TPP批判

2014年5月16日 (金)

混合診療の解禁=「選択療養制度」

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政府の規制改革会議が「選択療養制度(仮称)」の創設を提言し、それに日本医師会などが反対声明を出し、がん患者23団体の有志も「有効性と安全性が担保されない自由診療の放任や、国民皆保険制度のなし崩し的な空洞化につながりかねない」と、田村憲久厚労相らに反対の要望書を提出しました。

だから言わないこっちゃない!

このブログでも何度か書いてきたように(最後にリストを載せました)、政府・厚生労働省の官僚は、患者のニーズという錦の旗の下で、堂々と医療費の削減策を講じてきているのです。

一部のがん患者が「混合診療解禁」を支持したり、なかには裁判に訴えた方もいました。ドラッグ・ラグの問題とも絡めて「海外で使用できる抗がん剤を、国内でも混合診療で使えるようにして欲しい」という思いは、生死の境にある患者にとっては切実なことには違いありません。しかし、それでは使えるのは経済的に余裕のある患者だけ。いまでも医療機関を変えさえすれば、保険適用の薬と適用外の薬を使うことは便宜的にできるのですから、裁判にしてまで混合診療解禁を訴えるのは納得できません。

「俺は金があるから、良い薬を使いたい。金のない患者のことなどは知らない」という考えなのでしょうね。

抗がん剤については「効果の証明された薬を、早く、公平に」でなければなりません。「公平に」使えるようにするには、国民皆保険制度を何としても維持させなくてはなりません。

日本医師会は次の点が問題だとしている。

  • 安全性・有効性等を客観的に判断するプロセスがない。
    かつての規制・制度改革に関する分科会は、「事前規制から事後チェックへ転換し、実施する保険外併用療養の一部を届出制に変更すべき」と主張しており、これ自体きわめて問題であるが、今回は事後も含めて検証の枠組みがない。
  • 副作用が発生したり、医療事故が起きた場合
    問題の所在が公的保険診療なのか保険外診療なのかを見極めることは困難であり、公的医療保険制度に対する信頼性が失われる。
  • 副作用の治療が公的保険から給付されるようなことは、他の被保険者の負担が増すこととなり、理解が得られない。
  • 医師と患者の間には、医療について情報の非対称性が存在する。特に、高度 かつ先進的な医療であれば、患者が内容を理解することは非常に難しく、患者の自己責任にゆだねることになる。
  • 「選択療養」を受ける患者は限られている。全国統一の仕組みの下でなく、患者個人のニーズに対応して公的医療保険財源でまかなうことは、他の被保険者の理解が得られない。また民間療法ほかさまざまな医療や医薬品等が「選択療養」の対象になることが懸念され、公的医療費がかえって増高する。
  • 新たな医療が保険収載されなければ、資産や所得の多寡で受けられる医療に格差が生じ、必要な医療が受けられなくなる。

医師と患者では持っている医療情報に決定的な差がある。患者の立場は弱く、藁にもすがる思いで受診する患者に未承認の高額な医療を勧められたら、断ることが難しい。

卵巣がん体験者の会スマイリーの片木美穂さんは「夢のような未承認治療も保険適用の抗がん剤治療もしてくれる医療機関があれば、患者はそこを選ぶ。そうなると、未承認治療を行う医療機関が、慣れない抗がん剤治療まで始めかねない。抗がん剤による突発事例に緊急対応できないような医療機関で治療を受けるのは、患者のためにならない」と反対の立場を表明している。

また、「保険適用を目指すには、有効活用できる質の高いデータが必要。いい加減なことでは困る。それで治療薬が売れるなら製薬会社は治験を中止しかねない。それではドラッグラグは悪化する」と指摘する。

「患者が選択できる」ことを触れ込んでいるが、その対象となる医療とは、有効性も安全性も確かめられていない医療である。こんなものを導入することは、患者の利益に離らないことは明らかだろう。

この問題、実はTPPとも絡んでいる。アメリカはTPPが合意できるかできないかにかかわらず、医療分野での実質的な解禁を至上命令として行動しているのです。

政府の真の狙いは明かです。医療費抑制のために、金のある患者金を出せ、金の無い患者は命を削れ、ということです。露骨には言えないから、「患者さまの選択権を尊重し、お任せしました」と言うのだ。

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2013年4月24日 (水)

TPPが医療を壊す:TPP参加による国民皆保険制度への影響

宮城県保険医教会のホームページに、全国保険医団体連合会事務局次長 寺尾正之氏の寄稿『TPP参加と国民皆保険制度への影響』が載っている。

医薬品の特許強化が焦点に

医薬品をテーマに2つの分野で交渉されている。

  • 「制度的事項の『透明性』の章」で、政府の医薬品の保険償還価格の決定過程に製薬企業を参加させる
  • 「知的財産の章」で、医薬品のデータ保護=特許保護の強化

アメリカ通商代表部は、わが国の国民皆保険制度を“魅力的な巨大マーケット”と位置付けている。2011年の「医薬品アクセス強化のためのTPPでの目標」や「外国貿易障壁報告書」では

  • 医薬品の価格決定の透明性を高め、保険償還価格を見直す
  • 高薬価を維持する「新薬創出加算」の恒久化
  • 外国事業者を含む営利企業による営利病院運営(2012年の外国貿易障壁報告書には明記されていないが、要求を断念したわけではない)
  • 包括的な医療サービス(混合診療)の提供

などを求めている。

上がる薬価 差額負担の導入か

  • 「医薬品のデータ保護」を盛り込むよう提案している。
  • 特別な安全性、質、効果を有する医薬品についてはプレミアムをつけて評価する
  • 先発医薬品メーカーが新薬の臨床実験データの独占権を持つ

後発医薬品の開発・生産が封じ込められ一方で、新薬の価格は高騰することになる。

  • 先進国の中で日本の薬価は高いが、さらに高いのがアメリカの薬価である。
  • TPPに参加すれば、日本の薬価がさらに上がり、薬剤費は膨張する。
  • 公的医療保険財政が悪化し、診療報酬本体=技術料の引き下げに向かうおそれがある。

7月に行われた厚生労働省版「提言型政策仕分け」がまとめた後発医薬品医用促進に関する提言では、上がる薬価への対応策として「参照価格制度の検討」が明記された。

  • 医薬品の保険給付に上限を設ける
  • 超過分は患者自己負担とする。つまり薬剤の差額負担である。
  • 患者から1~3割の窓口負担に(さらに)上乗せして薬剤の差額負担を強いる

先進医療を拡大 特許対象に

日本の国民皆保険制度は、有効性、安全性、普及性等の条件がそろう最新の医療技術などを保険給付の対象に組み入れてきた。一方で、

  • アメリカは手術方法など医療技術を特許保護の対象にしている(日本やEUは特許保護の対象にしていない)。
  • TPP交渉でアメリカ通商代表部は、「人間の治療のための診断・治療及び外科的方法」について特許対象化するよう提案
  • アメリカ先進医療技術工業会も、「規制や償還制度」への具体的対応を求めている。

つまり、医の倫理はうち捨てられ、文字通り「医は算術」とするのがTPPだ。

日本経済新聞は2012年8月17日付けの記事で、「中医協で森田会長は5月、最新の医療技術を『費用対効果』で厳しく選別していく方向を示した」と紹介。「抗がん剤は本人が負担し、その他の基本診療部分だけ保険を適用する『混合診療』案などが浮上している」と報じている。

新しい抗がん剤を保険適用するのではなく、『混合診療』として患者の負担を増やそうという方向だ。これはまさにがん患者にとっては「命の沙汰も金次第」となる。ドラッグ・ラグ問題よりもこちらの方がより深刻だろう。『混合診療』が解禁されたらドラッグ・ラグが解消するかのような脳天気な議論があるが、それでは政府の医療費が青天井になる。

  • 2010年の一年間で、厚労省が認めた混合診療(保険外併用療養費制度)が「先進医療」は、概算医療費36.6兆円のわずか0.047%である。
  • TPPに参加すれば、先進医療の対象が拡大され、特許対象となって価格も上がる可能性が高い。
  • 前述の新聞報道のように、混合診療の拡大・全面解禁に向かうことが強く懸念される。
  • 最近、民間保険会社が、「先進医療保険」の販売に力を入れているのは偶然のことではない。

TPP交渉では、ISD条項を盛り込むことが確実になっているが、国民皆保険制度への影響として、

  • 例えば、政府や地方自治体が患者の窓口負担を軽減した場合、A保険会社が、民間医療保険の販売が縮小することを理由に、日本政府に対し、損害賠償をおこすことができるようになる。
  • 同様に、先進医療の承認を受けた医療技術を保険適用した場合、先進医療保険の売れ行きがダウンするとして、損害賠償を請求できることが可能になる。
  • 患者窓口負担の軽減が進まず、先進医療の医療技術が保険適用されないまま、保険外に据え置かれるおそれがある。

営利企業による病院運営

TPP交渉に参加しているアメリカやニュージーランドなどは、営利企業病院を認めている。TPPに参加すれば、日本も営利企業の病院運営を認めるよう迫られるであろう。

営利企業による病院運営では、出資者に対する剰余金の配当が最優先される。そのため、

  1. コストの削減で安心・安全の医療が低下する
  2. 不採算の医療部門・地域から撤退もしくは進出しない
  3. 所得によって患者を選別する
  4. 医師、看護師等の過度の集中を招く
  • TPPのモデルとされる韓米FTAでは、韓国政府が「経済自由区域」において営利病院の開設を認めた。
  • 韓米FTAに盛り込まれたラチェット条項によって、営利病院を認める法律を廃止することができなくなった。
  • 日本でも「国際戦略総合特区」対象区域には、関西イノベーション特区、京浜臨海部ライフイノベーション特区など7区域が指定されている。
  • 韓米FTAのように特区において営利企業病院の開設が認められる可能性がある。

TPPは国民皆保険制度を壊す

政府が閣議決定した「日本再生戦略」(2012年7月31日)は、

  1. 公的保険で対応できない分野についても民間の活力を活かす
  2. 公的保険外の医療・介護周辺サービスを拡大する
  3. 医療・介護システムをパッケージとした海外展開
  4. 医療・介護・健康関連分野で2020年度までに約50兆円の市場を創出する

など医療を営利産業化する方針を打ち出している。

政府の税と社会保障の「一体改革」を進める社会保障制度改革推進法にも、制度見直しによる保険給付の「範囲の適正化」=給付の重点化・縮小に踏み込む方向が盛り込まれた。

TPPへの参加によって、

  • 薬価の高騰
  • 先進医療の対象拡大
  • 営利企業病院の開設
  • 混合診療の拡大・全面解禁が進行する
  • 公的保険給付の範囲が縮小し
  • 医療の営利産業化が強化される危険性がある。

わが国の国民皆保険制度の特徴である、

  1. 全ての国民が加入対象・保険給付の対象
  2. 公定価格の報酬制度で全国一律の給付
  3. 患者の判断で医療機関を選び受診するフリーアクセス
  4. 医療そのものを現物で給付する―が壊される

一方で、民間保険に加入していなければ、十分な医療が受けられなくなる国民皆保険制度になりかねない。

医療産業市場は膨らむが、その膨張分の出どころは患者の自己負担であり、財力によって受けられる医療の格差が広がる社会となることは明らかだ。

2013年3月13日 (水)

安倍首相もTPPの内容を知らないのだ!

先日の「TPPの中身は全て極秘なのだ!」で

TPP交渉は最初から秘密主義に貫かれているのであり、東京新聞のスクープは賞賛するが、その他の一切もが「秘密」だという点を強調すべきだ。
米上院の貿易委員会委員長ですらTPPの草案を知ることができないのです。オバマ大統領は安倍総理にTPPの草案を知らせたのでしょうか? 私は、一部しか知らせてないと思います。

と書いたが、今朝の東京新聞「TPP協定素案 7月まで閲覧できず」では、私の推測が正しいことが明らかになった。

日本が交渉参加を近く正式表明した場合でも、参加国と認められるまでの三カ月以上、政府は協定条文の素案や、これまでの交渉経過を閲覧できないことが分かった。

関係省庁が個別に情報収集しているが、交渉の正確な内容を入手できていない。ある交渉担当者は、日本側の関心分野の多くは「参加国となって文書を見られるまで、正式には内容が分からないところがある」と述べた。

米国の交渉担当官は会合で「日本には正式な参加国になる前に一切の素案や交渉経緯を見せられない」と各国交渉官に念押しした。さらに、「日本には一切の議論の蒸し返しは許さず、協定素案の字句の訂正も許さない」と述べた。

このような重要な事実を国民に知らせず、安倍首相は国会での質問に対しても説明を拒否したが、内容を知らないから説明ができなかったのだ。彼が知っているのはオバマ大統領からのリップサービスの説明だけだったのだ。

「試合に参加する意思を示さなければ、ルールは教えない。参加意思を表明したらあとで、ルールを知らされて、それが受入れられないとの理由で脱退は許されない。ルールを変更する権限もない」このような組織に、誰が入ろうと思うのだろうか。TPPとはまさにそうした異常な契約なのだ。

これも東京新聞の記事だが、民主党の前原誠司衆院議員は十一日の衆院予算委員会で、TPPの事前協議で、米側が自動車の安全審査の除外やかんぽ生命の学資保険の内容変更などを交渉参加入りの条件として民主党政権当時の日本政府に要求していたと明らかにしたと報じている。

安倍総理とオバマ大統領との共同声明においても、

自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処し、その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完 了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている

となっており、国民皆保険制度や農業、食の安全がTPPの対象外になるとは言えない。だって、アメリカの一番の目的は、日本の非関税障壁を取っ払って、グローバル企業の利益が最大になるように、したいようにさせることなのだから。かんぽ生命保険と医療分野への自由な参入、国民の貯蓄を彼らの投資に使えるようにすること。小泉の「郵政民営化」はそのための布石だったということに、当時は多くの国民が気付かず、小泉の劇場政治に拍手を送っていた。

農業新聞は次のように指摘している。

TPPは「ゼロ関税と米国仕様のルール改正・規制緩和を同時進行する異常協定である。このままTPP陣営に加われば、農産物輸出大国の攻勢で地域そのものが消滅しかねない。医療や保険、公共事業の大幅な規制緩和で、国民の命、生活が脅かされる」のである。

TPPで、がん患者は殺される”のだ。

2013年3月 8日 (金)

TPPの中身はすべて極秘なのだ!

安倍晋三が、TPP交渉参加にあたり「国民皆保険制度は、日本の医療制度の根幹であり、この制度を揺るがすことは絶対にありません。食の安全が損なわれることのないよう、国際基準や科学的知見をふまえつつ、適切に対応してまいります」と述べたのが3月6日だった。【FNNニュース】

東京新聞の同日付の記事によると、『公的医療保険制度や食品安全基準について「議論の対象になっていない」との見解を示した』そうです。

その安倍発言をひっくり返したのが、昨日夕刊と今朝の東京新聞一面記事だ。

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あとから交渉に参加する国には不利な条件があり、それが極秘条件だというのだ。東京新聞は2面と3面を使ってより詳細に書いている。「入口から秘密主義」と題した記事では、

  • 遅れて交渉入りした国は、既に交渉を始めている9ヵ国が合意した事項(条文)を、原則として受入れ、再協議は認められない。
  • 交渉を打ち切る権利は9ヵ国にあり、遅れて交渉入りした国には認められない。

が「極秘条件」だとしている。社会保障や農業、食の安全について、日本の主張が認められることは、まずない。それどころか、いったん交渉に参加したら「打ち切る権利もない」という屈辱的な条件を飲まなくてはならない。

9ヵ国が合意した条件をそのまま受け入れることになるのだから、「議論の対象になっていない」(対象にする必要がない)のであって、阿倍さんの勝手な思い込みだろう。

TPPのすべてが「極秘条項」

異常な契約-TPPの仮面を剥ぐ 実はTPPの条項(条文:テキスト)は一切明らかになっていないのだ。オークランド大学教授ジェーン・ケルシー氏らが、TPP参加国や参加国の国民、先住民などが受ける影響について分析した労作『異常な契約-TPPの仮面を剥ぐ』の「日本語版への序文」には、

TPPがもたらす可能性がある影響についての社会的影響評価は全くなされていない。

これらの疑問に答えるべく包括的で深い分析を行なおうとすると、交渉を取り巻く秘密主義によって妨げられてしまう。交渉参加国は、署名時までテキストを公表しないと主張しているが、それでは我々が内容に影響を及ぼすには遅すぎるのである。

と書かれている。

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TPP交渉は最初から秘密主義に貫かれているのであり、東京新聞のスクープは賞賛するが、その他の一切もが「秘密」だという点を強調すべきだ。

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2013年2月28日 (木)

TPPで、がん患者は殺される

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安保徹とコンビの船瀬俊介ばりのタイトルですが、これは誇張ではない。早速安倍晋三の嘘がほころびだした。26日の産経新聞が『焦点に医療保険浮上 厚労省「国民皆保険制度」崩壊に危機感』と次のように報じている。

安倍晋三首相が参加に向け調整を開始した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉で、焦点の一つに医療保険分野が急浮上し、所管する厚生労働、総務両省は「国民皆保険制度」が崩壊するのではないかと危機感を強めている。

 田村憲久厚生労働相は26日の記者会見で、交渉参加が国民皆保険制度に及ぼす影響について「何としても避けなければならない。首相も『絶対ない』と言っているので、交渉の中で壊れていくことはない」と強調した。

 首相は、今月19日の参院予算委員会で「国民皆保険は守っていく。わが国の主権の問題だ」と述べた。25日には、官邸を訪ねた日本歯科医師会の大久保満男会長らに対し、交渉に参加しても国民皆保険制度を維持する考えを伝えている。

 それでも、厚労省は「米側が交渉中に絶対に俎上に載せないという保証はない」(幹部)と不安を隠せない。昨年までの民主党政権が当初、医療保険制度について「議論の対象外」と説明してきたのにもかかわらず、途中から「可能性は否定できない」と態度を変化させてきたからだ。

 同省は、国民皆保険制度が廃止されると、自在に価格を設定できる自由診療が基本となり、外資の民間保険加入者と未加入者との間で医療格差が広がる可能性が高くなると強調する。同省も米国側の動向を独自に収集し、同制度の存否が交渉案件にならないよう、与党議員に働きかけを強めることにしている。

これは危惧でも何でもない。TPPとは本来そうしたものだからだ。NHKをはじめとしたマスコミは、関税の問題だけのように報じ、解説しているが、アメリカの一番の目的はいわゆる「非関税障壁」の撤廃なのである。この中にはサービス、つまり医療も含まれるのだ。

下のポスターは宮城県医師会が作成したものである。

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Q:なぜ日本の公的医療保険がTPPの対象になると思うの?

A:米国はこれまで10年間、日本政府に対し「混合診療の全面解禁」「医療への営利企業参入」「米国に有利なルール改定」などを要求し続けているからです。

とある。まさに正鵠を射たポスターで、それが現実になろうとしている。米国が狙っているのは、混合診療の解禁を皮切りに、世界に誇るべき日本の皆保険制度を解体し、米国の民間保険会社は自由に参入できるようにすることです。更に営利企業が自由に病院経営に参入できるようにすることも含まれている。

営利企業が医療へ参入することで問題に点として、日本医師会は、

  1. 医療の質の低下
  2. 不採算部門等からの撤退
  3. 公的医療保険範囲の縮小
  4. 患者の選別
  5. 患者負担の拡大
を挙げている。

介護保険が導入されたときのことを思い出してみよう。全国的に展開した会社が、不採算地域からはすぐに撤退した。営利企業なら当然の判断だ。営利企業が医療に参入したら、不採算地域、不採算診療科の医療はやらない。医療過誤裁判になるようなリスクのある診療、小児科・産婦人科などは絶対にやらないだろう。患者を選別し、儲けの期待できる診療しかやらない。

ところが、共同通信社の世論調査によると、TPPに賛成が63%だという。

マスコミにだまされての調査結果だ。なぜならNHKも他のマスコミもTPPの大事な点を一切報じないからだ。大事な点とは何か。それは、宮城県医師会のポスターにもある「ISDS条項」「ラチェット規定」だ。

ラチェットとは、「爪歯車」で一方方向にしか回らない工具であり、ラチェット規定は、締約国がのちに何らかの事情により市場開放をし過ぎたと思っても、規制を強化することが許されない規定なのだ。元には戻れない。

ISDS条項は「投資家対国家の紛争解決条項」の略であり、国家が自国の公共の利益のために制定した政策によって、海外の投資家が不利益を被った場合には、世界銀行傘下の「国際投資紛争解決センター」という第三者機関に訴えることができる制度である。次のような問題点が指摘されている。

  • 「国際投資紛争解決センター」の審査対象は「その国の政策によって投資家がどの程度の被害を被ったのか」という点だけであり、「その政策が妥当なものかどうか」は問われない
  • 審査は非公開であり、判例による拘束は受けない
  • 審査結果だけが公開され、その理由は開示されない
  • 審査結果に不服があっても上訴できない

中野剛志(京都大学大学院工学研究科准教授)によれば、実際に米国・カナダ・メキシコ間の自由貿易協定NAFTAのISDS条項に関しては次のようなことがあった。

  • カナダでは、神経毒性のある物質の燃料への添加を禁止していた。米国のある燃料企業が、この規制で不利益を被ったとして、ISDS条項に基づいてカナダ政府を訴えた。審査の結果カナダ政府は敗訴し、巨額の賠償金を支払い、さらにこの規制を撤廃せざるを得なくなった。
  • ある米国の廃棄物処理業者が、カナダで処理をした廃棄物(PCB)を米国国内に輸送してリサイクルする計画を立てたところ、カナダ政府は環境上の理由から米国への廃棄物の輸出を一定期間禁止した。これに対し、米国の廃棄物処理業者はISDS条項に従ってカナダ政府を提訴し、カナダ政府は823万ドルの賠償を支払わなければならなくなった。
  • メキシコでは、地方自治体がある米国企業による有害物質の埋め立て計画の危険性を考慮して、その許可を取り消した。すると、この米国企業はメキシコ政府を訴え、1670万ドルの賠償金を獲得することに成功したのである。

混合診療がいったん解禁されたら、ラチェット規定により、元には戻せない。営利企業の病院経営を認めたら、外国企業の参入を拒否できない。条件を付けたら「不利益を被った」として損害賠償を請求され、それは国内法ではなく、国際投資紛争解決センターでTPPによって裁かれる。つまり、日本国憲法も国内法も一切無視されるのだ。

結局は今の米国と同じ医療保険体制になっていく。金があれば第一級の治療を受けられるが、経済的負担のできない患者は「臨床試験」に頼るしかなくなる。

米国では、がんサバイバーの破産率は、診断を受けてから5年間で4倍になるというこちらの記事を読むと良い。

ワシントン州西部の14年間分の成人癌症例登録データ約232,000件を連邦破産裁判所の報告書と関連づけて解析したところ、生存のための隠れたコストが明らかになった。生存期間の延長とともに破産率が上昇しているのだ。「平均して破産率は診断後の5年間で4倍になります」。

一般集団と比較すると癌患者では破産率が診断後1年で約2倍に増加しており、破産に至るまでの期間の中央値は診断後2.5年である。

破産率が癌の種類によって大きく変わることがわかった。肺癌、甲状腺癌、白血病/リンパ腫の患者では破産リスクが高くなる。

破産したら、たぶんその後の治療は受けたくても受けられないだろう。生活保護へのバッシングも激しくなっているし、生活保護すらも非関税障壁と判断されかねない。

TPPを受入れ、混合診療を解禁し、営利企業の医療参入を許したら、日本のがん患者も同じ憂き目に遭うことは確実だ。だから、”TPPでがん患者は殺される”と言うのだ。

日本では膵臓がんに使える抗がん剤は3種類だけだが、アメリカでは9種類も認可されている。それも金があれば使えるというだけのことだ。TPPに参加したら、もっと抗がん剤の承認を簡単にして、アメリカで許可されたものは、すぐに使えるようにしろと言ってくるかもしれない。一見するとドラッグラグの解消になりそうだ。しかし、人種が違えば薬の安全性も効果も違う。これはイレッサに確認済みだろう(アジア人には効くというがんセンターなどの説明を信じるならばだが)。何でもかんでも早期承認すれば良いってものではない。混合診療解禁で、金があれば未承認の抗がん剤がどんどん使える。貧乏人は指をくわえて三途の川を渡るしかないのか。

もっとも、抗がん剤(毒)をてんこ盛りにするよりは、抗がん剤を使わない、あるいは低用量で使う方がQOLも良くて長生きしそうだとしたら、金のないがん患者の方が、結果的に幸せになる。これは愉快なブラック・ユーモアだ。

もうひとつのブラック・ユーモア? はこちら。昨日26日参議院予算委員会における共産党の井上哲史議員の代表質問の画面。パネルは共産党の言ったことではなく、自民党の総選挙時の公約です。間違いのないように。

  • ウソつかない
  • TPP断固反対
  • ブレない

ここまで堂々とウソをつかれると、呆れて目が点になり、腹立ちを通り越して笑ってしまった(@_@)

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2012年6月16日 (土)

再稼働・消費税・TPP 癌には悪いニュースばかり

ニュースを聞くたびに、血圧が上がり免疫力が低下する気がする。

「やらない」と言ったことをやり、「やります」と言ったことをやらない。
何を信じて投票すれば良いのか?
自民、公明、民主党の「談合」による再稼働・消費税アップ

「与謝野さん」を「野田さん」と読み替えてみよう!!


↑『がけっぷち社長』さん作。

このツケはキッチリと払ってもらおう。

2010年10月30日 (土)

雨の休日

休日の雨は何となく落ち着いて、私は嫌いではない。晴れた日にはガラス窓を境にして、外と部屋の中が隔絶されて、天気がよいのに引き籠もりをしているような引け目を感じるが、雨の日には水滴のついたガラス窓さえも二つの世界を分けることができないかのような錯覚に陥る。往来の車の音も、雨の日にはあまり届かない。こんな日には遠慮なく読書と音楽に浸ることができる。

一週間 そんな雨の一日に、井上ひさしの『一週間』と浅田次郎の『終わらざる夏』を読み終えた。読み終えたが、ここにその感想を書くには私の腕は非力すぎる。ムリに書けば、逆に今の感動が薄れて嘘っぱちになりそうな気がする。井上ひさしは『吉里吉里人』の初版が出て依頼ずっと読み続けてきた作家であり、『東京セブンローズ』も戦争を扱った井上ひさしらしい作品であった。浅田次郎は『天切り松』シリーズや『きんぴか』シリーズで「小説は面白くなくちゃ」と得心させられ、『月島慕情』に納められた『シューシャインボーイ』では戦争孤児を描くことで現在の日本はこれでよいのかと問いかけていた。

終わらざる夏 上 『一週間』の舞台は抑留中のシベリア、『終わらざる夏』も最後の舞台はシベリア抑留であることは偶然とは思えない。小松修吉や翻訳者の片岡、医学生の菊池、歴戦の英雄・富永、浅井先生に静子、譲。戦争の犠牲者を数字ではなく、一人ひとりの生活、親も子もいる人間として書くことで、風化しそうな戦争を再び考え直させてくれる。彼らに対して胸を張って見せることができる日本になっただろうか。それとも60年経ったらもう彼らのことは忘れてよいのだろうか。

浅田次郎はこう述べている。

 占守島の戦いのことを知ったのは18歳、三島由紀夫が自決した直後に、なぜ三島は死を選んだのかを知りたくて入った自衛隊でのことだったという。そして本作の執筆には、「三島さんへの抵抗という意味もある」。
 「文学者としての三島さんは尊敬する」。だが、三島はペンを捨て、武器を取った。「文学者がそこまでの『表現』をしてよかったのか。僕は『戦争とはこういうものだった』と次の世代、未来に伝えることが小説家の使命だと思うんだ」

井上さんには『コメの話』「どうしてもコメの話』という、20年前のコメの輸入自由化に反対した著作がある。日本の水田は高度な「機械装置」であり、今コメを作っている水田には、同じ場所で弥生時代から連綿と続いた水田だってあるはずだという指摘には目を開かされた思いがしたものだ。工業製品を輸出する身代わりに日本の農業を壊滅させるかもしれない「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)」なる言葉がいきなり登場し、マスコミは生産性の低い農業は犠牲になって当然という論調だ。これは「お国のために」との合い言葉で国民に犠牲を強いた、かつての歴史と同じではないか。井上さんが『コメの話』に書かれた20年前の指摘は、今でも色あせていないから驚く。

井上ひさしさん、浅田次郎さん。よくぞ書いてくれました。ありがとうございました。

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