書籍・雑誌

2018年1月 3日 (水)

今日の一冊(87)『科学知と人文知の接点』

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不死社会がやってくる

ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授の著書『ワーク・シフト』では、「2007年に先進国で生まれた子供たちの半数は100歳以上まで、日本の子供たちに至っては107歳まで生きることになります」と言われている。

その真意は別として、平均寿命が延びていることは確かだし、これからも伸び続けるに違いない。

人類の運命を大きく変えるのは、京都大学・山中伸弥教授の研究で注目を浴びているiPS細胞だ。

人のiPS細胞を細胞バンクに登録し、世界の研究者がそれをもとに病気の治療法を研究する。原因を解明したところで、患者の身体に健康な細胞を戻すことで、病気の治療に役立てられる。

それだけではない。iPS細胞を使い、老化そのものを食い止めるという驚きの研究も進んでいる。2016年に医学誌の権威『セル』に掲載された米・ソーク研究所の発表によると、老化した細胞に記録された情報をリセットすることで、細胞が「若返る」という。がんのように細胞が異常に分裂してがん化することなく、細胞を若いままに保つことができるようになるという。

医療技術が社会に及ぼす影響

がん患者にとってはまさに”夢の治療法”である。筋ジストロフィー患者が普通の生活を送れるようになる。遺伝子操作でダウン症の子どもが生まれなくなる。まさに科学の進歩によって個人が健康で長寿を得ることができる。

がんも、臓器ごとの治療から、遺伝子の変異箇所によっ効果のある免疫チェックポイント阻害薬が使えるようになる。今はまだ数パーセントの患者に効果があるだけだが、これもいずれはより多くの転移したり再発した患者にも効果が出るようになる。

個人としては癌も難病も治り、長く生きることができるのはありがたいに違いないが、しかし、超高齢者社会になってみんなが幸福なんだろうか。社会が持続できるのだろうか。

生殖細胞もつくれるようになっているが、本当にそれ(命)をつくっても良いのだろうか。

そうした倫理的問題は、誰がどのように答えを出すべきなのか。

命もつくれる、癌でも死なない

山中伸弥教授も、これほど急速に技術が進歩するとは予想できなかったので、戸惑っているという。目の前にいる難病の患者を救うべきなのはいうまでもないが、どこまで許されるのか。

遺伝的に特定の病気リスクが高い場合、若いうちに細胞バンクで自分の細胞を保管し、将来的に不調が起これば、その細胞を培養して置き換える。もしくは、発症する前にゲノム編集を行い、病気になるかもしれない遺伝子を修正しておく。このようなことも実現可能だ。

しかし、こうした治療は経済的に裕福な人たちだけが受けられるようになりはしないか。

科学知と人文知の接点』で、山中伸弥教授と島薗進氏の対談において、

高齢化で、平均寿命がどんどん延びてしまう恐れがある。この場合は、多くの人に比較的均等にそういう利益が及ぶ。利益なんだけれども、社会的には害悪になりかねないという話しです。一方で早い段階から新しい格差といいますか、人類を二分するようなことになってしまうんじゃないかという懸念が出されています。つまり、遺伝子レベルにいたるような医療技術で心身の能力などを、改善した人たちと、そうでない人たちが別れて、一つの人類という意識も失われてしまうんじゃないか。

と語っている。SFの世界ではなく、10年後にはそうした現実が目の前に迫っている。

癌でも死なない時代になって、死ぬ時期は自分で選ばなければならないとしたら、全員が150歳まで生きる社会が、本当に幸せな社会なんだろうか。

今から、こうした問題を社会全体で考えておくべきだろうというのが、お二人の考えです。難しい問題ですね。

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2017年12月24日 (日)

『がん免疫療法は本当に効かないのか?』サンデー毎日の記事を掲載

話題になっているサンデー毎日の山内喜美子氏の記事『がん免疫療法は本当に効かないのか?』ですが、購読できなかった方に朗報です。

瀬田クリニックのサイトに、サンデー毎日の許可を得たうえで、PDFファイルがアップされています。
リンク先はこちら↓

『サンデー毎日』に瀬田クリニック東京院長・後藤重則医師のインタビュー記事が掲載されました。

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ハマリョウさんのコメントも載っています。

 

エビデンス=P値という堅物の頭では、患者の命を助けることはできないのです。

標準治療は正しい! という主張は、命を助けることができない、という、少し調べれば、誰でもわかる現実を「正しい」という言葉で、煙に巻こうとしているわけです。
患者さんにとっては正しいかどうかなんてどうでもいいのです。
助かるのかどうか、元気になれるのかどうか、そこが要です。
少なくとも標準治療だけでは助からないのですから、どんなもので、試してみようという誰もが持つ、生き残ろうとする気持ちが、標準治療以外の治療を求めるので、大変、残念ながらあやしい治療もなくならないのです。

それにつけ込む怪しげなクリニックも存在するでしょうが、その境界を判断するのが難しいのです。

この記事に対する私の考えは、別に改めて。

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2017年12月 4日 (月)

今日の一冊(86)『最新放射線治療でがんに勝つ』

はっきり言って、宇都宮セントラルクリニックの宣伝本です。このクリニックは、放射線による画像診断を得意としてきたのですが、この冬にはサイバーナイフとトモセラピーを備えた「高精度放射線治療センター」が開設されるそうです。

役にたつ情報が載っているのなら、宣伝本だからダメとは言えません。

サイバーナイフとトモセラピーの違いや、トモシンセシス、ABVS、PEM、DCハイブリッド療法、BAK療法、ハイパーサーミアの欠点を改良したオンコサーミア(腫瘍温熱療法)などをわかりやすく解説しています。

「手術はできません」と言われたら、あとは抗がん剤しかないのか?がんの三大療法は、手術、放射線、抗がん剤であるが、治癒を望むことができるのは手術と放射線だけです。手術ができなくても放射線がある。

ところが、欧米では放射線治療を選ぶ患者は6割もいるのに、日本では3割以下である。これは胃がんの手術から発展してきた日本のがん治療の遺産だろう。がんの拠点病院でも、手術のできない患者に放射線治療の可能性を説明する医師は少ないと聞きます。

重粒子線や陽子線が注目されるが、他の放射線治療も日進月歩です。なかでもガンマナイフから進化したサイバーナイフとトモセラピーの治療機器の進化が著しい。

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サイバーナイフ:6センチ以下の初期のがんに有効。原発巣に再発した場合も有効。
トモセラピー:進行がん、再発・転移したがんにも有効

ともに膵臓がんにも保険適用(条件あり)です。

トモセラピーはアキュレイ社の登録商標で、IMRT(強度変調照射)の装置です。一本の放射線野の中で強い部分と弱い部分を混在させることができるので、正常細胞へのダメージがより少なくなります。トモセラピーは、ヘリカル回転照射モードなら、1回の治療で原発巣と転移巣への照射が可能です。膵癌が肝臓に多発したような場合にも1回の治療で照射することができます。

アブスコパル効果:放射線をがんに照射すると、がん細胞が死に、死んだがん細胞から免疫の刺激作用があるタンパクや、がん抗原などが放出される。その物質をマクロファージや樹状細胞が吸収し、腫瘍を特異的に攻撃する細胞障害性Tリンパ球を活性化させる。この細胞障害性Tリンパ球が遠隔のがん細胞も攻撃する。これがアブスコパル効果のメカニズムと考えられている。

DCハイブリッド療法:NKT細胞、NK細胞、ガンマ・デルタT細胞、キラーT細胞、ナイーブT細胞、ヘルパーT細胞、DC(樹状細胞)の七種を活性化する。治療費は300万円。

オンコサーミア(腫瘍温熱療法):放医研では再発食道がんの治療に用いている。13.56MHzの電磁波が、がん細胞の細胞膜だけに集中する特性を利用して、細胞膜の内外に温度差を生じさせて細胞膜を破壊する。がん細胞をアポトーシスに導く。

これって、細胞膜を破壊することでは光免疫療法に似ていますね。

オンコサーミアの詳しい説明はこちら

宇都宮セントラルクリニックでは、この他にライナス・ポーリング博士が発見したという「超高濃度ビタミンC点滴療法」も提供しています。がんには効果がないことが証明されているにもかかわらずです。

                 今日の一冊(82)『不老超寿』

しかし、免疫療法とモトセラピーを同じ医療機関で行えば「混合診療」になり、全ての治療が全額自費になるのではなかったか? この点、このクリニックではどのように処理しているのだろうか。

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2017年11月15日 (水)

シュレベールの箴言(10)

私たちの貴重な白血球を強化できるものはすべて、腫瘍の成長を拒むこともできる。

要するに、免疫細胞を刺激し、(食餌療法、運動、感情のコントロールによって)炎症と闘い、血管新生と闘うことで、がんが増殖できる環境をなくすることができる。


オプジーボのすごいところは、がん細胞を直接攻撃する薬ではなく、がんが免疫系にかけているブレーキを解除する。それによってブレーキが解除されて免疫系が本来もっている能力を発揮すれば、がん細胞を瞬く間に消失させることができることを証明した点にある。

いま話題の光(近赤外線)免疫療法でも、がん細胞が自分自身を守るために利用している制御性T細胞を破壊すれば、人間の免疫系が持っているすごい能力を使って、転移先のがん細胞ですらも消失させることができることが示されているのである。

AACR年次総会で発表された研究は小林博士らによるもう一つの知見に基づいている。「がん細胞がNIR-PIT( 近赤外線免疫療法 )に反応して破裂、壊死すると、壊死したがん細胞から細胞内の物質が細胞外へ放出される。すると近接する健康な免疫系がこの細胞残屑を「異物」として感知し、後続するがん破壊を助ける免疫応答を誘発する」という知見である。

「がん細胞を取り巻く微小環境にも、そのがん細胞を破壊する免疫細胞、つまりキラーT細胞が存在することが知られていますが、これらのキラーT細胞は、制御性T細胞(Treg)という他の免疫細胞によって抑制されています」と小林博士は説明する。

この免疫抑制細胞Tregを排除するため、Tregを標的とする抗体にIR700を接合し、この接合体を、健康な免疫系をもち、マウス大腸がん細胞あるいはマウス肺がん細胞を皮下に移植したマウスに注射した。その後、これらのがん細胞を近赤外線に曝露した結果、がん細胞微小環境から迅速かつ選択的にTregが除去され、1時間以内にがん細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)が急速に活性化し、1日以内にがん細胞が縮小し、マウスの生存が延長された。近赤外線に曝露しなかった臓器のTregは、当該抗体‐IR700接合体を注射しても影響を受けなかった。
(「海外医療情報リファレンス」より)

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(「第3回がん撲滅サミット」における小林氏の講演から)

この記事にもあるように、免疫システムがその力を発揮すれば”1日でがん細胞が消失する”こともあり得るのである。人間でも有名なライト氏の例がある。(長文ですがこちら

ライト氏の例ほどではないが、がんの奇跡的治癒、自然消失の例が少なからず報告されている。これらの症例も、何らかのきっかけによって人間の持っている免疫システムがフル稼働したのが原因ではないだろうか。

崖の向こうに落ちるのか、こちらに留まることができるのかを、最終的に決めるのはあなたの免疫力である。

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2017年11月 8日 (水)

シュレベールの箴言(9)

副作用の少ない自然の解決策があれば、私たちは体のなかの炎症を抑えることができる。自然の解決策とは、炎症を促進する毒素を生活環境から排除すること、がんに対抗できる食物を摂取すること、感情のバランスに配慮すること、運動不足を解消することである。

がん細胞は炎症作用を利用して増大する

炎症は、がんの進行に重大な役割を果たすが、多くの医師がそれに無関心であるため、身体の炎症をコントロールするための方法を勧めることはめったにありません。

代表的な炎症性サイトカインのひとつであるNF-kBは細胞増殖シグナルに関わっていますが、NF-kBの生成を阻害するだけで、がん細胞の大半を再びアポトーシス(細胞死)に追いやり、転移を防ぐことができます。がん細胞内のNF-kBの有害な作用を防ぐことができるかどうかが”生死を分ける問題”なのです。

NF-kBの生成を阻害する分子を含む”自然の解決策”とは、緑茶に含まれるカテキン(主としてエピガロカテキンガレート EGCG)、赤ワインに含まれるレスベラトロール、ターメリック(ウコン)を摂ることです。

特にターメリックの成分であるクルクミンほど、強力な抗炎症作用がある食物成分はほかにはありません。実験によると、クルクミンは、結腸がん、肝臓がん、胃がん、乳がん、卵巣がん等のがんの成長を抑制し、血管新生を抑制する効果もあり、さらにがん細胞を”アポトーシス(細胞の自殺)”に導く効果もあります。

ターメリックは、そのままではほとんど吸収されない

ただ、ターメリックはそのままではほとんど腸から吸収されません。しかし、少量の黒コショウといっしょに摂ると吸収効率が2000倍になります。インド人がカレー料理に黒コショウを使うのは経験的な知恵なのでしょうね。

京都大学の掛谷秀昭 薬学研究科教授、金井雅史 医学研究科特定准教授らの研究グループは、排泄されにくく、体内で有効成分に変わるクルクミンの合成物を合成し、クルクミンの有効成分を従来の1000倍に高めることに成功したと報じられています。

安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(CMG)の開発に成功

掛谷秀昭 薬学研究科教授、金井雅史 医学研究科特定准教授らの研究グループは、株式会社セラバイオファーマと共同で、ウコンに含まれるクルクミンの生体内代謝物に着目することで、安全性の高い水溶性プロドラッグ型クルクミン(CMG)の開発に成功しました。本薬剤は顕著な抗がん活性を持ちます。飲み薬としては吸収されづらいというクルクミン原末の問題点を克服した成果です。今後抗がん剤などとしての実用化が期待されます。

ウコンに含まれるポリフェノール化合物クルクミンはさまざまな生理作用が報告されており、がん、心臓病、アルツハイマーなどに関する基礎研究や臨床研究が行われています。しかし、クルクミン原末をそのまま摂取しても多くは腸で吸収されないため、血液には移行せず肝臓を含む各種臓器での顕著な効果を期待できません。そこで、クルクミンをより使いやすくするために、誘導体開発研究及びドラッグデリバリーシステム開発研究などが世界中でしのぎを削っています。しかし、未だ有効な薬剤及び手法は開発されていないのが現状です。

本研究グループは、クルクミンの生体内代謝物解析(メタボローム解析)の結果などから、クルクミンモノグルクロニド(CMG)がクルクミンのプロドラッグとして利用できることを発見しました。プロドラッグとは、生体内で代謝され活性代謝物となる薬剤です。
化学合成したCMGをラットに静脈投与した際に、これまでのクルクミン原体などの経口投与と比較して、クルクミンが極めて高い血中濃度を示すことを明らかにしました。さらに、ヒト結腸腺癌細胞を移植したマウスモデルにおいて、CMGは体重減少や肝障害などを伴うことなく、顕著な抗がん活性を示すことも明らかにしました。したがって、CMGは安全性の高い抗がん剤などとしての実用化が期待されます。

この研究成果が私たちの手元に届くのはまだ先のことですから、それまでは黒コショウの助けを借りことにしましょう。

  • 「感情のバランスに配慮する」→ストレスを低減する
  • 「運動不足を解消する」

に関しては、シュレベールは別の章を立てて詳細に述べているので、あらためて記事で紹介します。

吸収されやすいクルクミンとして下記のサプリメントもあります。

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2017年11月 6日 (月)

今日の一冊(85)『日米がん格差』

しばらく「積ん読」だったものをやっと読了することができました。

本書は米スタンフォード大学で医療政策部を設立し、医療ベンチマーク分析の第一人者として知られる医療経済学者・アキよしかわ氏が、医療ビッグデータに基づいて日米の医療を比較し、日米の「がん治療」を巡るさまざまな問題を考察している。また、日本の多くの病院の経営改善を指導して実績を上げている著者でもある。

「医療ベンチマーク」とは聞き慣れない言葉だが、「入院患者の平均在院日数」や「術後感染症の発症割合」「再入院・再手術の有無」などをアウトカムとして、他病院と比較してその病院の現状を分析する手法だと言えます。

この手法を使って日米の病院の「質のばらつき」を調査した結果、日本の病院は「ばらつき」が大きいことが分かったのです。

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「変動係数」とは

変動係数(Coefficient of Variation)は、標準偏差を平均値で割った値のことで、単位の異なるデータのばらつきや、平均値に対するデータとばらつきの関係を相対的に評価する際に用いる単位を持たない(=無次元の)数値です。「相対標準偏差」とも呼ばれます。

ざっくり言えば、ばらつきの程度を表した指標です。ですから、左に位置していることが「医療の質が悪い」ことにはなりません。あくまでもばらつきの大小です。

これをみると、医療費は日本がばらつきが小さい。国民皆保険制度があるのだから当然ですね。アメリカは同じ医療でも高額な病院があればそうでない病院もある。

それ以外のは指標は、例えば膵臓切除(Panc)をみても、術後の死亡率、合併症、救命の失敗、どれも日本の病院はばらつくが大きい。

われわれの実感としてもそうですね。膵臓がんの手術をどこでするかも「当たり外れが多い」というのが実感です。

アキ氏によると、アメリカの病院は、

(アメリカの)多くの学会では病院のガイドライン遵守率を調査し、公表しています。その結果、アメリカの患者は等しく最新の標準治療を受けることができるようになっているのです。一方で、日本にも専門分野ごとの学会があり、それぞれの学会で診療ガイドラインを出しています。しかし、それが遵守されているかといえば、遵守率の調査は行われておらず、結果も公表されていないためわかりません。日本では、病院のやり方、医師個人の判断や経験に左右され、ガイドラインが遵守徹底されているとはいいがたい現実があるのです。

キャンサーナビゲーション

アキ氏は、日本にも「キャンサーナビゲーション」制度が必要であると説きます。

これは現在、アメリカの医療現場で注目されているがん患者支援サービスのひとつです。ひと言でいうと、がんの闘病生活に必要な知識を有する専門家が、がん患者一人ひとりを個別にサポートする仕組みです。たとえば、低所得者層のがん患者が金銭的な問題から治療の継続を断念していた場合、キャンサーナビゲーションの担い手である「キャンサーナビゲーター(Cancer Navigator)」は患者の自宅を訪れてヒアリングし、本当に治療が困難か検討します。そのうえで、必要であれば医療の専門家、財務アドバイザー、地域の支援団体への橋渡しを行う――というようなサポートを行います。

ピア・サポーターや、実質的に機能しているとは言いがたい「がん相談支援センター」とは考え方そのものが異なっています。「がん相談支援センター」は患者が足を運ばなければ相談に応じてくれませんが、キャンサーナビゲーターは、患者一人ひとりに必ず付けることが義務づけられているのです。

日本では日本癌治療学会が行っている「認定がんナビゲーター制度」がキャンサーナビゲーターに近いもので、一般人でも参加することができるようです。

アキ氏は、大腸に腫瘍か見つかり(ステージ3b)、がん研有明病院で手術をするのですが、その入院中も「医療経済学者」の目でチェックをしています。そして、変動係数だけではない日本の病院の質の良さ、特に看護師の働きぶりと気遣いに対して、「外から見ていたときと患者になってからの視線からの違い」に気づくのでした。

病院スコープβ版

アキ氏らが運営する、患者が病院の「医療ベンチマーク」をチェックできるサイトを紹介されています。「病院スコープ β版」です。

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手術をするなら「症例数」の多い病院を選ぶことが鉄則ですね。「地域を見る」で東京都を例にすると、「がん研有明病院」が抜きんでています。その他の指標も参考になります。

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キャンサーナビゲーターは、がん拠点病院で研修を受けるが、治療法を提案したりすることはなく、あくまで患者自身を支えることに徹する。
だから、身につける知識は、患者やその家族を「誘導」しないという、支援者ならではの「話法」や「表現」から、心の悩みに対する向き合い方、さらには怪しい治療法などの情報が溢れかえるネット上での「信頼できるサイト」の見極め方など多岐にわたる。

「キャンサーナビゲーター」、日本でも欲しいですね。

病院間のばらつきは分かっても、病院内での「医師のばらつき」もありますね。こちらは「運次第」とも言えるし、患者同志の情報網を頼るか、これしかないですかね。

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2017年11月 2日 (木)

シュレベールの箴言(8)

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黒姫高原にて。ここにはミヒャエル・エンデの資料館があります。


炎症は、治癒のための新しい組織の形成を支えていると見せかけて、がんの成長を促す役回りをしていることもある。

生物の体が損傷すると、自動的に組織を修復するようにできている。修復の中心となるメカニズムが”炎症作用”である。

組織が損傷すると、それを探知した血小板が集まってくる。化学物質を分泌し、白血球に警告を与える。白血球はサイトカインなどの媒介物質を作りだし、組織の修復に取りかかる。傷口周辺の血管を広げて援軍の免疫細胞の通り道を確保する。血小板の周りの血液を凝固させて傷口をふさぐ。組織の細胞を増殖させるために必要な酸素や栄養を運ぶための細い血管を作る。

がん細胞はこれらのメカニズムを利用していることが明らかになっている。がん細胞は自ら炎症を引き起こして、これらのメカニズムを乗っ取り、サイトカインなどの化学物質を大量に作り始める。これらが肥料となって周りの細胞に侵食しやすくし、増殖をしていく。

また、炎症作用を利用して、がん細胞は周囲の免疫細胞を「武装解除」して、NK細胞を初めとする白血球の活力が弱まり、目の前で増殖していく腫瘍と闘おうとしなくなる。

炎症マーカーの測定によって、患者の今後の生存率が推測できる。

患者の危険度を知るための指標

  1. 最小限のリスク
    C反応性タンパク(CRP)が10mg/l未満 & アルブミンが35g/l以上
  2. 中ぐらいのリスク
    C反応性タンパク(CRP)が10mg/l以上 OR アルブミンが35g/l未満
  3. 高いリスク
    C反応性タンパク(CRP)が10mg/l以上 & アルブミンが35g/l未満

炎症を抑えるには、まずはストレスをなくすることです。

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2017年10月30日 (月)

シュレベールの箴言(7)

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通常の医療を受けながら、それと並行して合理的になし得る多くのことが存在する。それらは症状の改善、治療の効果、副作用の緩和、寛解期間の延長、そして再発リスクの減少に貢献しているのである。

シュレベールが言う”アンチキャンサー方式”(『がんに効く生活』の原題が「アンチキャンサー」である)をじっせんすることによって、19年間脳腫瘍が寛解状態にあったが、再発する。

それでは彼の試みはムダだったのか、という問いに対して、彼はこう答えている。

第一に、私自身の例はそれだけでは科学的実験にはならない。私の例は多数の中の一つの臨床例に過ぎない。
第二に、標準的であろうと実験的であろうと、あらゆる治療法は成功と失敗の両方の可能性を免れない。がんの奇跡的な治療法は存在しないし、100パーセントの成功はあり得ないのだ。

どんなことが起ころうとも、自分の健康のあらゆる面を最大限大切にしようとすること道を選んだことを、わたしは幸せに思うだろう。

なにより大切にしなければならないのは、健康であり、精神のバランスであり、他者との関係であり、そして私たちの地球である。

彼は『がんに効く生活』を実行していることで安心し、過剰なスケジュールで仕事をこなしたことを、再発したひとつの原因としてあげている。

シュレベールの脳腫瘍は、99%の人が6年以上生存しないがんである。それは膵臓がんも同じであろう。

かれが20年生存したあとで再発したからといって、『がんに効く生活』が間違っていることにはならない。

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2017年10月29日 (日)

がんの本 近刊紹介

がん患者が選んだがんの本」に次の新刊情報をアップしました。

<全てが私の推薦図書ということではありません。>

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2017年10月28日 (土)

今日の一冊(84)『末期がんでも元気に生きる』

実はまだ読んでもいない本(本来は既読の本しか紹介しない)ですが、気になる本です。

帯には「これほど元気な末期の膵臓がん患者を、私は見たことがない」と書かれており、国立がん研究センター名誉院長の垣添忠生氏が推薦しています。

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内容(「BOOK」データベースより)
経済学者が、ステージ4bの膵臓がんと言われて1年半が経過。抗がん剤治療を続けながら、変わらぬ生活を保つために。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
石/弘光
一橋大学名誉教授。1937年東京生まれ。一橋大学経済学部卒業。同大学院を経てその後、一橋大学経済学部助手、専任講師、助教授、教授、学長(1998‐2004年)。退職後、2007‐11年の間、放送大学の学長を務める。その間、政府税制調査会会長(2000‐06年)、財政制度等審議会委員、経済審議会委員、金融制度調査会委員などを歴任。経済学博士。専門は財政学。主な著書として、『財政構造の安定効果』(勁草書房、毎日エコノミスト賞)、『租税政策の効果』(東洋経済新報社日経・経済図書文化賞)、『財政改革の論理』(日本経済新聞社サントリー学芸賞)、『現代税制改革史』(東洋経済新報社租税資料館賞)など。2016年6月に、膵臓がんステージ4bとの診断を受け、治療を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ステージ4bで転移があるのでしょうが、それでも1年以上も元気な膵臓がん患者はけっして稀ではありません。どういう点が、元国立がん研究センター院長の垣添氏に「私は見たことがない」と言わせているのか、気になるではないですか。

著者の石弘光氏は、2010年に前立腺がんになったときの闘病記を書いておられます。二度目のがんということなのでしょう。しかもよりによって膵臓がん。

はて、がんをどのように考え、闘病しているのか、関心が沸いてきます。

さっそくAmazonでポチッとしました。

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