書籍・雑誌

2017年7月 3日 (月)

今日の一冊(75)『人生の終い方』

1_2人生の終い方 自分と大切な人のためにできること 『終活』が盛んに話題になっているが、どういう人生の終わり方をするかは、人それぞれだろうが、突き詰めればこういうことだろう。

2016年5月に放映されたNHKスペシャル「人生の終い方」を書籍化したもの。

戦争体験を背負い、描き続けた漫画家の水木しげるさん。何気ない日常を写真に撮り、家族との笑顔の日々を残した。

昨年まで長く「笑点」の司会を続けて勇退した落語家の桂歌丸師匠。古典落語の継承が自分の使命と覚悟して、「高座で死ぬのが望み」だと仰る。

今日が人生最後の日だと思って生きなさい 定年直後に末期の食道がんが見つかった桑原誠次さん。終末は在宅で過ごすことを選択して、めぐみ在宅クリニックの小澤竹俊医師が「ディグニティ(尊厳)セラピー」を勧めるのに従い、「終末期の心を穏やかな状態に導く」9つの質問に答え、それを家族への手紙として残す。

  1. あなたの人生の中で、一番思い出として残っている出来事、あるいはあなたが最も重要だと考えていることはなんですか? あなたが人生で一番生き生きしていたのはいつのことですか?
  2. あなたが大切な人に知っておいてもらいたいことや憶えていてほしい、何か特別なことがありますか?
  3. あなたが人生で果たしてきた役割(家族内での役割、職業上の役割、地域社会での役割など)のうち、最も重要なものは何ですか?なぜそれはあなたにとって重要なのですか?そして、それらの役割においてあなたが成し遂げたことは何ですか?
  4. あなたが成し遂げたことの中でもっとも重要なことは何ですか?一番誇らしく思ったことは何ですか?
  5. 大切な人達に言っておく必要があると思いながらもまだ言えてなかったこと、あるいは、できればもう一度言っておきたいことがありますか?
  6. 大切な人達に向けてのあなたの希望や夢は何ですか?
  7. あなたが人生から学んだことの中で、他の人達に伝えておきたいことは何ですか?(息子、娘、夫、妻、両親、その他の人達)に残しておきたいアドバイスあるいは導きの言葉は何でしたか?
  8. 大切な人の将来に向けて役に立つような、伝えておきたい言葉、あるいは教訓めいたものはありますか?
  9. この半永久的な記録を作るに際して、他に追加しておきたいことがありますか?

郵便局で働いていた桑原さんは、40年前に、当時盛んだった労働組合運動で中心的な役割を果たしたことを、生きがいになっていたと語った。そして家族への手紙には「人生に悔いはありません。お母さん、政弘、真紀、ありがとう」と記されていた。

35歳でステージ4の腎臓がんと診断された小熊正申さん。まだ幼い兄妹がいる。「子どもたちに教えたいのは、立ち向かうこと、あきらめないこと」だという。

そんなパパの期待に応えようと、兄の海ノ介君はスノボの検定試験に合格することをめざしてみごとに合格する。

治らないがんを宿したがん患者が、大切な人に何を残したいのか、大切な人の心の中で生きていくためには、いま、末期の状態であっても、どのような人生を過ごしたいのかを考える。

死に方を選ぶというのは、生き方を選ぶということ。

死んだあとで、大切な人の心の中に、どのようなあなたとして「生き続けたい」ですか。

2017年6月20日 (火)

今日の一冊(74)『がんに効く最強の統合医療』

20170620002

がんに効く最強の統合医療』(日本統合医療学会 監修)

がん研有明病院漢方サポート科元部長の星野惠津夫先生の近著です。
がん研を退職されたのですね。空海記念統合医療クリニック院長の肩書きになっています。

日本統合医療学会は、ちょっと評価に迷う団体ですね。ホメオパシーの帯津良一氏やエネルギー療法の川嶋朗氏がいるかと思えば、『がんの補完代替医療ガイドブック』の大野智氏もいる。そこが力を入れている空海記念統合医療クリニックに院長として行かれたわけだ。

されはさておき、本書の内容を先入観なしに紹介してみます。

がんで闘病中の皆様に申し上げたいことは、主治医の提案する治療法以外にも、有用な治療法はいろいろあるということです。
しかし、「がんが消える」と自称する本や治療法には、効果に乏しいものや、詐欺まがいのものも多数含まれています。
ですから、情報をしっかりと集めたうえで、正しいものを見極めて、治療法を組み立てる必要があります。
(「はじめに」より)

と、カバー裏に書かれています。日本統合医療学会が「患者のための統合医療ガイドブック」という位置づけで出したということです。

Gan0005

Gan0003_2

第6章はそれぞれの専門医が執筆していて、膵臓がん患者にも気になる、血管内治療・ラジオ波焼却療法・KM-CART・ガンマナイフ・サイバーナイフ・ハイパーサーミア・腹腔内投与療法などの治療法が丁寧に紹介されています。骨セメント注入療法は知らなかったですね。

星野氏が本書で訴えたいことを端的に言えば、次の図のように

Img

なろうか。

わが国のがん治療医のほとんどは、自分の知っている治療法しか示しません。実際には化学療法しか知らない「化学療法専門医」や、手術の片手間に化学療法を行う外科医が多いのです。

自分の知っている抗がん剤の中に有効なものがなければ、「医学の限界」として、「もはや治療法はない」といってさじを投げ、患者さんを緩和ケアにゆだねます。しかし、それは「医学の限界」ではなく、その医師の「知識・技術・治療ネットワークの限界」です。実際には他に治療法のある場合が多いのです。

実際、私ががん研有明病院で診療したがん患者さんのなかには、担当医から「余命数ヶ月」と宣告されたにもかかわらず、本書に書かれたような統合医療により、長期間元気に人生を楽しんでいる方が少なくありません。

こうした考え方は、以前に紹介した『このまま死んでる場合じゃない』の放医研の岡田直美医師にも通じるものです。

カイジ顆粒などは、もっとがん患者にしられてもよいものだと思うのですが。最後の瞑想療法は、私も勧めているのですが、本気で取り組む患者は稀ですね。効果があるのだけど。

膵臓がんに関してもいくつか触れられています。手元に置いておきたい推薦できる新刊です。

2017年6月 8日 (木)

『がん患者のための・・・』第2版 更新できます。

『がん患者のためのインターネット活用術 第2版』が、購入者には無料でダウンロードできるようになりました。

amazon から連絡があり、

Kindle ダイレクト・パブリッシングをご利用いただきありがとうございます。
『がん患者のためのインターネット活用術 』(ASIN: B072C2HCLG ) の、

更新版配信についての審査が完了いたしましたのでご報告いたしま

す。

お客様の本の変更点を審査し、以下の対応を実施いたしました。

本の購入者は「コンテンツと端末の管理」ページ (www.amazon.co.jp/gp/digital/fiona/manage) で「アップデートがあります」をクリックすることで、

本のコンテンツを更新できます。(この改訂について Amazon から読者へのメールの通知を行いません。)

注: 「コンテンツと端末の管理」の「設定」タブで、「本の自動更新 (Whispersync for Books)」の設定が「オン」になっている購入者には、

新しいバージョンが自動で送信されます。

とのことです。
先日の記事での「メールでの更新依頼」は必要なくなりました。

今後ともよろしくお願いします。

2017年6月 6日 (火)

Kindle本 第2版になりました。

『がん患者のためのインターネット活用術』が第2版になりました。

大きな変更はありませんが、金魚さんから指摘された目次の不具合を直したこと、その他小さな修正です。

購入した本の自動更新は、

  • Amazonにログインし、各ページ下段にある「コンテンツと端末の管理」で「設定」タブを選ぶ
  • 「本の自動更新」をオンにする(デフォルトではオフになっている)

で自動更新されるはずです。(更新は最大で48時間後になります

20170606005_2

端末側の設定は、Kindle for Windowsでは自動更新になっており、オフにはできません。

Kindle端末をお持ちの場合は、自動バックアップ機能を有効にします。

  • Kindle whitepaperなら「本のWhispersync」を有効にします(通常で有効になっている)
  • Kindle Fireなら
    端末の自動バックアップを有効にする方法:
         画面を最上部から下にスワイプし、設定をタップします。
        端末のオプション、バックアップと復元の順にタップします。
        端末のバックアップをオンに切り替えます。 1日1回、端末がスリープモードのときにWi-Fiに接続され、自動的にバックアップが実行されます。

稀には以上の方法で更新ができないことがあります。その場合は、次の方法を試してください。

  • Amazonのログインして、「カスタマーサービスに連絡」に行きます。
  • 「お問い合わせの種類」で「AmazonデバイスとKindle無料アプリ」を選択します

    20170606003

  • ①「どの端末についてお尋ねですか?」は何も選択せずに
  • ②「お問い合わせ内容を選択してください」で、「Kindle無料アプリ」を選択します。

    20170606002

  • ③「お問い合わせ方法」では「Eメール」を選択します。
  • 「詳細を入力してください」に下記の通りに入力します。

更新版が出ているのでアップデートしてください。

本のタイトル:がん患者のためのインターネット活用術
ASIN: B072C2HCLG

以前このKindle本を購入しました。更新されているので最新版を再ダウンロードさせていただければと考えております。
新しいバージョンにアップデートすると、現在保存しているハイライト、ブックマーク、メモおよび読み終えた最後のページ番号が削除されることを、わたしは十分に理解しており、それらを了解したうえで最新版のダウンロードを申請します。

  • 「メール送信」ボタンをクリックします。

数時間後に返信メールがくれば、自動で最新版に更新されます。

 

2017年5月26日 (金)

今日の一冊(73)『ここまできた重粒子線がん治療』

ここまできた重粒子線がん治療 重粒子線治療だけではなく、一般の放射線治療と陽子線、重粒子線治療の違い、重粒子線治療の特徴が、これまで出版された書籍よりも、より詳しく書かれています。

患者としては混乱しやすい専門用語、

  • トモセラピー:強度変調放射線治療(IMRT)の装置名。直線加速器(リニアック)からの高エネルギーエックス線を使う
  • 定位放射線治療(SRT):コバルト60の放射線を物理的に線量を集中させる「高精度照射技術」を使った治療法。その専用装置が「ガンマナイフ」
  • サイバーナイフ:画像処理技術との融合で患者の呼吸に合わせて照射野を移動させる「動体追尾放射線治療」の装置名称
  • 呼吸同期照射、画像誘導放射線治療(IGRT)

など、開発の歴史と概略が解説されています。

重粒子線の特徴も詳細に書かれていますが、膵臓がん患者にとっては、膵癌の腫瘍内部は低酸素状態になっているために、通常の放射線では効果が限定的です。しかし、重粒子線は拡大ブラッグピークという現象もあって、膵癌の腫瘍細胞を効果的に死滅されることができるのです。

たくさんの患者さんたちのインタビューは、実際の治療を受けた患者ならではの感想、実態が分かるに違いありません。

『すい臓がんカフェ』でも講演された林さんのインタビューも載っています。「がんとの戦いは、とにかく情報収集。総括的に見て、情報を取って、優先順位を決める。それがすごく大事です。」との言葉は、余命1年を宣告されながらも、抗がん剤治療を拒否して重粒子線治療を選択した林さんならではの重い言葉です。

がんとの戦いは情報戦。情報が命を救い、人生を変えることもあるのです。

2017年5月24日 (水)

HBMの勧め

虎の門病院臨床腫瘍科 高野利実先生の著作『がんとともに自分らしく生きる』は以前に紹介しましたが、先生ご自身が著作とHBM(Human-Based Medicine)について書かれています。

市民のためのがん治療の会
Human-Based Medicine(HBM)とは『がんとともに、自分らしく生きる』

ここでは、HBM実践のための15箇条を紹介します。
    ① 医療は自分のものであると心得る
    ② 生老病死ときちんと向き合う
    ③ 自分の想い、価値観や大事にしていることを医療者や家族に伝える
    ④ 治療目標を明確にし、医療者や家族とも共有する
    ⑤ イメージに惑わされず、うまく情報の波に乗る
    ⑥ 最低限のエビデンスとEBMのルールを知る
    ⑦ リスクとベネフィットのバランスを考える
    ⑧ 自分にプラスとなる治療を受け、マイナスになる治療は受けない
    ⑨ 医学の進歩と限界を知る
    ⑩ 緩和ケアを積極的に活用する
    ⑪ 医療者や家族とよく語り合う
    ⑫ しんどいときは、まわりに頼る
    ⑬ がんとうまく長くつきあう
    ⑭ 希望を持って生きる
    ⑮ 自分なりの幸せをめざす

どれも大切なことですね。②はなかなか達観することは難しいにしても、いずれ訪れる「死」に対して、自分なりの価値観で整理しておくことです。私は良寛や老子など多くの先達に教えられました。

⑧も言うや易く行うは難し、でしょうか。副作用を我慢して最期の最期まで抗がん剤を打ち続ける。

がんであっても、自分なりの幸せを見つけ、充実した時間を過ごしたいものです。

2017年5月22日 (月)

Kindle本-出版しました

Hyosi

2017年第2版に改定しました。

やっと完成しました。
がん患者のためのインターネット活用術

最初にお断りを。
この本には治るための必殺技とか、「魔法の弾丸」のような代替療法、これでがんが必ず治る、というようなことは書いてありません。どうすれば悪徳な広告に騙されずに、信頼のおける情報に早くたどり着けるのか、集めた情報をどのように整理し活用するのかという、がんと闘うためのパソコンのスキルとノウハウを紹介した本です。私が10年間実行して、がんとの闘いに役立つと確信しているスキルを”惜しみなく”紹介しています。

Kindle端末を持っていなくても、パソコンやスマホで読むことができます。

続きを読む "Kindle本-出版しました" »

2017年5月 7日 (日)

GWはKindle本の出版準備で

GWも今日で終わり。国営ひたち海浜公園に行ったきりで、あとは家でごろごろ、でもなく、Kindle本の出版を目指して執筆に費やしていました。

来月で膵臓がんの手術後10年になるので、何か記念になることをしようと思い立ち、最初は闘病記を出版しようかと。でも、闘病記は売れない。闘病記の売れる条件というのは、『悲劇の花嫁』とか、主人公が亡くなって、こんなにがんばったけど最期は悲劇のヒロインで終わる。主人公は女性がよい。これでないと売れません。古稀に手が届くまで生き残った爺さんではダメなんです。

それで、ありそうで、なかった本

Hyosi_3

がん患者が、インターネットを活用してがんと闘うためのノウハウとスキルを詰め込んでいます。私がこの10年間、がんに関する情報を集めてきたスキルです。ほとんどはこのブログで紹介済みの内容ですが、インターネットの世界はすぐに情報が古くなることもあり、あちらこちらに分散している記事を見直して、書き加えたものです。

タイトルは『がん患者のためのインターネット活用術

「どうしてこんなに情報が早いのか?」とか、「こんな本をよく探してくるよなぁ」、「一日中ネットサーフィンでもやってるの?」と言われることがありますが、そんなことはありません。現役で仕事をしながらの闘病でしたから、ネットを徘徊する時間も多くは取れません。しかし、この本で紹介したスキルとツールを活用すれば、短時間で目当ての情報にたどり着けます。必要な情報は向こうからやってくるのです。情報の保存と活用もツールに任せています。しかも全て無料のサービスしか使っていません。

原稿も9割方できあがったが、なにしろKindle本の出版は敷居が高い。原稿書きと校正、表紙のデザインに図の挿入と配置、Amazonへのアップロードと価格の決定・・・。紙の本なら、原稿を渡せばあとは出版社がやってくれる作業を、全て自分でやらねばなりません。

なんとか5月中には完成して出版にこぎ着けたいと思います。ミリオンセラーは望んでいません。(あり得ないけど)

がんとの闘いは情報戦。情報戦にはそれなりの優れた武器が要るのです。

2017年5月 5日 (金)

今日の一冊(72)『ダメな統計学:悲惨なほど完全なる手引書』

ダメな統計学: 悲惨なほど完全なる手引書 統計学と聞いて、スルーしようと思った方、少し待ってください。この本には一切数式は出てきません。統計学がいかに誤って用いられているか、医者がどれほど統計学を知らないか、そのために間違った治療法を選んでいるかなど、がん患者にも大いに関係のあることが書かれています。

科学者の統計に対する理解がどれほど不足しているかを示す例として、本書『ダメな統計学:悲惨なほど完全なる手引書』では、医学研修生に対する調査があげられている。この調査では、研修生は医学分野でよく使われている統計手法に対してすら50%以下の正答率でしか回答することができなかったという。また、医学校教授陣でも正答率は75%未満だった。しかし何より統計教育の不備を端的に示しているのは、上記の統計に関する調査を作成した人も統計をきちんと理解できておらず、p値の意味を問う選択式問題に誤った選択肢しか回答として用意できていなかったことだ。

一般のニュースでも見聞きするようになったp値や「統計的に有意である」という言葉が、本当は何を意味するのか、というところから始めてくれる本書は、絶好の統計入門書である。統計学はいまやあらゆる科学や医学の土台となっている。がん医療はエビデンス主義であり、統計学抜きには語れないはずである。

ところで、本書に取りあげられている以下の質問に正しく答えられるでしょうか?

フィクシトルとソルヴィクスという二つの薬を試験しているとしよう。対象者はそれぞれの薬を服用した後、体力テストをした。単純な有意差検定で、テストの平均点を比較し、P=0.01を得た。当然二つのグループの平均には統計的有意差があることを示唆している。(慣例的にP<0.05を統計的に有意差があると考える)

以上の前提のもとで、下記の項目の正誤を判定してください。

  1. 帰無仮説(「平均に差がない」)が誤りであることを完全に示した。
  2. 帰無仮説が真である確率が1%ある。
  3. 対立仮説(「平均に差がある」)が正しいことを完全に示した。
  4. 対立仮説が正しい確率を導き出すことは可能である。
  5. 帰無仮説の棄却を決めた場合、その判断が間違っている確率が分かる。
  6. もし何度も実験を繰り返した場合、繰り返された実験の99%で優位な結果が得られるという意味で、信頼のおける実験結果が得られた。

6なんか、よく聞かされる解釈ですね。

「体力テスト」を「生存期間」や「生存率」に置き換えてもらえば、より身近に感じられるでしょう。

p値は非常にわかりづらい概念ですね。多くの医者も取り違えているから、議論がかみ合わない。p値を元にした統計的に有意差があるというエビデンスも、間違って解釈していると悲惨です。

上の項目は・・・全て× !間違っています。

2017年4月 9日 (日)

今日の一冊(71)『がん消滅の罠-完全寛解の謎』

【2017年・第15回『このミステリーがすごい!大賞』大賞受賞作】 がん消滅の罠 完全寛解の謎 (『このミス』大賞シリーズ) 第15回『このミステリーがすごい!大賞』の大賞受賞作です。作者の岩木一麻氏は、国立がん研究センター、放射線医学研究所を経て、現在は医療系出版社勤務とのことですから、医療には従事していないが、医学界の実情には精通しているようです。

日本がんセンターに勤める医師、夏目は、肺内に複数の転移が見られる肺がん患者を担当することになった。抗がん剤治療をしても、余命は半年程度と考えられ、生命保険会社から「リビングニーズ特約」の生前給付金を受け取った患者は、臨床試験中の新薬による治療を受ける。半年後にはがんが跡形もなく消え、再発もなく良好な経過をたどっていた。奇跡が起きたのか? だが、“奇跡”は立て続けに4例、起こっていた。夏目は、友人のがん研究者らとともに、この奇妙な「活人事件」の謎を追う--。

テーマの性格上、がんに関する専門用語がたくさん出てきますが、がん患者である身にはむしろ細々と説明されるよりは、よほどスッキリと理解できました。

抗がん剤や副作用を抑える治療の進歩も、最新の情報をしっかりと書かれています。一気に読みました。

余命宣告の半年を境にして、「リビングニーズ特約」が受け取れる受け取れないかが決まるのだから、医者も余命宣告には慎重になるようですね。膵臓がんのステージ4で肝臓に転移あり。こんな場合、余命は6~9ヶ月でしょうか。リビングニーズ特約が受け取れるかどうかの境目です。

作品の中で、免疫細胞療法などに批判的な夏目は「そういうインチキ療法に騙されて寿命を縮めたり、多額の金を巻き上げられたりした患者をたくさん知っているからな」と言う。同僚の羽島は「末期がんで延命を目的とした治療しか選択肢がない患者にも、希望や救いといったものが必要じゃないか」と反論する。

これなど、著名な腫瘍内科医がTwitterなどで言っているのが前者で、大腸がんの手術を得意とする外科医で、転移した胃がんになった西村元一医師が後者でしょうか。西村医師も治らない患者という立場になって、免疫療法もやり(効果が亡くて中止したが)、がん封じ寺や神社にお参りもしたと書かれている。希望は常に持つべきだし、必要でしょう。

膵臓がん患者にとっては切実な話ですね。転移があれば治ることはないのは抗がん剤もキノコやも同じでしょう。騙されているのかもと疑いながら、それにしか希望が見いだせないとしたら、それは騙されているのとは違う気がすると羽島は言う。

偽りの希望でもないよりはあった方が良いのか。難しい問題です。患者は誰でも「自分だけには奇跡が起きて欲しい」と願っているのだから。だから私は、インチキ療法をやっている方は批判しますが、それを取り入れている患者さんを批判するつもりはありません。「あなたが心底から信じられて、効果が実感できるのなら続けてみれば。」と言うだけです。

今の医者は余命宣告はしても「大丈夫ですよ。死にはしませんから」とは決して言ってくれない。

奇跡的治癒とはなにか―外科医が学んだ生還者たちの難病克服の秘訣 バーニー・シーゲルは『奇跡的治癒とはなにか―外科医が学んだ生還者たちの難病克服の秘訣』でこう述べている。

医者の中には「間違った希望」にまどわされるから、私に近づくな、という者も何人かいる。病気とつきあう上で、患者の心に「偽りの希望」などは存在しない、と私は言う。希望は統計などではなく生理的なものだ!

偽りの希望とか客観的な心配といった概念は医学用語から抹殺されるべきだ。それらの言葉は、医者も患者も駄目にする。

「偽りの希望」とは、医者が患者に統計が示すとおりになる必要はない、というだけのことなのだ。ある病で十人のうち九人が死ぬとして、十人が十人とも死ぬだろう、と言わなければ「偽りの希望」を広めていることになるというのか。

私の言いたいのは、誰もがその生き残りのひとりになれる、ということだ。患者の心の中では、希望は全て現実のことだから。

私が「大丈夫。死にやしませんよ。」と言っただけで、今日を生きている人たちもいる。

つまり、広い視野に立って自分の体の問題を見つめることだ。病気の回復だけが目的ではない。それよりももっと大切なことは、怖がらずに生き抜いて平和な生活をして究極の死をむかえることだ。そうすれば治癒への道も開ける。そして、人は誤った強がりーー人はどんな病気も治せ、死ぬこともないというーーからも開放されるのだ。

がんの完全寛解の謎ー遺伝子組み換え技術を用いて、がん細胞がアポトーシスを起こすようにし、それを・・・、ネタバレになるのでこれまでにしておきます。

より以前の記事一覧

がんの本-リンク

  • がん患者が選んだがんの本

サイト内検索

膵臓がんブログ・ランキング

膵臓癌 お勧めサイト

アマゾン:商品検索

がんの本「わたしの一押し」

サイト内検索
ココログ最強検索 by 暴想
無料ブログはココログ