心と体

2018年1月16日 (火)

こころと自然退縮

Healing

以前の二つの記事

の続きです。

癌が消えた

がんの自然退縮や劇的寛解を経験した方に共通した原因はあるのだろうか?

癌が消えた―驚くべき自己治癒力 (新潮文庫) 20年以上前に出版された古い本ですが、多くのがんの自然退縮・劇的回復の物語が紹介されている『癌が消えた―驚くべき自己治癒力』の訳者あとがきには、どんな患者が驚異的回復=いわゆる奇跡的治癒をしやすいか?として、

この本には・・・これこそが「正しく」効果がある、と言えるものは一切書かれていないのだ。それでは何が書かれているかといえば、「その人に会う方法はその人自身がみつけなければならない。自分がどういう人間なのかを知りなさい」ということだ。それはしかし哲学的命題ではなく、不治の病に冒されていると知ったとき、その人の中で緊急の危機に対する全身全霊の総動員体制が組まれるなか、おのずと出てくるものなのだ。
私たちは生命の危機に直面したとき、それを乗り切るのは「強い意志と強靱な体」だ、と思いがちだ。けれどもアウシュビッツの強制収容所の例(フランクルの『夜と霧』を指している-キノシタ)でも分かるように、生き延びた人たちは「想像力豊かで、あいまいさや不確実性とともに生きられる人」、つまり嵐の時に逃げ込める避難所を心の中にもち、混沌の中でどんな小さなことにも自分なりのやり方や意味を見いだせる人だという。これは救いだ。なぜなら、あるタイプに自分を合わせる必要はない、ということだからだ。

とある。

膵臓がんの自然寛解

膵臓がんの例も紹介されている。

80歳の開業医だったフォークナー氏は、膵頭部にテニスボール大の腫瘍があり、生研によって膵腺がんであることが明らかだった。切除不能だった。余命はせいぜい6ヶ月と言い渡された。しかし診断から8年を生存し、膵がんの再発で亡くなった。彼は生前に友人に次のように語っている。
「頭では信じていないのだが、どうも私はがんに対して何か重要なことをしたようだ。治癒したとはいわないが、西欧の正当医学が自然緩解と呼んでいる状態にあるという事実は受け入れよう。自然緩解とは別の言葉で言えば、私たちには分からない、ということだ。」

修道女ガートルードの例は、1935年のことである。膵臓がんの診断がついており、試験的開腹手術で(もちろん当時CTはない)膵頭部が通常の3倍の大きさにふくれており、生研のみで手術はできずに閉じられた。修道女たちの祈りが9日連続で続けられた。彼女は回復して、2ヶ月後には日課の修道女生活に戻った。7年半のあいだ彼女はたゆみなく働いた。彼女が突然亡くなった36時間後に解剖してみると、死因は広範囲の肺動脈塞栓であり、膵臓に腫瘍の兆候は全く認められなかった。

酒販売会社の社長ノーマン・アーノルドの例も膵臓がんである。膵頭部に腫瘍ができており、リンパ節と肝臓に転移があった。病理報告は「多発性のリンパ節転移と孤立性の肝転移を伴った膵腺がん」であった。アーノルドは、自然食で膵臓がんを治した大学教授の話を聞き、すぐ電話をした。電話に出た妻は「夫は 亡くなりました。」と言ったのでアーノルドは「うまくいかなかったわけですね」と訊くと、妻は「いえ、風邪で亡くなったのです」と。アーノルドはマクロビオティックの久司道夫の食餌療法を取り入れ、サイモントン療法にも積極的に参加した。7ヶ月後、アーノルドの膵臓には異常がなく、肝臓にも転移の兆候がなくなっていた。アーノルドは「なぜ治ったと思うのか」の問いに、意思の力=10%、食事=9.999%、医学的治療=0.001%、分からない=80%、 と答えている。

ミクロの世界は情報が力である

同じ本の中で、マイケル・ラフは次のように言っています。

たぶん寛解は、同じ死に絶えるメッセージをがん細胞が受け取っているのでしょう。がんは、DNAを溶かし、クロマチンを凝縮させ、細胞を徐々に喪失させる遺伝子を活発化するような化学的メッセージに正常な細胞と同じくらい、弱いのです。

ラフは、感情が腫瘍の死に大きな役割を果たすことは可能だ、と考えている。

それほど強烈なものである必要はないと考えています。がんは大きな異常ではありますけれど、一定期間にわたる微妙な変質の結果です。治癒もまた微妙な変化で、シーソーが再び降りてきたようなものです。たぶん感情の分子がシーソーを押したのでしょう。

彼は身体の防御の仕組みを、カオス説で説明する。<略> 心理的力は小さく弱いため、がんによる「併合」に影響を与えることはできないという従来の見方と違って、心ー体のつながりはミクロの世界で、そこは勝利は強い方へ行くだけではなく、頭のいい方へ行くという世界、情報が力である世界だ。

脳には感情と結びついている分子のレセプターが多くある。この分子は最終的に病気に対する前線となる。免疫細胞は体中を回る間に脳と交信して、報告をし、指示をもらい、別の体の現場へ公式声明をもって急行し、傷を治す処置をする。驚異的回復が示しているのは、ある一定状況のもとでは、がんは突破できない砦というよりは、情報の突風の前に震えるもろいトランプの家のようなものであるということだ。

20年前に既に、がんー体ー心の関係を、複雑系ーカオス理論で説明しようとした学者がいるのですね。エピジェネティクスの一種の複雑系です。

がんが自然に治る生き方

がんは摩訶不思議な病で、自然治癒することがたまにあることは、よく知られている。しかし、それを系統だって研究しようとする研究者はいなかった。何故だろうかと不思議に思っていた。がんの自然史の例外を研究することは、がんをより理解するための格好の教材ではないかと思うのだ。

がんが自然に治る生き方――余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと 20年後にそれをやってくれた女性研究者がいた。ケリー・ターナーである。その本とは『がんが自然に治る生き方――余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』である。

治癒不能といわれたがんが自然治癒する現象が、実際の医療現場で話題になることはまずない。 しかし筆者が目を通した1000本以上の医学論文において、がんが自然に治癒した事例を報告していた。医師は治すのが仕事なのでこうした事例を追跡研究することはなく、「たまたま」治ったという話は「偽りの希望」を与えるだけだとして積極的に口外することもなかったために、自然治癒事例は事実上放置されてきたのである。全く科学的にメスを入れられていないこのテーマを解明するために、「劇的な寛解」事例を報告した医学論文をくまなく分析し、日本を含む世界10カ国で寛解者と治療者のインタビューを行った結果、がんの自然治癒を体験した人々には、「9つの共通する実践事項」があった。

ターナー女史は、この本において、一つの「仮説」として提起したのだが、東大病院を辞めたある医師は、これに対して「オカルト本」だと批判している。彼女の学位ががん患者のカウンセリングを専門としたものであるとか、博士論文がインパクトファクターのない三流学術誌だとかの理由である。

「仮説」には科学的に反証すれば良いのであって、それによって科学は進歩するのです。博士論文がどの学術誌に出されたかの問題ではないだろう。特殊相対性理論を出した当時のアインシュタインは、スイスの特許庁に勤める職員だったし、有名でない雑誌に発表されたので当初はほとんど注目されなかったのです。

閑話休題。ターナー女史も書いているように、自然寛解=劇的に治癒した人に共通して実践している九つの項目のうち、身体に関することは二つ(食事を変える、ハーブやサプリメントの助けを借りる)だけで、あとの項目はすべて感情や精神に関することなのです。

第5章「抑圧された感情を解き放つ」

  • わたしにとって驚きだったのは、劇的な寛解の経験者が実践していた九つの項目のうち、身体に関わることがたった二つ(食事を変える、ハーブやサプリメントを使う)しかなかったことです。残りの七つは、感情や精神にかかわることでした。
  • 「病気とは、私たち人間の身体・心・魂のどこかのレベルで詰まっているものである」これが、がん回復者と代替治療者が共通して持っていた考えでした。
  • 劇的な寛解を経験した人々は、彼らの身体・心・魂の三つのレベルにおいて「詰まり」を除去しようと、真剣に取り組んでいました。人によってはその「詰まり」は身体に発生します。人によっては心、あるいは魂のレベルで発生します。どこにそれが生じたとしても、目指すことは同じです。その存在に気づき、なぜ生じたかを理解し、完全に除去するのです。
  • 抑圧された感情とは、良いものであれ悪いものであれ、意識的であれ無意識的であれ、わたしたちが過去から引きずってきたすべての感情のことを意味します。
  • この二十年間で、抑圧された感情の開放は身体に良い影響をもたらすことが、科学的に解明されてきました。
  • わたしたちの心を形成するのは、感情に反応して分泌される神経ペプチドです。神経ペプチドは体内のどの細胞にも存在するので、ストレスのような感情は、免疫システムのみならず、身体の全細胞に負の作用をもたらします。
  • ストレスを抱えたままにしていると、がんと闘ってくれる免疫機能を弱体化させてしまいます。逆にストレスを解き放つと、免疫システムは強化されるのです。
  • (死への)恐れは、がん患者を支配する感情です。まずこの感情への対処が必要だ、と治療者たちは語っています。
  • 抵抗をやめることです。物理的な身体と、感情の身体と、魂の身体。この三つのバランスを取りもどすために、恐れること自体をやめるのです。恐れることをやめなさい。安らかに死に、おだやかに生きるために。
  • 治癒する可能性が高くなるのは、身体のバランスがとれているときです。でも恐れを心に抱いていると、エネルギーの場全体がーー微細なエネルギーの場も免疫システムもーー閉ざされてしまうのです。
  • がんから劇的に回復した人々は、ほぼ全員が、死の恐怖を直視したとき、ある意味で気持ちが和らいだ、と話していました。ずっと抱えていた仕事を片付けたように思えた、と言うのです。
  • 恐怖を感じていたら、身体は治癒しません。身体が自己治癒するのは、その人が恐れの感情を抱えていないときなのです。
  • がんが治るのは、その人が恐れを手放したときです。劇的ながんの緩解を経験した人、そして、たとえ途中で治療に戻っても長期間うまく寛解状態を保っている人たちは、「不確かな状況」と上手につきあえる人なのです。先行きの見えない、不確かな状態とつきあう。これはとても大切なことです。「いま」に腰を据え、先行きへの不安を思い描かない人は、うまく治癒するものです。

長くなるので、関心のある方は、以前のブログ記事を参照してください。

  1. がんが自然に治る生き方(1)
    代替医療を選択するべきか。そのヒントを『がんが自然に治る生き方―余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』から得ることができます。がんが自然に治る...
  2. がんが自然に治る生き方(2)
    がんが自然に治る生き方―余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのことposted with ヨメレバケリー・タ...
  3. がんが自然に治る生き方(3)
    『がんが自然に治る生き方―余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践している9つのこと』第6章「より前向きに生きる」人が幸福感と...

治りたがる患者は治ることが希である。

続きを読む "こころと自然退縮" »

2018年1月 8日 (月)

がんの遺伝子は瞑想でオフにできる

24ecde061b4ecd34796d13e3cb5010081

瞑想によって脳波が同調する

マインドフルネスなどの瞑想をすることで、遺伝子のスイッチをオフにできる。これが科学的に実証されつつあります。

マインドフルネスでも用いられる「ヨガ・メディテーション」がもたらす科学的根拠を実証した具体的実験研究結果として、TM中に起こる脳波の同調について調査があります。  脳の前頭葉の二カ所で脳波を測定した結果、瞑想中には、二カ所の脳波の波形が非常に似通ってくることがわかっています。それは脳波の同調と呼ばれる現象です。

201801070011

脳の各部分が同調して、脳波が同調し、秩序だった形で働いていることを示します。それは、脳が最大限に機能している証拠でもあります。

瞑想と遺伝子の発現

最近、瞑想による遺伝子発現の関係が明らかになってきています。「発現」とは遺伝子のスイッチがオンになって、遺伝子に書き込まれたタンパク質を作るようになることです。

瞑想による健康効果には遺伝子レベルでの根拠があります。 瞑想に熟練した人たちに8時間にわたって瞑想をしてもらい、瞑想ではないけれど静かな時間を過ごした一般人と比較したところ、炎症を誘発する遺伝子(RIPK2 や COX2 など)の発現量が減少するなどの遺伝子・分子レベルでの変化が生じ、それによって、肉体がストレスから回復する速度が速くなっていたのです。

マインドフルネスでテロメアの長さが変わる

2014年11月の "Cancer" 誌に掲載された 研究によると、マインドフルネス瞑想法が細胞レベルで肉体に影響することも明らかになりました。 この研究で乳ガンの病歴がある女性がマインドフルネス瞑想法を行ったところ、DNA の一部であって加齢の指標だと考えられているテロメアの長さが維持されたのです。

テロメアは細胞分裂のたびに短くなり、これによって細胞の寿命が決まります。加齢の原因だと考えられているのです。

瞑想を重ねることによって脳の特定の部分の構造や大きさが変化するといった、意外な効果もわかってきています。

瞑想は炎症を抑える

炎症とがんとの関係を長年にわたって研究してきた三重大学教授の三木誓雄氏は、

「がんの組織がIL6とともにIL6受容体をも高発現していることに注目してきた。その結果、 IL6が中心となってがん悪液質が発生、しかもがん組織自ら産生したIL6を自ら受容して増殖する患者にとっては大変迷惑な循環現象が起こっていると捉え るようになった。」「食べても、食べても痩せる」という悪液質の特徴の背景には炎症がある

と三木氏は述べています。

がんに由来する炎症マーカー(CRP)値上昇は、がんが発見される何年も前から続くことになり、結果的に大きなダメージを患者の身体に与えているのです。

マインドフルネス瞑想法の効果は、免疫システムの正常化、炎症の減少などが証明されています。2ヶ月間の瞑想だけで、免疫システムがインフルエンザ・ワクチンに強く反応するようになり、白血球はNK細胞も含めて正常になり、がんとより強く戦えるようになったのです。

これもいわゆる「エピジェネティクス」ですね。

がんとエピジェネティクス

そればかりではなく、がん化の初期にはエピジェネティクスがより影響しているといわれています。

さらに、『「思考」のすごい力』の著者ブルース・リプトン博士は、遺伝子のエピジェネティックな変異を量子物理学から説明しています。

細胞の状態は、細胞を取り巻く物質的・エネルギー的な環境によって決まるので、遺伝子が決定するのではない。遺伝子は自らのスイッチのオン・オフはできないのである。つまり複雑系の専門用語でいえば「自己創発」ができない。遺伝子のスイッチを入れるのは、環境からの信号である。

「環境」とは、細胞を取り巻く近傍のエネルギー場であり、遺伝子のエピジェネティックなふるまいも、量子力学的なエネルギー場の影響を受けるはずだと博士は考えています。

タンパク質分子間の化学反応も、より微細なレベルで見れば、それは量子力学的な反応であり、エネルギー場は化学反応に比べて100倍も速く情報を伝えることができるのです。化学的反応の速度では生命活動の情報伝達の早さは説明できないと言います。

大多数のがん患者の悪性腫瘍は、環境によってエピジェネティックな変化が引き起こされたために生じたもので、遺伝子の欠陥によるものではない。(Kling 2003; Jones 2001; Seppa 2000; Baylin 1997 らの研究)

とすれば、エピジェネティックな変異は可逆的であるから、がん細胞を取り巻く微小環境を変えることで、がん細胞を縮小に向かわせることができるはずである。そして精神的、心の働きは神経やホルモンなどの情報伝達物質によって細胞に影響を与えると共に、量子力学的なエネルギーによっても細胞に影響を与えることができるのです。

瞑想が遺伝子のスイッチをオン・オフできるのであるから、がん細胞の遺伝子も当然オン・オフできるはずですね。

続きを読む "がんの遺伝子は瞑想でオフにできる" »

2016年8月24日 (水)

マインドフルネス やってますか?

8/21のサイエンスZeroでマインドフルネスが紹介されていました。『新・瞑(めい)想法 “マインドフルネス”で脳を改善!

ひと言で言えば、私がブログで取り上げてきた内容がコンパクトにまとめて紹介されていました。

私たちの脳は、デフォルトモード・ネットワークの状態にあります。これは車で言えばアイドリングに相当する状態です。しかし、これが強いと常に過去のことや未来のことばかりに意識が集中して、今現在のことが疎かになります。カバットジンはこれを「自動操縦状態」と言っています。

あのときに検査をしておけば・・・、とか、今の抗がん剤が効かなくなったら・・・、余命はどれくらいだろうか・・・とか、ほとんど過去と未来のことばかりを考えている状態が多いのではないでしょうか。

マインドフルネスは、そうした雑念に「気づき」、今ここにある自分に意識を集中することができるようにします。

それがどのような効果があるのか、番組で紹介されたのは、マインドフルネスで脳の構造まで変っていく。また遺伝子の活性化までも影響を与えることができるのです。

マインドフルネスを短時間行なっただけで、脳のdlPFC(前頭前皮質背外側部)といわれる部分が活性化します。dlPFCは脳のなかのさらに司令塔ともいわれる部分です。

20160824_13_47_45

20160824_13_48_05

デフォルトモード・ネットワークが脳のなかでさまざまな雑念を生み出すのですが、dlPFCが働くことによって、うまくコントロールされ、雑念が生じにくくなるのです。

20160824_13_48_54

さらに、マインドフルネスによって脳のなかで記憶を司っているといわれる海馬の灰白質が大きくなり、

20160824_13_57_29

扁桃体は小さくなります。ストレスが多い人やうつ病に人は、扁桃体が大きく、海馬が萎縮している場合が多いのですが、マインドフルネスは、扁桃体を小さくして海馬を大きくさせることで、ストレスから早く回復できるようになります。

さらに、病気やストレスに関係しているといわれるRIPK2遺伝子の活性化を抑えることも実証されています。

20160824_14_00_25

RIPK2は炎症に関係する遺伝子で、肥満やがんになると体のなかでは炎症反応が続いており、またがん細胞は炎症反応を利用して増殖することが知られています。

マインドフルネスは炎症に関係する遺伝子にまで影響を与えることができる、つまり、「心の有り様によって遺伝子も変る」ことが科学的にも分かってきたのです。

炎症とがんとの関係を長年にわたって研究してきた三重大学教授の三木誓雄氏は、「がんの組織がIL6とともにIL6受容体をも高発現していることに 注目してきた。その結果、 IL6が中心となってがん悪液質が発生、しかもがん組織自ら産生したIL6を自ら受容して増殖する患者にとっては大変迷惑な循環現象が起こっていると捉え るようになった。」「食べても、食べても痩せる」という悪液質の特徴の背景には炎症があると三木氏はいう。がんに由来する炎症マーカー(CRP)値上昇は がんが発見される何年も前から続くことになり、結果的に大きなダメージを患者の身体に与えている。

マインドフルネス瞑想法の効果は、免疫システムの正常化、炎症の減少などが証明されています。2ヶ月間の瞑想だけで、免疫システムがインフルエンザ・ワクチンに強く反応するようになり、白血球はNK細胞も含めて正常になり、がんとより強く戦えるようになったのです。

家族に I LOVE YOU!』のトミッチさんもマインドフルネスで効果を実感しているそうですよ。

続きを読む "マインドフルネス やってますか?" »

2016年6月30日 (木)

『「病は気から」を科学する』(5)

ストレスと脳

(闘うべきか、逃げるべきかの)闘争・逃走反応は役に立つものであり、この本能的な反応のおかげで、人類は何百万年もの進化における変化の激しい環境で生き延びてこられた。そのスイッチは一瞬にして入るが、脅威が消えれば、体はふたたびリラックスする。

ライオンに追われるシマウマは闘争・逃走反応を最大限に活用している。狩りが終われば、シマウマは普通の状態に戻り(捕まって食われなかった場合だが)、生理機能も正常に戻る──まさに身も心も穏やかな状態だ。この動物は、追われて逃げまわったことを思い出したり、次回も助かるだろうかとくよくよ悩んだりはしない。

しかし、人間はシマウマとは違う。特に現代の人間は。

人の脳はもっと洗練されているため、失敗から学び、未来のことを考える能力がある──だが、それはつねに心配事を抱えているということでもある。

過去の出来事を思い出し、未来の問題に悩む。これがストレスであり、程度は小さくても、地震に遭ったときと同じ緊急反応を体に引き起こす。

ストレスを抱えた人間は、24時間「闘争・逃走反応」の状態にあり、体は燃料を燃やし、血糖値を上げる。これにより、エネルギーを大いに高めることができるが、長時間続くと、肥満と糖尿病のリスクを高めてしまう。さらに、それが免疫系に大混乱を引き起こす。

慢性的にストレスにさらされていると、コルチゾールがつねに体内に放出された状態になる。すると、ずっとオフスイッチとして作用するため、免疫系が抑制される。あまりに長くストレスがかかりすぎると、オフスイッチが擦り切れ、もう体がコルチゾールに対して見せるべき反応を見せなくなる。すると免疫系が暴走し、アレルギーを起こしやすくなるが、最大の悪影響は慢性炎症だ。炎症レベルが高くなれば、湿疹から多発性硬化症まで、自己免疫疾患が悪化する。さらに時間が経てば、炎症が骨、関節、筋肉、血管など健全な組織を侵食する。

日々の小さなストレスの積み重ねによって、がんのリスクが高くなる。動物実験では、

少なくとも動物では、ストレスがDNA修復機構を妨げること、ナチュラルキラー細胞など、本来、腫瘍と闘う免疫反応の一部を抑えることがわかっている。
さらに、炎症レベルが高まり、傷ついた細胞が排除され、新しい血管の成長が促されると、闘争・逃走反応が、成長しつつある腫瘍がまさに求めているものを与えてしまう。それは、(腫瘍の)成長のための局所的な血液供給と空間だ。様々ながんのマウスにストレスを与えたり、ストレスホルモンのアドレナリンを注射したりすれば、その腫瘍はより速く成長し、広がっていく

ことが分かっている。そればかりではない。

ストレスが多いほど、遺伝子の中にあり細胞分裂の回数をきめているテロメアが短くなる。つまり、細胞の老化が早くなり、ヒトの寿命が短くなる。テロメアが短い人たちは、糖尿病、心疾患、アルツハイマー病、脳卒中など、ストレス性の病気に罹りやすく、早死にする。

ストレスは脳の配線の仕方に影響を及ぼし、人に平静を保たせ、制御する脳の経路そのものを破壊することにより、これから起こる問題に非常に敏感に反応させるのだ。

ストレスは様々な方法で脳を配線し直すことにより、悪環境で苦しんでいる人たちをさらに非常に不利な条件に置き、一生、慢性疾患に縛りつける。この残酷な遺産の存在から、ストレスにさらされている人たちが、今のような選択をする理由、環境がよくなっても、健康への影響に苦しむ理由を説明できる。

脳のこういった変化を予防したり、取り消したりすることはできないのだろうか?

その一つの解決策が「マインドフルネス瞑想」である。

瞑想がストレスを減らし、心身の健康を向上させるという科学的な主張だ。注意しないと、心と体は互いを食い物にするという悪循環に陥る。

マインドフルネス瞑想は、それが起こらないようにしてくれる。自分の思考を意識するようになれば、一歩下がり、不快な考えやストレスを与える考えが、必ずしも現実を表しているわけではないとわかる。感情的に反応する必要などない。それは、脳が生み出す、本能的なBGMのようなおしゃべりにすぎないからだ。いったん、このことに気づけば、そのおしゃべりを静めることができる。

思考が浮かんでも、それに支配される必要はないのだ。

マインドフルネスに基づいた治療法の無作為化対照試験は、これまでに何百と行われてきた。そして、系統的レビューとメタ分析は相次いで、マインドフルネスストレス低減法(MBSR)が慢性痛と不安感を軽減させ、がんを克服した人から健康な被験者まで、あらゆる人のストレスを軽減し、生活の質を向上させるという結論を出している。

ストレス解消効果は、脳を越えて免疫系にも影響を与えるのだろうか。

今では、多くの研究で、マインドフルネス瞑想が、コルチゾールホルモンや炎症マーカーなど体の生理学的なストレスの兆候を軽減させることがわかっている。
瞑想によりテロメアが保護されるどころか長くなり、細胞の老化を遅らせる可能性があると示唆している。

残念ながら、マインドフルネスストレス瞑想でヒトのがんが小さくなるという確かな実験は存在しない。効果がないと証明されたのではなく、こうした実験をヒトに行なうことの困難さと、製薬企業も政府も資金を出したがらないためである。薬が売れなくなる実験に、製薬企業が資金を出すはずもない。


MBCTの開発メンバー、マーク・ウィリアムズ博士が来日し、ワークショップと講演会が開催されます。

今回の来日は、日本マインドフルネス学会(http://mindfulness.jp.net/)が企画。「マインドフルネスフォーラム2016」として、講演会、ナイトセミナーのほか、1日または3日間のワークショップ(体験型の講座)で、ウィリアムズ博士から直接、マインドフルネス認知療法について学べる。

 参加方法や費用など詳細はこちら

20160630_20_35_43

続きを読む "『「病は気から」を科学する』(5)" »

2016年6月28日 (火)

『「病は気から」を科学する』(4)

緩和ケアについては、このブログでも何度か取り上げています。たとえば、

なかには、次の抗がん剤をやるためにも、今の抗がん剤の副作用に耐えているという、抗がん剤をやることが目的になってしまっている患者もいます。抗がん剤は、あくまでも治療目標を達成するための手段であるのに、手段がいつのまにか目的になってしまっている方もいる。

これからどう過ごしたいか、どのように生きていきたいか、という目標があって初めて、どういう治療が自分に必要なのかを考えるべきではないでしょうか。

抗がん剤は「苦痛に耐えて受けなければいけない治療」と思われがちですが、本来は、患者さんの苦痛をやわらげて、元気を取り戻すためにあるものです。その意味では抗がん剤は緩和医療のひとつでもあるのです。

「がん診療レジデントマニュアル」という研修医向けの本には、抗がん剤の使用目的は「がんの存在による自覚症状の緩和、QOLの改善が大きな目的となる」と書かれています。がんを治すことが主要な目的ではないのです。再発・転移したがんに対する抗がん剤は、延命効果とQOLの改善のためだということです。

さらに「【動画】抗がん剤は効く?」では、進行肺がん患者151名の臨床試験において緩和ケアを受けた患者の生存期間中央値が受けない患者に比べて2.7ヶ月の延命効果があったことを紹介しています。

20150902_09_46_531

世界保健機関(WHO)は早期からの緩和ケアを考え方を推奨しています。

Vol8_qol_02

しかし現実は、「緩和ケア病院では治療はできないからは退院してください」という医師が少なからずいるという残念な状態があります。

「病は気から」を科学する』ではこの臨床試験で患者達が受けた緩和ケアの内容について、このように述べています。

緩和ケアの専門家としての彼女の仕事は、薬や治療の処方ではなく、話をすること。彼女がする質問は、死に直面している人たちがめったに尋ねられないものだ。回復の見込みについて、どの程度知りたいか。症状の緩和を選ぶか、それとも命を長らえたいか。どこで、どんなふうにして死にたいか。

緩和セッションでジャクソンと同僚たちが重点を置いたのは、患者のがんの病状ではなく、その個人的な生活、つまり、患者と家族が診断や治療の副作用にどのように対処しているかといったことだった。

ジャクソンはある膵臓がん患者について話してくれた。

その男性をピーターと呼ぶことにしよう。ジャクソンがピーターに会ったのは私の取材の前日、最新のスキャンで悪い知らせがわかったあとだった。

「がん専門医が四十分かけて、スキャン結果の説明を行い、そのあと、私が一時間、彼と話しました」と彼女は言う。がん専門医が伝えたのは、ピーターはさら化学療法を行っても効果が出る可能性は低いことだった。そして、ジャクソンの仕事は、ピーターが残りの人生をどう生きるべきか、話し合うことだった。

「彼の息子は半年後に結婚します。でも、結婚式まで生きていられるとは思いません」と彼女は言う。「国内のあちこちで暮らす子どもたちに、特に息子に、どう話すのでしょう」

患者の興味、価値観、家族環境を知り、人間として包括的に理解しないかぎり、仕事はできない、とジャクソンは言う。さらによい緩和ケアとは、人が死ぬ援助をするというより、むしろ生きる援助をすることだと説明する。患者がどんな人で、本人にとって人生とは何を意味するのかを見抜かなければならない。たとえば、ゴルフをすることなのか、昼メロを観ることなのか、それとも、元気に結婚式に出席することなのか。「それは、人それぞれなんです」

終末期だからこそ、よりよく生きるための援助をする。それが本来の緩和ケアなのです。

この試験の意味するところは重要です。WHOが推奨している早期からの緩和ケアの重要性を明らかにすることが試験の目的でしたが、一方で、標準的な抗がん剤治療によって命を縮めている患者が少なからずいることを明らかにしているからです。

続きを読む "『「病は気から」を科学する』(4)" »

2016年6月23日 (木)

『「病は気から」を科学する』(3)

これまで登場した科学者達は、プラセボ効果の限界として、

  1. 治療を信じる心が起こす効果は、体が持っている天然ツールに限られること
  2. 期待がもたらす効果は、特定の症状に限られること

を挙げて、

  • 自分ではわからない値に影響を及ぼすという証拠はほとんどなく、病気の根源的なプロセスや原因にかかわることはないらしい。
  • がん患者の臨床試験では、一般的に痛みと生活の質にプラセボが大きな効果を及ぼしはしても、プラセボ群内の腫瘍が小さくなったという患者の割合は低い(七件の試験のうちのある分析では二・七パーセント)
  • プラセボは、人がどんな状況にあっても元気でいられるように、なんでも叶える魔法を使うわけではない。
  • いくら治ると信じても、病気の背後にある生理学的な状態を変えることはできない

と考えている。しかし、果たしてそうだろうか。ジョー・マーチャントの探究の旅が続く。

科学者でさえほとんど知らないことがある。それは、条件づけがプラセボ反応も引き起こすことだ。
生理学的な条件づけに基づいたプラセボ反応は、多くの場合、意識的な期待に基づいた反応とは別に起こる。

医師が単純な条件づけ手法を利用すれば、プラセボ効果を高めることができ、しかも患者を騙す必要などないことを示唆している。 期待と条件づけを同時に利用することで、倫理的に問題のないプラセボの可能性が広がる。痛みやうつ病から、パーキンソン病やADHDといった病気に罹っている、世界中の何百万人もの患者の投薬量を減らせるかもしれないのだ。

しかし、条件反射の可能性に関しては、まったく新たな展望が拓けつつある。学習した無意識の結びつきの影響は、従来のプラセボ効果のように、自覚症状──ADHDの患者では集中力の欠如など──に制限されない。それは免疫系にも影響を与え、心が体の病気との闘いで武器になれるような経路をつくる。言い換えれば、心には感じ方や体の調子もよくする以上の能力がある。条件づけによって、生死の境を分けることになるかもしれない。

免疫系と脳はつながっていることを明らかにしたことで有名な、マウスにサッカリンを使った実験を紹介している。

一九七五年、ニューヨーク州ロチェスター大学の心理学者ロバート・アデルは「味覚嫌悪」について調査していた。

ラット群を使用し、サッカリンで甘味をつけた水を数回に分けて飲ませた。普通ならご馳走だが、この実験では甘い水と動物に吐き気を催させる注射を組み合わせた。その後、アデルはラットに甘い水だけを与えた。すると彼の予想どおり、ラットは甘味と吐き気を結びつけ、水を飲むのを拒んだ。

アデルはスポイトで無理に飲ませ、ラットが不快な結びつきを忘れるのにかかる時間を調べた。実験は適正に行われたはずだが、ラットに実際に起こったことは、まるで黒魔術だった。実験のこの段階でアデルが与えたものは、甘味をつけた水だけであり、薬はまったく入っていない。しかし、ラットの吐き気は治まらなかった。それどころか、次々と死んでいったのだ。

アデルはラットの死因を突き止めようと、吐き気を催させる薬をさらに詳しく調べた。それはサイトキサン(シクロホスファミド)という薬で、腹痛を起こすだけでなく、免疫系を抑制する作用があった。アデルが実験で使用した量は致死量よりずっと低いものだったことから、彼は斬新な結論を出した。条件づけをしたとき、ラットが学習したのは吐き気だけではなかった。甘い水をさらに与えたことが、免疫系の抑制も起こし、その結果、感染症で死んだのだ。

アデルの発見は驚くべきものではあったが、当初は受け入れられなかった。彼の大きな問題は、一九七〇年代には、免疫系の条件づけの仕組みについて説明できなかったことだった。彼は、脳と免疫系の間に情報のやり取りはないと思い込んでいた多くの免疫学者たちと対立した。

しかし、数年後、それが証明された。

インディアナ大学医学部の神経科学者デビッド・フェルテンは、神経が、主要な免疫臓器である脾臓や胸腺(白血球を作り、保存する場所)につながっていたことを発見した。それは、免疫系と脳は生まれつきつながっていることを示す明白な証拠だった。

「精神神経免疫学」として知られる研究領域が作り上げられた瞬間だった。

続けて、フェルテンのグループはそのつながりの複雑な関係を解明した。元々の神経のつながりはもちろん、神経伝達物質──脳が産生するメッセンジャー分子──の受容体が免疫細胞の表面にあること、さらにその細胞に情報を伝えることのできる新しい神経伝達物質を発見したのだ。そして、その通信網がどちらの方向にも向かうことに気づいた。ストレスなどの心理的要因をきっかけとして神経伝達物質が放出され、それが免疫反応に影響を及ぼすと同時に、免疫系から放出された化学物質が逆に脳に影響を及ぼす

ことが明らかになったのだ。

さらに進んで、免疫抑制プラセボ効果の研究結果もある。

研究者たちはマウスに、樟脳の匂いとナチュラルキラー細胞(がんと闘う働きのある一種の免疫細胞)を活性化させる薬の結びつきを覚えさせたあと、マウスの体に浸潤性腫瘍を移植した。移植後、条件づけしたマウスには薬を投与せず、樟脳の匂いだけを嗅がせたところ、免疫療法を受けたマウスより長生きした。ある実験では、条件づけだけを行い、実薬を投与しなかった二匹から、がんが消えていた。これらの研究が示唆しているのは、条件づけのみにより、ラットの免疫系を高めた結果、その命が救われたということだ。

心は免疫系のNK細胞に働きかけ、ときによっては腫瘍を消失させるほどの力もある。

続きを読む "『「病は気から」を科学する』(3)" »

2016年6月21日 (火)

『「病は気から」を科学する』(2)

『「病は気から」を科学する』から、プラセボ効果(プラシーボ効果)についてです。

プラセボ効果(プラシーボ効果)とは、偽薬効果とも呼ばれており、本来は薬効として効く成分のない薬(偽薬)を投与したにもかかわらず、病気が快方に向かったり治癒することを意味します。

ハワード・ブローディは『プラシーボの治癒力―心がつくる体内万能薬』で、薬効のない薬を投与された患者の状態が改善したことに関して、次のように述べています。

彼らのケースすべてに共通する特徴があると思っている。それは、からだと連携して働き、治癒効果を高める心の神秘的な現象-プラシーボ反応である。ここで私が言っているのは、ある一連の状況(私はこれを「意味づけ仮説」と名づけるつもりだ)が存在するとき、病気の人は、初めのうちは説明がつかないように見えるが、とにかく症状が大いに軽減するということである。

プラシーボ反応について科学がこれまでに明らかにしたことを大ざっぱに理解するいちばんいい方法は、わたしたちの誰もが「体内の製薬工場」をもっていると想像することだと思う。

ジョー・マーチャントの『「病は気から」を科学する』から「第1章 偽薬─プラセボが効く理由」の項です。

自閉症の特効薬が発見されたと話題になった”事件”から始まります。

1996年4月、3歳の自閉症児パーカーは胃腸障害のために内視鏡検査を受けた。ところが、驚いたことにパーカーは一夜にして劇的な回復を見せ、ほぼ一年ぶりに、「ママ」「パパ」と言ったのだ。両親は息子の症状を変化させたのは、膵臓が適切に働いていることを確認するために投与されたセクレチンという消化管ホルモンだと確信した。

カリフォルニア大学アーバイン校の精神薬理学の助教であり、自閉症の息子アーロンを持つケネス・ソコルスキーも同じ治療を息子に受けさせて同じように改善した。メリーランド大学のホルバートが、三人目の少年にセクレチンを投与したところ、その少年も同じ反応を見せた。

彼の物語がNBC『デートライン』で何百万もの視聴者に向けて放映された。番組では、パーカーが人と交流する陽気な子どもになっていく映像を見せ、彼の進歩を耳にし、そのホルモン療法を試した他の親たちの証言を紹介した。それから数ヵ月間に二千五百名以上の子どもたちにセクレチンが投与され、成功談であふれ返った。

十数件の臨床試験が国中の病院に緊急委託された。子どもたちは、セクレチンを投与するグループと偽薬(プラセボ)を投与するグループの二群に分けられて、無作為化比較試験が行なわれた。

そして、小児科医サンドラーが実施した最初の臨床試験の結果が権威ある『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』誌に掲載されたが、結果は驚くほど悪いものだった。二群の間に有意差はなかったのである。

セクレチンが持つ可能性は、明らかに親たちが生み出した幻想だった。わが子のよくなった姿を見たいと強く願うあまり、心の中で想像したことだったのだ。こうして、セクレチンの物語は終わった。

しかし、これで本当に終わったのだろうか?

サンドラーは、両群とも著しい改善を見せたという事実に、彼がどれほど衝撃を受けたかということを語った。有意差はなかった。しかし、両軍とも著しく改善していたのだ。

「セクレチンを投与された群も、生理的食塩水を投与された群も、治療に大きな反応を示したのです。子どもたちの症状は本当に改善していた。しかし、それはセクレチンとは無関係だった。

二つの群には統計的に有意さはなかった。しかし両群とも劇的に症状が改善した。何が原因なのか?

同じように、椎体形成術と呼ばれる有望な外科手術の臨床試験に参加したボニーは手術後、病院から出たとたん、具合がよくなった。それから間もなく十年になるが、ボニーは今も手術の結果に非常に喜んでいる。しかしボニーが知らないことがある。あの臨床試験に参加したとき、彼女は椎体形成術群に入っていなかった。彼女が受けた手術は偽物だったのだ。

ニセの手術でもセクレチンと同様に、効果の高い治療を受けたと信じるだけで、症状を緩和させ、いくつかの症例では消失させるのに十分だったらしい。

これがプラセボ効果である。プラセボ効果は強力です。しかし、通常科学者や医師たちはそれを幻想や錯覚と見なすだけではなく、じゃまな存在だと考えています。

試験結果は、セクレチン、椎体形成術、どちらにも積極的な効果がないことを示している。つまり、根拠に基づく医療のルールに従えば、パーカーやボニーのような患者に起こった改善は価値のないものだ。

けれども、これほど多くの人たちの「改善した」という体験を退け続けていたら、実際に役立つかもしれないものまで捨てているのではないかと不安になる。すると、こんな疑問がわいてくる。プラセボ効果は壊すべき幻想ではなく、実際に臨床価値を持つ場合もあるのではないか──もし、そうなら、潜在的な危険のある治療に患者をさらすのをやめ、こちらを採用できないだろうか。言い換えれば、「病は気から」だ。「もうすぐ病気がよくなる」と単純に信じること。その思いに治癒力があるのではないか。

続きを読む "『「病は気から」を科学する』(2)" »

2016年6月20日 (月)

NHKスペシャル 「キラーストレス」(2)

昨夜の「キラーストレス」第2回は、ちょっと内容に不満。
ストレス対策として、コーピングとマインドフルネスの二つが取り上げられていた。

番組のプロジューサーは、

ストレスによる体の不調が起こっても「根性でなんとかしよう!」とするのではなく、科学的メカニズムにのっとったストレス解消法を実践すれば、脳の構造をガラリと変えられて、ストレスから心身を守れるということを皆さんにお伝えしたい

と言っていたが、確かにマインドフルネスによって脳の働き方が変化を受けていた。それだけではなくて、マインドフルネスによってエピジェネティックに遺伝子の発現も変えられることが明らかになりつつあるのです。

マインドフルネスの8週間プログラムを実践すると、記憶をつかさどる海馬の一部が増加し、

20160619_22_05_03

ストレスホルモン・コルチゾールを放出する指令を出す扁桃体は縮小していた。

20160619_22_05_24

ブームのマインドフルネスですが、Amazonで検索したら「本」だけで332件のヒットです。これじゃマインドフルネスを始めたいと思っても、どれを選んだら良いのかさっぱり分かりません。

で、私が実際に買ってみて気に入ったものから紹介しておきます。

  1. マインドフルネスを基礎から理解したいー理論派:何はともあれジョン・カバットジンの『マインドフルネスストレス低減法』でしょう。8週間の基本的プログラムのやり方も詳しく書かれています。しかし、内容が濃くて読みこなせないという方もいるでしょうね。CDは付属していません。
  2. ともかくすぐに始めたいー短気な方:そういう方には、「マインドフルネスストレス低減法」を自宅で実践するためのCD4枚組の『4枚組のCDで実践する マインドフルネス瞑想ガイド』がお勧めです。テキストはマインドフルネスの入門書としても良い。
  3. どんなものなのか、一度試してみたいー慎重派:本は安くて薄いほどよいという方にも、日本人の書いたものでCDも付属しているこちらがお勧めです『~1日10分で自分を浄化する方法~マインドフルネス瞑想入門』。著者の吉田昌生氏の低い声と落ち着いた語りが心地よい。
  4. 仕事にも活かしたいー欲張りの方:には、『グーグルのマインドフルネス革命―グーグル社員5万人の「10人に1人」が実践する最先端のプラクティス(付録:マインドフルネス実践ガイドCD)』はいかがでしょうか。

でもマインドフルネスを根本から理解するためには、落ち着いてからでも良いのでジョン・カバットジンの『マインドフルネスストレス低減法』はぜひ手にとってください。

ブームにあやかろうと、たくさんの本やCDが出版されていますが、やはり本家本元のカバットジンや彼の研究グループの書いたものを選んだ方が無難でしょう。

メディテーションはマインドフルネスだけではなき、それ以外にもヨーガ、太極拳、座禅・瞑想、自律訓練法、がん患者に特化したサイモントン療法などがあります。がん患者には、どれでも良いから(と、シュレベールも言っている)自分で気に入った方法を取り入れたらどうでしょうか。

それらの参考図書は「がん患者が選んだがんの本」に載せています。

続きを読む "NHKスペシャル 「キラーストレス」(2)" »

2016年6月19日 (日)

NHKスペシャル 「キラーストレス」

はっきり言います。私が再発も転移もせずに9年間、ここまで来られたのは、運動とメディテーションのおかげです。

サプリメントも食餌療法も効果があったのかもしれません。もちろん、がん研有明病院の齋浦先生の術式がすばらしかったことが一番の要因でしょう。しかし、高い確率で再発・転移する膵臓がんであることを考えたなら、術後の初期から運動とサイモントン療法、瞑想やマインドフルネスなどのメディテーションに取り組んできたことが大きな要因だと感じています。だから「心の有り様」がいちばん大切だよと、常々書き続けてきました。

しかし、がん患者のブログを見ても、「私、メディテーションやってます」って人は少ないのですね。皆さんサプリメントや食餌療法などの”形のあるもの”に関心がいっています。

昨夜と今夜の二夜連続で放映されるNHKスペシャル シリーズ『キラーストレス』では、ストレスとがんの関係も取り上げられています。

1929年にウォルター・B・キャノンによって初めて提唱された「闘争か逃走反応」。太古の狩猟時代の人類が猛獣などの敵と遭遇したときに、「闘うべきか、逃げるべきか」を判断し備えるためにからだはそれにふさわしい準備をします。

恐怖や不安などのストレスを受けると脳の下部にある扁桃体が活性化し、

20160619_09_15_22

それが、副腎に指令を出してストレスホルモンであるコルチゾールを放出させます。コルチゾールは心臓の心拍数を上げ、自律神経を興奮されます。

こうして、筋肉や心臓に大量の血液を供給して、生き残るための事態に備えようとします。「目の前の生きるか死ぬか」の問題に直面したとき、免疫系などの当面不必要な活動は抑制されるのです。

しかし、現代の社会においては、常にストレスに曝されて「闘争か逃走反応」が持続的に続いています。

20160619_08_03_42

がんの告知を受けた患者は、さらに大きなストレスに曝されます。免疫系の活動が弱体化して、がん細胞の増殖がより早くなるのです。

またストレスホルモンは、免疫細胞のATF3遺伝子を活性化させて、免疫細胞ががん細胞を攻撃することを抑制するのです。このためにストレスがあるとがん細胞が増殖しやすくなり、再発・転移につながるのです。

20160619_08_06_07

乳がん患者でATF3遺伝子が活性化している患者と、活性化していない患者の1年生存率を比較すると、前者では45%に対して後者では85%と大きな差があります。ストレスががん患者の生存率に大きく影響しているのかが分かります。

20160619_08_04_57

NHKの番組では最新の研究を紹介しながら、キラーストレスがわたしたちの体に大きな影響を与えていることを解明しています。

ストレスを軽減し、再発や転移を防ぐために効果的なことは、

  • 運動(30分程度を週に3回)
  • マインドフルネス、瞑想などのメディテーション

の二つです。今夜の番組ではメディテーションに焦点を当てて紹介されます。

しかし、これらのことは既にシュレベールの『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」』でも詳しく書かれていることです。別段目新しいことではありません。2009年に出版されたこの本ですが、いまでも内容は決して古びてはいません。

シュレベールは、その後に上梓した『さよならは何度でも ガンと向き合った医師の遺言』において、「『がんに効く生活』では食事やサプリメントのことに重きを置きすぎた。もっと心と運動に関して書くべきだった」と述べていることも指摘しておきます。

続きを読む "NHKスペシャル 「キラーストレス」" »

2016年6月18日 (土)

心と体 NHKでストレスの特集

NHKで今夜から二夜連続でストレスに関する番組があります。

NHKスペシャル シリーズ『キラーストレス
6月18日(土)[総合]後9:00
6月19日(日)[総合]後9:00

ちょうど今ブログで書いている『「病は気から」を科学する』の内容とも深く関わっているのでぜひ観よう。

  • ストレスが体内で想像を絶する変化を引き起こしている!?
  • ストレスの正体や悪影響をおよぼすメカニズムが科学的に詳細に解明されはじめたんですよ。
  • ストレスによって、心不全や脳梗塞などが引き起こされるケースがあります。それだけではなく、ときにはがんが進行したり、無害なはずの細菌が体内で重病を引き起こす原因になったりすることも明らかになりました。ストレスが要因で、想像を絶するさまざまな出来事が、私たちの体の中で起こっているんです!
  • 科学的なストレス対処法ーマインドフルネス

結局ストレスによっていろいろな病気になるということは、心が体に大きな影響を与えているということにほかならないのです。

ただ番組の予告を見ただけでは物足りない印象です。ストレスと免疫系との関係などの科学研究の現状にも突っ込んで欲しい。

続きを読む "心と体 NHKでストレスの特集" »

より以前の記事一覧

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想

膵臓がん お勧めサイト

アマゾン:商品検索

がんの本「わたしの一押し」

サイト内検索