれるだろう。これを「可用性バイアス」と言うのだが、その治療法で失敗した多くの患者がいたとしても、成功した一人の患者のニュースが記憶に残り、治療の意志決定に影響する。

インフォームドコンセントと称して、患者に「A,B,Cの抗がん剤のうちどれを選びますか?」と問う腫瘍内科医が有名な国立がん病院にいるという。こんなのは患者の価値観を尊重しているように見えて、医師の役割を投げ捨てているだけではないのか。これは決して「患者中心の医療」ではない。

著者らは、多くのエピソードを説明した上で、賢い患者となるための「結論」として次のように述べている。

  • 医学は不確実は科学だ
  • ある特定の医療行為の患者の人生にどのような影響を与えるかを予測できるはずもない
  • 医療のグレーゾーンでの選択は、単純でもなければ明快でもないことが多い
  • したがって、患者と医師の両方によって、微妙に調整された意志決定がされなければならない
  • ガイドラインという作業マニュアルに従って医療を提供するのが望ましいという医師や専門家がいるが、それは「患者中心の医療」ではなく「システム中心の医療」である
  • どの治療を望むかという点で、最大限主義者と最小限主義者がいる
  • 自然主義指向と新しい革命的な治療法が最善とする技術主義指向の患者がいる
  • 信じる者と疑う者というカテゴリーも存在する
  • 自分がこれらのカテゴリーのどれに当てはまるのかを検討した上で、熟考のプロセスを見直すことをお薦めする
  • 治療による利益よりも害のほうを重視する患者には「隣人のアドバイス」、親戚や友人の経験やメディアやインターネットでの経験談=「可用性バイアス」も指向を決定する最大のファクターになる
  • しかし、可用性バイアスの害を避けるためには、治療のリスクと利益に関する数字、治療必要数と有害必要数といった情報をたくさん集めて、その中に他人のエピソードを落とし込んで考えることが最善である
  • 意志決定において自分がどの程度の自律性と主導権を発揮したいかも考慮しておくべきである。主治医との信頼関係を構築し、それを確かめながらどの程度の主導権を発揮すれば良いのか、軌道修正していくことが理想である

治療必要数:一人の患者の治療効果を得るために、何人の患者に治療をしなければならないかという指標。小さいほどよい。

有害必要数は、100人の治療によって有害症例(副作用や死亡)する患者が1人増えれば、有害必要数=100となる。この数字は大きいほどよい。

これって、大事なことですよね。例えば「ウコンでがんが治った」という情報があったとき、そのためには何人の患者がウコンを摂っていたの?(分母) これを摂った結果症状が悪化した患者は何人いたの? をよく考えるということですね。ウコンは肝機能を悪化させることがあるのです。治った患者は標準治療など、他の治療法はやっていなかったのかも確認しなければいけませんね。

2017年2月28日 (火)

今日の一冊(67)『副作用のない抗がん剤の誕生』

がん治療革命 「副作用のない抗がん剤」の誕生 タイトルからトンデモ本ではないかと、スルーしていたが、機会があったので読んでみた。著者の奥野修司氏は『看取り先生の遺言』を上梓しており、ブログでも紹介したことがある。「看取り先生(岡部健)の遺言

取材のスタンスにも好印象を持った記憶がある。今回も著者自身が

とりあえず私は約二年間、眉に唾をしながら、本書に登場する山岡壮意医師の病院で、P-THPの投与を受けた患者を観察しつづけた。こちらとしては半信半疑だから、少しでも問題があったら取材を止めるつもりだった。

と書いているように、取材態度は真っ当である。しかし、そんなにすごい抗がん剤ならどこの製薬会社も飛びつくはずではないか。本書を読めばそれらの疑問に納得が(たぶん)いくだろう。

副作用のない抗がん剤「P-THP」(Pはポリマー、THPは抗がん剤の「ピラルビシン」)の開発者は前田浩教授(熊本大学名誉教授・崇城大学DDS研究所特任教授)である。2011年には優れた研究者に与えられる「吉田富三賞」を受賞し、2015年のノーベル賞候補と目された人物だ。

前田は腫瘍だけに薬剤を届ける「DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)」の提唱者である。

DDSについては、いくつかの開発が報じられている。

  • 国立がん研究センターもホウ素中性子捕捉療法(BNCT)に関連してDDS薬剤を開発している。
  • 動脈塞栓術もいわばDDSの一種である。
  • 川崎市臨海部の再開発地区にあるナノ医療イノベーションセンター(iCONM)の研究リーダーを務める片岡一則東京大学大学院工学系研究科教授の研究チームが2013年、直径数十ナノメートルの高分子カプセル「ナノマシン」に抗がん剤を入れて、体内のがん細胞に直接届ける画期的な技術「ドラッグ・デリバリー・システム(DDS)」を開発した。
    これは「ナノ DDS で難治膵臓がんの標的治療に成功:効果を遺伝子改変マウス  (自然発症膵がんマウス)で実証」と報じられている。
  • 東洋大学バイオ・ナノエレクトロニクス研究センターの吉田善一教授と内田貴司准教授らは、サッカーボール型の炭素構造物であるフラーレンに、鉄原子を内包することに成功し、造影剤やがん治療、薬物送達システム(DDS)などへの応用が期待できる。

「7万人が自宅を離れてさまよっている時に、国会は一体何をやっているのですか!」と、衆議院厚生労働委員会で国の放射線対策を厳しく批判したことが話題になった、東京大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦氏も、

前田のP-THPの特徴は、EPR効果を応用したところにある。

腫瘍周囲の新生血管は不完全であり,血管内皮細胞の間に隙間が存在する.そのため,正常の血管は透過しない数百nmの高分子薬剤が,腫瘍では血管壁を抜けて組織中へと透過する(enhanced permeability).また,腫瘍ではリンパ組織も成熟していないため,組織中の異物を排除することができず,結果として,血中から漏れだした高分子薬剤は腫瘍組織中に貯留する(enhanced retention).このような,高分子薬剤が腫瘍へ集積する特性をEPR(enhanced permeability and retention)効果という.

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高分子ポリマー(実験では車のワックス)に抗がん剤をくっつけて腫瘍にまで届くようにしたのだから、ナノカプセルなどの先進技術を使ったわけではない。まさに発想の転換である。

なぜP-THPが承認されないのか。それは製薬企業が利益にならないからと臨床試験に手を挙げないからだ。P-THPの前身である肝臓がんの高分子治療薬「スマンクス」はクラレとの提携で2004年に世に出た。しかし、多くの患者に効果があったのに、2013年に販売中止となる。第一の理由は「儲からないから」。薬価が1mgで12000円で、1週間の治療費60万円の2%、しかも1~3ヶ月に1回投与で良いのだから、製薬会社は利益にならないと撤退したのです。

新薬を開発し、臨床試験を行って市場に出すためには、10~20年の時間と莫大なお金が必要です。米国の例として、

  • 第一相試験:1000万ドル(10.5億円)
  • 第二相試験:2000万ドル(21億円)
  • 第三相試験:4500万ドル(47億円)

必要だとされています。製薬企業の援助でもない限り不可能です。大学の研究室や弱小製薬企業では「エビデンスのある」薬を世に出すことは、端からはじき出されています。

つらつらと書いていると尽きないが、この本はまた、前田へのインタビューという形式で、がんと人類の闘いの歴史、抗がん剤開発の歴史、がんとは何かという問いへの解説にもなっています。

私のとしてこちらの方が興味深かった。

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2017年2月24日 (金)

がん探知犬

息を吐くだけ においで判定する「がん探知犬」の可能性

早期発見が困難といわれるすい臓がんのステージゼロを発見した結果は、英医学誌GUTに掲載され、世界が驚きました。

本当かなぁ。サイトはこちら

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日本癌学会学術総会、日本外科学会定期学術集会などでも発表されているようです。

Image_002 がん患者をがんと判定する感度は100%、がんでない方をがんでないと判定する特異度は98%だそうです。本当ならすごいです。

ただ、こうしたすごい成績を出せるのは「マリーン」というこの犬だけ。海外での他の犬では感度は40%台だそうです。

2017年2月21日 (火)

人工知能(AI)によるがん診断

日本病理学会が人工知能(AI)を使った病理診断技術の開発をし実用化を目指すと報じられた。

がん病理診断、AIが支援…画像を比較・判定

病理医不足は深刻だから、これでがん患者の治療が良い方向に向かうことを願うが、人工知能を果たしてそこまで信頼して良いものだろうか。囲碁や将棋でディープラーニングによるAIが勝利したことはすばらしいが、人間の身体は囲碁や将棋よりもはるかに複雑で精密である。私はAIには懐疑的だ。

IBMのワトソンが一時もて囃されたが、ここにきて暗雲が立ちこめだした。

IBM「ワトソン」に暗雲 有名がん研究所がプロジェクトを離脱

MDアンダーソンがんセンターがこのプロジェクトから脱退するというのだ。資金面でも契約面でも不可解なプロジェクトらしい。

2017年2月20日 (月)

オプジーボの臨床試験

千葉ポートメディカルクリニックがオプジーボの臨床試験参加者を募集しています。ただ、高額なオプジーボの費用はクリニックが負担してくれますが、併用の抗がん剤の費用は自己負担。150~240万円かかるようです。

免疫チェックポイント阻害剤併用試験についての概要

固形癌のすべてが対照なので、膵臓がんも可能。詳しくはリンク先で。

オプジーボ、膵癌には効かないといわれますが、気になりますね。

2017年2月18日 (土)

放射線はがん細胞をワクチンにする

前回の記事で「化学療法や放射線療法などの術前治療」とあったが、関連しておもしろい記事がある。放射線治療によってがん細胞が「がんワクチン」になるというのだ。

米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新のがん研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌『OncoLog』2017年1月号の記事。

放射線は固形がんに対する免疫療法の効果を増強

放射線療法を免疫療法と併用してがんと闘うという論理は明白なようである。放射線は、がん細胞のDNAを傷つけることによってがん細胞を殺傷するが、これは局所に対する治療である。一方で、免疫療法は、免疫系を増強することによる全身に効果のある治療である。だがこれは、両者の併用がなぜ劇的な効果を示すのかといった疑問に対する説明の一端でしかない。一方の治療が疾患の局所コントロールだけをもたらし、他方が全身コントロールだけをもたらすというよりも、両者が相乗的に働いている可能性がある。

放射線は免疫原性細胞死を誘導したり、また主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子やその他のアポトーシスを誘導するタンパクの発現を促進することによってがん細胞の免疫療法への感受性を上げることができる。

放射線は、照射した腫瘍細胞を免疫療法に対して感受性にすることに加え、腫瘍細胞に腫瘍抗原を放出させることができる。この腫瘍抗原の刺激によってT細胞が活性化され、放射線照射を受けていない遠く離れた部位も含めて体中の腫瘍細胞を攻撃するようになる。「放射線は、効果的にがんをワクチンに変えることができるのです」

放射線が局所では腫瘍を縮小させる一方で全身では免疫応答を誘導するこの現象は、アブスコパル効果として知られている。

******************引用終わり*****************************

免疫療法と放射線療法の併用に関する臨床試験も、多くの癌腫で行われているようです。

2017年2月17日 (金)

RCT・エビデンスってなんぼのものじゃ

RCT(ランダム化比較試験)でなければエビデンスではないとか、エビデンスがない治療は人体実験だとか、最近かしましいが、こんな記事がある。

RCTのエビデンスにバイアスの可能性を指摘

米Oregon Health and Science UniversityのRosa Ahn氏らは、臨床試験の主任研究者と治験薬製造会社との金銭関係は、ポジティブな結果を報告する独立した要因になるという仮説を立て、2013年に発表されたランダム化対照試験(RCT)の論文を検証し、金銭関係がある場合は実際にポジティブな試験結果が多かったと報告した。結果はBMJ誌電子版に2017年1月17日に掲載された。

要するにざっくり言って、製薬企業が金を出している臨床試験は、治療に効果があるという結果が出やすいということ。

ま、想像していたとおりで、今さらながらのことだ。

ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実』 という本にはもっと赤裸々に書かれている。

著者のマーシャ・エンジェル氏は、ランセットと並び世界的権威を持つといわれるニューイングランド医学雑誌(NEJM)の元編集長。彼女が製薬会社のあくどさにやむにやまれず書いたというこの本は、当時大きな衝撃を与えたと言います。「有名医学雑誌の編集長という仕事 は、・・・医学界をリードする医学の守護神のはずだ。その医学の守護神が、こんな奴らは信用なりませんよと、医学界、製薬業界、臨床医たちを激しく追求する。」とあとがきにある。

東邦大学の学生と卒業生の医者が10代の女性に性的暴行をしたとか、京都の大学病院の学長が暴力団幹部と仲良くしすぎて家宅捜索を受けたとか、一部の医者の堕落ぶりには目に余る。

日本でも同じだろう。「ワセダ クロニクル」にこんな記事がある。

買われた記事 電通グループからの「成功報酬」

買われた記事 「国の看板」でビジネス

今やブラック企業の代表格となった電通の子会社が事務局を勤める「健康日本21推進フォーラム」が金を出して、共同通信配信の記事を書かせた。書いたのは共同通信の論説委員だ。

掲載されたのは脳梗塞を予防する「抗凝固薬」に関する記事だ。効き目が強すぎると脳内で出血し、死に至ることもある難しい薬だ。因果関係は不明なものの数百件の死亡事例が公的機関に報告されている。この記事に金が払われていた。しかも「広告」などの表示はなく一般の記事としてである。

抗凝固薬だけではない。内部資料や関係者の証言によると、医薬品の記事の見返りにカネが支払われるという関係は、電通側と共同通信側の間で少なくとも2005年から続いていた。

この「健康日本21推進フォーラム」の理事長は高久史麿・東京大学名誉教授である。2004年から日本医学会の会長を務めている重鎮だ。

医療の世界におけるエビデンスって言ったって、所詮この程度のものですよ。今ではエビデンスそのものが商売道具になっているんじゃなかろうか。


2017年1月26日 (木)

笑いでがんを治す

ヨミドクターにこんな記事が載っていました。

「笑い」でがん退治できる?…患者に漫才や落語、吉本・松竹の協力で実証研究

大阪府立成人病センター(移転、改称して「大阪国際がんセンター」となる)が吉本興業などの協力を得て、月2回程度、漫才や落語を見る前後で血液と唾液の検査を実施。患者にかかるストレスや免疫細胞の変化を調べるという。

このブログでも「笑い」についてはいろいろ書いてますよ。

ずいぶん昔ですが、「すばるクリニック」伊丹仁朗医師が、同じく吉本興業の協力で、「なんば花月」で同じような実験をやってますね。25年前の伊丹医師の実験と今回と、どのような結果が出るのでしょうか。楽しみです。ただね、がん患者はそんな結果やエビデンスを待たずとも、笑えばよいのですよ。副作用はないんだから。

1992年、大阪なんばの「グランド花月」で、落語や漫才を3時間観た19人のリンパ球を調べたら、14人が免疫活性が高くなったという調査が、日本心身医学会で発表されています。倉敷の「すばるクリニック」伊丹仁朗医師が行った事件です。このとき調査したのは、NK細胞の活性と、免疫力に関わるリンパ球、CD4とCD8の比率。NK細胞の免疫活性は14人が上昇。免疫力のアクセル役を果たす CD4、ブレーキ役のCD8 も共に正常値に近くなることが分かったそうです。(CD8抗原が発現しているT細胞は、キラーT細胞、CD4を発現しているT細胞はヘルパーT細胞と呼ばれています。)

笑いと治癒力 (岩波現代文庫―社会)ノーマン・カズンズの『笑いと治癒力』では、10分間大笑いしたあと、2時間は激しい痛みも感じることなく、ぐっすりと眠ることができたと紹介されていました。笑いはこころの深呼吸、こころのジョギングとも言われています。樋口強さんも「笑いは最高の抗がん剤」と言っています。

『臨床瑣談』の著者、中井久夫さんのガン患者への助言が三つある。

  1. 睡眠を十分に取りなさい
    正常な細胞が細胞分裂をするときに、最も危ない時期を午前2時から4時くらいの時間帯に迎える。細胞ががん化しないためにもこの時間帯は熟睡して体力を回復しておくことだ。
  2. おいしいものを食べなさい
    これは栄養をとることと、病院食などはストレスがたまる一方で治癒には悪影響だという話。
  3. 笑いなさい
    ノーマン・カズンズの「笑いと治癒力」を例にとって、笑いは免疫力を高める。無理にでも笑いなさい。脳をだましてでも笑っていれば効果がある。

こんな記事がお薦めです。「親鸞は桂枝雀だ」なんて、??って思うでしょ。

  1. 心が免疫系に与える影響
    た書籍として、おおいに参考になります。『笑いと治癒力』などの著者、ノーマン・カズンズが次のような序文を書いています。初版への序文   ...
  2. 笑いと治癒力」ノーマン・カズンズ
    の病と言われた膠原病から、ビタミンCと「笑い」を武器に、五百分の一という奇跡的な回復をした人です。有名な書評誌『サタデー・レビュー』の編集長であり、核兵器...
  3. 臨床瑣談 中井久夫
    がたまる一方で治癒には悪影響だという話。笑いなさいノーマン・カズンズの「笑いと治癒力」を例にとって、笑いは免疫力を高める。無理にでも笑いなさい。脳をだまし...
  4. 笑いとナチュラル・キラー細胞
    の4月下席は柳家喬太郎師匠の「松竹梅」。笑い転げてしまいました。柳家喬太郎師匠は、インターネット落語会の人気投票で第一位という人気者です。ノーマン・カズン...
  5. 金馬師匠から笑いの治癒力をもらった
    しまったんです。」ノーマン・カズンズの『笑いの治癒力』をそのまま実行して治った、腫瘍が消えてしまったということですね。こんな例はもっとたくさんあるのではな...
  6. 親鸞は桂枝雀だ
    題とつなげてゆく。このようにして親鸞は「笑いの元祖」であったという伊藤乾の仮説が提示されていくのだが、この節談説教こそが、落語・講談・浪花節、あらゆる寄席...

 

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