経済・政治・国際

2009年10月29日 (木)

若林暢チャリティーコンサート

大田文化の森で開催された『若林暢チャリティーコンサート』に行ってきた。アフガニスタンで女性のための『希望の学校』を運営しているNGO等への募金活動のため、大田区在住の若林さんが賛同してのコンサート。

ちょうど昨日の新聞でもカブールの国連宿泊施設への襲撃によって12人が死亡したと伝えられていた。戦火によって夫を失った女性たちが、物乞いや子供の労働に頼って生活をしている。そんな彼女たちに教育の機会を与えようと、日本在住のアフガニスタン人、スルタニさんらが活動している。

コンサートはベルリンフィルの弦楽メンバーにピアニストのアルバート・ロトさんを加えて、曲目はシューベルトのピアノ五重奏曲変ホ長調作品44、ブラームスのピアノ四重奏曲ト短調作品25。チェリストのクリストフ・イーゲルブリンクさんが楽譜を忘れて登壇し、開演が30分ほど遅くなるというハプニングもあった。

ベルリンフィルのチェリストの演奏を間近で観察できる機会は滅多にないと、最前列に席を取って、もっぱらチェロの指使いやボーイングを注視していたが、ppで演奏するときには右手の中指を弓から離して弾いていた。ときどき左手の位置を確認してから弾き始めていることが印象に残った。プロでもやはり左手の位置は確認しながらでないと心配なのかもしれない。私などはしょっちゅう確認しているが、いくらか安心した。

「平和」を言葉でしか知らないアフガニスタンの人たちに比べて、平和が日常となっている日本で、たかが「がん」のために悩んだり闘ったりしているのが申し訳ないような、戦火の国民から見ると夢物語のような医療費をかけて治療をしているにもかかわらず、満足できないがん難民が多数いることが、おかしなことのように思われてくる。わずかに数十円の抗生物質がないためにバタバタと亡くなっていくアフリカの子供たち。ユネスコの新聞広告を見るたびに怒りがこみ上げてくるが、5分も経つとそんなことはすっかり忘れている自分にも唖然とする。

免疫療法だ、新しい抗がん剤だと、つぎつぎに話題が出てくるが、いったいいくらの治療費がかかるのか。最終的には健康保険が適用になるにしても、その負担は国民全員で負うことになる。一人のがんの治療費に何億円もかけることがまっとうなことだとはとても思えない。ほどほどの治療にして、あとはQOLを維持できる方法を考えた方が、まともな人間の考え方のような気がする。

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2009年8月26日 (水)

各政党のマニフェストで「がん対策」は?

投票日は帰省する予定をなので、期日前投票に行ってきました。投票所の入口に行列ができるほどのたくさんの人でした。これまでの選挙にはない熱気を感じます。

がん患者としては各政党の「がん政策」が気になるところです。マニフェストを調べて、がんに関する部分を抜き出してみました。

二人に一人ががんになるという時代ですが、政党の認識は総じて危機感がないように感じます。がん難民がなぜ増えるのか、経済的負担への対策は、など具体策はなきに等しいです。「がんと診断されたら、身体障害者手帳を交付する」などという政党があっても良さそうに思うのですが。そうすればずいぶんと経済的に助かるに違いない。財源はどうするかですか? 軍事費を削減すればよい。オバマは軍事費削減を打ち出しています。

自由民主党

難病対策、肝炎対策、がん対策の充実
難病の方々の医療費負担を軽減するため、助勢の対象(現在45疾患)に緊要性の高い疾患(11疾患その他)を追加するなどの難病患者の医療費助成、難病の診断治療方法の研究開発を進める等の難病研究拡充等、難病対策を充実させる。国内最大の感染症である肝炎について、肝炎の早期発見、早期治療、治療水準を向上させるため、「肝炎対策基本法」を制定し、B型、C型肝炎への医療費助成の拡大・充実を含めた総合的な肝炎対策に取り組む。わが国の死因の第一位となっている「がん」についても、検診、予防ワクチン、放射線療法や化学療法、緩和ケア等のがん医療の充実や均てん化を行うとともに、患者の立場に立ったがん対策を充実させる。

抽象的で総花的。「均てん化」などという難しい言葉を使うなんて、国民に理解してもらおうという姿勢がない。なにやら分からんが、やってくれそうだという雰囲気を作りたいのだろう。官僚的文章の典型。がん対策基本法にも触れていない。「肝炎対策基本法」なんて、政権政党なのだから、これまでにどうしてやれなかったのか。そんな政党が今後も実行できるのか疑問だろう。

均てん化(がん医療の)
均霑化(生物がひとしく雨露の恵みにうるおうように、の意)。全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう、医療技術等の格差の是正を図ること、だそうです。


民主党

がん対策
乳がんや子宮頸がん、大腸がん、肺がん、胃がんなど有効性が高いがん検診の受診率を大幅に向上させるよう、受診しやすい体制を整備します。また、がん予防に有効なワクチンの開発・接種の推進、禁煙対策の徹底化等、最新のがん関連情報の提供や相談支援体制などを充実させます。がん患者や家族も加わった 「がん対策推進協議会」の運営で「がん対策推進基本計画」が着実に推進されるよう取り組みます。がん登録の法制化を検討します。

地域がん診療拠点病院では国立がんセンターと協力し、化学療法専門医・放射線治療専門医を養成します。

早期発見早期治療がメインということか。子宮頸がんを想定しているのか、予防ワクチンに触れている。がん登録制度の法制化も「検討します」であって、「実行します」ではない。

公明党

がん対策
基本計画の個別目標の中間報告を実施
●がん対策推進基本計画の5年後の見直し(2012 年度)を前に、2009 年度末に中間報告を義務付け、がん検診率50%以上など、個別目標を達成させます。

拠点病院の機能を強化
●がん診療連携拠点病院の機能強化を進め、がん治療の地域格差を是正し、全国どこでも最適ながん治療を受けられる体制を整備します。

がん治療を選択できる社会へ
●がん治療の柱である手術、放射線治療、化学療法のうち、整備が遅れている放射線・化学療法の普及を図り、専門医を育成します。

がん相談業務と情報発信、普及啓発を拡充
●病院選びや治療方針、がんに関する不安や悩みを抱える患者や家族を支援するため、がん相談支援センターの相談業務の拡大とともに、がん治療情報の発信を拡充します。がんを広く国民に知ってもらう普及啓発活動も促進します。

がん対策予算を拡充
●がん対策推進基本計画にうたわれている個別目標を達成させるため、がん対策予算を拡充します。また、がん検診を支援するための地方交付税をさらに充実させます。

がんの痛みをとる緩和ケアを推進
●治療の初期段階から、がんの痛みをとる緩和ケアを受けられるようにするため、5年以
内に、がんを担当するすべての医師への緩和ケアの研修を強力に推進します。

セカンドオピニオンの体制の整備
●患者自らが適切な治療法を選択できるよう、主治医に遠慮せず、気軽にセカンドオピニ
オン(別の専門医の診断)を受けられる体制を整備します。

学校におけるがん教育の見直しと教科書や副読本を充実
●小・中・高校生に対するがん教育を見直し、教科書の内容充実や副読本の配布を促進します。生活習慣との関わりなどを知ってもらい、がん予防を促進させます。

がん検診の充実
●無料クーポン事業でがん検診受診率の向上を図るとともに、前立腺がんなど高齢化によって増加している男性特有のがん検診の普及を図ります。また、2年に1回のがん検診の無料化を図り、受診率を向上させます。

女性のがん検診の充実
●女性特有の子宮頸(けい)がん、乳がん検診の受診率の向上を図るため無料クーポン券、検診手帳などの事業を継続します。また乳がん検診の精度向上のため、マンモグラフィー検診に加えて超音波(エコー)検診の導入・併用を進めるとともに、読影医の養成・確保など検診体制の充実・強化を図ります。

子宮頸がん予防ワクチンの早期承認・公費助成の導入
●若い女性に急増する子宮頸がんの征圧へ、予防ワクチンの早期承認とともに、ワクチン
接種に対する公費助成の導入を推進します。

がん研究・開発等の推進
●免疫療法・抗がん剤・粒子線治療など新たな治療方法・治療薬の研究・開発を推進する
とともに、新たな医薬品等の承認審査の迅速化と国内での利用普及を図ります。
また、禁煙対策の推進など予防対策を強力に進め、がん罹(り)患率や死亡率の低下を図
ります。

「がん治療を選択できる社会」と書いてあるのでてっきり「混合医療の解禁」かと思ったが、放射線・抗がん剤の普及が遅れている、と。どうもピント外れな政策だ。セカンドオピニオンについても同様。しかし、項目は多く、内容はともかく説明はわかりやすいと思う。

がん検診への国庫補助を廃止した公明党が、無料クーポンでがん検診の受診率を向上させると主張するのですか? 自分のとった政策を反省することが先ではないだろうか。

社民党

がん対策、肝炎総合対策、難病対策に取り組みます

○がんの予防と早期発見の推進、がん検診の質の向上、がん医療の均てん化の促進に取り組みます。専門的な知識や技能を有する医師等の育成、医療機関の整備を推進します。
○がん対策基本法に基づいて制定された「がん対策推進基本計画」を着実に実行します。

○薬害肝炎感染の拡大が国の責任であることを明確にし、全国的な肝炎治療体制の整備と医療費助成や治療中の生活支援を柱とする総合的な肝炎患者支援法を制定します。
○難病の調査研究費を増やし、特定疾患の対象を拡大します。難病患者の治療の確保、負担軽減、療養環境の向上の観点から難病対策基本法をつくります。

がんに関しては最初の2点だけ。早期発見と予防。がん対策基本法の実行。混合診療の解禁には反対。

日本共産党

〔がん対策〕
日本国民の死因の第1 位である、がんの予防・治療には、国が総合的な対策をすすめることが必要です。ところが、政府・与党は、窓口負担増、保険証とりあげなど、がんの早期治療に逆行する施策をとりつづけてきました。自民党政権が、がん検診にたいする国庫補助を廃止したために、各地で、がん検診の有料化や対象者選別、検診内容の劣悪化などの事態が起こっています。
医療崩壊が進行するもと、がんの治療・予防の地域格差が深刻な問題となっています。がん対策基本法の主旨にのっとり、どこにいても必要な治療・検査を受けられる医療体制の整備が必要です。国の責任で、専門医の配置や専門医療機関の設置をすすめ、所得や地域にかかわらず高度な治療・検査が受けられる体制を確立します。未承認抗がん剤の治験の迅速化とすみやかな保険適用、研究予算の抜本増、専門医の育成、がん検診への国の支援の復活など、総合的がん対策を推進します。

政党の中で唯一これまでのがん政策を批判した上で、対策を提示している。経済的負担の問題などはここでは触れられていないが、医療政策全体の中で詳細に政策が述べられている。混合診療の解禁には反対。

改革クラブ

お年寄りの健康づくりや難病対策を推進します。
世界一の長寿国である日本で、お年寄りが一日でも長く健康な状態で暮らせるよう
に、健康づくり施策を進めます。
また、新型インフルエンザ対策、難病対策、がん対策、肝炎対策等、国民の健康に
関する問題にきめ細かく対応します。
今あるものの活用はすべての分野に共通ですが、例えば自治体や企業による健康診
断を受ける人は少なく、受診をしていただくよう告知していきます。

コメントに値しない。

国民新党・みんなの党・新党日本

「がん」についての個別政策はない。

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2009年8月20日 (木)

最近の驚いたこと三題

驚いたこと その一

ドクター中松氏が幸福実現党の大川隆法氏とツーショットでポスターになっています。立候補しているのかな?それは知りませんが、彼の『ミサイルUターン技術』というのがすごいですね。私は選挙目当てのブラックユーモアかと思っていたのですが、本人は本気らしく、『バカと天才は紙二重-ミサイルUターン発想法』という本まで出版しているようです。
すでに発明が終わっている技術かと思いきや、これからだという。ミサイルの制御システムに外から電波を飛ばして方向を180°転換し、北朝鮮に向かわせようという「発明」らしい。

日本が導入しようとしているミサイル迎撃ミサイル構想には何兆円もかけようとしているが、この発明があればそれが不要になる。その分を老人医療費・母子加算・障害者の自立支援法など、小泉改革で痛めつけられている弱者に回せる。防衛予算が削減でき、消費税の増税も不要になる。アメリカと北朝鮮の両方に売れば、ミサイルによる核攻撃が無力になるし、すべての核保有国が核の廃棄を行なうだろう。核廃絶を誓っているオバマ大統領も大歓迎に違いない。ドクター中松氏はアメリカの名誉市民としての栄誉を授けられるだろう。いや、ノーベル平和賞だって確実だ。IBMの発明したフロッピーディスクを自分の発明だといっている人物です。ご自分が発明された「ぴょんぴょんシューズ」を履いて飛行機に乗ろうとして頭をぶつけたそうですが、その後遺症が残っているのでしょうか。

驚いたこと その二

この幸福実現党と共闘を宣言したのが、小泉チルドレン、次期自民党総裁候補ともいわれた、東京10区から出馬されているあの方です。予想される自民党の負け戦に慌てたのか、藁をも掴みたい心境になったのでしょうか。共闘相手と一緒に街頭演説を始めたのですが、相手が「北朝鮮にレンジャー部隊を送り込み、金正日を拘束して東京で裁判にかける」と演説し、さらに「ミサイルUターン技術に○○先生もご理解を示されています」と演説したものですから、この女史は慌てて車に乗って立ち去ってしまったそうです。

幸福の科学と創価学会の仲の悪さは周知の通りですが、この女史はそれを知らなかったのでしょうか。創価学会票が逃げていくことを考えなかったようです。落ち目になれば醜態をさらす、どこにでも良くあることです。

小泉さんは「自民党とぶっつぶす!」と言われましたが、本当に彼は自民党をぶっ潰すことをされたようです。80円切手を貼れば日本全国どこへでも届く郵便、しかも赤字でもない郵政公社を「郵政改革」するという錦の御旗に熱狂した国民がいたことを忘れてはならないでしょう。いままた「官僚政治の打破」という馬鹿の一つ覚えのように、マスコミが騒いでいます。今の悪政は変えなければなりませんが、やってくる新しい政治に対して、よく目をこらして監視しないと、単に政権が変わっただけで、暮らしが楽になるとは限りません。

ひとつの「悪役」を十字架に架けて、熱狂的な大衆の支持で政治を動かしていく。この手の手法に騙され浮かれた人々が、ヒットラーによる悪夢を見たことを、もう忘れかけているようです。

驚いたこと その三

帯津良一氏が新しい本を出しました。『帯津良一のホメオパシー療法  こころ、からだ、魂に響く』という題名です。彼のがんに対する考え方には共感する部分が多Wshot200020 く、がんになったら真っ先に読んでおくべき本として彼の本を挙げたことがありました。

しかし、この出版物を見てから考え込んでしまいました。(読んでいないし、読む気にもなりませんが)

ホメオパシーとは、「水が記憶する」という例の江本勝の『水からの伝言』と同類です。希釈を繰り返して10^60というアボガドロ数を遙かに超える希釈率、一個の分子さえも残らないようなRemedyと言われる偽薬にはプラシーボ程度の効果しかないと証明されているにもかかわらず、帯津先生はどこから道を誤ったのでしょうか。そもそも最初からこのような傾向の持ち主だったのでしょうか。だとすると私の不明の致すところです。

Amazonで「帯津良一」で検索すると165件の本がヒットしました。監修したものもありますから、全部が著作ではないにしても、かの安保徹先生を遙かにしのぐ出版数ですね。代替医療なら何にでも、ありとあらゆる分野の著作があり、さながら代替医療のデパートです。

機会があればこの本を読んでみますが、しかし、ホメオパシー療法ですか?? 帯津先生のこれまでの評価が急落してしまいそうです。

対象を常に善か悪か、二者択一的に考えるのは日本人の悪い癖です。人はよい部分もあれば、ときには間違えることもある。動的で複雑な存在です。 この本だけで彼のこれまでの業績を評価することは間違ったこと・・・とは分かっているのですが。

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2009年4月28日 (火)

豚インフルエンザはパンデミックになるか

豚インフルエンザのニュースが増えています。Google Health Map で表示すると、感染が増Swine_flu えている(オレンジ)マークが世界地図に表示されます。世界にはこんなにたくさんの伝染病が、今現在流行しているのかと驚きます。(感染箇所ではなく、報道がされた場所ということです)「Swine flu H1N1」をダブルクリックすると、豚インフルエンザの感染(報道)地域のみが表示されます。

患者数を表示したGoogleマップがこちらにアップされました。

辺見庸が『しのびよる破局-生体の悲鳴が聞こえるか』で、現在の状況を、金融恐慌・地球温暖化・新型インフルエンザなど、外部世界の崩壊としてとらえ、同時に人間の内面の崩壊という異質の崩壊が同時進行する、いまだかってない「パンデミック(感染爆発)」としてとらえています。

昔日との相違はまさに
悪の核(コア)をそれと指ししめすことの
できないことなのかもしれない
どうやら資本が深くかかわるらしい
〝原発悪〟が
ほうぼうに遠隔転移してすべての人のこころに
まんべんなく散りひろがった状態が
いまという時代の
手におえない病症ではないのか

カミュの『ペスト』を引用して、行政やマスコミがオランの町で起きていることを具体41aal4qczjl_ss500_的、詳細に報じないでペストの拡大の危機を覆い隠してしまう。人々は現実に起きていることの真の重大さに気づかず、いずれは治まるさと、日々の生活に追われて楽観的に生きている。私たちも現に、アフガニスタンや世界の方々で飢餓や戦争で毎日たくさんの人が死んでいくニュースを見ながら、楽しく団欒の食卓を囲んでいる。

「資本」に倫理を要求しても無駄なことはマルクス以来周知のことですが、「資本」の象徴的存在「資本家」にも倫理は求めることができなくなった。最近のニュースで驚いたのは、破綻したSFCG(旧商工ファンド)の大島健伸元社長が、破産前に1240億円の会社資産を親族会社に安値で売却しており、月額2000万円の役員報酬(これだって十分多すぎる)を破産前に9700万円(年額ではなく月額!)に引き上げていた。さらにその他の役員の報酬は一律30万円だったという。漢字能力検定協会の理事長親子も同じだが、これが例外的な事件でないことがパンデミックという所以でしょう。こんなニュースを見ると、人間の内面にパンデミックが起きつつあることは確かなようです。

辺見庸は、単に景気が回復するとか、経済が元どおりに繁栄すればいいのではなく、人間の生き方を根本から問い直さなくてはいけないと言っている。エンデも「生き方を根源から問い直すべき」と『エンデの遺言』で言っているのです。

私の癌も、地球温暖化も、豚インフルエンザも、秋葉原事件も、根源では繋がっている。それは「生き方」を問い直されていう意味においてです。

パンデミックを予想した人も何人かいます。(もっとも豚インフルエンザがパンデミックになるかどうかはまだわからないが・・・)
リンパ球バンク株式会社社長、 藤井真則(ふじい・まさのり)氏のブログ。藤井氏は昨年の大晦日と今年の1月1日のブログで

パンデミックフルー発生確率は、2010年辺りから2012年にかけてが、最大の山場を迎えると読んでおりますが、2009年中に発生しない保証はありません。 これがくると、世界同時戒厳令状態となりますので、自力で、食料や水を確保できない人は生きる術がないほど、過酷な状況を迎えるかもしれません。 ウィルスそのものも脅威ですが、電気、水道、ネット、携帯、水、食料、医療、すべてのインフラが止まると、果たして、現代人は、自活して生きていけるでしょうか。

と書かれています。このブログ、免疫療法のことを詳しく書いています。一般の研究者や学者が書いた免疫の本よりはよほどわかりやすくて、免疫に関する私たちの誤った解釈を正してくれます。

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2009年4月18日 (土)

『エンデの島』

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権現堂堤の桜(7)


「・・・・がんばるのは美徳ではないと?」
「いちがいには否定しませんよ。でも、戦争のときも経済発展のときも、国民はがんばるのがいいことだと信じていたのです。そして一枚岩になって団結し、異分子を排除した。でも一枚岩は脆いものです。多くの人は、こんなことをやっていては駄目だ、戦争はもう負けだ、バブルはいずれ崩壊するとわかっていたと思いますよ。でも、だからといって方針転換はできず、がんばりつづけた。決定的に破滅するまで・・・・。もし、がんばることを放棄していたならば、東京大空襲や沖縄や広島や長崎の悲劇は避けられた。あやまちは繰り返しませんというが、そのあやまちとは戦争をしたことだけではなく、がんばりつづけたことなのです。」

これは高任和夫の小説『エンデの島』の一節である。「エンデ」とはもちろんミPhotoヒャエル・エンデ、『モモ』や『はてしない物語』の作者である。小説では伊豆諸島の架空の島「奥ノ霧島」を舞台に、エンデが描いた理想郷とその活動を支えている人物たちが描かれている。

「パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、まったく異なった種類のお金である」。NHKで放送されたドキュメンタリー「エンデの遺言--根源からお金を問う」のなかのエンデの言葉である。エンデは、問題の根源はお金にある、なかんずく利子というものが経済を間違った方向に誘導し、私たちの生活を苦しめていると考えていた。そこで例の「キリストが生まれたとき、1オンスを5%の複利で銀行に預けると・・・2000年には・・・太陽4個分の重さの金塊」が得られるという話しに繋がってくる。<こちらにリンク

『モモ』のなかには「時間貯蓄銀行」の灰色の男たちた登場するが、エンデは時間のことではなく、お金のことを示唆しているのだ。灰色の男たちは、人々から時間を奪おうとする時間泥棒で、「時間を節約して銀行に預ければ、利子が利子を生んで、人生の何十倍もの時間を持てるようになる」と言う。彼らの誘惑にのせられた人々は、余裕のない生活に追い立てられて人生の意味までも失ってしまう。仕事はぜんぜん楽しくないばかりか、成果・効率で、過労死や年間3万人以上もの自殺者が十数年間連続している。昔からの祭りは廃止、商店街は郊外の大規模店に押しつぶされてシャッター通りに、人々はいつもくたびれて怒りっぽい顔。とげとげしい目つきで、わずかな余暇をムダなくと、せわしなく遊ぶようになる・・・・。私たちには、思い当たることばかりではないか。

人類は細菌に対しては抗生物質などを開発し、感染症との闘いにおいてはほとんど勝利したに違いないが、現在はむしろストレスを原因とする心身症が病気の大部分を占めており、我々団塊の世代が老年になり、さらに医療費が増大することは自然の成り行きだ。

利子や株による配当が経済を混乱に陥れている。まさに『しっぽが頭を振り回す』ような今の経済危機は起こるべくして起きたのであり、我々はエンデの警鐘を無視したツケを払わせられようとしている。お金の節約、時間の節約は将来のためになるのだと私たちは信じ込まされてきたが、ほんとうはお金と時間の消費の仕方も、節約の仕方もまちがっていたのではないか。

私たち人類のからだをコントロールしているソフトウェアは石器時代のままである。つまり、セリエが『現代社会とストレス』でいう「闘争か逃走か」反応だ。しかし、ストレスが生じたときのこの反応が、慢性的に長期間にわたって続いているのが私たちの社会である。そこでさまざまな心身症が起きる。癌の発生も、原因はいろいろだが、ストレスがその引き金になっていることはまちがいないと言われている。エンデが指摘した逆立ちした経済社会が、自殺者のみならず、癌患者をも増やしているにちがいない。

エンデは、貨幣の機能を交換価値の尺度と交換の媒介に限定し(つまり貨幣の保蔵機能をなくし)、新しい経済を取り戻すことを訴える。それを現実化したものが”地域通貨”であり、現に国内でもいくつの地域通過が発行されている。『奥ノ霧島』の舞台でも地域通貨オッキイを軸に島の経済と生活が回ってゆく。原則無利子の島民への貸付けである。そのお金で、高齢者が安心して生涯を終えられる医療と介護の仕組み、全国から患者が集まってくるという大きな総合病院、食べ物とエネルギー(風車と地熱発電)を島内で自給する工夫。内地の大規模店やホテルが島を支配するのを制限する条例づくりなど。冒頭に引用したのは、この総合病院の村田院長の言葉である。

『エンデの島』を読んで、井上ひさしの『吉里吉里人』を思いだしました。

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2009年1月27日 (火)

インターネット落語&アホウ実行中

Photo

            『宇宙に繋がる』
私の細胞の一つひとつが、この宇宙とリズムを取り、エネルギーを交換し、身体の中の悪いものすべてを吸収してくれます。


笑いという心の作用、あるいは脳の働きが、免疫機能を高めてガンの治癒に有効だということはカズンズの「笑いの治癒力」を初めとして多くの書物に書かれている。

かといって、会社や自宅ではなかなか大笑いをするということも難しい。だいたいが笑いたくなる材料が乏しい。最近のテレビのお笑い番組なんかを観ていても、どうして出演者があんなにゲラゲラと笑うことができるのか、不思議に思うだけである。下品な笑いとは何か?を知りたければテレビのお笑い番組を見ればよい。

落語なんかは良さそうだが、新宿の末廣亭にいったのは、学生時分で、今の妻と交際していた頃だから、もう30年以上も行っていないことになるなぁ。一時は落ち込んだ落語人気だが、このところまた復活してきたようです。

おいそれと寄席に足を運べないのなら、社団法人 落語協会のホームページで「インターネット落語会」を観ることができます。1月の下席は、「通信簿」 三遊亭 天どん、 「権助魚」 三遊亭 歌太郎、 「極道のバイト達」 三遊亭 丈二の3人。前座は「天どん」さんですか、師匠は罪な名前を付けるものですね。真打ちの三遊亭 丈二の「極道のバイト達」には、久しぶりに大いに笑わせていただきました。

おかげで、今日は免疫力が5%アップしたかなぁ?

まだ笑い足りないという方は、次のYouTube画像をご覧ください。麻生さんの国会答弁を聞いているだけで笑えますが、これは絶対におすすめですよ! 抱腹絶倒、リンパ球が大量に増えることを請合います。

「兵庫のおじさん 未曾有うの危機!」

 

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2008年12月31日 (水)

今年の締めくくりと来年の予想

このブログも開設以来35000のカウントになりました。一日平均で300人、多いときにSdim0122 は600人の方に閲覧していただくようになりました。膵臓がんは年間で約2万人の新たな患者さんが生じて、年間で2万人の同じ数の患者さんが死亡しております。癌の中でもそれだけ厳しい膵臓がんですが、多くの患者さんがあきらめずに何か手立てはないかとインターネット上で情報を集めているのです。

そんな癌患者さんに、私の経験や治療に関して考えてきたこと、やってきたこと、あるいは生きるとはどういうことか、癌を得てこれからの人生をどのように過ごそうとしているのかなど、悩み迷い右往左往しながらの私のサバイバーへの旅日記ですが、少しでも参考になっていただけたらこんなに嬉しいことはありません。

来年はどのような年になるのでしょうか。自分に関しては再発・転移をすることなく、桜が見られて、61歳の誕生日を迎え、お盆には父母の供養ができて、秋には日本のきれいな紅葉を写し撮ることができ、そしてまた正月を迎えることができるだろうか。そうしなければならないと覚悟を新たにしています。

日本と世界はどうなっているのでしょうか。Sdim0097

世間で「新自由主義経済」がまだ有効で、「市場に任せておけばすべて はうまくいく」と思われていた今年の1月以来、このブログでは時折それへの批判を書き続けてきた。アメリカのサブプライムローンの破綻、アメリカ式の金融経済の破綻が、今では誰の目にも明らかになってきた。「公から民へ」のかけ声の下、教育、医療など公共的な部門に「資本の論理」を持ち込んで、己のみ利益を上げようとし続けてきた大資本が作った商品を買ってくれるべき購買層がいなくなってしまった。作った商品を買う中産階級がいなくなれば資本主義経済が成り立たなくなるという、あまりにも単純で、冷酷な事実を前にしては、キヤノンの御手洗やオリックスの宮内、トヨタの奥田らは、単に欲深いだけの人物であったということだ。

「公から民へ」「市場は間違いを犯さない」と言ってきたその当事者が、アメリカ政府に対して緊急融資の無心をし、ビッグスリーは実質的に国有化され、社会主義経済のようになってきた。

ここで来年を大胆に予想してみよう。

  • ドルの基軸通貨体制は終わる。ドルが暴落して80年前の大恐慌以上の超巨大恐慌がくる
  • ドルも円も、すべての紙幣が紙くずとなり、もちろん株券も紙くず同然となる
  • ユーロ、中国元、円の多重的な基軸通貨体制になる。日経新聞の為替レート欄が、円・ドルレートから、円・人民元レート表示に代わる。
  • アメリカに代わって中国が世界経済の牽引車となってくる。それには時間がかかるのでその間は世界的に悲惨な状況が続く。
  • 新自由主義経済とは一線を画してきて、力を付けつつある中南米諸国が台頭してくる
  • 日本は9月まで総選挙が行われず、自民党と民主党の国民を無視した党利党略のために、世界経済の大転換期に有効な手を打てないで、世界恐慌のもっとも大きな影響を被った国となる。
  • オバマ大統領は、チェンジを実行に移そうとするが、産軍共同体の妨害に遭い思うに任せない。そのため国民の支持が離れようとする。
  • 400発の核弾頭を保有するイスラエルが、いくつかの核弾頭を中東諸国の主要都市とロシアに向けて打ちこみ、第3次世界大戦の危機になる。戦争が恐慌を救う唯一の手段だと考えた産軍共同体の仕掛けた謀略に、世界の世論が傾いたためである。
  • オバマ大統領が暗殺される。

オバマ大統領の暗殺とイスラエルの核弾頭発射は、あって欲しくはないが、相当の確率で起きるかもしれないと思っている。80年前の大恐慌がナチスとヒットラーを生んだように。

新自由主義経済の破綻がこれほどまでに明らかになったのに、日本の政府は未だに気づいていない。米軍基地の辺野古への移転、グアムへの海兵隊の移転に税金をつぎ込もうとしている。アメリカはもう日本の面倒など見ている余裕はなくなるというのに、未だにしっぽを振って10兆円もIMFに差し出したあげくに、ブッシュに会ってももらえなかったピエロのようなアホウ総理大臣、徳川幕府最後の将軍ならむ、自由民主党最後の総裁。

「癌は心優しいメッセージ」であり、これまでのあなたの生活が間違っていたんだよ。これまでの生き方を180度転換しない限り、癌細胞を切り取り、抗がん剤でやっつけることができても、身体の免疫力が弱ったままでは本当に治ったことにはなりません、というメッセージを告げているのだ。

世界経済も同じ。今の恐慌寸前の状況は、これまでの方法が間違っていたんだよ。180度考えを変えなさい、というメッセージでしょう。今気づいたのならまだ間に合うかもしれない。「チェンジ」が必要なのは世界全体です。

「生かされるままに生き」てきたこの1年。
みなさん、よいお年をお迎えください。

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2008年12月14日 (日)

エンデと資本論とカムイ伝

1月13日のこのブログ「クロードアップ現在」2008年 新マネー潮流」でエンデの利子に対する批判を書いた。つまり、

「キリストが生まれた事を喜んだ父ヤコブが1マルクを貯金した。年5%の複利で預けたとしたら、西暦2000年にはいくらになるか?何と、太陽4個 分もの金塊が手に入るというのです。一方、2000年間1日8時間働いて得られるのは金の延べ棒一本分になります。」エンデはこうして「金利」の欺瞞性を 暴露し「複利で増え続ける」ことの荒唐無稽さを突いているのです。

こういう話だが、どうも計算が合わない。私の計算では西暦元年に1マルクを5%の複利で預けて、西暦2000年には、1.05^2000=2.4×10^42 マルクとなる。

  • 1マルクは過去65円から90円の範囲で変動しているが、真ん中程度の75円としよう。
  • 金1gの相場も、1000円から2000円の大きな変動があるが、1500円としよう。
  • 太陽の質量は、1.9891×10^30kg であるが、2.0×10^33gとして良いだろう。

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なんと、6千万個の太陽と同じ重さの金塊が買えるという計算になる。

4個と6千万個ではまさに桁違いの間違いであるが、しかし、エンデが言いたいこと、金利というものが荒唐無稽なシステムであり、永久に5%の複利で増え続けることはまさに太陽系規模のばかばかしさであるという指摘の本質には何ら影響はない。

しかし、どうしてこんな桁外れの間違いが生じたのだろうか。エンデの発言した言葉を正確に再現すると、

「ある人が西暦元年に1マルク預金したとして、それを年5%の複利で計算すると、現在その人は、太陽と同じ大きさの金塊を4個分所有することになる。一方、別の人が、西暦元年から毎日8時間働き続けたとする。彼の財産はどのくらいになるのか。驚いたことに、1.5メートルの金の延べ棒1本にすぎないのだ。
この大きな差額の勘定書は、一体誰が払っているのか」

(中略)やがてその金利自体が今の経済にとても重荷になってきます。そしてその重荷にやがて耐えられなくなる日がやってくるのは火を見るより明らか(中略)「この経済と金融システムは、いつの間にか、真正ガンが形成されるときの特徴をみんな備えてしまった。
つまり、それは、行き続けるために、常に成長し増殖しなければならないのだ。」 <『欧州知識人との対話』(和田俊訳 朝日新聞社)>

ということです。ここでは西暦元年から西暦2000年までの複利計算だとは言っていない。ではエンデはこのたとえをどこから思いついたのでしょうか。エンデ自身の創作でしょうか。実はエンデはマルクスの「資本論」を若い頃に読破しています。そして資本主義とマルクス主義について次のように述べているのです。

「以前は、ともかくマルクス主義をひっぱりだせば、なんでも進歩的とみなされた。あるいは、自分では進歩的であると考えたものだ。・・しかし現在は大きな危機をむかえている。どうしたらマルクスを使えるのか、いったいマルクス主義は使い物になるのか、さっぱり見当がつかない」

「私は今日の世界はすべて資本主義体制だと見ます。マルクス主義だっていまではみんな資本主義になっています。ただ西側が私的な資本主義であるのに対して国家を単位とした資本主義になっていることだけです」

エンデがマルクスの「資本論」を読み通していたことはこれで明らかです。そして「資本論」の第3巻第5篇第24章「利子生み資本の形態における資本関係の外面化」に次のような記述があります。

「資本とは、永久に存続しそして増大する価値としてその生得の属性によって―すなわちスコラ哲学者の言う隠れた資質によって―、自己自身を再生産し、そして再生産において自己を増殖する価値である、という観念は、錬金術師たちの空想も遠く及ばないドクター・プライスの奇想天外な思いつきに至らしめた。すなわち、かの、ピットが本気にこれを信じて、国債償却基金に関する彼の諸法律において、彼の財政の支柱となした思いつきである。

【原注】“複利を産む貨幣は初めは徐々に増大する。しかし、増大率は絶えず加速されるので、ある期間の後には、想像を絶する速さになる。キリスト生誕の年に5%の複利で貸し出された1ペニーは、今日ではすでに、すべて純金からなる1億5000万個の地球に含まれているよりも、もっと大きな額に増大しているであろう。しかし、単利で貸し出されたとすれば、同じ期間に7シリング4ペンス半にしか、増大しないであろう。今日までわが政府は、第一の道よりも第二の道によって、その財政を改善しようとしてきたのである。”
リチャード・プライス『国債問題について公衆に訴える』ロンドン、1772年

たぶんこの部分がエンデの記憶にあったのではないでしょうか。1マルクではなく、1ペニーであり、2000年ではなく1772年(頃)ということです。マルクもペニーも今はなくユーロになっているのですが、1700年代のマルクと円との関係と言っても、円そのものが存在しない。ユーロになる以前では1マルク78円、1ペニーは0.8円ほどだったらしい。ですから本当に太陽4個だという計算を確認することは無理なようです。

1772年に1億5000万個の地球の質量(=太陽の質量の0.45倍)だったものが、5%複利で太陽4個分になるには45年かかる。つまり1817年頃にはそうなる。先のとんでもない太陽6千万個よりはだいぶ近づいてきた。

【追記】
『エンデの遺言』の中で、エンデの蔵書の一つ、マルグリット・ケネディの『利子ともインフレとも無縁な貨幣』の中に次のような記述があります。

ヨゼフが息子キリストの誕生のときに、5%の利子で1プフェニヒ(1マルクの100分の1)投資したとします。そして、ヨゼフが1990年に現れたとすると、地球と同じ重さの黄金の玉を、銀行から13億4000万個、引き出すことができるのです。永久に指数的な成長を続けることが不可能なのは火を見るより明らかでしょう。

マルクスを否定したエンデではあるが、すでにマルクスは、エンデと同じ主張を、資本論において展開しているというわけである。マルクス自身は「資本論」において資本主義を頭から否定しているわけではない。むしろ歴史的にも必然的な制度であり、「蓄積欲」を利用して経済発展を遂げるというシステムにより人類は長く悩んできた飢えからも解放されたと説いている。しかし、その欲望から解放されない限り人間の幸福は訪れないとも説いている。釈迦やキリストや老子が説いた「欲を捨てる」ことが「幸福」になるための必然的な道だよということを、剰余価値の発見により経済学的に証明したのが「資本論」ではないだろうか。

いま、ヨーロッパにおいて「資本論」が爆発的に読まれているという。日本51ox459rtdl_sl500_aa240_においてはまだその兆候はないが、多喜二の「蟹工船」が読まれている。現在の資本主義の悪しき面のみを追求した新自由主義経済の結果が、この格差社会である 。老人いじめの社会である。自殺率世界一の国である。こうした現状を解決する方法を資本論に求めているに違いない。このミゾユウの事態にアホウ総理にも資本論を読んでもらいたいが、普通の人間にとっても難解な書物であるから、普通ではない総理には無理かもしれない。ならば「まんがで読破 資本論」はどうだろう。これなら彼の最も得意とするところだ。

イギリスでは消費税を減税することが決まったようだ。ところが我が日本の「アホウ総理」は3%の消費税増税を断固としてやるという。アメリカ発の金融恐慌であるが、アメリカでは黒字の会社で労働者を解雇したというニュースは伝わってこない。ビッグ3などの赤字企業では問題になっているが。ところが我が国では減収だとはいえ黒字のトヨタやキヤノンが派遣社員の首を切るという。どうして黒字の会社がこのようなことをするのか、それに対して労働者がどうしてストライキや暴動に立ち上がらないのか不思議だということで、韓国やヨーロッパのマスコミが中部地区に大挙して取材に来ているそうである。

1999年、日経連会長だった奥田碩トヨタ自動車元会長が言っていた。「経営者たるもの、首を切るなら、腹を切れ」と……。トヨタの現経営者は腹を切る心づもりがあるのだろうか。(最もこの奥田さん、最近ではマスコミに噛みついて「報復する」とかいう発言もした人物ですから、話半分に聴いておいた方が良さそうですが・・・)

財源がないと言うが、IMFに10兆円もぽんと差し出した。いったいどこから沸いてきたのか。アホウ総理は打ち出の小槌でも持っているのか。朝日新聞を初めとしたマスコミも「財源は消費税でまかなわざるを得ない。財源がないのだ」という。だが、年間5兆円もの防衛費にはまったく触れない。それ以外に沖縄の基地をグァムに移転するために2兆円が必要だという。防衛費は聖域なのか。「聖域なき財政再建」と言っていたのは誰だったのか。

首を切られても反対できない、かといってこんな世の中を変えるという意識もなく、選挙の投票にも行かないという4割台の投票率。本当に日本人はどうなってしまったのか。こんな日本にするために私たち団塊の世代は、癌になるほど頑張ってきたのはずではなかったのでしょうに。Img012_2

白戸三平の「カムイ伝」には百姓が生き生きと描かれています。百姓とはまさに百の職業、大工もやり、下肥を肥料とするために便所も改良し、そのリサイクルシステムを確立するために問屋にも商人にもなったのが日本の百姓です。「カムイ伝」にはそんな農村の姿が生き生きと描かれている。そして必要ならば寄り合いでコミュニケーションを取り一揆も頻繁に起こしている。

小伝馬町の牢屋敷入れられた抜け忍者の赤目が、牢名 主らのImg013 「作造り」(牢が込んでくると、人減らしのために何人かを殺害した)に堪忍袋の緒が切れて、反対に牢名主らを始末する。終わった後にこう言う。「そういう腰抜けだからこいつらがのさばるんだよ」「忘れるなよ、今日のことを。うぬらのことはうぬら力でやるのだ」とかっこよく言って牢を去っていく。

日本人にはそんな伝統と意気があった。どこの百姓一揆にもそんな英雄がいた。現在の府抜けた状態が異常すぎると言える。眼を覚ませ。こんな世の中を変えたいのなら、現在は投票に行くだけですむ。命がけのことでもあるまいに。

Hen 今年の漢字に「変」が選ばれた。清水寺の森清範貫主が揮毫する写真が報道されている。”Change”が選ばれたことは、この府抜けたような日本にもようやく政治への関心が向いてきたということに違いない。しかし、「変」が現実のものとなるまでには日本人は長い地獄のような経験をしなくてはならないだろう。来年はそのような1年になる。

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2008年11月 6日 (木)

100年に一度の無能内閣

オバマがアメリカの新しい大統領に選出された。彼を誕生させたのは、経済の悪化であり、その担い手となったのは、貧困層・若者である。フリードマンが提唱し、レーガン以後の経済政策の中心となってきたシカゴ学派の敗退が始まった。

日本のマスコミでは、TBSなどの報道番組において「資本主義」という言葉がよく発言されるようになってきた。これまでは「自由主義経済」であった。それが「資本主義」という言葉に変わった。「資本主義」の対極にあるのは「社会主義」である。ソビエトの崩壊により、資本主義万能の時代が続いたが、どうやら資本主義もおかしいぞ、ということだろう。

小林多喜二の「蟹工船」が書店にも平積みされてよく売れている。ヨーロッパではマルクスの再評価、資本論が見直されている。新自由主義経済の破綻が明らかになった今、古典への回帰が起きているのだ。

この100年に一度(麻生総理の言)の未曾有の変革期に、アメリカは1年半をかけて自らの将来を託す指導者を選んだ。「ブッシュの経済政策は間違っている」「イラク戦争は間違いだ」という世論がアメリカの大勢だということだ。

日本はどうか? 一人1万6千円の「給付」と引き替えに、消費税の5%アップだという。高速道路がどこまで行っても1000円だとか。インド洋でのアメリカの艦船への給油活動も続けるという。中国などの新興国が、これからの世界経済の牽引役となろうとしているときに、「日本軍の南京大虐殺はなかった」などという自衛隊幹部が出る始末だ。破綻しつつある新自由主義経済対策をより一層続けようとしているのだから、我々日本の将来は暗澹としたものに違いない。

『この100年に一度の経済危機のなさか、どうやら100年に一度の無能内閣が誕生したようである』と、藤原新也氏が書いている。

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2008年10月27日 (月)

百年に一度の歴史的瞬間に生きている

日経平均株価の今日の終値が7162円と、26年ぶりの大安値になった当報じられ ている。サブプライムローンに端を発した世界の金融危機がここまできた。 51egccdi4ql_ss500_

「恐慌」とは「すべてが紙くずになること」である。株券が紙くず になり、紙幣が紙くずになる。ライブドアブームに踊った大衆投資家の株が紙くずとなり、今は2年前にブームが始まったFX取引でマネー投機をしてきた個人投資家の資産が紙くずとなりつつある。

「市場に任せがうまくいく」と、なんの労働もせずに、あぶく銭を稼いで、汗水垂らして働く者たちからかすめ取った金で六本木ヒルズに住み、ベンツに乗っていたような連中を、どうして10兆円もの税金で救済しなければならないのか、私には分からない。「自己責任」はどうしたんだ? 勝ち組だなどと威張ってはいたが、ただ強欲だったというだけの浅ましい連中をどうして税金で救わねばならないんだ。ほとんど税金も払ってこなかった銀行に、どうして。

百年に一度の世界史の激動の時期に、今私は生きている。フランスのルイ王朝の崩壊、日本の明治維新、1989年のベルリンの壁の崩壊と2年後のソビエト連邦の崩壊に匹敵する、いや、それ以上の歴史的大激震の時期に生きている。41y30f5xv9l_ss500_

ソビエト連邦が崩壊して、その後のアメリカ一人勝ちの時代が終わろうとしている。「市場がすべてを決める。市場に任せておけば万事うまくいく」と言って、新自由主義の経済政策を押し進め、一握りの大金持ちと多数の貧困者を生み出した者たちの「退場」の舞台が回る始めた。小泉真一郎は息子に看板と地盤を譲って、さっさと逃げ出した。竹中平蔵はさっぱりマスコミに登場しなくなった。マスコミの論調も変化して来たようだ。反アメリカ調の報道が徐々に多くなってきている。

今年1月13日のこのブログで紹介したように、ミヒャエル・エンデの「エンデからの遺言」にあるように、1マルクを5%の複利で貯金すると2000年には、太陽4個分の金塊が買える金になる。「このような富がどこからわいてくるのだろう」とエンデは、「利子」の荒唐無稽さを鮮やかに指摘したのだが、今では500兆ドルとも言われるマネーが、5%の利益を求めて世界中を闊歩している。マルクスの共産党宣言第一章の冒頭にある「一匹の妖怪がヨーロッパを徘徊している──共産主義という妖怪が」をもじって、「一匹の妖怪が世界を徘徊している──マネーという妖怪が」と論じた者がいたが、まさにその妖怪が世界を食いつぶそうとしているようだ。511qz3j01hl_ss500_

まだ「グローバリゼーション」という言葉になじみの無かった1980年代の末に、世界を無秩序に駆け回る資本の行き着く先に警告を発し、「カジノ資本主義」を著わしたスーザン・ストレンジ女史は、今日の一層博打化したマネーによる世界経済の混乱を「狂気」だとして女史の続編となる「マッド・マネー」を10年後の1990年代末に著わしている。「カジノ資本主義」が、4つの「浮動性」をまねき、①通貨の価格(為替相場)②財の価格③信用の価格(利子)④石油の価格のこれら浮動性は相互依存的に要因となり、差し迫っ た金融危機の要因となってくると、予言している。まさに現状は、10年前にストレンジ女史が言ったようになってきたではないか。

日本には竹中平蔵のように「絶対の儲かるから株を買いなさい」といって、新自由主義の政策を押し進め、自分はマクドナルドの未上場株を受け取っていたような経済論者しかいなかったのかというと、そんなことはない。

内橋克人がただ一人、新自由主義に敵対する論陣を張っていた。彼の「悪夢の31nytgm3bnl_ss500_ サイクル」では「ネオリベラリズム循環」として、海外マネーの出入りが、バブルとその崩壊を循環的に繰り返し、国土と国民をドンドコに突き落とす過程が警告的に描かれていたし、城山三郎との対談集「人間復興の経済を目指して」では、市場原理主義に対して「地産地消運動」や、世界の中心=アメリカという考えを疑ってかかれと警告していた。さらにこれからの日本の進むべき方向は、アメリカ依存からの脱却と内需拡大であるとし、食糧不足の時代が来ることを予見して、日本の国際貢献は食糧供給から初めよ、減反政策を改めて、日本は「農業立国」を目指すべきであると説いていた。

世界はどこへ向かうのか。ドルが基準通貨という時代はもう終わりだということは確かだ。クリントンと同じ新自由主義経済の継承を公言しているオバマが大統領になったって、この現実は変えられるはずもない。アジアと欧州の各国指導者が一同に会するASEM首脳会合が北京で開かれたが、中国は今や世界一の外貨準備高を持つ国であり、日本を抜いて、アメリカの最大の債権国である。中国こそ、11月15日に開かれるのG20金融サミットの主役になる。そして中国はドルの基軸通貨体制を変え、IMF41draxxhjkl_ss500_体制を改革し、新興国の参加した新体制を打ち立てようとしている。

 [北京 24日 ロイター] 中国共産党機関紙・人民日報海外版は24日付の1面に、アジア、欧州の各国は、両地域間の貿易を米ドルでなく、ユーロ、人民元や日本円など地域通貨で決済するべきだとする論評を掲載した。

 論評を執筆したのは、米国批判の急先鋒として知られる上海の同済大学のShi Jianxun教授。

 同教授は「現在の悲惨な状況に直面して、人々はようやく米国が自国通貨の優位性を利用して世界の富を搾取していたことに気が付いた」と述べ、米国発の金融危機により多くの国が富を失うなか、米国は自国の国益を守ることしか考えていないと批判した。

 そのうえで「米ドルは信頼を失いつつある。世界は早急に、国際機関を通して民主的かつ合法的に、米国一国支配の経済構造と米ドルの優位性の上に立脚している現在の国際金融システムを変えなければならない」と述べ、アジア、欧州各国は地域間の貿易決済に米ドルではなく自国通貨を使うべきだと主張した。ただ具体策については言及しなかった。

 同教授はまた、24日から2日間の日程で北京で始まるアジア欧州会議(ASEM)の首脳会合は、新しい国際金融秩序の構築を始めるのに格好の機会となると述べた。

 ASEM首脳会合には欧州連合(EU)加盟27カ国、日本、中国、インドなどアジア16カ国を含む45の国・機関のトップが出席する。

この人民日報1面の記事は、当然中国共産党中央委員会の承認を受けており、これが中国の正式の新たな世界経済政策だと考えることが当然である。世界はもうドル中心では回っていかない。もしかすると人民元が基軸通貨となる時代が来るやもしれない。中国指導部は「100年単位」で政治を考えている。対して日本の政治家の何とも頼りなく哀れなことか。この大事にホテルのバーをはしごしている総理を持った不運を嘆くことしかできない。

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2008年9月26日 (金)

相関関係と因果関係

「日教組(日本教職員組合)の強いところは学力が低いんじゃないか」――文部科学相時代に全国学力調査を提案した中山国土交通相が、テストで何を調べたかったかについて、こんな「本音」を明かした。「現にそうだよ。調べてごらん」。

この国はびっくりするような人が大臣になるんですね。漫画オタクの総理が任命したのですからこの程度で驚いていてはいけないのかもしれませんが。

日教組が強い=子供の学力が低い、しかし日教組の組織率は戦後ずっと低下し続けています。
    * 1958年(昭和33年):86.3%(調査開始時)
    * 2003年(平成15年):30.4%、76単組、組合員数約31万8000~33万人
    * 2004年(平成16年):29.9%、76単組、組合員数約31~32万2000人
    * 2006年(平成18年):28.8%、76単組、組合員数約29万6000人
    * 2007年(平成19年):28.3%、76単組、組合員数約29万人

ということは、中山説に従えば、子供の学力は戦後ずっと増加傾向になければなりません。世界水準に比べて学力が低いということが、学力テスト実施の理由だったこととも矛盾します。

「中山氏の出身地で選挙区でもある宮崎は、小6の2科目と中3の全科目が全国平均を上回るまずまずの成績で、組織率は1割未満」ですから、中山説に合致しています。香川県も同様。

「小6の全科目でトップ、中3もすべて上位3位に入った秋田の組織率は5割以上。組織率が9割近くと全国トップを誇る福井は、中3の3科目で1位だった。」(朝日新聞) 富山・愛知なども同様に中山説にあいません。

全県でみると、約半分が中山説どおりですが、半分は中山説を裏切っています。こうしたとき統計的には「相関がない」というのですが、かの大臣は文部科学大臣をやってはいましたが科学的思考方法は持っていないらしい。

仮に組織率と学力に相関があったとしても、「相関がある=因果関係がある」 ということではありません。

三笠フーズの「事故米」に含まれているアフラトキシンが猛毒で肝臓ガンを誘発する。事故米は西日本に多くて、しかも事故米が流通していたらしい10数年前から急増している。したがって、西日本に肝臓ガンが多いのは事故米を食べた人が多いからである。こうした情報がインターネットで盛んに流されていました。たとえばここ

確かに「相関」はありそうですが、西日本にはC型ウィルスによる肝炎が多く、肝炎は肝臓ガンになる確率が高いのです。しかもC型肝炎の患者も同じ時期から増加している。つまり、相関のある因子が他にもあり得るということです。(アフラトキシンのリスク計算はここで)

中山大臣は、相関がないのにあると間違って主張し、相関と因果関係を混同しているという二重の誤りを犯しています。しかもその誤りにまだ気づいていない様子ですから、恐れ入ります。もしかすると、この大臣、自分の学力が低いのは日教組のせいだと言いたかったのかもしれませんが、それは見当外れというものでしょう。いっそのこと大臣の学力テストをやってみればおもしろいなと思うこの頃です。大臣の発言を聞いた文科省役人の発言  「もう、免疫はできていますから」だって。

自分の説を裏付けるデータだけを取り出して評価するという例は、ガンのサプリメントにもよく見かけます。「○○でガンが消えた」等もこの類です。

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2008年9月 1日 (月)

福田総理が辞任

ブログを書こうとしたら、テレビで福田総理辞任の記者会見が始まりました。驚きましたが、一面「やっぱりか」という気持ちもあります。

定率減税を廃止して庶民の生活苦を作り出すきっかけを作った公明党。2003年の総選挙で基礎年金の税負担を二分の一に引き上げる財源として、「定率減税の段階的廃止と年金課税の見直し」を掲げ、廃止の言い出しっぺのその公明党が、今度は「定額減税」をごり押ししています。節操や見識のかけらもない、選挙目当てが見え見えのこの政党にはあきれ果ててしまいます。

こんなのと一緒に選挙では、福田総理が「やってられないよ」という気持ちはよく分かりますね。また、この時期に辞任して麻生幹事長に禅譲すれば、来るべき総選挙で自民党に有利に働くという計算もあるのでしょう。阿部前総理に続いて、国会での所信表明演説の直前に二人の総理が辞任するのですから、異常です。自民党も末期症状です。

でも麻生さんで大丈夫でしょうか。吉田元総理の孫で、大会社の経営者、何の苦労もなく育ったひとです。復古調の靖国派であり、「一言多い」ので有名な政治家でもあります。九州が選挙区でありながら、生活保護を打ち切られて「おにぎりを食べたい」と日記に書き残して餓死した北九州の事件も知らないようで、「今の世の中、餓死する程の貧しさが存在するわけではない」と言ってのけているような政治家です。こんな人に今の庶民の生活苦を解決することを期待する方がどだい間違っているのかもしれません。マスコミの作り上げた虚像は先の安倍総理でもそのもろさが浮き彫りになったはずですが、でも我が国民は非常に愚かで我慢強いのですから、またまたマスコミに踊らされ、麻生新総理に歓迎一色になるに違いありません。

昨日投票の沖縄県竹富町の町長選で、無所属の新人が、自民党推薦で現職の元町長を1455対404票という大差で破ったと報道されています。今日は防災の日ですが、この日本になにか大きな地殻変動が起き始めているのではないか、そんな気持ちにさせられます。

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2008年4月28日 (月)

憲法九条と「イカの哲学」

31e14idyal_sl160__3 中沢新一が、太田光との共著「憲法九条を世界遺産に」のあとがきで、「生命論とのかかわりで見たとき、憲法九条はそのような別種の生命原理に対応しているのではないか・・・」といったとき、彼はその文章に飛躍と説明不足を感じたと、この本に書いている。

在野の哲学者=波多野一郎の「烏賊の哲学」の思想を土台にして、中沢新一は『超戦争』に対峙する『超平和』への思想の足がかりとして語っている。

波多野一郎はグンゼの創始者波多野鶴吉の孫であり、第二次世界大戦中はカミカゼ特攻隊員として満州で終戦を迎えます。特攻攻撃の前日になってソ連軍が侵攻し、命を取り留めるのでした。しかし、その後シベリア抑留で生死をさまよう様な炭鉱堀に従事させられます。戦後復員してスタンフォード大学の哲学科で学んだという経歴の持ち主です。大学の夏季休暇でモントレーの漁港でのイカ漁の買い付けのアルバイトをしているときの思想的ひらめきが一冊の本=烏賊の哲学です。

波多野一郎は、自らのカミカゼ特攻隊とシベリア抑留の経験と、一網打尽にされるイカとは同じだと悟るのでした。広島・長崎の原爆も、大量の生が一瞬のうちに大量の死になるという意味において、イカにとっての網と同じだと。

従来のヒューマニズムは、人間以外の動物に関心がない人間尊重主義であり、動物と人間を区別する境界線があいまいになりがちだから、それ自体には戦争を食い止めるだけの力がない、と断言します。そして、他の生物の『実存』を感じ、『実存』に触れ合うことこそが世界平和の鍵であると結論付けるのでした。

中沢新一は、ジョルジュ・バタイユの生命論、エロティシズム論を拡張して、波多野の思想を深めていきます。

生命には「平常態」と「エロティシズム態」があり、性愛・宗教・芸術・戦争はエロティシズム態から生じると言うのですが、ここの説明が中途半端で論理的に飛躍しているように感じます。戦争がエロティシズム態から生じるという論点が、この本の以降の思索の鍵となっているだけに、説明を省略して分かり難くなっっているのが残念です。

第二次大戦後の戦争は、相手の実存を認めないという点で『超戦争』となった。それ以前の戦争に対しては、通常の「平和」を対峙すればよかったのだが、「超戦争」に対しては、通常の平和ではない『超平和』を対峙させなければならない。その超平和は、生命のエロティシズム態から導かれる。母体が他者である精子を受け入れるときに、自らの免疫力を一時的に抑止して、他者である生命を10ヶ月の間体内に受け入れるということが、生命のエロティシズム態の「連続性」と説明されている。

この他者の「実存」に対して、自らの「否定=免疫力の抑止」をしてまでも受け入れるという生命の本質こそが『超平和』の土台であると。

広島・長崎の『超戦争』を経験した日本国民は、通常の平和ではない『超平和』を模索する人類的な課題を負っているというのが彼の結論である。憲法九条は、国家原理から見ると尋常ではない条文である。しかし生命原理=生命のエロティシズム態から九条を見たとき、そこに21世紀につながる平和学の土台が見えてくる。さらにはエコロジーと超平和をつなげる土台が見えてくるのだと。エコロジーとのつながりは、まだ思索の端緒に着いたに過ぎないようだ。

彼のこうした思索は、しかし、一見して新しいようだが、老子や東洋仏教思想、良寛に代表される禅宗の思想として多くの先達が述べて実践してきているような気がする。どこが新しいのか、私には理解できない。

エコロジーと平和をつなげるには、「超戦争」の原因を考えて見なくてはなるまい。コンゴにおける内戦、ボスニア・ヘルツェゴビナでのジェノサイドなど、帝国主義戦争とはいえない虐殺が相次いでいる。その根本にはグローバル化・貨幣経済万能主義がある。

金と欲、大量消費と大量廃棄、環境汚染、地球温暖化。そして戦争と平和がこれらと繋がっているのだと理解できたときに『超平和』への確かな一歩が始まるのではないだろうか。

我々が積み立てた年金資金が、ヘッジファンドを通じて原油・穀物の高騰を招いている。年利○%で年金を運用するということが、回りまわって自分たちの生活を破壊している。私たちは被害者であると同時に加害者でもあるという考えがあまりにも希薄ではないだろうか。「求めない」ということが平和に繋がるという非常に分かりやすい時代に、私たちは住んでいるのだ。

玄米菜食も、自分の健康・癌の完治になるだけではなく、エコロジーを通じて「超平和」へと繋がってくるのだとしたら、こんなにすばらしいことはない。

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2008年4月21日 (月)

福田内閣支持率25%に

抗癌剤の最後の投与が先週終わった。3日くらいは気分が悪くて仕事もろくに手につかなかった。これからは月に一度程度の診察で経過観察。私にできることは、ストレスのない生活と玄米菜食で食事に気をつけること。これくらいしかない。


朝日新聞の世論調査によると、福田内閣の支持率が25%に急落して「危険水域」に入ったと報じられている。前回調査が31%だから、すでに末期的症状だ。

原因はもちろん「後期高齢者医療制度」だ。しかし、ここで考えてもらいたい。この制度を作ったのは2年前の小泉内閣であり、「郵政民営化」を初めとする「劇場型政治」にOKを与えたのは国民ではないのか? 「官から民へ」「自己責任」「痛みを伴う改革」、これらに何となく期待を持って、「刺客」騒動に拍手喝采をしたのは誰だったのか?

歳をとるのは「自己責任」であり、医療費の「定額払い」は「痛みを伴う改革」そのものではないか。それが「後期高齢者医療制度」として現実に始まったというだけのことだろう。我々「馬鹿な」国民がこの制度を承認し、支持し、お墨付きを与えてきたのだということを忘れてはいないか。

私の昨年9月22日のブログ『「老人虐待防止法」はこの国の政府に適用すべし』ではそのことを書いておいた。マスコミも、この制度が始まる直前まで問題点を報道しないのだから、その役割を果たしてはいない。一昨日のテレビで、共産党の議員が「入山料を取る姥捨て山だ」と言っていたが、うまいことを言うものだ。まさにその通り。まともに払わない年金から保険料(入山料)は天引きでしっかり取るのだから。そのテレビ番組で公明党の議員が言っていた。「消費税を増税しないとやっていけないのでは・・・」と。

本音が出てきたというべきだろう。小泉の始めた「構造改革」による社会保障費の削減は、かつて小泉が「国民が、もうお願いですから消費税を上げて下さいと言うまで、徹底的に(社会保障を)削り まくれ」と指示したように、本丸は消費税の増税だろう。

道路特定財源、軍事費、これらを見直せば消費税の増税なぞは必要ないはずだ。しかし、消費税に反対しないマスコミでは、この社会保障の問題の本質的な解決策は出せやしない。

各地の医師会など、「後期高齢者医療制度」に反対する世論が沸き起こっているが、驚くのは公明党の態度だ。自民党以上にこの制度を廃止することに反対している。さらには消費税を増税しろといっている。ここにはかつての「庶民の党」といったイメージはまったくない。

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2008年3月 7日 (金)

21世紀の「帝国主義論」

41hocmq8gcl_ss500__3 レーニンは「帝国主義論」において、彼のいうブルジョワ経済学者の著作を引用し、詳細な経済活動の数字を用いて論を進めている。一例を挙げれば、当時の世界列強の鉄道網の総延長距離(本国と植民地の合計)を比較して、鉄道の所有権と金融資本の集中ぶりを論じ、ドイツと大英帝国とにおける鉄道の所有距離と鉄鋼生産高の逆転を指摘し、「資本主義を足場にしたまま、そのような食い違いを解消するとすれば、戦争以外にいかなる手段があるだろうか」と帝国主義戦争の不可避性を主張し、ロシア一国の社会主義革命の実現可能性を論じた。しかしソヴィエトの70年に及ぶ実験は壁の崩壊・社会主義国の崩壊という結末を迎えた。そして「資本の反革命」の時代が始まった。

水野和夫の「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」も、レーニン以上の豊富な資料を駆使している。彼は三菱UFJ証券の経済アナリストであるから、その充実したデータベースを縦横に駆使して表やグラフとして紹介しながら現在のグローバリゼーションの本質に迫っている。

グローバリゼーションの本質とは、20世紀に実質賃金が上がる続けた「労働者の黄金時代」に終止符を打つ「資本の反革命=資本による利潤回復運動」と位置付ける。グローバル経済化における大きな構造変化として3つを挙げている。

  1. 帝国の台頭と国民国家の退場=帝国化
  2. 金融経済の実物経済に対する圧倒的な優位性=金融化
  3. 均質性の消滅と拡大する格差=二極化

そしてグローバル経済を見る5つの法則だとして

  1. 現在の現象に1995年以前の経験をあてはめない
  2. マクロの平均値で経済を見ない
  3. 戦後の景気循環パターンで景気を予測しない
  4. 一国単位で経済現象を見ない
  5. いずれ時間が解決すると考えない

21世紀は「新しい中世」の時代であり、「帝国」=マネーの時代だという。アメリカの住宅バブルと中国の「世界の工場」がグローバル世界経済の両輪だとして、昨年9月のサブプライム問題を先駆的に予測したかのような記述も見ることができる。

著者は証券会社のアナリストにすぎないから、レーニンのようには「では世界は、我々はどうすればよいのか」との問いには答えてくれない。この著作にエッセンスでも知りたいというのであれば彼のインタビューが「藤沢久美のマネー対談」で動画を見ることができる。

ネグリ/ハートの「帝国」以来、日本でも帝国論議が盛んになってきたようだ。新自由主義の反国民性とマネーの傍若無人さがますます人々に犠牲を強いる時代になってきた。「アメリカ合衆国は、そして今日ではいかなる国民国家も、帝国主義的なプロジェクトの中心となることはできない。帝国主義は終わったのだ。近代のヨーロッパ国家のような方法で、世界のリーダーになれる国はもはや存在しない」とネグリは「帝国」で主張する。

では「我々はどうすればよいのか?」ネグリのいうマルチチュードがその解決の道か、先のこのブログ「北欧はここまでやる」にも書いたように、北欧のような経済を目指すのか、あるいは世界社会フォーラムのような運動やスローフードの足元からの生き方の見直しを軸にするべきなのか。

ネグリが今月末に来日するそうだ。東京大学はじめ各地で公演が予定されている。またいっそう「帝国論」が盛んになるに違いない。

東京でシンポジウムを企画中の姜尚中・東京大教授(政治学)は、ネグリは「依然として国民国家の枠組みでしかとらえていない我々に、国家のあり方を解体していく可能性を示した」と期待を寄せる。

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2008年2月28日 (木)

稀な患者

チェロのレッスン。先週は出張で休んでしまったので二週間ぶりだ。浜辺の歌は今日で押しまし。第一弦の拡張型が少しは板についてきたのか、でもまだまだ音が不安定だ。

この前からチューナをチェロにつなぎっ放しにして音程を確かめながら練習している。指の押さえる力を少し強くしただけで音程が随分と違うものだということがよくわかって、この方法をしばらく続けてみる。

6月には合同の発表会をやるそうだ。曲は何が良いかと聞かれたので何極化の候補のうちスメタナの「モルダウ」を希望した。

先週行ったかかりつけの内科の先生の話だが、こんなことを言われた。『私も随分と膵臓がんを切除した患者を診てきたが、あなたのように元気な患者は稀だよ。運が良いんだと思わなくちゃ』。

41z9exeed1l_aa240__2 そうか、おれは運が良いのか。自分では二度も癌になって運の悪い人生だと思っていたのだが。手術ができてさらに予後も良いのだから、やはり感謝しなくてはならないのだと改めて感じた。

今週は水野和夫氏の「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」とレーニンの「帝国主義論」。そのうちに感想を書いてみるが、水野氏の著作は21世紀の「帝国主義論」かもしれないと感じている。

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2008年1月17日 (木)

北欧はここまでやる。

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保守系経済紙がここまでやる!

週刊東洋経済の1/12号、先週の特集記事「北欧はここまでやる。格差なき成長は可能だ!」が面白い。⇒目次はここ

医療、年金、介護問題など、日本は今、社会保障にかかわる様々な難問に直面している。その背景にあるのは、社会の活力低 下。つまり少子高齢化と格差社会の出現だ。OECD(経済協力開発機構)の調査では、日本は平均より半分以下の収入しかない国民の割合(貧困率)が、先進 諸国の中でアメリカに次ぐワースト2位だ。「一億総中流」の時代はとうの昔に終わってしまった。

これなどは13日のブログで紹 介した「クロードアップ現在 2008年 新マネー潮流」でも言われていたことだが、日本の「中流」は崩壊しつつある。規制緩和と格差社会を強引に推し進 めている日本は新自由主義こそこれからの望ましい体制だということで、自公政府も民主党も同じ考えだが、本当に格差社会でなければ成長はできないのか?と いう問題に、北欧に現地取材陣を派遣して魅力的な特集記事としている。

日本だけではない。市場経済を重視して規制緩和を求める「新自由主義」が世界に成長と繁栄をもたらす一方、貧富の格差は世 界的な課題になりつつある。1990年代終わりから「第3の道」を標模し、新自由主義と福祉政策を融合させようとした英国は、確かに福祉政策で一定の成果 を上げた。

だが、その水準は決して高くない。世界中が福祉政策とどう向き合うか、模索を続けているのだ。 経済成長を望むなら、〝平等″は犠牲にしなければならないのか。 95年から2006年までの1人当たりGDP伸び率と、平等性を図る指数であるジニ計数との相関を調べると、興味深い事実が浮かび上がる。GDPの高い伸 びを示しているのは、むしろ所得の平等性が高い国々(ジニ指数の低い国)が多いのだ。少なくとも、ここからは成長と平等がトレードオフの関係にあるとはい えない。やはり、健全な中間層の存在こそが、経済社会を成立させる前提ではないのか。 バブル崩壊からまもない93年、日本の1人当たりGDPは世界トップに君臨していた。しかし06年は15位へ沈んだ。その13年の間に、日本は1人当たり GDPを1.7%ほど減らしている(ドル換算ベース)。

逆にその間、豊かになった国がいくつかある。 まず、経済開放が進んだ国々。この中には中国やインド、東欧諸国などが含まれる。

そして特筆すべきは、OECD加盟国(新規加盟を除く24ヶ国ベース)の 中にも、過去13年に所得を「倍増」させた国があることだ。アイルランド3.66倍、ノルウェー2.64倍など11ヶ国。高度経済成長時代、日本が実現し た所得倍増よりはペースが遅いものの、成熟社会の中でも所得倍増を果たす国が少なくない。 そのような国は、英国を含めて福福祉政策に積極的な国が多い。なかでも目立つのが、北欧諸国の躍進ぶりだ。ノルウェーのほかにも、フィンランド2.31 倍、デンマークー1.87倍、スウェーデン1.83倍。いずれも一人当たりGDPを大きく伸ばしている。

そして40ページの特集記事はもはや新自由主義に未来はないと警鐘を鳴らしている。

北欧諸国は、高福祉・高負担の国として知られる。福祉政策は充実しているが、他方で国民の税負担も高い。たとえば、ス ウェーデン。同国の国民負担率(税金と社会保障費のGDPに占める割合)は70%を超える(日本は07年度見込み39.7%)。消費税率は25%と先進国 で最高だ。  それでもなぜ経済成長が可能なのか。

北欧諸国は輸出比率が高く、世界的な好景気、特にEU域内の好調に支えられた面は大きい。しかし元スウェーデン大使 の藤井威・みずほコーポレート銀行顧問は、福祉国家の持つ産業構造に注目する。  

国内の総生産は総支出(需要)とバランスする。高齢化が進む成熟社会では、福祉産業に対する需要は大きい。一方でスウェーデンの社会保障支出の総額は 8556億クローナ(1クローナ=17円。約14.5兆円)、GDP比で32%に及ぶ。就業者の割合を見ても、福祉産業を含めた「対地域・社会・個人サー ビス」は38.3%(04年、日本は22.1%)。つまり、産業構造が国内の需要と一致しやすい構造になっているのだ。

北欧の4カ国のことはもっとマスコミも紹介したほうがよい。

年金をとるか消費税か、あるいは痛みを伴う改革しかないような二者択一の、アメリカ一辺 倒しか見えないような論調は、少しは考え直したほうがよい。

豊かな中流層がいてこそ「発展」が保証できるのだと、この記事は正しく見抜いている。

朝日新聞 やアエラではなく、保守系経済紙がこんな特集を組むほどに「格差社会」に対する庶民の不満は大きいし、解決方法を見いだせないでいるのだ。その他のマスコ ミも追随してほしいものだ。

「北欧はここまでやる。格差なき成長は可能だ!」のPDF

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2008年1月13日 (日)

「クロードアップ現在」2008年 新マネー潮流

NHKの「クロードアップ現在 2008年 新マネー潮流」を見た。7日に放送されたが見逃したので、12日のBS2での再放送である。こういう良 質な番組があるから、NHKの受信料を払い続けようという気になる。原油が100ドルになり、株が下がり、物価が上がり、ワーキングプアが増える、こうし た経済の根本的原因をずばりと突いた「生きた経済学の教科書」ともいえる番組である。番組の内容を私流に整理すると次のようになろうか。

  • アメリカの借金経済(例:住宅を担保にしてローンを組み、それで消費を拡大してきた)によって世界中に基軸通貨としてのドルを垂れ流してきた。
  • これによって、これまでの世界経済をけん引してきた。
  • ローンなどの債権を「証券化」することによってリスクを分散してきた。高度な「金融工学」を駆使して複雑な証券が世界中にばらまかれている。
  • サブプライムローン問題の本質は、誰にもリスクの総額が分からないという点にある。この証券化された再建には「市場がない」。つまりは損失の評価も証券会社・銀行任せである。
  • 「証券化」されているのはサブプライムローンだけではない。あらゆる債権が証券化されて世界市場で取引されている。
  • 新自由主義経済の破綻を象徴した出来事だ。

そして、1990年には世界のGDPの約1.7倍の規模だった世界のマネー(金融資産)が、2006年には約3.2倍の約150兆ドルに 積み上がった。世界の貿易に必要なドルはせいぜい10兆ドル程度だろう。その15倍のドルが市場に流通し、その多くは実体経済の必要からではなく、資産を 増やす目的でうごめいているのだ。だから、株で儲けが出ないとみるや原油や穀物に流れる。原油や穀物が必要なわけではない。将来の値上がりを見込んで何% かの利益を得ようとするわけである。

番組に出演した二人のパネリスト、水野和夫氏(三菱UFJ証券チーフエコノミスト)と榊原英資氏(早稲田大学教授、元大蔵省財務官)がともに述べていたのは、新自由主義経済の破綻だ ということだ。「市場にすべてを任せておけばうまくいく」「規制緩和万能」と言ってきた結果が現在の世界経済の失速である。サブプライムローンの損失を抱 えたメリルリンチ・シティ・モルガンらの「ハゲタカ・ファンド」に数千ドル単位の資金を注入して救ったのは、皮肉にもオイルマネーや中国マネーなどの政府 系ファンドであった。この資金がなければこれらのファンドは倒産していたはずである。二人とも「「マネーに対する規制が必要だ」と強調していたのは当然で ある。このままでは世界は行き詰る。一番の被害者は金融資産を持たない庶民であり、発展途上国である。原油・穀物の値上がりなど、負の遺産は力の弱い者に 集中される。

新自由主義経済の破綻が誰の目にも明らかになってきたのが今年の年初からの特徴であり、その兆候が一層明らかになる年となるに違いない。


しかしである。こうした見通しはずいぶん前に経済学者からではなく、ファンタジー作家のミヒャエル・エンデによって警鐘が鳴らされてきたことだ。 「モモ」や「果てしない物語」の作者であるミヒャエル・エンデは経済やお金の問題についても鋭い考察をしてきた作家である。「モモ」に登場する「灰色の男 たち」や「果てしない物語」の「虚無」は、ファンタジーを通してエンデの思想をつたえているのだ。

「モモ」の翻訳者である子安美知子氏が、「モモを読む」のなかで次のようなエンデの話を紹介している。

「キリストが生まれた事を喜んだ父ヤコブが1マルクを貯金した。年5%の複利で預けたとしたら、西暦2000年にはいくらになるか?何と、太陽4個 分もの金塊が手に入るというのです。一方、2000年間1日8時間働いて得られるのは金の延べ棒一本分になります。」エンデはこうして「金利」の欺瞞性を 暴露し「複利で増え続ける」ことの荒唐無稽さを突いているのです。

エンデの話はたった1マルクのことでしたが、「クロードアップ現在」の番組で紹介されたのは、150兆ドルの資金が、年率5%の利益を求めて世界を 徘徊しているということです。こんな荒唐無稽な「うまい話」が永遠に続くはずがないのは子供にもわかる道理ではないでしょうか。

エンデは言います。「この大きな差額の勘定書は、いったいだれが払っているのか」と。資本主義経済システムが続きうる条件には、「植民地が必要だっ たこと」を、彼は真っ先に挙げます。搾取するには搾取される対象、利殖を生むには払う対象がいるというのが、エンデの持論です。植民地がなくなった現在、 負の勘定書きを押し付けられる(=搾取される)のは、自国内の貧困層であり、発展途上国の国民であり、自然であり、地下資源であり、穀物や原油です。さら には将来の水不足を見通して水資源・地下水の買い占めすら進んでいるといいます。

年利5%で資産が増え続けるためには搾取される貧困層が必要なのです。これが我が国でワーキングプアが増え、年収300万円(今では150万円ともいわれている)層が増えてきた根本原因です。

20世紀の帝国主義は軍事力を背景にして他国を従わせてきました。アメリカは9.11以降もその考えを一層露骨にしてきましたが、そのアメリカの中 枢部をオイルマネー・中国マネーなどの政治的意図をもった政府系ファンドによって「爆撃」されたということです。21世紀の世界が大きく変わりつつありま す。

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2008年1月 4日 (金)

年末年始は読書三昧

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20歳頃かあるいはもう少し経って24歳頃か、カントの「純粋理性批判」を読もうとしたことがある。結論からいえば、さっぱり頭に残らなかった。というよりは頭に入ってこなかったというほうが正確かもしれない。自分はこうした哲学的知性を理解できるような脳みそを持ち合わせていないのだと、その時悟ったものだ。

しかしこれはいささか早計な悟りだった。というのは、私の脳みその出来が悪いかったのではなくて、カントの訳が悪かったのかもしれないと思えるから だ。哲学者が哲学書を翻訳すると、厳密さにこだわるあまり、難しい言い回しになるのは容易に想像できる。というのは、年末に池内紀訳の「カント・永遠平和のために」(綜合社)を読んで、その分かりやすい翻訳に引き込まれたからだ。

その翻訳を読んで、210年前の老哲学者カントの、やむにやまれずに書いた平和論が、今日の世界にも通用することに驚きを感じる。

「いかなる国も、よその国の体制や政治に、武力でもって干渉してはならない」

イラクに軍隊を派遣したブッショは、カントを読んでいないに違いない。『クリントンは下半身に問題があったが、ブッシュは上半身に問題がある』と揶揄されているブッシュのことだ、読むはずもないか?。

「戦争状態とは、武力によって正義を主張するという悲しむべき非常手段にすぎない。」

金正日もカントを読んでいないに違いない。

「行動派を自称する政治家は、過ちを犯して国民を絶望の淵に追いやっても、責任は転嫁する。」

小泉純一郎も安倍晋三もカントを読んでいないに違いない。

「戦争それ自体は、取り立てて特殊な動因を必要としない。名誉心に鼓舞されて戦争は起きる。」

『亡国のイージス』のファンであるという石破茂・現防衛大臣は、高価なおもちゃをあてがわれて「名誉心」を起こしかねない。もちろんカントなんか読んではいないだろう。用心・用心

カントの「永遠平和のために」の理念が今は「国連」となり、日本においては「憲法第9条」として結実している。クラークは人類の未来を哲学し、カントは人類の平和を哲学した。

2008年、世界が大きく変貌しようとしている。ネパールが王政を廃止して日本は世界唯一の君主制国家になった。日本の一人当たりGDPはOECD30か国中世界18位に転落した。

加藤哲郎氏がWebで紹介しているが、『アメリカの投資顧問会社ゴールドマン・サックス社の長期見通し「Dreaming with BRICs: The Path to 2050(BRICsについての大胆な予測:2050年への道程)」と 題する調査レポートによれば、「ブラジル、ロシア、インド、中国、この四カ国GDPが今後40年間でG6(日米英独仏伊)のGDPを凌駕する」「2050 年のGDPは、1位中国44兆4530億ドル、2位米国35兆1650億ドル、3位インド27兆8030億ドル、大きく遅れて4位日本6兆6730億ド ル、5位ブラジル6兆740億ドル、6位ロシア5兆8700億ドル、7位英国3兆7820億ドル、8位ドイツ3兆6030億ドルの順になる」という予測』 を紹介している。中国・インド、その他のアジア諸国・ラテンアメリカ諸国の台頭がすさまじい。いつまでもアメリカ一辺倒の思考から抜け出せない日本に未来 はないだろう。

「永遠平和のために」は光文社の古典新訳文庫にも収められている。こちらは中山元の新訳である。古典を新しい訳で見直そうという試みが続いているようだ。加嶋祥造が「老子」をまったく新しく『自由詩』とも言えるような新訳で出したことが一番印象に残っている。そして光文社の新訳古典文庫には読んでみたい古典がたくさん並んでいる。この中から正月休みにはアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」と「カラマーゾフの兄弟」を読んだ。後者はまだ2巻しか手に入れていないが・・・。 レーニンの「帝国主義論」もどのような訳だろうか。

世界が大きく変貌しようとするとき、人の精神世界においては古典への回帰が起こる。

【追記】「永遠平和のために」には藤原新也・野町和嘉・江成常夫らの写真が収められている。これらの写真がまた良い。

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2007年12月31日 (月)

「偽り」の一年だった

4e530 今年も今日を残すのみになった。なんとあわただしく過ぎ去ったことか。膵臓癌になり、幸い手術ができて生きながらえて正月を迎えることができるのだから、先生や家族に感謝している。

ペコちゃんの不二家に始まった「偽」の一年だった。赤福に白い恋人と続いた"紅白合戦"。保存すべき自衛隊の日誌の廃棄や防衛省の元事務次官が国会 で宣誓して証言したことがことごとく嘘だったこと、高知での白バイ事故に対する県警の犯人でっちあげなどなど、枚挙にいとまがない。

何といっても最悪の「偽」は、「美しい日本」だの「戦後レジュームからの脱却」だのと美辞麗句を並びたてた庶民感覚からかけ離れた総理が、選挙で敗北してもなお権力にしがみつき、あげくに突然投げ出してしまった。これ以上の「偽」はないだろう。

背後にあるのは、営利主義であり、儲ければそれでよいという思想であり、効率化・成果主義などで、この資本主義体制の行き着く先を暗示している。

資本主義でも社会主義でも、いま私たちが直面している問題に対する答えは出せはしないだろう。「社会主義」中国は「赤い資本主義」といわれるほどに儲け第一で貧富の格差も拡大している。この世界の現状を打破する道はどこにあるのだろうか。

加嶋祥造の「求めない」の一節にこうある。

求めない---
すると
ひとの心が分かりはじめる
だって、利害損得でない目で見るからだ
世の中のひとたちは
あまりに求めてばかりいる
君ひとり
求めないでごらん
珍しがられるから
求めない---
すると
何を考えているのだ
とひとは聞く
君はただ笑っていればいい!

古いカメラを処分しようとYahooオークションに出品してみた。結構よい値で処分できたので、これで新しい一眼レフのデジカメを買おうと思ってい る。処分したのはフィルムタイプの物が4台に、今では古くなってしまったEOS20Dのデジカメ。EOS40DとすでにあるRICOHのGX-100の2 台だけにしてみる。この2台であと数年間の写真を撮ることにしよう。

よいお年をお迎えください。

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2007年12月29日 (土)

沖縄戦「集団自決」

国語の試験問題です。

以下の三つの文章を比較して、どこがどのように変わったのか。なぜ、このような変更をしなければならなかったのか。そのねらいは何か、を述べよ。

  1. 「日本軍によって壕を追い出され、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」
  2. 「日本軍に壕から追い出されたり、自決した住民もいた」
  3. 「日本軍によって壕を追い出されたり、あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」

どうだろうか。高校日本史教科書の検定問題でのある教科書の検定の推移である。

(1)が原文である。その後、文部科学省や審議会の意思が働いて(2)に書き改められ、多くの県民の強い抗議を受けて教科書会社が訂 正申請をした結果、(3)の記述に変わった。

これは沖縄タイムスの12月29日付社説の一節である。この架空の試験問題への解答は、社説を引用すると次のようになる。

『よくよく読み比べないと気付かないような変化なので、二度、三度とゆっくり読み直してほしい。 (1)は「日本軍」という主語と「集団自決に追い込まれた」という述語の関係が明確だ。だが、(2)は主語と述語が切れてしまい、両者の関係があいまいになっている。 (3)は原文とうり二つである。原文がほぼ復活したといえるが、主語と述語のつながりはやや弱くなった印象だ。

この一連の経過を通して見え隠れするのは「できれば日本軍という主語を消したい」「日本軍と集団自決の関係をあいまいにしたい」という背後の意思である』

教科書検定問題を通じて考えなくてはならないことは、

  1. ヒロシマ・ナガサキは国民的意識となっているが、オキナワはいまだ国民的意識とはなっていないという、われわれ国民に突きつけられた事実。
  2. 今日なお復古的潮流は、過去の戦争における日本軍を英雄扱いしたという確固たる意志を持ち続けているという事実

南京大虐殺に対する石原都知事らの”抗議”あるいは反論。靖国神社への参拝問題、従軍慰安婦には軍は関与していなかったなどなど、同じ潮流の表れである。

大江健三郎氏をめぐる裁判で司令官が命令を下したかどうかが争点になっており、それを理由に教科書検定においては「軍が命令をしたという事実は確認できていない」としている。

しかし、ここには論理の大きな飛躍がある。一司令官が命令したかどうかということと、軍が命令したかどうかということは全く別の次元のことである。 従軍慰安婦問題でも同じ論理がまかり通っているが、あの戦争において軍の直接間接的承諾なしに従軍慰安婦が存在できるはずもないし、沖縄の集団自決に関し ても、命令したのは村長であり、校長であったにしても、軍の命令なしに事が起こるはずがないではないか。

教科書検定と審議会の議事録の公開、論議の公開が必要だ。

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2007年11月 3日 (土)

キムタクの『目』と憲法

岩波新書の「文章のみがき方」-辰濃和男 が売れているそうだ。同じ著者の「文章の書き方」の続編になる。 こうした類の本で、私が一番参考になったのが、本田勝一の「日本語の作文技術」であるが、こちらは句読点の扱い方などタイトルどおりに「技術」に関する内容である。これはこれで文章を書くときに結構参考になったものだ。

「文章のみがき方」に、「6 異質なものを結びつける」という章がある。俵万智の「サラダ記念日」から、 「『嫁さんになれよ』だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの」を引き合いにして、求婚とカンチューハイという異質なものを結びつけることで、「愛の告白」という重いテーマを軽やかなものに変える面白さがそこにあるというのだ。

さらに、もうひとつ異質なものを結びつけた好例として、2006年5月2日の朝日新聞文化欄に掲載された憲法学者・田村理の論評を上げている。「憲法」という硬いものと「キムタク=木村拓哉」を結びつけることで、文章の内容がかえって深く理解されるようになっている。

「キムタクの『目』と憲法」と題した論評は、再開されたテレビドラマ「HERO」の中で、警察は女性ニュースキャスター暴行事件の被疑者を、犯人は 別人だと知りながら追い詰めて自殺させる。納得できない久利生検事は、キャスターから犯人は別人だとの証言をとり、刑事に詰め寄る。そして言う。 「俺達みたいな仕事ってな、人の命を奪おうと思ったら簡単に奪えんだよ。あんたら警察も、俺ら検察も、そしてマスコミも、これっぽちの保身の気持ちでな、 ちょっと気を緩めただけで人を簡単に殺せんだよ。俺らはそういうことを忘れちゃいけないんじゃないすか!」。

田村理はこの論評の中でさらに、「確かに『HERO』は『ドラマ』にすぎないが、公権力の現実を絵に描いたように突いてい る。意に反する自白、被害者が『犯人は別人』だと告げても警察のメンツで歪む事実、いつのまにか無くなる物証……。これらが実際に『よくある話』だとしたら?」と続ける。

その「よくある話」が今、高知県で起こっている。スクールバスと白バイの交通事故で、スクールバスの運転手が二審判決でも有罪とされた事件である。

テレビでも「高知白バイ死亡事故 証拠捏造疑惑が浮上」などと報道されたが、ネット上ではだいぶ以前から「キッコのブログ」などで騒がれていた。詳しい事件の内容は「キッコのブログ」や「世に倦む日々」をみてほしいが、冤罪事件の疑いが大いにあると思う。

「キムタクの『目』と憲法」の論評で田村は、「憲法は公権力にしてもらっては困ることを定める法である。だが僕達はそのことをうまく理解できな い。」とし、私たちは憲法の「権利」=国がしてくれるべきことだけに目が行きがちであるが、「公権力の不正を絶対に許さぬ「目」、「けっしてこぼさぬ涙を たたえた強い怒りの目」を支配される側にいる僕達の中に育てなければならない。」 そのためにも、「HERO」を見て「公権力の怖さ」の具体的なイメージを少しでも感じとることができたら、そこに憲法の存在意義がある。」と書く。

今日11月3日は61年前に日本国憲法が公布された日である。公権力の不正を絶対に許さぬ「目」で、私も「「高知白バイ死亡事故」のその後を注視している。


当日の朝日新聞の論評全文を載せておく。

「キムタクの『目』と憲法」

2006/5/2朝日夕刊  田村理(憲法学者)

「キムタク好きですか? 『HERO』見ましたか?」。必ず憲法の講義で問いかける。この夏、復活するというこのドラマのヒーローは、僕の講義では「権力を持つ者はすべてそれを濫用する傾向がある」と喝破したモンテスキューより重要である。

第10 話(田辺満脚本)。木村拓哉さん演じる検事久利生公平は、女性ニュースキャスターへの暴行を警察で自白した被疑者を証拠不十分で不起訴にする。しかし再び 彼女が襲われる。被害者も刑事も犯人は別人だと気づきながら、被疑者を追いつめ、自殺させる。納得できない久利生検事は、キャスターから犯人は別人だとの 証言をとり、刑事に詰め寄る。そして言う。「俺達みたいな仕事ってな、人の命を奪おうと思ったら簡単に奪えんだよ。あんたら警察も、俺ら検察も、そしてマ スコミも、これっぽちの保身の気持ちでな、ちょっと気を緩めただけで人を簡単に殺せんだよ。俺らはそういうことを忘れちゃいけないんじゃないすか!」。

けっしてこぼさぬ涙をたたえた木村さんの強い怒りの「目」は立憲主義の象徴である。「簡単に人を殺せる」ほどの力=公権力に制限を課して濫用を防ぎ、国民の人権をまもる、その手段として憲法を定める。そういう考え方を立憲主義という。憲法の存在意義である。

日本国憲法も①法の定める適正な手続きによらなければ刑罰を科してはならない(31 条)②拷問・脅迫等による自白は証拠とできない(38 条2 項)③自白を補強する証拠が無い場合は有罪にできない(同3 項)等の定めをおき、刑事手続きにかかわる公権力に制限を課している。学校で習う憲法の基本原理もすべて立憲主義とつながっている。公権力を少数者が勝手 に行使しないようにみんなで物事を決める「国民主権」。公権力がしてはいけないこと(=人権)のリストを掲げて違憲審査制で保障する。「基本的人権の尊 重」。そして、国家のために公権力が国民の命を犠牲にしてはならないと命じる「平和主義」。

憲法は公権力にしてもらっては困ることを定める法である。だが僕達はそのことをうまく理解できない。多くの人にとって憲法は、生存権保障のように国 =公権力がしてくれることを定めた法である。国は人権を与えてくれ、僕達を護(まも)ってくれる頼もしい「正義の味方」だと感じているのである。憲法の価 値を護ろうとするなら、条文を「改めない」ことよりも、僕達のこの権力観を「改める」ことが必要である。

思い出そう。2003 年12 月14 日のサダム・フセインの髭面を。国民には「聖戦への参加は義務である」と命じながら、穴蔵に隠れていた権力者の姿を。「撃つな、私は共和国大統領だと保身した大統領閣下のあの「うつろな目」は国民を護ってくれる人の「目」だろうか?

日本の警察はどうか。確かに「HERO」は「ドラマ」にすぎないが、公権力の現実を絵に描いたように突いている。意に反する自白、被害者が「犯人は別人」だと告げても警察のメンツで歪む事実、いつのまにか無くなる物証……。これらが実際に「よくある話」だとしたら?

それでも公権力が「正義の味方」であり続けるなら、僕達の無防備な信頼が「簡単に人を殺す」ことを正当化し、憲法を改正しようがしまいが、立憲主義は無に帰すだろう。

「誰でもみんな最初はそう思ってたんだ。でもな、現実はそうはいかないんだよ。そんなのただの理想だよ」久利生検事に反論する矢口刑事に僕は共感す る。理想に燃えて公権力に携わる人も、皆がいつも憲法尊重擁護義務(99条)を果たせるほど「強く」いられるわけではない。モンテスキューの言によれば久 利生公平その人でさえ。英雄に頼ってはいられない。 だから、公権力の不正を絶対に許さぬ「目」、「けっしてこぼさぬ涙をたたえた強い怒りの目」を支配される側にいる僕達の中に育てなければならない。

そのためにまずするべきことは、「公権力の怖さ」の具体的なイメージを感じとることである。だから憲法記念日には、難しい議論はひとまずわきにおい て、「HERO」を見よう。キムタクのあの「目」に共感できたら、「あの被疑者みたいにボーッとしてるとヤバいかも」と少しでも感じることができたら、そ こに憲法の存在意義がある。

たむら・おさむ専修大助教授65 年生まれ。一橋大大学院博士後期課程修了。著書に「フランス革命と財産権」「投票方法と個人主義」(いずれも創文社)など。

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2007年10月28日 (日)

亀田問題は、大事なことなのか?

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普段はテレビを見ない、ましてスポーツ番組はまったく見ない私にも、食卓の背中越しに亀田問題を報じるテレビレポータの声が聞こえてくる。

世間が騒いでいるので、インターネットで亀田と内藤の試合をダイジェストで見たが、スポーツ精神もなく、技術もなく、ただパフォーマンスでここまできた選手の反則だらけの試合に唖然とした。とんでもない親子がいたものだとも思った。非難されても当然である。

しかしである。情けない親父の代わりに若干二十歳の若者が一家を代表して謝罪しているのである。彼の語彙が貧しいのは良く分かる。しかし涙を流さん ばかりの表情は真剣だったはずだ。それに対して、あたかも鬼の首を取ったかのように『正義』を振りかざすレポータのなんと見苦しい姿か。

そもそも彼ら一家を持ち上げて視聴率稼ぎに利用したのは同じマスコミ界のTBSではないのか。最も非難されるべきはTBSであるはずだが、同業を非難すると後のしっぺ返しが怖いのか。

所詮スポーツ界の、一ボクシングでの出来事である。大阪の零細業者がマスコミの扇動に乗せられて一時の夢を見ただけのことだ。反則があった=謝罪した、それで終わりでよいではないか。魔女狩りのように執拗に報道する必要がどこにあるのか?

マスコミにはもっと大事な報道すべき事があるだろう。

  • 岩国のアメリカ兵による強姦事件はどうなった?身柄は日本の警察に引き渡されたのか?
  • 沖縄の普天間基地の問題は?
  • 浜岡原発の停止訴訟は、新潟の地震の後にあの判決で大丈夫なのか?
  • 山田洋行の事件は? マスコミは「元専務」といまだに匿名扱いだが、元専務が防衛庁OBであるというのは明らかなことだ。「聖域」にしてしまった防衛予算がこうして略取されている。
  • なによりも「年金問題」はどうなったんだ。
  • 消費税を17%にも上げようという経済界の要求は全うなのか?福祉と消費税増税の二者択一以外に選択肢はないのか?

社会保険庁の職員の「横領事件」もたくさん取り上げられているが、こんな微罪を執拗に報道するよりも、国が約束した年金を支払わないという詐欺的行為をこそ追求すべきではないか?

アメリカは怖い、だから報道できない。政府にも物申せない。警察にもいえない。ただただ相手が弱いとみると、執拗に食らいつくように追求する。これじゃ「権力の監視」というマスコミの本来の姿を忘れ去っているとしか言いようがない。

こうして、どうでも良いような”事件”が群集の注意を集めている間に、大事なことがその影で政府の思うがままに進行してゆく。ヒトラーは第一次大戦 以降の不況にあえぐ国民の怒りを巧妙にユダヤ人への怒りにすり替えて、ファッシズムへの道を歩んだ。独裁者は国民の怒りを他のものにすり替えることで権力 を維持し拡大する。亀田問題の直前まで、年金問題が国民の関心事で怒り心頭に発していたはずだ。

亀田問題で一番ほっとしているのは桝添であり福田首相だろう。

これって『いつか来た道』ではないか? 日本のドイツの戦前において。

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2007年9月22日 (土)

「老人虐待防止法」はこの国の政府に適用すべし

来年4月から「後期高齢者医療制度」なるものが予定されている。これは昨年の6月に小泉自公政府が決めたものだが、一言で言えば、年寄りから確実に保険料を取り立てる一方で医療費は”定額払い”で極力抑制しようというものだ。

75歳以上の老人(1300万人)は現役世代の医療制度(国民健康保険・医療組合)から切り離して別立ての制度に加入することになる。現在子供の扶 養家族なっていて保険料を負担する必要のない低所得者もこの制度に移行されて保険料を徴収されることになる。しかも保険料は年金から天引きされる。

厚生労働省の試算では、保険料は全国平均で6200円/月というはずだったが、東京都の健保組合の試算では12900円/月になるケースもあるなど、厚生労働省の試算の1.3倍から3.3倍にもなるという。

医療費の「定額払い」は、どんなに治療をしても一定の医療費しか医療機関になし払われない。これを超える医療をした場合は病院の持ち出しになる。

負担は増えるが、受益は抑制されることになる。昔「老人に税金を使うのは、枯れ木に水をやるようなもの」といった政治家がいたが、いまでもこの国の 政府の本音は同じようだ。二度にわたる「介護保険料引き上げ」を始めとして、「老人医療費の改悪」「生活保護老齢加算廃止」「生活保護生活扶助基準額引き 下げ」「老年者控除の廃止」「厚生年金・共済年金保険料引き上げ」「国民年金保険料引き上げ」、それに連動する「市民税の大幅な引き上げ」。年金暮らしの 老人からいったいどこまで取り立てるつもりなのだろうか。

こんな政治を変えたい、というのが先の参議院選挙の国民の意思表示だったが、無責任男=安倍晋三は慶応病院に逃げ込んでしまい、マスコミはできレースの総裁選に過熱報道を続けている。

平清盛の思いつきで摂津の国福原(現神戸市兵庫区)に突然の遷都が発せられた(治承4年、1180年)とき、鴨長明は「方丈記」に次のように書いている。

伝え聞く、いにしへの賢き御世には、あはれみをもちて、国を治め給ふ。すなはち、殿に茅をふきても、軒をだにととのへず。煙のともしきを見給ふ時は、限りある貢物をさへゆるされき。これ、民を恵み、世を助け給ふによりてなり。今の世の有様、昔になぞらへて知りぬべし。


昔の優れた天子の御世では茅で葺いた御殿の軒先さえ整えなかった。民のかまどから立つ煙が乏しいときは租税・年貢さえ免除されたという。そういう昔と比べて今の政治は・・・と長明は批判しているのである。

政治というものは千年たってもあいも変わらず庶民いじめしか念頭になさそうだ。小泉政治が進めた「新自由主義」政策が、いよいよ規制緩和と負担増と いう形で庶民を押しつぶそうとしている。福田を麻生もその小泉「改革」を継承すると明言しているのであるから、ますます暮らしづらい世の中になることは間 違いあるまい。小泉はかつてこう言って霞ヶ関に指示している。「国民が、もうお願いですから消費税を上げて下さいと言うまで、徹底的に(社会保障を)削り まくれ」と。今後マスコミをも引き込んで「社会保障か消費税か」の二者択一キャンペーンが張られるに違いない。しかし、財源は消費税に頼らずともある。た とえば海上自衛隊のインド洋での「無料のガソリンスタンド」を止めるなど、軍事費の見直し。バブル期以上の大もうけをしている大企業への応分の負担をさせ るなどなどだ。

私は現在抗がん剤などの治療で月に約10万円の医療費自己負担をしている。このさき退職して年金暮らしになったときには負担に耐えうる金額ではないし、保険料がさらに増額されるのでは必要な治療を受け続けることなどできはしない。

同じ小泉政権下で1年半前に「老人虐待防止法」なるものができているが、老人を虐待し続けているこの国の政府にこそ、この法律は適用するべきだと思うこのごろである。

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2007年7月11日 (水)

選挙までには退院したい

体重が69.5kgになった。ここ数十年来で初めて70kgを割った。点滴を減らしているのに食欲がないものだから、減量するのは当然だろう。今日からは全粥になるはずだから、少しは食欲が出てくれるとよいが。

参議院選挙の投票日までには何とか退院したい。退院して安部シンゾーにバッテン投票をしなくては腹の虫が収まらない。 私が手術をして意識が朦朧としている間に、また一人大臣が辞めているではないか。被爆地長崎出身の防衛大臣が「原爆投下はしょうがない」と発言したのだか ら、『普通の美しい国』だったら国を挙げての大事件で、デモやストライキが頻発してもおかしくない発言だろう。しかし当の大臣は辞任の記者会見で、あの ミートホープの社長と同じようにへらへらとにやけた笑いで「誤解をする国民が悪い」とのたまわったのだから、被爆者でなくても頭に来る。

自殺した大臣の後釜もまた同じ事務所費の疑惑が出る始末。アメリカなら就任させる前にCIAが徹底的に疑惑がないかどうか調査するはずだが、日本に内閣調査局は機能していないのか。

一番はもちろん年金問題だ。これまでの年金の積立金は150兆円とも180兆円とも言われるが、その半分はなくなっているあるいは回収不能の可能性 があるという。こうした疑惑に政府はこれまでの年金資金の運用を100%明らかにすべきだ。年金住宅資金融資などのように帳簿上はあっても実際には回収で きない融資がたくさんあるのではないのか。バブルが崩壊したときに年金融資はどのような損害をこうむったのか、知りたいことは山ほどある。

自民党と公明党が、この国をだめにしていく。今度の参院選は自民党の議席を45以下にしない限り過半数を維持することになるので、このままの悪政が またまた続くことになる。消費税のアップも避けられないだろう。住民税の大幅アップに悲鳴をあげている人、消費税が15%になったんでは生活できないよと いう人は、自民党・公明党に投票してはだめだ。ここは比例区は共産党、ひとり区は自民・公明に勝てる候補に入れることだ。共産党は政策が一貫していてぶれ ないという点で信頼している。しかしこの党の石頭振りにも困ったものだ。小選挙区制の下で多くの選挙区に候補を立てるのは、逆に言うと、野党票を分割する ことにより自民・公明の悪政を延命させることになるのだが、あいかわらず『確かな野党の存在が大事です』と主張している。

今は自民・公明党の悪性をストップさせることが緊急の課題のはずだが、この党には自党の勢力維持がそれよりも大事と見える。しかし現状ではこうした欠点を考慮しても、なおかつ全国区はこの党を支持するしかないと思う。

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