統合医療:講演文字起こし①

最近行った2回の講演内容のうち、補完代替療法に関する部分を書き出してみました。パンキャンのセミナーでも、参加者から「こんな話が聞きたかったんですよ」と好評でした。やはりがん患者としては「治るために何ができるのか?」が最大の関心事なのでしょう。このブログに書き溜めてはあるのですが、あちらこちらに分散しているので、そのまとめという意図もあります。PowerPointの1~13までの冒頭部分は私の病歴紹介なので割愛しました。


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多くのがん患者は、がんを治すために自分でも何かをしたいと思っているのです。医者任せではなくて、自分も治療チームの一員として何かできることがあるはずだと。だって、自分の体だし、治療の結果に命を賭けて責任を取るのは医者ではなくて患者ですからね。

現代医学にも限界があります。それに最近はますます細分化が進んでいる。先日大学病院で整形外科の診察を受けたのですが、整形外科の中にさらに「肩関節外科」「手・肘関節外科」「足関節外科」「脊椎・脊髄外科」等と分かれていて驚いた。臓器は診るけど患者は診ないことになりかねない。少なからずの医者が、 ディスプレイを見て患者の顔もろくに見ないと言われるのもなるほどと思った。

そのような現在医学の欠点を「全人的医療」で元に戻そうよというわけ。患者が自分の医療に参加しようとすると、当然それは補完代替医療といわれる分野になる。しかし、これには科学的根拠(エビデンス)が乏しい。乏しいから代替医療なのである。あたりまえといえばあたりまえだが。

しかし、そのなかでもエビデンスのレベルには差がある。よりましなエビデンスのあるものを使って、現代医療と有機的に結びつけようというのが「統合医療」です。

15統合医療では、人間には自然治癒力が備わっていると考えるのです。

ナイフで切った切り傷も、いつのまにか傷口がふさがってきますね。周囲の細胞が張り出してきて、いろいろなサイトカインといわれる物質を放出し、元通りにきれいになりますが、実はこの仕組みが現代の医学でもまだよく分かっていないのです。その程度ですよ。現代医学と言ったって。

がんは遺伝子の病気だといわれますが、遺伝子だけでがんのすべてが説明できるほど単純ではありません。近年ではエピジェネティクスという分野の研究が盛んになり、遺伝子のオン・オフをコントロールしているのはこれらのエピジェネティックな働きであることが分かりつつあるのです。それにも免疫システムが関わっている。人間の身体の自然治癒力というもは、本当にすごい力を持っているのです。

また、患者を臓器という部品の集まりと見るのではなく、その人なりの生い立ちがあり、家族環境があり、どんな仕事をしているのか、どのような考え方をしてきた人なのか。こうした「患者の物語」にも関心を持ちます。なぜなら、こうしたことが病気の原因の特定や効果的な治療法の選択に大切だからです。

「スピリチュアリティ」これの説明は難しいですね。訳せば「霊性」となるのでしょうが、まだよく分からない。テレビに「スピリチュアル・カウンセラー」が出てくると、私は、どこかいかがわしさが漂っているように感じてしまう。

私なら、老子のタオを思い起こしますね。すべての命はタオにつながっている。タオは宇宙のエネルギーであり、すべての物の有り様の法則でもある。私の命は、超新星の爆発で生じた重い原子が集まってできた太陽系の第3惑星、その鉄などの原子で私の体はできている。その私に宿った「意識」は、だから、 宇宙のすべてとつながっているのです。<わたし>が生きた証しはきっとどこかで何かの役にたつはずだと思っている。スピリチュアリティをこのように受け取っています。

少し話がそれましたが、三つ目は「ライフスタイルの重要性」です。がんの遺伝子を持っていても、がんになる人とならない人がいる。病気を治し、健康になるためには、現代医学だけでは足りません。食事・運動・休息と睡眠・ストレス・人間関係などの問題を解決することが大事です。

16 統合医療の一部を担う「補完代替医療」は、アメリカにおいて1990年代から出現してきました。高齢化社会になり、生活習慣病が主な疾病になりました。生活習慣病の多くは治るということがありません。また、医療の細分化により、患者の心の問題が置き去りにされ、インターネットなどの情報手段が発達して、健康への関心の高い患者は能動的に情報を探し、治療法の自己決定意識を持つようになってきます。医療に関してもこれまで以上の生活の質(QOL)を重視した 価値判断を行うようになってきたのです。

米国の国立補完代替医療センターでは「統合医療」を、「従来の医学と、安全性と有効性について質の高いエビデンスが得られている補完代替療法とを統合した療法」と定義しています。

そして、米国では『がんの統合医療』という医学生向けの教科書までできているのです。日本はまだまだ遅れています。

日本でも厚生労働省による「統合医療事業」として『「統合医療」情報発信サイト』が運営されるようになりました。お目当ての情報がすぐには出てこないなど、まだまだ改善の余地はありますが、ぜひチェックすべきサイトだと思います。

17 補完代替療法とは、「一般的に従来の通常医療と見なされていない、さまざまな医学・ヘルスケアシステム、施術、生成物質など」のことで、「まだ科学的にその効果が証明されていいないもの」です。これには、瞑想やヨーガ、マッサージ・整体、気功・・・こういったものが含まれます。

18さて、私が7年間実行してきた補完代替療法を紹介しますが、その経験から申しますと、効果の貢献度というか、がんに効くレベルは、感覚的ですがこの図のようになると感じています。つまり、健康食品やサプリメント、多くの患者さんがまずはサプリメントに走るのですが、これにはほとんど効果はない。物にもよりますが、ほとんど科学的根拠やデータのないものもあります。

健康食品・サプリメント < 食事 < 運動 < 心の平安

このような序列ではないかと思います。「心の平安」これが一番重視すべきことですよ、というのが今日の話の核心部分です。後ほど詳細に説明します。

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がんを治すことができると、科学的に証明された代替療法は一つもありません。ここで言う「科学的の証明された」とは、ランダム化比較試験あるいは非ランダム化比較試験のことです。患者を二つに分けて、片方にはプラセボを与え、もう片方に試験対象の薬物なりを投与するという方法です。これで統計的に有意な差があるかどうかを検証するわけです。信頼性ランキングからいえば、例えばムラキテルミさんのがんが自宅で治ったとしても、単に1症例にすぎないので信頼性は低いのです。つまり、同じことをしても、あなたのがんが同じように治るという保証はまったくありません。

1万人に一人は、何もしなくてもがんが自然消失することがあるのですから、ムラキテルミさんはその例だったのかもしれません。がんが治ったのは本当だとしても、何がその原因なのか、本当のところは分からないのです。

専門家などの報告はエビデンスレベルとしては最低のランクですね。済陽高穂、石原結實、安保徹、これらの専門家が何を言おうと、科学な根拠がないかぎり信用しては危険です。

馬ではあるまいし、ニンジンばかり食ってては体力がなくなるでしょう。それでがんと闘えるのでしょうか。

20 現代医学には限界がある。東洋医学はどうも説明不足だ。代替療法にはエビデンスが乏しい。それじゃがん患者はどうすれば良いのですか? エビデンスが揃うまで手を出すべきではないという専門家もいます。でもね、がん患者には「時間が無い」のです。余命数ヶ月と言われたら、待っていられない。一つの臨床試験の結果が出るまでには10年はかかりますよ。エビデンスがでるまでに。10年も待っていられる患者なんておりません。

だから、私の代替療法に対する選択の基準は、

  • ヒトに対しるある程度のエビデンスがある(せめてコホート研究以上)
  • 重篤な副作用が無いこと。
  • 費用が高額でない(ポケットマネーで賄える)

の三つです。

完全なエビデンスがないから代替療法なわけで、それでもエビデンスレベルに差があります。マウス実験や試験管でのデータしかない等というのは私の採用する対象にはなりません。右の図で言えば、せめてヒトに対するコホート研究以上の科学的な証拠が欲しい。

二番目は「重篤な副作用が無いこと」。がんを治す行為が、別の病気を引き起こしたり、そのために死んだりでは目も当てられません。ただ、それではどこまでの副作用を容認するのか。これは得られると予想される利益とのバランスを考えて、患者個人が決めることです。

三番目の費用の問題。これって、以外と重要です。治すために続けるのですから、何年も買いつづけることになります。月に十数万円もかかるようでは、普通の家計では続きませんよね。

以前にNHKが覆面インタビューしていました。がんに効くというサプリメントを販売している業者ですが、このように言っていました。

原価が千円のサプリメントを一万円の価格にすると売れないが、十万円の値を付けると飛ぶように売れた。

高い物にはそれなりの効果があるはずだと、がん患者は錯覚するんですね。これほど高いものを摂っているのだから、効果があるはずだと。価格と効果には何の関係もありません。むしろ、理由もなく高いサプリメントは疑ってかかった方が良い。

21 健康食品やサプリメントを選択するのであれば、『「健康食品」の安全性・有効性情報』のサイトでぜひチェックして欲しい。各食品のごとのデータがPubMedの論文を根拠に示され、日々更新されています。

この中から膵臓がんに何らかの効果(腫瘍が消えるということではないですよ)があると思われるものを検索で抜き出しました。【関連ページ

断っておきますが、これらを推奨するのではないですよ。気になるサプリメントがあれば、こうした方法で調べてみれば良い、考え方が重要だという例として挙げています。

私が採用しているのは、先の三つの基準に合うもの、カテキン・メラトニン・ビタミンD・EPA/DHAですね。これらの詳細については、私のブログの検索窓にキーワードを入れてみれば、たくさんの情報がアップされています。

牛蒡子の成分、アルクチゲニンについては、確か国立がん研究センター東病院で臨床試験が始まっているはずですね。【詳細はこちら

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時間もないので、ひとつだけ詳しく見てみましょう。メラトニンです。

メラトニンは脳の松果体でつくられるホルモンで、体内時計の働きと関係しているといわれています。ジェットラグ(時差ぼけ)の緩和に有効だという話で、国際線のパイロットなどが使用しているとも。日本では医薬品扱いですので医師の処方箋がないと買えませんが、アメリカでは普通にドラッグ・ストアで売られています。私はインターネット上の個人輸入代行業者を利用して購入しています。

ごらんのように、がんに関する「一般情報」では「固形がんに対して有効性が示唆されている」「すい臓がん、胃がん・・・縮小を促進するという報告がある」などと書かれていますね。

最高のエビデンスレベルというわれる「メタ解析」で、「固形がんに対する化学療法および放射線療法とメラトニン20 mg/日摂取の併用は、腫瘍寛解や1年生存率の増加、放射線化学療法による副作用 (血小板減少、神経毒性、疲労) の減少と関連が認められたという報告がある」となっています。

一方で、その下の部分では、「メラトニン20 mg/日を28日間摂取させたところ、食欲、体重、QOL、生存率に影響は認められなかったという報告がある」と否定的な報告もあることが分かります。

だから、まだ代替療法なわけで、すべてに肯定的なデータばかりなら標準治療に取り入れられているはずですよね。

がん患者としては、もうこれだけのエビデンスがあれば「やってみるしかない」「無視するのは勿体ない」と思うのではないでしょうか。

私の場合、6年前からメラトニンを摂り始めました。最初は服用量も不明だったので、3mg,5mg,10mgと徐々に増やし、最終的には20mgにしましたが、この量では翌日の昼間も眠くてたまらず、10mgに減量したのです。

私が服用を始めたころは、上のメタ解析のデータはまだありませんでしたね。

メラトニンは人体で作られるホルモンですから、その効果について特許がとれないのです。だから製薬企業が莫大な資金を使って臨床試験をするということはないのです。だからなかなか効果のエビデンスが出てこなかったのですが、米国の大学などで徐々に研究が進んできた次第です。(服用は自己判断、自己責任ですよ!)

他のカテキンなどの情報は、私のブログでキーワードを入力すれば出てきますので、興味があれば閲覧してください。

以上で健康食品・サプリメントの話はおしまいです。次は食事と運動についてです。

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がんに限らず、医療の基本は食事と運動です。入院患者の食事が保険の対象となるのも、食事が治療の一環だからです。必要な栄養素を摂って体力をつける。がんと闘うための基本ではないでしょうか。”ニンジンジュース断食療法”などというものは、これと真逆の食事ですよね。ムラキテルミさんの本はミリオンセラーで売れているのですから、この食事療法を実行した患者の中から、第二、第三の「ムラキテルミ」が数十人規模で自己申告してきても良さそうなものではありませんか。そんな気配はなさそうですが。

私の食事の基本は、シュレベールの『がんに効く生活―克服した医師の自分でできる「統合医療」』に書かれた内容が中心ですね。魚と野菜、オリーブオイル。地中海式の食事といわれるものでしょうか。全粒食物はずっと玄米を食べてきましたが、血糖値の管理が気になり、糖質制限食を取り入れたときから、玄米もほとんど食べなくなりました。

がんを治す食事はありません。『がんになってからの食事と運動』にも書かれているようとおりです。結局は野菜、肉、魚など特定の食材に偏らないでバランス良く食べること。

「がん生存者の栄養と運動に関する米国対がん協会のガイドライン」をスライドにしてありますが、第一に適切な体重を維持すること。肥満も痩せ過ぎも注意です。そして運動をすること。予想に反して生存しているがんサバイバーのほぼ全員が何らかの運動を定期的にやっているのです。

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私は通勤に往復一駅分を歩いてきました。約2.5kmでちょっと早足ですと25分くらいです。往復で50分、週に3日歩けば150分で、ちょうどスライドに書かれた推奨時間となります。筋力トレーニングはとくにやっていませんが、チェロを弾くのはけっこうな筋トレになります。

私も術後ICUから出たらすぐに廊下を歩き始めました。あるときは点滴棒を担いで階段を上っていたら看護師に見つかってえらく叱られた。「転んだらどうするんですか!!」

こんな無茶はしてはいけませんが、ともかく「歩け、歩け」ですよ。歩いている患者は治りが早い。

運動の効果は本当にすごいですよ。みなさんサプリメントだとか食事とか、何か形のあるもの、一発でがんを攻撃して消してくれる物を探していますが、自分の体の自己治癒力を高めたいのなら、運動に勝るものはありません。

4月に放映されたNHKスペシャル「人体 ミクロの大冒険 第3回 あなたを守る!細胞が老いと戦う」は長生きする人の免疫細胞には特徴がある。NK細胞が老化による影響がなく、元気なのです。老化した免疫細胞を20大と同じように活発にする方法があるのです。それが運動です。わずか5分間の自転車漕ぎ運動で、免疫細胞が活発に活動することを、バーミンガム大学の研究者らが明らかにしました。【リンク先の動画の13分ころから】

次に、食事と運動に関する米国対がん協会の詳細および世界がん研究基金の予防指針を示します。詳しい説明は時間の都合で割愛しますが、興味を持たれたらあとでご覧くださればよろしいかと思います。

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統合医療:講演文字起こし② に続く

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